日本の対南西アジア外交

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- なるほど発見!
南西アジア
これまでも、これからも。深化する日本とのパートナーシップ。
ネパール
パキスタン
ブータン
インド
バングラデシュ
モルディブ
外務省
Ministry of Foreign Affairs of Japan
スリランカ
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- ページ: 2
- ご存じですか?
南西アジア各国のお国事情
皆さんは「南西アジア」と聞いて、何をイメージするでしょうか。カレー?もちろんカレーはこの地域の代表的な料理ですが、
それだけではありません。一般に「南西アジア」と言われるインド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、
ブータン、モルディブの7か国は、古代文明や豊かな自然に恵まれた個性的な国であり、日本との関係も実は深いです。
それぞれのお国事情について、ご紹介いたします!
パキスタン・イスラム共和国
ウルドゥー語で「清らかな国」
(PAK
(パーク)は「清らかな」、STAN
(スターン)は
「国」)という意味のパキスタンには、
某世界的アニメー
多様な自然、
文化を誇る
イスラームの
国です。
ション映画のモデルとなったとも言われている風光明媚なフンザ地
域や、ガンダーラ仏教遺跡、インダス文明の中心遺跡であるモヘ
ンジョダロなど、日本人にも馴染み深いスポットが数多くあります。
●首都 イスラマバード
●人口 2 億 3,140 万人
●面積 79.6 万㎢
(日本の約 2 倍)
●言語 ウルドゥー語(国語)
、
英語(公用語)
インド
巨大な人口を有する大国インド。南西アジア最大の国土を有し、ロシアを
PAKISTAN
INDIA
除いたヨーロッパとほぼ同じ面積があります。世話、だるま、護摩、鳥居、
奈落など日本で日常的に使われる言葉にはインドのサンスクリット語を語源
とするものがあり、日本との文化の結びつきがあります。
世話、
だるま、
●首都 ニューデリー
護摩…いずれも
●人口 14 億 756 万人
●面積 328.7 万㎢
インドから
(日本の約 9 倍)
●言語 連邦公用語はヒンディー語、
伝わった言葉です。
ご
ま
他に憲法で公認されている
州の言語が 21
モルディブ共和国
モルディブは約1,200の島からなる島国で、そのうち200の島にモルディブ
人が住んでいます。また、約170島がリゾート島になっており、年間約170
万人の観光客が訪れます。2011年に後発開発途上国(LDC)を卒業し、一
人あたりのGDPは南西アジア最大を誇ります。
モルディブは
●首都 マレ
島の集合体。さて、
●人口 52.1 万人
●面積 298㎢
島の数はいくつ
(東京 23 区の約半分)
●言語 ディベヒ語
あるでしょう?
01
なるほど発見!南西アジア
MALDIVES
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- ページ: 3
- ネパール
大国の中国とインドに挟まれ、世界最高峰のエベレストなど8,000m級の8
峰が連なる山岳国。ネパール人は、雪線を超える6,000m以上の頂上を目
指すことを「登山」、それ以下の山歩きは「トレッキング」と言います。
●首都 カトマンズ
●人口 3,005.5 万人
●面積 14.7 万㎢
(北海道の約 1.8 倍)
●言語 ネパール語
ネパールでは、
6,000m以下の山は
「登山」とは言いません。
ブータン王国
ブータンでは、物理的な発展だけではなく精神的な豊かさを含む総合的な
豊かさを大切にするため、世界的な指標であるGDP
(国内総生産)ではなく、
NEPAL
BHUTAN
GNHという言葉、
ご存じですか?
GNH
(国民総幸福量)という指標を用いています。国勢調査でも国民の約9
割が「幸せ」と回答する、まさに「幸福の国」です。
●首都 ティンプー
●人口 77.7 万人
●面積 約 3.8 万㎢
(九州とほぼ同じ)
●言語 ゾンカ語(公用語)等
BANGLADESH
バングラデシュ人民共和国
国名は「ベンガル人の国」という意味です。現在、中国に次ぐア
パレル大国として急速に経済成長を続けています。日本のファス
SRI LANKA
誰もがきっと、
バングラデシュ製
の服を持っている
はずですよ。
トファッションの多くもバングラデシュで作られ、親日家の国民
が多いのも特徴です。
●首都 ダッカ
●人口 1 億 6,935 万人
●面積 14.7 万㎢
(日本の約 40%)
●言語 ベンガル語
スリランカ民主社会主義共和国
セイロン紅茶の産地として有名なスリランカ。国名はシンハラ語で「光輝く島」
を意味します。スリランカでは満月は「ポヤ・デー」と呼ばれる仏教の特別な
スリランカの休日は
満月の日か三日月の日、
さてどっち?
日で、休日です。心を浄化し、清らかな気持ちで一日を祝います。
●首都 スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ
●人口 2,215 万人
●面積 6.6 万㎢
(北海道の約 0.8 倍)
●言語 シンハラ語(公用語)
、
タミル語(公用語)
、英語(連結語)
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02
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- INDIA
インド
友好関係のはじまりと今
交流の
はじまり
戦後の日本に笑顔を届けたインド。
ぼ だい
日本に初めて来たインド人と言われているのが、736年に来日した菩提
せん な
僊那という僧侶です。東大寺の大仏開眼供養の導師を務めたことでも
有名で、日本とインドは仏教を通じ古くから親交を深めてきました。
1949年には、ネルー首相が上野動物園にインド象を贈り、戦後の日本
を元気づけています。その約10年後、今度は日本が初となる円借款を
インドに対して実施しインド経済を支援したのでした。
南西アジアの国々は、いずれも古くから
日本と友好関係を築いてきた親日国です。
はるか昔から今に続く、日本と南西アジアの
歴史を紐解いてみませんか?
インドと深い繋がりがある東大寺。
インド象はネルー首相の娘の名前を取り「インディラ」
と名付けられた。 (写真提供:
(公財)東京動物園協会)
PAKISTAN
パキスタン
伝統的な親日国で、9割以上が日本車。
ぼ だい せん な
752年に菩 提 僊 那 が大仏開 眼導師
を務めた。
BANGLADESH
バングラデシュ
国旗に秘められた日本との絆。
古くから綿花の栽培が盛んだったパキスタン。戦後、日本はパキ
1971年のパキスタンからの独立では、日本は西側諸国に先駆け
スタンの綿花を使って繊維産業を発展させ、パキスタンも綿花を
て独立を支援し、友好関係を築いてきました。ムジブル・ラーマン
輸出することで潤うという互恵関係にありました。1960年頃か
初代大統領は、敗戦から高度成長した日本の国造りを見本とすべ
ら続々と日本車メーカーが進出。現在もパキスタンの町を走る車
く、
国旗に日本の日の丸と似たデザインを選んだと言われています。
の9割以上が日本車です。
町を走る車は日本車ばかり。日本の自動車メーカーに
とって重要な市場のひとつ。
食べたい
かは
つ
南西アジア
おすすめ
料理
03
緑は豊かな大地、赤は独立戦争の犠牲者の血(又は太陽)を
表している。
!
い
パキスタンの綿花は世界でも
屈指の生産量を誇る。
ムジブル・ラーマン大
統領が描かれた硬貨。
2012年には、日本が
2タカ貨幣5億枚の製
造を受注した。
なるほど発見!南西アジア
ターリー
【インド】
キリバット【スリランカ】
ダルバート【ネパール】
ターリーとは、カレーやナン、デザートなど、
様々な料理が一皿に盛られてくるインド風定
食のこと。地域ごとに特色があり、インドを
訪れたらその違いを楽しむのもおすすめです。
スリランカの主食はご飯。ココナッツミ
ルクでお米を炊くキリバットは、お祝い事
には欠かせない縁起の良い食べ物です。
ダルバートとは、ダル(豆のスープ)、バー
ト(ご飯)、タルカリ(野菜などのカレー)
にアチャール(漬物)を加えたもの。朝と
晩の1日2回食べる、
ネパールの国民食です。
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- SRI LANKA
スリランカ
日本を救った、スリランカ代表の演説。
NEPAL
ネパール
100年の時を越え、ネパールに根付いた日本とは?
かわ ぐち え かい
欧州航路の寄港地として、戦前から夏目漱石など多くの著名人
日本人として初めてネパールを訪問したのは、僧侶の河口慧海と
が訪れてきたスリランカ。1951年のサンフランシスコ講和会議
されています。1899年のことでした。1902年にはネパールから最
においては、対日賠償請求権の放棄を表明。故ジャヤワルダナ
初の留学生が来日しています。菊や藤の花、柿、栗などはネパー
元大統領が「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」
ルでもよく見かけますが、これらはその時の留学生がネパールに
と訴えた演説が参加国の心
持ち帰り根付いていったとされています。
を打ち、日本の国際社会復
帰へと繋がっていきました。
(J・R・J・C蔵)
サンフランシスコ講和会議で演説する
ジャヤワルダナ財務相(当時)。
仏教学者、探検家としても知
寄港地として栄えたコロンボ港の現在の様子。
BHUTAN
ブータン
ブータンで最も有名な日本人、ダショー西岡。
かわぐち え かい
られている河口慧海。
1902年に来日したネパール初の留学生。
MALDIVES
モルディブ
モルディブはカツオ節、発祥の地!?
ブータンと日本の協力関係は1964年に始まります。海外技術協力
水産業が盛んなモルディブ。14世紀前半にはカツオ節を製造
事業団から農業の専門家とし
しており、その製法が琉球王国に伝わり日本全土に広がった
て故西岡京治氏が派遣され、
という説があります。一方で、日本の技術提供により生まれた
農業の機械化や米の品種改良
特産品の「ツナ缶」は、現 在 海 外にも輸 出されています。
など、農業の発展に貢献しま
2011年の東日本大震災の際には、モルディブ国民から69万個
した。その活動はブータン国
ものツナ缶が日本に届けら
民から信頼を集め、外国人と
れました。
けい じ
して初めて「ダショー 」の称
※
号を国王から授与されました。
※ダショーは「最高に優れた人」を意味
する名誉称号。
故西岡氏の功績を顕彰するために
建てられた仏塔「西岡チョルテン」。
「モルディブ・フィッシュ」と呼ばれる
モルディブのカツオ節。
(写真提供:野町和嘉/JICA)
東日本大震災の際に支援物資として届けら
れた「ツナ缶」。
チャプリケバブ【パキスタン】
マチェル・トルカリ【バングラデシュ】
エマダツィ
【ブータン】
ガルディヤ【モルディブ】
たっぷりの油で焼き上げたスパイシーな
牛肉のハンバーグで、ナンと一緒に食べ
ます。冬場はカラダを温める料理として
男性たちに大人気。
マチェル・トルカリは魚を使ったバングラ
デシュで人気のカレー。川に囲まれている
ことから「ベンガル人は米と魚でできてい
る」と言われるほど川魚を食べるそう。
ブータンの人々は、辛い食べ物が大好き。
たくさんの唐辛子とチーズを使った「エ
マダツィ」は定番メニューのひとつで、赤
米と一緒に食べるのがブータン流です。
マグロやカツオを煮込んだ塩味のスープ
で、モルディブ人のソウルフード。カレー
料理で胃が疲れたときにもおすすめの優
しい味わいです。
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- 友好関係のはじまりと今
そして、今を紡ぐ
INDIA
インド
(写真提供:内閣広報室)
巨大な人口を誇り、急速な経済成長
を遂げているインド。
二国間の貿易額も年々、増加の傾向にあります。
日本とインドは2014年に
「特別戦略的グローバル・
日本・インド首脳会談(2022年)
パートナーシップ」を構築しました。近年、日印間
では日本の新幹線システムの導入計画に代表される経済分野での協力に加えて、防
衛・安全保障協力が急速に進展しています。
「自由で開かれたインド太平洋」実現に
向けた重要なパートナーとして、防衛・安全保障、経済、経済協力、文化、人的交流、
第2回日印外務・防衛閣僚会合「2+2」
(2022年)
グローバル諸課題や地域情勢等、幅広い分野での協力が深化されています。
SRI LANKA
スリランカ
南西アジアのハブを目指して。
北海道の8割程度の国土に8つの世界遺産を有するスリランカ。
外国人観光客からの注目も高まっています。日本は2009年に終
結した国内の紛争解決に向け、2002年に明石康・元国連事務次
スリランカの 平 和 構 築に 尽 力した
明石康・元国連事務次長。
長を平和構築の政府代表に任命し、和平に向け積極的に関わってきました。近年では空港などの運輸イ
ンフラを整備して各国との連結性を高め、経済発展にも寄与しています。また、両国は安全保障や海上
保安分野においても、能力構築支援を中心に協力を深めています。2022年、独立後最悪と言われる経
済危機を迎えたスリランカは日本を含む国際社会からの支援を得つつ、復興の歩みを進めています。
WFPを通じた緊急食糧支援(2022年)
NEPAL
ネパール
真の友人として、発展を後押し。
ネパールでは2006年に内戦が終結し、2008年に王制から連邦民主共和
制へ移行されました。日本は、南西アジア有数の親日国であるネパール
の発展に長年寄与しており、その支援は2015年に起きた震災に対する復
興・防災事業や、農業、保健医療、教育、運輸交通、電力分野等と多岐
日本大使館主催の2022年日本・ネパール交
流年イベント
にわたっています。両国は2022年に留学生交流120周年を迎え、人的交流を中心に、多彩な記念事業を開催しました。新憲法
の下での2度目の連邦下院選挙には、武井外務副大臣を団長とした監視団を派遣するなど、ネパールの民主化・ガバナンスの強
化にも積極的に支援をしています。今後もネパールの発展を後押しすべく多方面にわたる協力関係を築いていきます。
05
なるほど発見!南西アジア
武井副大臣を団長としたネパール選挙監視団の派遣(2022年)
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- PAKISTAN
パキスタン
(写真提供:内閣広報室)
地域の平和と安定を目指して。
アジアと中東の結節点にあるパキスタンが安定して発展
することは、地域の平和と安定にとっても重要です。日
本はパキスタンの経済基盤の改善、防災、教育、水・衛生、
保健・医療、農業、女性支援、国境地域支援など、社
日本・パキスタン外相会談(2022年)
会の安定に繋がりうる幅広い支援を行うことで、パキス
タン、ひいては地域全体の安定が実現することに寄与し
ています。
日本・パキスタン首相会談(2022年)
BANGLADESH
バングラデシュ
(写真提供:谷本美加/JICA)
貧困脱却への「包括的パートナーシップ」。
バングラデシュは、2041年までに先進国になることを目指
し、
2026年には後発開発途上国(LDC)を卒業する予定です。
日本は長年にわたり、バングラデシュの発展を後押ししてき
ジャムナ多目的橋はバングラデシュ
の旧紙幣の絵柄に採用されていた。
ました。1998年には、国土を東西南北に分断するジャムナ川にかかるジャムナ多目的橋(全
長4.8km)が日本・世界銀行・アジア開発銀行の協調融資で建設されました。2014年には、
「包括的パートナーシップ」を立ち上げ「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の下、メ
トロ、空港、深海港などの建設を通じて、持続可能かつ公平な経済成長を後押ししています。
日本・バングラデシュ外相会談(2022年)
2022年には外交関係樹立50周年を迎え、二国間関係は益々進展しています。
BHUTAN
ブータン
(写真提供:ブータン政府)
人と人の交流を通じ、
築かれる友好関係。
2011年、国王王妃両陛下の訪日をきっかけに、ブータ
ンは「幸せの国」として日本でも広く知られるようにな
り、2019年の即位礼正殿の儀の際の両陛下の訪日も
ブータン国王王妃両陛下が国賓と
して訪日(2011年)
注目されました。一方で、貧困やインフラ整備などの課題も多く、日本は農業分野
や道路、橋梁といったインフラ支援をはじめ、生活水準の向上に協力しています。
また、スポーツや科学技術など、多方面にわたる交流が続けられています。
武井外務副大臣によるブータン・ワンチュク国王陛下表敬
(2022年)
MALDIVES
モルディブ
モルディブの観光立国化を応援!
モルディブにとって観光業はGDPの3割を占める重要産
業です。日本は長年にわたり、モルディブの観光産業を
活性化させるため、
様々な支援を行っています。2022年、
日本はモルディブ沿岸警備隊の油流出事故への対処能
油濁処理器材の引渡式においてモルディ
ブ沿岸警備隊によるデモンストレーション
を見守る武井外務副大臣(2022年)
力を向上させるため、専用の機材と船舶を提供しました。また、モルディブに対し、ゴミ収集
車等の廃棄物処理機材を供与することを決定しました。これらの支援によってモルディブの魅
力的で美しい自然が守られ、モルディブにより多くの観光客が訪れることが期待できます。
モルディブのシャーヒド外相が訪日(2022年)
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- 南西アジアの発展へ、
日本ができること
巨大な人口を有する南西アジアは近年目覚ましい経済成長を遂げており、マーケットとしても投資先としても
注目を集めています。一方で、貧困や格差、紛争からの復興・平和構築、気候変動・災害対策など様々な問題を抱えており、
国際社会からの支援が必要な地域でもあります。日本は長年にわたり南西アジア地域の最大のパートナーとして
支援してきました。2021年の日本のODA供与額は、インドが1位、バングラデシュが2位、スリランカが18位となっています。
その他
イギリス
14.4%
5.2%
アメリカ
10.2%
南西アジア
へのODA
(政府開発援助)
供与国
その他
日本
54.3%
サブサハラ・
アフリカ
日本の
二国間ODA援助
地域別配分
32.8%
9.5%
ドイツ
15.9%
中東・北アフリカ
11.0%
出典:OECDデータベース(OECD.Stat)
(2023年2月)
東南アジア
21.5%
出典:OECDデータベース(OECD.Stat)
(2023年2月)
2021年の南西アジア地域への支援の約54%を日本のODAが占
2021年の南西アジア地域への日本のODAは約6,415億円(支出
めており、日本は南西アジア地域にとって最大のパートナーです。
総額ベース)で、日本のODA全体の約32.8%を占めています。
13km/h
■ デリー高速輸送システム建設事業
日本は有償資金協力(円借款)により、デリー高
速輸送システム(デリーメトロ)建設を支援して
平均時速
います。エレベーターや女性専用車両を採用す
慢性的な渋滞が発生
るなど女性や高齢者等にも配慮しながら、毎日
約500万人(2019年時点)に便利で快適な移動
インドでは近年、大都市の人口が急増。鉄道の整備
が進んでいなかったため、デリー市内は慢性的に渋
滞が発生し、平均車両速度は13㎞ /hとなっていまし
た(東京は24.7㎞ /h)
。交通混雑の緩和と排気ガスに
よる大気汚染の公害減少が求められています。
手段を提供します。また、日本は資金や技術の
提供だけでなく、作業員の安全帽・安全靴の着
(写真提供:JICA)
1億 ドル
■ ケラニ河新橋建設計画
約
経済危機への支援だけでなく、道路輸送の円
滑化・経済成長の促進に寄与するため、交通の
要衝であり著しい渋滞が慢性化していた、コロ
経済危機の克服と今後の発展を支援
ンボ市北部のケラニ河に新たに橋を建設しまし
スリランカは、2022年、外貨不足等により生活必需品の不
足や記録的なインフレ等、独立後最悪と言われる深刻な経済
危機に直面しました。日本政府は、食料品や医薬品供与等
の緊急人道支援だけでなく、農業機材や保健機材の提供に
よる経済回復の後押し、北部・東部を中心とした紛争影響地
域における生計向上を含め、同年だけで約1億ドルの無償支
援を決定し、危機の克服と今後の発展を支援しています。
なるほど発見!南西アジア
用や整理整頓の意識も指導し、インドの工事に
文化的な革新を起こしたと言われています。
2022年の無償支援
07
南西アジア
25.2%
た。2021年11月に開通したこの橋は、スリラ
ンカの橋梁としては初のエクストラドーズド形
式の橋であり、その美しい景観はスリランカ最
大都市コロンボの新たなランドマークとなって
ケラニ河新橋建設計画
います。
(写真提供:三井住友建設)
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■
パロパカール産婦人科病院
の再建
位
人間開発指数
ネパール全土から妊産婦を受け入れているパロ
パカール産婦人科病院も大地震により甚大な被
後発開発途上国(LDC)からの脱却へ
害を受け、日本は同病院の再建支援を行いまし
ネパールは、約9,000名の犠牲者が発生した2015
年のネパール大震災や新型コロナウイルス感染症で
影響を受けた社会経済の復興に取り組んでいます。
日本は、経済成長及び貧困削減、防災及び気候変動
対策、ガバナンス及び民主化の強化という3つの重点
分野からネパールを積極的に支援しています。
た。2019年の竣工式の際、ネパール政府より
日本に対して、ネパールが幸せな時期も辛い時
パロパカール産婦人科病院
(写真提供:JICA)
3,300万人
■ 災害に強い国造りのための支援
パキスタンと同じく多くの災害に苦しんできた日本
は、これまでにパキスタンで初の国家防災計画の
策定、防災人材の育成、気象レーダーの整備、国
日本の強みを生かして
家洪水防御計画の実施支援等、同国の防災分野
への継続的な協力を行ってきました。死者1700人
パキスタン政府は、国土の3分の1が水没し、被災
16m
以上を出した2022年の大規模洪水に対しては、
日本は緊急援助物資の供与、国家防災計画の改
訂、河川構造物の診断、被災した施設・資機材の
農耕地が洪水の被害を受けた地域で農作物用の種
子を配布する様子(2022年)
(写真提供:JICA)
復旧等を通して、復旧・復興に貢献しています。
■ ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)
日本政府は、2014年以降、「ベンガル湾産業成長
地帯(BIG-B)」構想の下で、バングラデシュの経済
水深
インフラ整備、投資環境整備、地域連結性強化に
経済成長に伴う深海港開発
バングラデシュでは、近年の高い経済成長に伴い、
貨物の貿易額が過去10年間で年平均約8%の伸びを
記録しています。同国最大のチョットグラム港は、貨
物取扱容量を越える状況にあり、また中・大型船の
受入れも困難な状況にあるため、深海港の建設が急
務となっています。
資する支援を行い、同国の後発開発途上国からの
卒業を後押ししています。同国南東部では、水深
16mとなるマタバリ深海港や首都ダッカへと繋が
マタバリ港に到着した初の大型外航船
(写真提供:JICA)
2023
後発開発途上国(LDC)卒業
より自立的な成長へ
べられました。現在も同病院は拠点病院として
ネパールの医療・保健衛生向上に寄与しています。
2022年大洪水被災者総数
者総数は約3,300万人に上ると発表しています。被害
総額は300億ドル以上、最低限の復旧には163億ド
ルが必要とされており、国際社会による支援が求めら
れています。
期もネパールと共にあり感謝するとの謝意が述
1.5m
国土消滅の危機
モルディブは平均海抜が1.5mという平坦な地形の
ため、サイクロンによる高波や地震による津波の被害を
受けやすい地形です。また、地球温暖化を原因とする
海面上昇とサンゴ礁の死滅に対応するため、モルディ
ブは国際社会に環境保護を訴えています。
太平洋」の実現に向けた協力を行っています。
日本政 府は、保 健・医 療 分 野においてもブー
タンを支援しています。新型コロナの影響を受
けたブータンに対して、同国の保健・医療体制
を強化するために、山 間部の多いブータン国
内でも移動に優れたSUV小型救急車を提供し
ブータンは、国内経済が新型コロナの深刻な影響を
平均海抜
改善に取り組むとともに、「自由で開かれたインド
■ 保健・医療関連機材の供与
年
受けつつも2021年以降は回復し、高い経済成長率を
維持しているものの、引き続き国内の失業率や都市と
農村の格差などの課題を抱えています。ブータンは
2023年にLDCを卒業する予定で、これらの課題に取
り組みながらさらに発展していくことが期待されます。
る橋梁や道路の整備を支援しており、輸送環境の
ました。
ブータン国内を走る移動に優れたSUV小型救急車
■ マレ島の護岸工事
日本 の 無 償 資 金 協 力により1987年から15年
間にわたってマレ島を取り囲む防波堤を設置。
2004年のインド洋大地震及び津波で、モルディ
ブ国内は死者82人、被災者15,000人以上とい
う大きな被害を受けたものの、
マレ島は壊滅的被
害を免れ、政府の機能も維持されました。2006
年、モルディブ政府は日本の経済協力への感謝
として、日本国民に対し「グリーン・リーフ」モル
ディブ環境賞を授与しました。
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- ページ: 10
- 南西アジアと日本の
顔の見える交流
長年続いた紛争の終結や治安の回復などにより、近年、南西アジアと日本は、
人的交流も活発です。現在、南西アジアで暮らす在留邦人は1万2000人を超えています。
一方で、日本へ進学や就職などでやってくる人々も年々増加し、
今では約24万3000人の南西アジアの人々が日本で生活しています。
人の往来が盛んになった背景には、南西アジアの国々と日本が長年にわたって
“顔の見える交流”を続けてきたことが大きく影響しています。防災や保健、教育など
様々な分野で、日本人が貢献した草の根レベルの活動をご紹介します。
※数字は法務省HP記載のもの
人材
ビジネス
栄養
製造業のリーダーを育成
急速な経済成長を遂げるインドの製造業において、成長のカギと
なる課題の一つは、リーダーの育成でした。日本はインド政府からの
要請を受けて、2007年8月から2013年3月まで技術協力プロジェク
ト(VLFMプロジェクト)を実施し、経営幹部を育成しました。さらに
VLFMプロジェクトの後継事業となるCSMプロジェクトでは、包括
的な成長への寄与という新たな分野の付加によって、質の向上と規
模の拡大を図ることを目的として2013年4月から2021年9月まで研
修を実施。2つのプロジェクトにより6000名以上の製造業リーダー
が育成されました。
リーダー育成支援の様子
紙芝居で栄養バランスを学ぶこどもたち
(写真提供:船尾修/JICA)
子ども
一人一人の笑顔のために
スリランカでは特に低所得層を中心に、障害を
母子 保
健
持つこどもを学校に通わせることができず、周り
から孤立した生活を余儀なくされる家族がいま
す。こうした現状を改善するため、馬場繁子さん
(元JICA隊員)は、1992年に現地でNGOスラン
ガニを設立し、30年以上にわたり、障害児・幼児
教育の普及啓発や、障害を持つこどもやその家族
コミュニティ啓発の様子
す。障害の有無に依らず一人一人を大切にし、誰も
新生児死亡率の改善を目指して
のための療育・生活支援等の活動を実施していま
が笑顔で暮らせる世界を実現したいという馬場さ
センターのこどもと談笑する馬場さん
んの想いは、今日も少しずつ広がっています。
パキスタンの新生児死亡率は世界でも最も
高い水準です。特に地方・僻地では、女性医療
豊かな自然に づく
南西アジアの
多種多様な
生きもの
09
なるほど発見!南西アジア
インドゾウ
セイロンヤケイ
一角サイ
インドと言えばインドゾウです。また、ガ
ネーシャというゾウの頭と人間の体を持
つヒンドゥー教の神様としても大切にさ
れている動物です。
スリランカの国鳥も日本と同じキジ科で
す。森の中に棲むカラフルな野生の鶏は、
この国の固有種です。
ネパールの南平野部に生息し、一角サイ
を見ることのできるチトワン国立公園と
バルディヤ国立公園は観 光 客に人 気で
す。現地では「ガイダ」と呼ばれ、100ル
ピー札にも描かれています。
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- 防災
“その日”に備える
災害が多く、気候変動の影響を受けやすい
バングラデシュでは、人々の暮らしや生活を守
るために被災リスクを少しでも減らすための、
あらゆる努力が欠かせません。松村直樹さん
は耐震技術の導入や防災気象情報の改善、次
世代の防災を担う人づくりを担うJICA専門家
(当時)として、現地語を交えながら、いつか
来る“その日”に備えることの重要性を人々に説
き続けました。
防災について現地語を用いて指導する松村さん
(写真提供:谷本美加/JICA)
日本の紙芝居で楽しく栄養を学ぶ
農業
自給自足から“売れる”農業へ
ネパールの子どもたちの栄養状態を改善す
冨安裕一さんがプロジェクト・リーダー(当
地消型の学校給食を提供するための設備整備
や摘果作業などを教えるほか、新しい品種の導
るために、2020年2月からヌワコット郡で地産
時)を務める農業試験場では、栽培研修で剪定
や栄養教育のための研修などをWFPとの連携
入にも取り組んでいます。ブータンの主な産業
で実施しています。
は農業ですが、これまでは自給自足が中心だっ
この事業には日本のNGOであるシャンティ
たため品質向上の意識は薄く、さらに農地が急
国際ボランティア会も協力しており、日本の文
峻な山沿いに点在するので、生産性の向上は容
化でもある紙芝居を用いて子どもたちがイラス
トとストーリーを楽しみながら栄養バランスの
大切さについて学ぶことができる環境づくりを
易ではありませんでした。強いリーダーシップに
農業試験場で農家らを対象に研修を行う冨安さん(右)
(写真提供:野町和嘉/JICA)
支援しています。
従事者の配置や施設の24時間対応
が限定的な上、社会習慣から母親の
よって農家の自主性や責任感も向上させるな
ど、冨安さんの地道な活動は周囲の信頼を集
め、ブータン政府からも高く評価されました。
教育
ニーズに合った学校建設
1200もの小さな島々が点在するモルディブは、
意思決定、単独外出、栄養改善など
開発の手が隅々まで届きにくい傾向にあり、長年に
に課題があります。このため、女性
の検診や施設分娩へのアクセスにお
わたって地方島の学校設備が不足してきました。日
ることが重要です。日本は、医療者
学校を建設する7件のプロジェクトに署名し、子ど
コミュニティ啓発、日本の母子手帳
各学校が抱える課題に合った支援を提供するこ
パキスタンの母子保健サービスの強化を図り、
く、図書室、障害者児童向けトイレ、実験器材の整
ける障害を物理的・社会的に除去す
本は2016年の大使館設置以降、モルディブ国内に
への研修、医療施設・機材の整備、
もたちの学習機会の確保に貢献してきました。
を基にした家族健康手帳の作成などを通じて、
とが日本の支援の強みであり、学習教室だけでな
母子が健やかに最初の1000日を過ごせるよう
備を行うなど、ニーズに合ったきめ細かな協力はモ
支援しています。
教室を供与した学校の生徒たちと共に
ルディブ政府から高い評価を得ています。
マーコール
ベンガルトラ
ターキン
キハダマグロ
ヤギの仲間で、体が大きいことから「野
生のヤギの王様」を意味する言葉が名前
の由来です。パキスタンの国獣で、国際
自然保護連合の準絶滅危惧種に指定され
ています。
インドとバングラデシュにまたがるマン
グローブ天然林(ユネスコの世界自然遺
産)に生息する、バングラデシュの国獣
です。個体数の減少により絶滅危惧種に
指定されています。
ブータンの高地の森林地帯に生息するウ
シ科の動物で、雌雄ともに湾曲した角を
持っています。森林伐採や乱獲により生
息数が減少しています。
水産業が盛んなモルディブでは、環境に
優しい一本釣り漁法が主流です。モルディ
ブは世界一魚を食べる国と言われており、
1日3食すべてで魚が食卓に上ることも珍
しくありません。
Ministry of Foreign Affairs of Japan
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- 個性豊かな南西アジア
個性豊かな
南西アジアを探訪しよう
を探訪しよう!
ネパール
ブータン
多様な宗教が調和し、
魅力的な文化を形成。
暮らしと仏教が
密接に結びつく国。
様々な宗教が融合しているネパール。チベッ
ト仏教の中心的存在となっているのが「ボダ
ナート寺院」
で、
巨大ストゥーパ
(仏舎利塔)
は
世界遺産にも登録されています。
100以上の
民族がいるから、
民族衣装も
バラエティ豊か!
信仰心が篤いブータン人の聖地が「タク
ツァン僧院」で、ブータン仏教の祖が虎に
乗って舞い降りたという伝承があり、
「タク
ツァン
(虎の隠れ家)
」
と呼ばれています。
ボダナート寺院
タクツァン僧院
バードシャーヒ・モスク
パキスタン
ブータン人は民族衣装を公共
の場で着る決まりがあるよ。
歴史的建造物を
巡るならラホールへ。
パキスタン第二の都市ラホー
ルには観光名所が多く、
「バー
ドシャーヒ・モスク」
もそのひと
つ。ムガール帝国時代に建て
られ、当時モスクとして世界
最大の大きさを誇りました。
民族衣装の
サリーは、地域に
より巻き方や素材に
特色があるよ。
タージ・マハル
頭や首回りに巻くショールは、
女性の必須アイテム。
男性は
「ルンギー」という
スカート風の服も
よく着るよ。
インド
イスラム建築の傑作
「タージ・マハル」は必見。
インドを代表するイスラム建築
である
「タージ・マハル」。ムガー
ル皇帝シャー・ジャハーンが亡く
なった王妃へ贈った愛の結晶と
して知られています。
パハルプールの
仏教寺院遺跡群
バングラデシュ
かつて栄えた巨大仏教遺跡は圧巻。
バングラデシュで見逃せないスポットと言えば「パハル
プール」。壮大な仏教寺院の遺跡群で、出土した数多くの
粘土板の浮彫も有名です。
北マーレ環礁
モルディブ
モルディブの女性の
伝統的衣装はとても
色鮮やかだよ。
スリランカ
訪れる者を魅了する
世界遺産が点在。
誰もが憧れる、
美しい海に囲まれた楽園。
モルディブにはリゾート島が100
以上あり、透明度抜群の海を満喫
するなら、
海上コテージに泊まるの
がおすすめです。
外務省
Ministry of Foreign Affairs of Japan
シーギリヤロック
これはキャンディ
地方の婚礼衣装。
王様スタイルだよ。
8つの世界遺産を保有する
スリランカ。
ジャングルにそ
びえ立つ「シーギリヤロッ
ク」は、美しい天女の壁画
が残る宮殿遺跡で、人気の
世界遺産です。
〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1 電話(代表)03-3580-3311
編集 アジア大洋州局南部アジア部南西アジア課 発行 国内広報室 2023年3月
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