評価年月日 平成21年5月21日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1-1.供与国名ケニア共和国 1-2.案件名「カプサベット上水道拡張計画」 1-3.目的・事業内容 ケニア中央部のカプサベット市における水不足と不安定な給水状態を解消するために、取水施設の改修、浄水場、送水管、配水池、給配水管の建設・敷設を行うとともに、維持管理用機材や料金請求・会計システム用機材の供与、施設の運転管理及び事業の経営強化についてのトレーニング等を行い、2015年までに計画対象区域内の32,500人の住民に対して安全な飲料水を安定的に供給する。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がケニア政府により実施される必要がある。 (イ)本計画により供与された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)ケニア政府は、「第9次国家開発計画(2002-2008)」において、農業生産の安定に加 え、工業化や民間経済の発展のためには安定した水の供給が不可欠であるとして、上水道の適切な開発と維持管理の改善を目標の一つに掲げている。1999年には「国家水政策」が発表され、その具体化のために2002年に施行された「水法」に基づき給水分野の行政改革を進めている。また、2007年には、飲用及び生産活動に要する水の供給を通じた貧困撲滅を目標とした「国家水資源管理戦略(2007-2009)」が策定され、その基本的な目的の一つとして、水資源の公平な配分及び持続可能かつ効率的な水利用が示されている。本計画は、同目標実現のための地方給水事情を向上させる計画に位置付けられる。 (2)本件対象のカプサベット市には、1948年に建設され、1960年と1980年に拡張された上水道施設があるが、行政区域内の33%しかカバーしておらず、施設の老朽化が進んでいるためその給水状態は極めて不安定である。特に浄水施設の能力は、当初は820立方メートル/日を有していたが、故障や老朽化により現在では550立方メートル/日程度の給水に留まっている。また、恒常的な給水制限が加わり、給水を受けている住民は都市部に居住する約33,000人のうち約5,000人と推測される状況にある。給水を受けられない住民の多くは、市内に点在する21箇所の湧水を生活用水としており、水系伝染病感染の危険性や水汲み労働に係る負担等、生活環境の改善が急務となっている。 2-2.効率性本計画の実施にあたっては、ケニア政府と十分に調整の上、新設浄水場については可能な限り動力を使用しない施設とし、本件協力の効率的・効果的実施に努める。 2-3.有効性本件の実施により、次のような成果が期待される。 (1)カプサベット市の浄水施設能力が現在の550立方メートル/日から3,600立方メートル/日に増強され、給水人口が現在の5,000人から32,500人へ、接続戸数が340戸から6,500戸へ大幅に拡大することが期待される。 (2)給水接続の増加により料金収入が増加するとともにメーター設置の促進により適切な料金請求が可能となり、事業経営が安定する。 (3)24時間給水が実現することで、安全な飲料水の安定的な供給が確保され、給水水質が向上する。 (4)安全で衛生的な飲料水が安定的に供給されることにより、水因性疾患(下痢、コレラ 等)の発生件数の減少に寄与する。 (5)ケニア政府は、水資源への公平なアクセスや持続可能で効率的な水利用を目指した政策を進めており、カプサベット市の水不足解消を目的とする本件支援の実施は、我が国の支援を強く印象付ける。また、本計画は、我が国政府がTICAD IVの際に表明した「2012年までに対アフリカODA倍増」等の支援強化に資するものである。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)ケニア共和国政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書 (3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |