評価年月日 平成21年6月10日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1-1.供与国名ヨルダン・ハシェミット王国 1-2.案件名「空港治安対策強化計画」 1-3.目的・事業内容ヨルダンの玄関口たるクウィーンアリア国際空港の治安対策のため、同空港の整備貨物のX線検査用建屋の建設および同X線検査機材、爆発物検査装置を整備することにより、旅客と貨物、航空機に対する保安対策を強化し、民間航空の安全性を向上させるもの。供与限度額は14.37億円。同空港は、中東地域のハブ空港の一つであり、本件計画ではアル・カイダ等の中東諸国を中心に活動するテロ組織への対策として国際的に重要な意義を有する。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がヨルダン政府により実施される必要がある。 (1)本計画により建設される施設と供与対象のX線機材等の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (2)機材の運営に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)ヨルダンは、中東地域において比較的安全な国とされているが、2005年8月に発生したアカバ港におけるミサイル発射事件、同年11月に首都アンマンで発生した大規模テロ事件(60人以上死亡、150人以上負傷)では、いずれも武器を持ってイラクから入国した者が犯人と考えられている。 (2)このため、ヨルダン政府は、国境における治安対策強化や、テロ再発防止のための法令整備などの措置を重点的に講じている。特にヨルダンは、イラクとの間に民間航空定期便が運行されており、イラク政府の関係者等の来訪も多い。そのため空港は最重要警備対象施設の一つとして保安対策の強化が図られている。とりわけ、クウィーンアリア国際空港における保安の確保は、周辺国の他空港に比べてもその重要性が大きい。 (3)しかし同空港では、旅客等の検問所にはX線検査装置や爆発物検査装置などがなく、検査は警備職員による質問や目視確認に頼っている。また貨物入口検問所では検査機材はなく、警備職員の目視による外観確認もしくは貨物の開披検査が行われるが、車両渋滞の原因となり、混雑時の検査対応が困難となっている。 2-2.効率性調査を通じ、空港保安という目的及びヨルダン側の運営・維持管理体制等に適した供与内容とした。 2-3.有効性本計画の実施により、以下のような成果が期待される。 (1)本空港を利用する年間325万人(2007年実績)の旅客と貨物、航空機に対する保安対策が強化され、民間航空の安全性が向上し、ヨルダンの主要産業の一つである観光業の振興に寄与する。 (2)イラク、レバノン、イスラエルなど、紛争が発生した国に隣接しているヨルダンでは、自国の治安対策の強化が安全保障及び経済発展に不可欠である。また、国際的なテロ対策においても、イスラム過激派を中心としたテロ組織の資金源となる密輸の取締まりが必要である。本件は、中東諸国の拠点(ハブ)空港の一つであるヨルダン国際空港の保安体制を強化するものであり、アル・カイダ等イスラム過激派に対する対テロ対策の一環として、中東諸国の安定化を図ることは我が国にとっても意義が高い。 (3)さらに、本計画の実施により、日本とヨルダンの二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)JICAの基本設計調査報告書 (2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。) |