C.搾取の状況にある児童(含む身体的及び心理的な回復及び社会復帰)
(a)児童の経済的な搾取(含む児童労働)(第32条)
(a-1)児童の経済的な搾取(含む児童労働)(第32条)
(経済的な搾取の禁止)
317.労働基準法は、使用者が暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制することを禁止し、また、何人も法律に基づいて許される場合のほか、業として他人の就業に介入して利益を得ることが禁止されている。
(危険で児童の教育の妨げとなり又は児童の健康若しくは身体的、精神的若しくは社会的な発達に有害となるおそれのある労働への従事)
318.労働基準法は、満18歳に満たない者に、危険な業務、重量物を取り扱う業務、安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務及び坑内労働に就かせることを禁止している。具体的な危険有害業務の範囲については年少者労働基準規則に定めている。
更に、学校教育法においては、子女を使用する者は、その使用によって、子女が、義務教育を受けることを妨げてはならないこととされている。
(風俗営業等における禁止行為)
319.児童福祉法第34条において、満15歳に満たない児童に対し、道路その他の場所で歌謡、遊芸を業務としてさせる行為、酒席に侍する行為を業務としてさせる行為を禁止している。また、同法においては、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為を禁止している。
また、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に関しては、第1回政府報告パラグラフ288参照。
(福祉犯のうちの有害業務)
320.警察では、少年を虐待し、酷使し、その他少年の福祉を害し、又は少年に有害な影響を与える犯罪を福祉犯として捉え、これらに該当する禁止条項をもつ児童買春・児童ポルノ法、児童福祉法、労働基準法、職業安定法、売春防止法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等25法令を活用した取締りを行っている。
特に、少年に有害な仕事からの保護については、関係法令を活用した継続的な取締りを行い、危険な業務や性を売り物とする営業に従事するなど有害な環境下に置かれた少年の保護活動を行うとともに、これらにより被害に遭った少年に対し、心身のダメージを軽減し、早期立ち直りを図るため、少年相談専門職員や少年補導職員等によるカウンセリングを実施するなどの措置を講じている。
(資料)有害な仕事からの保護に関する主な福祉犯検挙状況(人員)
区 分 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
労働基準法 |
281 |
349 |
303 |
158 |
115 |
風俗営業適正化法 |
1,062 |
1,018 |
856 |
937 |
788 |
*労働基準法は、最低年齢未満使用、年少者に対する深夜業、年少者に対する危険業務、年少者に対する有害業務等の違反である。
*風俗営業適正化法は、風俗営業の接待業務、風俗営業の接客業務等の違反である。
(労働基準監督機関の監督指導)
321.労働基準法は、労働基準監督官が事業場等に臨検し、使用者又は労働者に対する尋問等を行うことができる旨規定しており、これらを通じた労働基準監督機関の監督指導により法の履行を図っている。
一方、事業場に労働基準法に違反する事実がある場合に労働者が行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる旨規定している。
また、使用者には法令等についての周知義務が課せられており、労働基準法の内容について、周知が図られるようになっている。
(職業訓練)
322.我が国では、職業能力開発促進法に基づき、国及び都道府県が、公共職業能力開発施設を設置し、職業訓練を行っている。中学卒業者等に対しては、将来多様な技能・知識を有する労働者となるために必要な基礎的な技能・知識を習得させるための長期間の職業訓練を実施している。
(a-2)国際文書の関連規定を考慮してとられた措置
(雇用が認められる最低年齢)
323.労働基準法は満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していない児童を労働者として使用することを原則として禁止している。パラグラフ65.参照。)
(労働時間及び労働条件)
324.労働基準法は変形労働時間制、時間外・休日労働、労働時間及び休憩の特例の規定は満18歳に満たない者については適用を受けない旨規定している。また、行政官庁の許可を受けて使用することのできる満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していない児童については、修学時間を通算して1日につき7時間、1週間につき40時間を超えて労働させてはならない旨規定している。さらに、満18歳に満たない者の深夜業(午後10時から午前5時まで)を原則として禁止している。
安全衛生については、労働基準法は満18歳に満たない者を危険な業務、重量物を取り扱う業務、安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務及び坑内労働に就かせることを禁止している。
(罰則等並びに監視メカニズム及び不服申立手続)
325.労働基準法は違反行為者に対し懲役刑又は罰金刑を課す旨規定している。監視メカニズム及び不服申立手続については、パラグラフ321.参照。
(風俗営業等)
326.パラグラフ319.参照。
(我が国が締結した国際条約)
327.我が国が締結した関連の国際条約のうち、特に児童と関連の深い国際条約は次のとおり。
就業が認められるための最低年齢に関する条約(第138号)、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(182号)。
(b)薬物乱用(第33条)
(b-1)関連する国際条約に定義された麻薬及び向精神薬の不正な使用からの児童の保護。
328.我が国が締結している麻薬関連条約としては、1961年の麻薬に関する単一条約、1961年の麻薬に関する単一条約を改正する議定書、向精神薬に関する条約、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約が挙げられる。
(b-2)これらの物質の不正な生産及び取引における児童の使用の防止。
(国連薬物統制計画等への協力等)
329.我が国は、国際的な薬物対策機関である国連薬物統制計画(UNDCP)等の組織に対して資金的な面のみならず、人的な面からも協力を継続させている。
現状としては、覚せい剤、大麻等の薬物乱用の非行が多発しており、また、暴力団が活動資金獲得のため、これら乱用少年に対して薬物を密売するなど、非行を助長している状況にある。また、我が国では、国際条約に定義された麻薬等のほか、特にシンナー等有機溶剤の乱用による非行が多発している。これについても、暴力団の活動資金獲得を目的とした密売行為等が少年の薬物乱用を助長している。
少年による覚せい剤やシンナー等の薬物乱用が依然として深刻な状況にあることから、少年の薬物乱用を防止するため、薬物の密売人等供給源に対する取締りの徹底、薬物乱用少年の早期発見、学校等関係機関との連携強化、家庭・地域に対する広報啓発活動の推進等、総合的な対策を推進している。
(取締等)
330.警察では、深刻化する少年の薬物乱用を防止するため、「供給の遮断」と「需要の根絶」の両面から、組織を挙げた対策に取り組んでいる。
まず、「供給の遮断」面では、関係機関との連携を強化し、密輸・密売事案の取締りの徹底を図っており、街頭等で薬物を密売している外国人の取締りを行うなど、薬物の供給源に対する取締りの徹底に努めている。
次に、「需要の根絶」面からは、末端乱用者の検挙を徹底するとともに、街頭補導活動や少年相談等を通じ、薬物乱用少年の早期発見・検挙に努めるほか、必要に応じて継続的な補導を行うなど、早い段階での少年の立ち直りの支援に努めている。
また、少年に対し、薬物の危険性・有害性についての正しい認識を持たせるため、薬物乱用防止広報車を活用し、薬物乱用防止教室の積極的な開催を図っているほか、学校・地域に対する幅広い広報啓発活動に取り組んでいる。
2000年中に覚せい剤事犯で検挙した少年は1,137人、大麻事犯で検挙した少年は102人、シンナー等有機溶剤事犯で検挙した少年は3,417人である。覚せい剤事犯で検挙した少年は、1997年以来3年振りに増加しており、中でも、中・高校生の検挙人員の増加が目立つなど、少年の薬物乱用は依然として深刻な状況にある。
(薬物乱用防止5か年戦略の制定)
331.政府としては内閣官房長官を本部長として総理府に設置されていた「薬物乱用対策推進本部」を厳しい薬物情勢にかんがみ、1997年1月、閣議決定により内閣総理大臣を本部長とする本部に格上げし、内閣に設置した。
1998年5月には、同本部において、今後5年間に我が国が取り組むべき目標を示した「薬物乱用防止5か年戦略」が策定されたが、この中では、第3次覚せい剤乱用期の早期終息と世界的な薬物問題解決のための国際貢献が基本目標とされているほか、さらに、具体的な目標として、「中・高校生を中心に薬物乱用の危険性を啓発し、青少年の薬物乱用防止傾向を阻止する」「巧妙化する密売方法に的確に対処し、暴力団・一部不良外国人の密売組織の取締りを徹底する」「密輸を水際でくい止めるとともに薬物の密造地域における対策の支援などの国際協力を推進する」「薬物依存・中毒の治療と社会復帰を支援し、再乱用を防止する」の目標を掲げ、各省庁一丸となって青少年児童を始めとした国民への薬物乱用防止対策を推進している。具体的には、「社会を明るくする運動」において、保護司等を通じて薬物を含む諸問題について広報・啓発活動等を実施している。
(学校における薬物乱用防止教育)
332.全ての中学校及び高等学校において年1回は警察職員等の外部の専門家が指導を行う薬物乱用防止教室を開催するとともに、地域社会が一体となってこの問題に取り組むよう各都道府県教育委員会等を指導するとともに、1998年に改訂した新学習指導要領において、新たに小学校の体育科(保健領域)においても、喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する指導を行うことを明記するなど、指導内容を充実した。
また、児童生徒の覚せい剤等の薬物に対する意識調査、薬物乱用防止教室の開催推進、児童生徒用教材・パンフレットの作成・配布、教職員用参考資料・ビデオの作成・配布、教職員対象の研修会の開催、競技場等の大型ディスプレイを活用した広報啓発活動、シンポジウムの開催、ホームページの開設、推進地域における実践研究などの施策を実施している。
(少年院等における薬物乱用防止教育)
333.少年刑務所においては、犯罪の行動面や犯罪に至った要因に着目し、同じ類型に属する者を集団として構成し、処遇類型別指導を行っており、この一類型として覚せい剤乱用防止指導が行われている。
また、少年院においては、在院者の個別的な問題の改善並びに健全なものの見方、考え方及び行動の仕方の育成を図るための生活指導の一環として、問題行動指導があり、非行に係わる意識、態度及び行動面の問題を中心に指導が行われている。この指導において、問題群別指導として、薬物等の問題を取り上げて、集団討議や視聴覚教材を利用した授業等が行われている。
更に、薬物事犯で保護観察に付され、また少年院を仮退院した少年については、薬物に関する正しい知識を習得させるための種々の薬害教育を行うなど薬物の再乱用防止策を講じている。また、医療機関や薬物依存者のための自助グループなど民間組織を含めた関係機関等との連携を深め、薬物乱用防止の指導の充実を図っている。
(b-3)児童によるアルコール、タバコその他の健康を損なうおそれのある物質の使用の防止のためにとられた措置の効果
(取締等)
334.重大な非行に至るまでには、喫煙や飲酒、深夜遊興などの問題行動を繰り返すことが指摘されており、こうした問題行動の段階での適切な対応が望まれている。
警察では、飲酒、喫煙している未成年者を発見した場合には、注意、指導を行うとともに、未成年者が飲酒、喫煙することを知りながら酒類、たばこを販売した事案等については、関係法令に基づいた適切な取締りを行っている。
また、2000年12月には、未成年者の飲酒、喫煙を防止し、その健全育成に資するため、罰金の引き上げ等を内容とした未成年者飲酒禁止法及び未成年者喫煙禁止法の改正法が施行された。
関係省庁と連携して、販売業者等に対して、未成年者の健全育成に配慮した販売等をするよう働き掛けを行っているほか、関係機関・団体と連携した未成年者飲酒・喫煙防止のための広報啓発活動を推進している。
(健康日本21)
335.厚生労働省としては、昨年4月から、「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を開始させ、この中で、2010年度までに、「未成年者の喫煙、飲酒をなくす」ことを掲げ、今後、地方公共団体や民間の幅広い参画をいただきつつ、国民的な運動として取組を推進していくこととしている。
また、昨年12月には、警察庁、大蔵省と共同で、酒類販売業者及びたばこ販売業者に対して、未成年者の喫煙、飲酒防止のため対面販売を心がけていただくよう通知したところである。
今後とも、厚生労働省としては、シンポジウム、パンフレット、インターネット等のあらゆる手段を活用して、喫煙、飲酒による健康影響について正確な情報提供を図り、更に広く国民的な議論を喚起しつつ、「未成年者の飲酒、喫煙をなくす」という目標の実現に向けて積極的に取り組んでまいりたい。
(c)性的搾取及び性的虐待(第34条)
(c-1)啓発・教育キャンペーン
336.パラグラフ91.93.参照。
また、児童買春・児童ポルノ法の施行にあたり、法務省のホームページに児童買春・児童ポルノ法について掲載しているほか、検察においては、検察職員に対し「児童買春法の制定並びに児童及び女性に対する配慮について」などをテーマとした研修を実施しているところ、このような研修を通じ児童の人権への配慮を促進する。
さらに、警察では、性的搾取及び性的虐待の防止のため、ポスター、リーフレット等を配布したり、各種広報媒体を通じて広報啓発活動を行っているほか、児童買春・児童ポルノ法の施行に当たり、警察庁のホームページに児童買春・児童ポルノ法の内容及び英訳を掲載するとともに、各種広報媒体を通じて児童買春・児童ポルノ法に関する広報・啓発を実施している。また、警察職員に対して、児童買春・児童ポルノ法の周知、児童の性的搾取及び性的虐待の防止等に関する研修、教育を実施している。
(c-2)国内戦略等
(性的搾取の防止に関する法律等)
337.性的な業における搾取的使用の防止については、売春防止法が売春を禁止し、周旋等、困惑等による売春、売春をさせる契約、場所の提供、売春をさせる業、資金等の提供を処罰の対象としている。また、児童買春・児童ポルノ法が児童買春、児童買春の周旋、児童買春の勧誘を処罰の対象としている。さらに、児童福祉法が児童に淫行をさせる行為、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為等を処罰の対象としている。
わいせつな演技及び物における搾取的使用の防止については、児童買春・児童ポルノ法が児童ポルノ頒布等及び同目的での製造等の行為を処罰の対象としているほか、刑法が公然わいせつ、わいせつ物頒布等の行為を処罰の対象としており、児童福祉法が児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為を処罰の対象としている。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律では、専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興業等を経営する者がその営業所において18歳未満の者を客に接する業務に従事させることを禁止し、これに違反した者を処罰することとしている。
各都道府県が定める青少年の保護育成に関する条例(いわゆる「青少年保護育成条例」)は、青少年に対する淫行又は猥褻行為等の禁止を規定しており、それぞれの地域の実情に基づき制定されている。政府としては、これらの条例の効果的な運用を図っている。
警察では、児童の性的搾取及び性的虐待を含め、児童の福祉を害する犯罪を福祉犯として捉え、継続的な取締りを行っており、危険な業務や性を売り物とする営業に従事するなど有害な環境下に置かれた児童の保護活動を行うとともに、これらにより被害に遭った児童に対し、心身のダメージを軽減し、早期立ち直りを図るため、少年補導職員等によるカウンセリングを実施するなどの措置を講じている。
また、警察では、児童買春の温床と認められるテレホンクラブ営業に対して、風俗営業等の規制及び業務の適性化等に関する法律による規制を定めたところである。
更に、我が国は、パラグラフ4.のとおり、「児童の商業的性的搾取に対する国内行動計画」を策定したところである。
(資料)性的搾取及び性的虐待に関する主な福祉犯検挙状況(人員)
区 分 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
児童福祉法(淫行) |
332 |
385 |
392 |
443 |
251 |
売春防止法 |
321 |
224 |
184 |
147 |
121 |
青保条例(淫行) |
2,781 |
2,493 |
2,583 |
2,521 |
1,334 |
(児童買春・児童ポルノ法)
338.児童買春・児童ポルノ法は、児童買春行為、児童買春の周旋・勧誘行為、児童ポルノを頒布し、販売し、又は公然陳列する等の行為、頒布等の目的で児童ポルノを製造し、所持し、又は輸出入する等の行為、児童買春の相手方とさせ、児童ポルノを製造する目的での児童を売買する行為、外国に居住する児童で売買等されたものを居住国外に移送した行為を処罰することとしている。なお、同法は、上記行為を日本国外で犯した日本国民についても、同様に処罰することとしている。
また、同法は、児童買春等の罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとの規定を置いている(第12条)。警察では、事情聴取に当たって、少年の特性に配慮することはもとより、犯罪の特性にも十分配意し、心身に有害な影響を受けた被害児童の精神的負担を和らげるような方法で行っている。具体的には、女性警察官等の適任者に担当させることはもとより、その際、必要に応じて、被害児童の心身の状況について専門職員の意見を聞きながら行ったり、事件の態様、被害児童の状況等を勘案して、女性職員を立ち会わせている。さらに、必要に応じて、事情聴取に先立ち又は事情聴取に並行して、少年の心理、生理その他少年の特性に関する知識や少年の取扱いに関する技術を有する少年相談専門職員、少年補導職員等によるカウンセリング等を実施している。捜査においては、児童の受けた心身への有害な影響やその精神状態等に十分配慮し、取調べ時間や取調べ回数等についても学業等にできるだけ支障を与えないように配慮しているほか、個々の事件や当該児童の特性に応じて、例えば、検察庁への来所について女性警察官や保護者に同行や送迎を依頼したり、女性検察官や女性検察事務官に取調べを担当させるなどの配慮を行っている。また、我が国は、2000年5月12日、「刑事訴訟法及び検察審査会の一部を改正する法律」を制定しているが、同法は、(イ)性犯罪の被害者や年少者等が、不安や緊張を和らげるため、法廷において、証人の証言中、適当な者を証人に付き添わせること(刑訴法第157条の2)、(ロ)被害者等が証言する際に、証人と被告人又は傍聴人との間に、遮へい措置を設けること(刑訴法157条の3)ができることとし、また、(ハ)ビデオリンク方式による証人尋問(刑訴法第157条の4)を導入したところ、このような規定を活用するなどして、公判においても、児童に対する配慮を行っていく。
なお、児童買春・児童ポルノ法による2000年中の検挙状況については、1155件、777人である。児童買春事件については985件、613人、児童ポルノ事件については170件、164人であり、そのうち、インターネット利用事犯が143件、85人である。
(児童虐待防止法)
339.性的虐待を含む児童虐待の相談件数が急増するなど児童虐待の問題が深刻化していることから、2000年11月より児童虐待防止法が施行され、児童虐待の早期発見・早期対応及び被虐待児童の適切な保護を促進する施策を推進している。
(相談体制の充実等)
340.児童の性的搾取の問題については、国内においても関心が高まっており、法務省の人権擁護機関もこれを人権上看過することのできない重大な問題としてとらえ、「子どもの人権相談所」、「子どもの人権110番」等を通じた相談体制の充実に努めている。
また、児童の性的搾取を認知した場合は、関係機関と連携しつつ、被害児童の救済を図るとともに、人権侵犯事件として調査し、関係者に人権尊重の思想を啓発するなどして問題の解決に向けて積極的に取り組んでいる。
(立入調査)
341.児童福祉法及び児童虐待防止法においては、児童相談所長が必要に応じ児童を一時保護することや、児童委員等をして児童の住所への立入調査をさせることができることが規定されている。
(関連国際法規)
342.我が国は、人身売買及び売春からの搾取の禁止に関する条約及び猥褻刊行物ノ流布及取引禁止ノ為ノ国際条約を締結している。
また、性的搾取及び性的虐待(第34条)及び売買、取引及び勧誘(第35条)関連の条約については、我が国は、児童の権利の保護・促進の観点から「児童売買、児童売春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書(仮称)」の締結に関する検討に努める。
更に、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(仮称)を補足する議定書であるいわゆる「人の密輸議定書(Protocol to Prevent,Suppress and Punish Trafficking in Persons, Especially Women and Children, supplementing the United Nations Convention against Transnational Organized Crime)」は、右条約とあいまって、特に女性及び児童をはじめとする人の密輸を防止し、これと戦い、また被害者を保護するため協力を促進することを目的として普遍的かつ効果的な法的枠組みを創設するものである。なかでも、児童に関しては、性的搾取、強制労働等の搾取を目的とした児童の募集、移送、蔵匿、収受はその手段にかかわらずいわゆる人の密輸に該当するものとして、成人の場合に比して広範な犯罪化を締約国に義務づけるなど、より手厚い保護を図る内容となっている。我が国は、右条約に関しては、2000年12月12日に署名し、必要な法整備を含めその締結準備作業を速やかに進めていくこととしているが、右議定書についても、その趣旨を踏まえ、今後、国内法との関係等必要な検討を進めている。
(被害児童の回復・復帰の確保)
343.虐待の被害を受け児童養護施設等への入所の措置がとられた児童については、虐待を受けた児童の心的外傷が著しく、心理療法等を必要とする場合については、心理療法担当職員による心理療法を実施するなど、児童の心身の状況に応じた対応を行っている。
(児童相談所における相談件数)
344.児童相談所に置ける児童虐待に関する相談処理件数は、1999年度は11,631件であり、そのうち性的虐待に関する相談は590件となっている。
また、児童買春、児童ポルノに係る行為等による被害を受けた児童であって、児童相談所において心理的カウンセリング等の指導を行った件数は、1999年11月から2000年12月までの間で210件となっている。
(第2回児童の商業的・性的搾取に反対する世界会議)
345.パラグラフ5.参照。
我が国は、本件会合に先立ち、児童の商業的性的搾取への取組を定める国内行動計画を策定し、外務省ホームページにて公表しているところである。
(d)売買、取引及び勧誘(第35条)
(d-1)児童の誘拐、売買、又は取引の防止のためにとられた措置
(立法措置等)
346.我が国は、人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約を締結しており、売春を目的とする人身売買に関し、同条約に掲げる違反行為について締約国間の捜査共助、司法共助、情報交換を行っている。また、国内法については、刑法では、営利、わいせつ目的での略取、誘拐及び国外移送目的での売買の罪を、1999年11月1日から施行された児童買春・児童ポルノ法では、児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は児童ポルノを製造させる目的で,当該児童を売買した者並びに右目的で,外国に居住する児童で略取され,誘拐され,又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民を処罰することとしている。これらの違反行為と同様な犯罪についても、外国との間で捜査共助、司法共助、情報交換を行っているところである。
また、児童福祉法第34条においては、児童に対し刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に児童を引き渡す行為を禁止している。
(当局に対する研修)
347.検察官に対しては、「児童買春法の制定並びに児童及び女性に対する配慮について」などのテーマとした研修を実施した。
(d-2)児童売買防止のための二国間及び多国間の国際的約束
348.パラグラフ342.参照。
(e)他の形態の搾取(第36条)
(少年に対する暴力団等の影響の排除)
349.前記の通り、我が国では、児童福祉法第34条において、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為を禁じている。
更に、我が国では、第1回政府報告パラグラフ302のとおり、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)において、暴力団員による少年に対する加入強要等の行為を禁止すること等を規定している。
これらの規定を適用して、例えば、15歳の少年に指定暴力団への加入を強要した指定暴力団員に対する中止命令(2000年2月:北海道)や指定暴力団からの脱退を申し入れた16歳の少年に妨害行為をした指定暴力団員に対する中止命令(2000年7月:熊本県)等を実施しており、暴力団からの少年の保護を図っている。
(資料)1996年~2000年までの暴力団対策法に基づく中止命令等発出件数
区 分 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
少年に対する加入・強要、脱退妨害 |
58 |
36 |
53 |
51 |
50 |
少年に対する入れ墨の強要等 |
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|
|
2 |
2000年中に暴力団等が関与する福祉犯の被害者となった少年は967人で、福祉犯被害少年総数の11.7%を占めており、暴力団等が少年に対する薬物の密売や少女の売買春等悪質性の高い事案に関与している実態がみられる。
警察では、暴力団等が関与する福祉犯等の取締りに努めるとともに、少年の暴力団員の離脱の促進や加入の阻止等、少年に対する暴力団等の影響の排除に努めている。
|