核軍縮・不拡散
通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント
(The Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies)
1 目的
- (1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
- (2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
2 設立の経緯
冷戦の終結に伴い、地域及び国際社会の安全と安定を損なうおそれのある通常兵器及び関連汎用品・技術の過度の移転と蓄積の防止という課題に関し、東西の区別を越えた輸出管理体制を設立する必要性が強く認識され、ココム(対共産圏輸出統制委員会:旧共産圏諸国に対する戦略物資統制のための枠組み)参加国を中心に協議が開始された。
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。
3 基本的枠組み
(1)WAの性格
WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在している。
(2)ココムとの違い
ココムがその対象地域を共産圏に限定していたのに対し、WAは特定の対象国・地域に的を絞ることなく、全ての国家・地域及びテロリスト等の非国家主体を対象としている。
(3)WAにおける活動
ア 輸出管理
参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリスト(注)に掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施している。
(注)輸出管理対象品目・技術リスト
- (a)汎用品・技術リスト:9カテゴリーに分類された「基本リスト」、基本リストの中でもより機微なものと位置づけられる汎用品・技術を抜粋した「機微品目リスト」及び「特に機微な品目リスト」の3種が存在する。
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【基本リストの9カテゴリー】
- (1)先端材料(超伝導材料、セラミック等)
- (2)材料加工(工作機械、ロボット等)
- (3)エレクトロニクス(集積回路、半導体等)
- (4)コンピュータ
- (5)通信関連(ケーブル、暗号装置等)
- (6)センサー・レーザー(ソナー、暗視センサー、レーダー等)
- (7)航法装置(ジャイロスコープ、GPS等)
- (8)海洋関連(潜水艇、水中用ロボット等)
- (9)推進装置(ロケット推進装置、無人航空機等)
- (b)軍需品リスト:22項目にわたって武器(通常兵器)等を全般的に網羅したリスト。
イ 情報交換
参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術の移転に関する透明性を高めるために以下の情報を参加国間において通報している。
- (a)通常兵器
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- 移転通報:国連軍備登録制度の7つのカテゴリーに小型武器(携帯式地対空ミサイルを含む)を加えた計8カテゴリーの通常兵器について、型式の詳細を含むWA参加国からWA非参加国への移転の通報(年2回)
- (b)汎用品・技術
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(基本リスト品目について)
- 拒否通報:WA非参加国に対する拒否案件についての通報(年2回)
(機微品目リスト・特に機微な品目リストの品目について)
- 拒否通報:WA非参加国に対する拒否案件についての原則30日、遅くとも60日以内の通報。
- 移転通報:WA非参加国に対する許可/移転についての通報(年2回)
- アンダーカット事後通報:過去3年間にWA参加国が通報した拒否案件と本質的に同様の案件の輸出許可についての原則30日、遅くとも60日以内の通報。
4 参加国・組織
(1)参加国
42か国(アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、インド(2017年12月)、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国)
(2)組織
- ア 事務局はウィーンに設置されている。
- イ 全ての重要事項は、年1回開催される総会において決定される。総会の議長は各国の持ち回り。
- ウ 一般作業部会は、主に政治的事項の協議及び情報交換を目的として年2回開催される。
- エ 専門家会合は、規制リストの見直しのために年2回開催される。