2月11日午後3時15分から午後6時30分まで,貿易経済に関する日露政府間委員会第9回会合が開催されたところ,概要は以下のとおり。日本側は前原外務大臣が議長を務め,外務省の他,経済産業省が参加。ロシア側は,フリステンコ産業貿易大臣が議長を務め,経済発展省,外務省等が参加。
1 意義
日露首脳レベルで,政治と経済を含め,日露関係をあらゆる分野で拡大していくことで一致していることを受けて,互恵的な経済関係の進捗に向けて議論。とりわけ,資源確保や日本企業の海外展開の促進といった,日本経済の活性化という観点からも有意義な会談となった。
2 主な成果
(1)官民経済会合(円卓会議)の開催に向けた調整の開始
日露経済関係を具体的に進捗させるため,本年中にロシアにおいて,前原大臣及びフリステンコ産業貿易大臣をはじめとする日露政府ハイレベル及び日露企業関係者が参加する官民会合(円卓会議)を開催することで原則的に一致。
(2)相談窓口の設置
両国企業関係者が,案件進捗に際して直面する問題(コンプライアンス,行政手続等)について相談するための窓口を日露政府内に設けることで一致し,貿易投資分科会の両議長(日本側:西宮伸一外務審議官,ロシア側:スレプニョフ経済発展省次官)が窓口に指名された。
(3)個別案件に関する働き掛け
前原大臣より,日本経済にとってプラスとなるプロジェクトを後押しするとの観点から,エリガ炭田開発,サハリン3など,日本企業が関心を有している案件について,ロシア側への働き掛けを実施。
3 具体的案件の進捗
- (1) 2010~2011年にかけて,資源エネルギー分野や,2012年ウラジオストクAPEC関連インフラ事業への日本企業の参画,エネルギー効率の向上に寄与する案件,日本の各種製造業のロシア進出等で成果があったことを歓迎し,高く評価。
- (2) これまでにロシア側から言及があった分野を中心に日露間協力にとって有望な分野(注:両大臣が署名した覚書(骨子別添)にリストを記載)を確認するとともに,民間企業間の協力発展のため両国政府による支援を強化することで一致。また,今後,両国経済界の要望を踏まえ,本リストの拡充・具体化を行っていくことを確認。
- (3) 前原大臣より個別案件に関する働き掛けを実施(2.(3)参照)。
4 貿易投資環境整備
経済関係拡大に向けた貿易投資環境の整備の重要性に一致し,相談窓口の設置に一致するとともに(2.(2)参照),通関手続・規格取得手続等の行政手続の簡素化や,税制・インフラ料金等の案件の経済性に影響を与える各種制度の最適化と予見可能性の確保が重要であり,必要な取組を行っていくことを確認。
5 その他
(1)ロシアの経済近代化
2010年11月に日本外務省,ロシア大統領府との間で開催された「ロシアの経済近代化に関する日露経済諮問会議」を歓迎。省エネルギー分野をはじめとして,ロシアの経済近代化に関連した分野でも互恵的な取組を進めることを確認。
(2)地域間交流の促進
地域間交流分科会の活動を通じた両国地域間交流を活性化させる必要性につき一致。両国政府として,日本の地方自治体,ロシア連邦構成主体との交流を積極的に支援していくことを確認。
(3)日本センター等
ロシア6都市に設置された日本センターやロシアNIS貿易会をはじめとする貿易投資促進機構によるビジネスマッチング活動等を評価。
(4)懸案事項
- ア 前原大臣から,ロシアの自動車輸入関税引き上げ措置への懸念を表明し,保護主義的な措置の即時撤廃を主張。フリステンコ大臣は,WTO加盟後にはWTO協定上の全ての約束を遵守する旨述べた。
- イ 前原大臣から,ロシアによる穀物禁輸措置及びそれによる外国企業の損害について指摘し,改善を申入れた。フリステンコ大臣は,穀物禁輸は繰り返されないことを期待する,また(企業の損害という)ネガティヴな事例が今後生じないことを期待する旨述べた。
- 【参考】貿易経済に関する日露政府間委員会
1994年11月,サスコベッツ第一副首相と河野洋平外務大臣との間で署名された覚書に基づき,第1回会合を1996年3月に開催。現在は,日本側は外務大臣,ロシア側は産業貿易大臣が共同議長。前回は,2008年10月に第8回会合を開催。2009年12月及び2010年4月には共同議長間会合を実施。