国際社会における法の支配

国際海洋法裁判所

(ITLOS:International Tribunal for the Law of the Sea)

平成29年4月3日

1 裁判所の概要

(1)組織

 国連海洋法条約に基づき,同条約の解釈・適用に関する紛争の司法的解決を任務として,1996年に設立された。所在地は,ドイツ・ハンブルク。現在の裁判所所長はロシアのゴリツィン裁判官(裁判所長としての任期は2014年10月1日~2017年9月30日)であり,書記局(職員数:37名)が裁判官を補佐し,裁判関連事務等を行っている。

(2)裁判官

(3)主要会議

ア 国連海洋法条約締約国会議(年1回開催。於:ニューヨーク)
 裁判所の行財政事項(予算を含む)等について協議し,また,裁判官の改選選挙(3年に1回)を実施している。なお,第26回締約国会議は,2016年6月20日~24日に開催。
イ 裁判官会合(年2回,3月及び9月頃開催。於:ハンブルク。)
 裁判所の組織に関連する事項等を定期的に協議する場として,年2回開催されている。

2 裁判所の権限

(1)当事者能力

 裁判所は,国連海洋法条約の締約国に開放されているほか(国際海洋法裁判所規程第20条1),同条約第11部(深海底)に明示的に規定する事件について又は裁判所に管轄権を与える他の取決めに従って付託され,かつ,裁判所が管轄権を有することを事件の全ての当事者が受け入れている事件について,締約国以外の主体に開放されている(同規程第20条2)。

(2)管轄権の範囲

 裁判所は,国連海洋法条約の解釈又は適用に関する紛争であって,同条約第15部(紛争の解決)の規定に従って付託されるものについて管轄権を有する(同条約第288条1)。また,同条約の目的に関係のある国際協定の解釈又は適用に関する紛争であって当該協定に従って付託されるものについて管轄権を有する(同条約第288条2)。

(3)付託事件

 これまでに25件の事案が付託され,そのうち,12件の判決と9件の暫定措置命令,2件の勧告的意見が下されている。

3 我が国との関係

(1)財政面での貢献

 我が国が分担金の最大拠出国(米国は国連海洋法条約を未締結。)であり,2017年予算における我が国分担額は約136万ユーロ(約1.66億円)となる。これは全体予算の約13.0%を占める額である。

(2)我が国が当事者となった事件

ア みなみまぐろ事件(1999年)
 「みなみまぐろの保存のための条約」により設置された「みなみまぐろ保存委員会」において調査漁獲計画の導入に合意が得られない状況で我が国が調査漁獲を実施したことにつき,豪州及びニュージーランドは国連海洋法条約第64条等に違反するとして,1999年8月,国連海洋法条約に基づく仲裁手続を開始した。同時に両国は国際海洋法裁判所に対し,調査漁獲の即時中止等の暫定措置を要請した。国際海洋法裁判所は,当事国は合意がなされるか又は国別割当て量の範囲内でない限り調査漁獲を慎むべき等の暫定措置命令を下した。(ただし,その後の2000年8月,仲裁裁判所は,「みなみまぐろの保存のための条約」は国連海洋法条約に規定する紛争解決手続の可能性を排除しているため,国連海洋法条約に基づき設置された仲裁裁判所は本件紛争の本案を審理する管轄権を有さないこと及び国際海洋法裁判所が発出した暫定措置命令を無効とする旨の判断を下した。)
イ 第88豊進丸事件,第53富丸事件(いずれも2007年)
 カムチャッカ半島沖のロシア200海里水域で,ロシア当局により,2007年6月初めに拿捕された「第88豊進丸」の乗組員及び船体,並びに,2006年11月初めに拿捕された「第53富丸」の船体が釈放されていなかった。このため,我が国として,ロシアによる国連海洋法条約上の義務の履行を求めて(注),2007年7月,これら事案を国際海洋法裁判所に付託した。これに対し国際海洋法裁判所は,「第88豊進丸」については,合理的な保証金の額として1000万ルーブル(約4600万円:ロシア当初提示額の4割)を認定するとともに,ロシアに対し,その支払いにより船体を早期に釈放すること,並びに,船長及び乗組員の無条件での帰国を認めることを命じる判決を下した。また,「第53富丸」については,口頭弁論後にロシアの国内裁判手続が終了し船体没収が確定したため,もはや日本側の請求の目的が失われたとして,「早期釈放」の請求について決定を行えないと判示した。

 (注)国連海洋法条約は,排他的経済水域において拿捕された船舶及び乗組員を「合理的な保証金の支払い」により「速やかに釈放する義務」を定めている(第73条2)。

(3)裁判官の輩出

 これまで,山本草二裁判官(故人)(任期:1996年10月1日から9年間)及び柳井俊二裁判官(任期:2005年10月1日から2期18年間)の2名の日本人裁判官が選出されている。なお,柳井裁判官は,2011年10月から3年間,裁判所所長を務めた。

(4)吉良外務副大臣による裁判所訪問

 2012年11月,吉良州司外務副大臣(当時)は,我が国政務レベルとして初めて裁判所を訪問し,柳井俊二所長と会談した。

(5)柳井所長による岸田外務大臣表敬

 2014年7月,岸田文雄外務大臣は,外務省にて,柳井所長による表敬を受けた。柳井所長から,2014年6月の裁判官選挙で再選されたこと及び裁判所の最近の活動について報告が行われた。岸田大臣からは,柳井所長の再選に祝意を表するとともに,我が国として,海洋に関する紛争の平和的解決と,海洋分野における法秩序の維持と発展のために,裁判所が果たす役割を高く評価しており,引き続き裁判所への協力を通じ,海洋における「法の支配」の推進に貢献していく旨述べた。
 なお,これまでに柳井所長は,所長就任前の2011年1月に裁判所裁判官として前原誠司外務大臣(当時)を表敬し,所長就任後の同年11月に玄葉光一郎外務大臣(当時)を表敬している。

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