ビザ・日本滞在

平成27年度外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ(報告と提言)

外国人と企業のダイバーシティ経営~住み心地よいですか,ニッポンの企業

平成28年3月22日

1 趣旨

外国人の受け入れと社会統合にとって重要な要素として,日本語の習得,外国人子女の教育,異文化に対する相互理解,地域社会への啓発等さまざまなものがあるが,生活基盤をなす就労も重要な要素の一つとして挙げられる。また,少子高齢化が進む日本の経済や社会を維持強化していくには,女性や高齢者だけではなく,外国人にも貴重な戦力として活躍してもらうことが重要であることからしても,外国人が日本の会社組織に適応し,その能力を発揮できるかが一層重要になってくる。
外国人の就労については,さまざまな切り口や論点があるが,今回のワークショップでは,既に日系企業で働いている元留学生や中長期在留外国人に着目し,会社組織内での外国人受入れ環境や日本人と外国人の協働のあり方について考えることとした。
なお,本件「報告と提言」は,ワークショップ当日に行われた国内外の有識者によるプレゼンテーションや日系・外資系企業に勤める日本人及び外国人等によるパネル・ディスカッションで出された意見や提言を中心にまとめたものであり,外務省の見解を反映したものではない。

2 現状と課題

(1)有識者2名によるプレゼンテーションの内容を踏まえ,北浦正行議長(公益財団法人日本生産性本部参与)による議事進行の下,日本企業関係者,日本企業に勤める外国人社員,外資系企業関係者,人事コンサルタント,それぞれからの視点から議論を行った。各パネリストから出た意見(要旨)は以下のとおり。

ア 日置政克(コマツ顧問)
グローバリゼーションの概念は企業によって異なるが,コマツは半数以上が外国人社員であり,基本的に日本人と同じ仕事をしている。住み心地よい企業とはアフターファイブも含めて気持ちよく働けるということであり,外国人社員の家族が「日本に来て良かった」と言ってくれるのが理想だと思う。ダイバーシティ,多様な人材が働くというのは企業の強み。「異文化」というと日本だけが特別と考えがちだが,そうではなく「多文化」,日本の文化も「one of them」であるとして,どのように一緒にやっていくかが大事。

イ 兪青(ユーチン)(ソニー株式会社 人事センター)
日本企業で外国人社員として働いて,コミュニケーションとキャリアに対する考え方の違いという二つの壁にぶつかった。日本語については,一見問題なく話しているように見えても,すべて理解できているとは限らない。また,外国人は一般的に転職に抵抗がなく,キャリアアップの一つとして積極的に捉えている人が多い(ただし,自分自身は同じ会社の中でポストを異動することにより様々な経験をさせてもらえることに満足しており,引き続きソニーで働いていきたいと思っている。また,終身雇用制の良さも理解できる)。採用時は,スピード感のあるキャリア構築を期待していることを会社側は意識しながら入社後に直面する可能性の高い「言語の壁」といった課題を外国籍社員にも共有し,採用後も直属の上司との定期的な面談等により,互いの考えを共有することが重要。

ウ 田丸健三郎(日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員,ナショナルテクノロジーオフィサー)
マイクロソフトには様々な国籍の社員がおり,基本的に成果を出せば,働き方や勤務時間は自由。必ずしも米国出身ではないことを前提に,様々な制度設計がなされている。会社が推進するビジョンにフレキシブル・ワーク・スタイルというのがあるが,働き方は国籍や文化と密接に関係しており,会社としていかにフレキシブルな制度を持っているかが重要な要素だと思う。日本では長時間労働すれば「働いている」と評価されがちだが,勤務時間の長さではなく何を達成したかが重要であり,異なる軸での評価制度が,グローバルに人材を引きつけることになる。

エ パク・スックチャ(アパショナータ,Inc.代表,ダイバーシティ(多様性)&ワークライフ・コンサルタント)
組織でのダイバーシティの定義は,多様な人材を生かす戦略であると言われている。優秀な人材の確保のほか,様々な経験が刺激し合って企業の革新性が生まれる可能性が高い。他方,ダイバーシティが進んでいる場では,軋轢,摩擦などトラブルが多い。したがって,ダイバーシティを追求する制度の整備だけではなく,実際に外国人が受容(インクルージョン)されている,尊重されていると感じる風土作りが必要。多文化コミュニケーションとは相手の立場に立ったコミュニケーションのこと。日本の企業は外国人を日本の習慣に合わせようとするが,相手の文化を知る努力をすることが大切。

(2)各人の意見発表及びディスカッションにおいて,以下のとおり現状と課題が指摘された。

ア 人事制度
(A)キャリア構築についての考え方に違いがある。外国人にとってはステップアップとしての転職が当たり前であり,スピード感あるキャリアアップを望む場合が多い。
(B)他方,日本では終身雇用を前提に長い時間をかけて社員を育成するのが一般的で,外国人社員からすれば早い時期から力を発揮できないと感じる。

イ コミュニケーション
(A)日本語のコミュニケーションに問題がないように見えても,必ずしもすべて理解しているわけではなく,暗黙の了解で不明な点を明確にしないまま仕事が進むことがある。
(B)日本の企業は外国人を日本の習慣に合わせようとし,日本語を理解する人ばかり雇う,あるいは外国人に対し無意識に偏見を持つ傾向がある。

3 提言

以上の現状と課題を踏まえ,日本企業における日本人と外国人の協働のあり方について,(1)外国人の立場,(2)日本人の立場,(3)有識者の立場から以下のとおり提言がなされた。

(1)外国人の立場からの提言
(ア)最も重要なのはコミュニケーション。暗黙の了解や前提条件を捨て,ゼロベースからコミュニケーションをすることにより,互いの理解が深まり,多様な文化を受容する基礎が形成される。
(イ)職場におけるインクルージョンは「全員参加」。外国人を受け入れる意識があるというだけではなく,自分から声をかけるなど,簡単なことから,外国人が尊重され,組織に受容されていると感じるような行動を始めてほしい。

(2)日本人の立場からの提言
(ア)個の視点に立って考え,日本の人事制度に対して指摘があれば冷静に評価し,変えるべきところは変える柔軟性を持つことが必要。外国人社員に対する特別プログラム,例えばメンター制度,帰国費用手当なども一考。評価制度を明確にすることでキャリアの展望が開ける。違いを理解し,それを尊重する,元は同じ人間であるという視点を持つことが大切。
(イ)上司と部下のコミュニケーションを通じて互いに理解を重ね,次のキャリアにつなげていく。働きやすい環境として人間関係が良好な職場であること,人種・国籍に関係なく能力が正当に評価され,それが目に見える形であることが重要。言葉の面など,小さな配慮が誤解を減らし,各人の属性を超えた円満なコミュニケーション,人間関係の形成を可能にする。

(3)有識者の立場からの提言
(ア)モチベーションを上げるには,企業の方針と社員のやりたいことの一致を図ること,職場の良い人間関係の存在,労働環境の整備・充実を前提として,仕事内容の充実,能力開発・公平な評価の実施,キャリアの明るい展望が重要な要素になる。
(イ)人材獲得競争は熾烈であり,人事マネジメントには,外国人の雇用のほか,日本人社員の離職を避ける戦略も必要。

4 議長総括

パネル・ディスカッション結果を踏まえ,以下のとおり議長総括が行われた。

(1)多岐にわたる意見が出されたが,ベースにあるのは日本とそれ以外という意味での「異文化」ではなく,日本もその一つであるという「多文化」の視点。
(2)日本の企業は集団主義の傾向があるが,マスではなく個を大事にする視点がなければ,外国人にとって心地よい企業となることは難しい。
(3)その上で,外国人にとって心地よい企業のキーワードは,コミュニケーション,キャリア構築,柔軟な制度。特にコミュニケーションにおいては,自分がしたいことではなく相手がしてほしいと思うこと,相手の気持ちを考えて行動することが求められる。
(4)人材育成においては,キャリアパスについて明確に説明すること,人材を「育てる」から「育つのを支援する」という自立の思想をもって,柔軟な制度を構築することが求められている。

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