演説

岸田外務大臣の核軍縮・不拡散政策スピーチ(概要)
(「大臣と語る」於:長崎大学)

平成26年1月20日

英語版 (English)

  • 岸田外務大臣の核軍縮・不拡散政策スピーチ(1)
  • 岸田外務大臣の核軍縮・不拡散政策スピーチ(2)

1 冒頭

  • 日本は,国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から,国際社会の平和と安定及び繁栄にこれまで以上に積極的に貢献していく。

2 総論(核兵器をめぐる世界の現状)

  • 冷戦後,核兵器の数は減少し,核兵器の役割が大きく低減。
  • 一方,現在,(1)核軍縮の歩みはまだ不十分であり,(2)核拡散の問題もより深刻になっている。
    (1)核軍縮については,世界には未だ17000個以上もの核兵器が存在。不透明な形で核戦力の増強を図っているとみられる核兵器国もある。
    (2)核の拡散という問題については,北朝鮮による核開発,イランの核問題,拡散上機微な関連物資・技術の拡散等,拡散上の懸念はより深刻になっている。このように,世界の核リスクは多様化している。
  • 日本は,(1)核兵器が使用された際の非人道性についての正確な認識,(2)国際社会がますます多様化する核リスクに直面していることへの冷静な認識という2つの認識を基礎として,核軍縮・不拡散に向けた国際的取組を主導していくべき。
  • 「核兵器のない世界」を実現するためには,「核軍縮」と「核不拡散」の双方をともに進めていく必要がある。これを具現化しているのが核兵器不拡散条約(NPT)。

3 核不拡散(3つの阻止)

(1)「新たな核兵器国出現の阻止」

  • 新たな核兵器国を出現させないことが最も重要な柱の一つ。
  • 北朝鮮の核・ミサイル開発は重大な脅威。我が国は,米国,韓国など関係国と連携しながら,北朝鮮に対し,非核化等に向けた具体的行動をとるよう強く求めるとともに,関連安保理制裁決議の厳格な履行を引き続き関係国に求めていく。北朝鮮の挑発的な対応への備えとして,日米同盟の抑止力を維持・強化していく。
  • イランの核問題も懸案事項。先般のイラン訪問時にもイラン側に対し,国際原子力機関(IAEA)追加議定書の批准や包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准等の具体的提案を実施。今後とも,問題の包括的解決に向け,国際社会と連携しつつ,主体的に取り組む。
  • 国際的な不拡散体制強化にとって,IAEA保障措置は不可欠な要素。我が国は,長年の知見・経験を生かし,同保障措置実施強化のために貢献していく。

(2)「核開発に寄与し得る物資,技術の拡散の阻止」

  • 核兵器保有を追求する主体による関連物資・技術の調達を阻止するため輸出管理が重要。
  • アジア諸国は,近年,核開発やミサイル開発に転用可能な物資・技術の生産能力を獲得。一方,違法な調達活動は一層巧妙化。アジア諸国が意図せずして拡散に関わってしまう危険性がこれまで以上に高まっている。
  • 輸出管理の強化は,貿易・投資を阻害するものではなく,むしろ貿易・投資相手国としての信頼の醸成につながるもの,ひいては,更なる経済発展への環境整備につながることに理解を求める。

(3)「核テロの阻止」

  • テロ組織などの非国家主体による核物質を用いたテロ行為,すなわち「核テロ」の阻止は重要な課題。
  • 核セキュリティの強化は,(1)日本の安全保障,(2)国内治安対策,(3)原子力の平和利用の推進という観点から重要。
  • 多くの国が核テロ対抗能力を構築・強化することは,各国間での安全保障上の信頼醸成にもつながる。核セキュリティのシステム強化のため,関係者間で必要な規範を根付かせ,優れた取組から相互に学ぶことが重要。
  • 2014年3月に開催予定のハーグ核セキュリティ・サミットなど様々な場を通じて,原子力大国たる日本としてアジア地域や世界の核セキュリティ強化に積極的に貢献していく。

4 核軍縮(「3つの低減」の具体的提案)

(1)「核兵器の数の低減」

  • 「核兵器のない世界」の実現のためには,核兵器国による核軍縮交渉を義務づけたNPT運用検討の義務を誠実に履行することが重要。米露核軍縮交渉は,英,仏,中国等も取り込んだ多国間交渉へと進展すべき。
  • 少なくとも現状より核戦力を増強させないことを求める。
  • 核戦力の透明性向上が不可欠。

(2)「核兵器の役割の低減」

  • 核兵器を保有する国による自国の安保・軍事ドクトリンにおける核兵器の役割・使用の絞り込み・限定が重要。
  • 核兵器国は,NPT上の不拡散義務を遵守している非核兵器国に対して,核兵器を使用したり威嚇しないことを約束するべき(強化された消極的安全保証)。
  • 核兵器を保有する国は,自らの宣言政策と合致するよう核兵器の配備態勢を見直すことが必要。

(3)「核兵器を保有する動機の低減」

  • 核兵器を開発・保有する動機や誘因を低減させていくことが重要。
  • 政治的な側面での核兵器の役割の低減は,新たな国が核を保有しようとする動機の低減につながる。国際的な規範に反して核を保有しようとしても,その国の地位や評価にマイナスとなるという認識を国際的に広げていく。
  • 地域の安定化や地域紛争の解決を通じて信頼を醸成していくことが重要。

5 人道的観点から見た核兵器を巡る議論

  • 人道的観点から見た核兵器を巡る議論(核兵器の非人道的側面)は,厳しい安全保障環境への冷静な認識と併せて重視してきた要素。
  • 広島と長崎の惨禍を世代と国境を越えて継承することは,唯一の戦争被爆国である日本の使命。
  • 普遍的かつ開かれた議論を進めることが重要。次の3つを重要な考え方として国際社会に訴えていく。
    (1)核兵器の非人道的側面を考慮することは,国際社会を「結束させる」触媒であるべき。
    (2)核兵器の非人道的側面についての認識を世代と国境を越えて「広げていく」ことが必要。
    (3)科学的側面についての知見を「深めていく」ことも重要。
  • 本年4月のNPDI広島外相会合では,参加各国外相に被爆の実相に直接触れていただくとともに,核兵器の非人道的側面の問題を含めてしっかり議論し,2015年NPT運用検討会議に向けて有益な提言を行うことを目指す。

6.結語

  • 核軍縮・不拡散の取組においては,核兵器の非人道的側面に対する正確な認識を出発点としつつ,厳しい安全保障環境を踏まえ,目の前に存在するリスクに対する冷静な認識を持った上で,現実的かつ実践的な取組を着実に積み重ねていくことが不可欠。これが「核兵器のない世界」への最短の道。
  • 長崎への原爆投下から来年2015年には70年。こうした措置が,この2015年に開催されるNPT運用検討会議の成功,さらには,「核兵器のない世界」に向けた大きな一歩につながることを切に願う。

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