評価年月日 平成20年 2月11日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田 裕憲
1.案件名1ー1.供与国名ブータン王国 1ー2.案件名「教育施設建設計画」 1ー3.目的・事業内容(1)本計画は、ブータンの中西部地域において、中期中等教育施設の建設等を行うものである。本計画の実施目的は、ブータンの著しい教育施設不足を緩和することであり、供与額は10億6,400万円である。 (2)ブータン中西部3県の4校(プナカ県の「カブジサ中期中等学校」、チュカ県の「パクシカ中期中等学校」及び「ダーラ中期中等学校」、及びワンディ県の「ポブジカ中期中等学校」)において、教育施設(教室72室、図書館等)及び宿舎施設(生徒寮40室、校長・教員用の宿舎)を建設し、教育用家具(机、椅子等)及び寄宿舎用家具(ベッド、収納棚等)を供与する。 1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がブータン政府により実施される必要がある。 (1)本計画により建設された中期中等学校の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2ー1.必要性(1)ブータン政府は、長期開発要綱たる「ブータン2020」の中で、教育を国家開発のための最重要分野の1つと位置付け、2012年までに前期・中期中等教育を含む11カ年の基礎教育の完全普及を目標に掲げている。これを受け、同国の開発5カ年計画である「第9次5カ年計画」(2002年~2008年)においても、初等・中等教育施設の拡充が重点項目の1つとして掲げられ、135校の初等教育施設と173校の中等教育施設の整備が必要とされている。2007年当初までにそれぞれ118校、12校が新設され、初等・中等教育課程の就学率は87.8%に改善した。しかしながら中等教育課程では年7%をこえる生徒増が続いており、中等教育施設の収容力不足、就学環境の悪化が問題となっている。 (2)教育省はこれを受け、引き続き教育施設の整備を進めているが、資金が十分でないために、中等学校の十分な整備を進めることができない状況にある。 (3)このような状況の下、ブータン政府は、全国の初等・中等教育施設15校を整備するために必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。 (4)本件はブータン政府からの上記要請に基づき、コミュニティ開発支援無償スキームにより、中期中等学校4校に対し支援を行うものである。 2ー2.効率性(1)本計画による建設対象校の選定にあたり、ブータン政府より提出された要請対象校それぞれについて、施設建設の緊急性、妥当性(将来の生徒数増加の見通し、他ドナーとの重複の有無等)を確認した上で、建設計画候補とするサイトの選定や、学校ごとの適切な施設内容の検討を行うことで、効率性を高めている。 (2)本計画は、コミュニティ開発支援無償スキームを活用して実施される案件であり、仕様に工夫をするとともに、資機材の現地調達化をすすめ、現地業者を活用することにより、コストの縮減に努めている。 2ー3.有効性(1)本計画の実施により以下の成果が期待されている。 (イ)中期中等学校4校72教室の建設を行うことにより、2,592人の生徒を収容可能な教育施設が新たに整備され、不適切な環境での学習を強いられてきた既存校3校(「カブジサ」、「ポブジカ」、「ダーラ」)の生徒2,128人の学習環境が改善される。また、対象地域での就学率(特に中等教育就学率)の向上が期待される。 (ロ)2校(「パクシカ」及び「ポブジカ」)において計640人分の生徒寮40室が整備されることにより、これまで数時間かけて通学しなければならなかった生徒や居住地域に学校がなかったために就学できなかった生徒の教育へのアクセスを改善させることができる。 (ハ)4校において中等教育カリキュラムの実施に必要な実験室、図書室が整備され、正規カリキュラムに沿った授業の実施が可能となる。また、実験・実習機材の適切な保管が可能となる。 (ニ)男女別に区分され、衛生的な環境を有する生徒寮、便所等が整備されることで、遠隔地児童や女子児童の就学状況の改善が期待される。 (2)建設工事にかかる地域リソースの活用により、コミュニティの雇用促進、活性化が図られる。 (3)本件実施は、国際社会が取り組む「ミレニアム開発目標」(2000年)及び「万人のための教育ダカール目標」(2000年)の達成、並びに我が国が提唱する「成長のための基礎教育イニシアティブ」(2002年)の実現に資するものである。また、ブータンにおいて現在実施中の議会制民主主義への移行を着実に進めるためには、その意義を国民自身が理解し実感することが重要であり、その基盤整備としてブータン国民の基礎教育へのアクセスを拡大する意義は大きい。 (4)本計画の実施により、日本とブータンの二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)ブータン政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)無償資金協力実施適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |