外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外交政策 人権・人道
人権・人道
B.少年司法の運営の制度に係わっている児童

(a)少年司法の運営(第40条)

(a-1)少年司法の運営の制度に係る児童の権利を認め、確保するための措置

少年に対する取調べ

294.少年の取調べに当たっては、非行(犯罪)事実を明らかにするだけでなく、少年の性格の矯正及び環境の調整に係る事実(要保護性)を明らかにしなければならないことから、常に非行事実と要保護性を明らかにするよう心がけている。また、取調べの際には、時間、場所、言動等についても十分に配意している。

少年の年齢への配慮

295.我が国においては、少年法上、20歳未満の者を「少年」として取り扱っている。少年が罪を犯した場合については、以下のとおり少年法等により成人(20歳以上の者)とは異なる手続を定め又は措置を講ずることにより、その年齢を考慮し、将来社会において建設的な役割を担うことを促進するものとしている。なお、我が国の刑法は、14歳未満の者の行為は罰しない旨定めており、14歳未満の者は、原則として、児童福祉法に基づき、児童自立支援施設や児童養護施設への入所等の措置がとられることとなっている。

(i)一般に、少年は、人格が未熟である反面、可塑性に富んでいるので、罪を犯した少年に対しては、刑罰による非難を加えるよりも、保護、教育を行うことが少年の健全育成に役立つと考えられている。そのため、我が国では、少年が罪を犯した場合等には、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整を図るとの観点から、これらの少年事件は、すべて家庭裁判所に送致、通告される。

(ii)家庭裁判所は、非行事実の有無について判断するなど司法的機能を有するとともに、再非行防止の観点から、人間関係諸科学の専門家である家裁調査官に命じて、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について医学、心理学、教育学、社会学等の専門知識を活用して調査を行わせ、非行の原因、再非行予防のための諸要素に関する要保護性の判断を適切に行うなど福祉的機能を有している。そして、この二つの機能を十分に生かすためには、刑事手続のような対立構造は好ましくなく、関係者の協力を得て、裁判官が直接少年に対し語りかけ、教育的な働きかけを行うことのできる非形式的な審問構造の方がふさわしいことから、少年審判手続では、家庭裁判所が自ら事件を調査し、審問を行い、少年にとって最も適切、妥当な措置をとり又は処遇を決定する職権主義的審問構造を採用している。

(iii)もっとも、少年審判においても、的確に非行事実が認定され、事案が解明されることは、非行のある少年に対し適切な保護処分を施し、その健全な育成を図るという少年司法本来の目的を実現する上で不可欠である。一方、非行のない少年についてこれを誤って処分することがないようにすることが、裁判制度の在り方からも、少年の利益のためにも肝要である。そこで、少年法等の一部を改正する法律においては、基本的に従前からの構造を維持しつつ、事実認定手続の一層の適正化を図るための諸手続が導入された。具体的には、従前の少年審判手続においては、裁判官の単独体で審理することとされていたところ、近時、少年事件においても、複雑、困難な事案が見られるようになっていることから、事案に応じて合議体で取り扱い、多角的な視点を踏まえた審理判断を行うことを制度上可能とすることが適当であることから、少年審判について、裁定合議制度が導入された(改正裁判所法第31条の4第2項第1号)。また、非行事実の認定上問題がある一定の事件については、証拠の収集、吟味における多角的視点の確保や裁判官と少年側との対峙状況を回避させる必要があり、また、事実認定手続を一層適正化することによって、少年審判における事実認定手続に対する被害者をはじめとする国民の信頼を確保する必要があるという見地から、少年審判に検察官が関与することとされた。すなわち、一定の重大な犯罪につき、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、家庭裁判所は、検察官関与を決定することができ、その場合、検察官は、非行事実の認定に資するために必要な限度で、審判の手続への立会い等ができることとされた(改正少年法第22条の2)。なお、少年審判に関与する検察官は、訴追官又は原告官として関与するのではなく、家庭裁判所の手続主宰権に服しつつ、公益の代表者の立場から的確に事実認定が行われるよう審判の遂行に協力する審判協力者としての立場で関与するものであり、職権主義的審問構造は改正後も維持されている。また、検察官が少年審判の手続に関与する場合には、それとの均衡上、少年の利益を守る立場にある弁護士である付添人が付されていることが適当であることから、その場合において、少年に弁護士である付添人がないときには、家庭裁判所が職権で弁護士である付添人を付することとされた(改正少年法第22条の3)。
 さらに、少年の再非行を防止し、その健全な育成を図るためには、少年を保護処分に付するだけでなく、少年の保護者にその責任を自覚させ、少年の改善更生に向けた努力をさせることも重要であることから、少年法等の一部を改正する法律においては、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、保護者に対し、少年の監護に関する責任を自覚させ、その非行を防止するため、調査又は審判において、自ら訓戒、指導その他の適当な措置をとり、又は家庭裁判所調査官に命じてこれらの措置をとらせることができることとした(改正少年法第25条の2)。

(iv)上記のように、全ての事件を家庭裁判所に集中させるため、まず家庭裁判所が、保護処分に適するか否かを判定することになる。この点につき、改正前の少年法においては、家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、送致時に16歳以上の少年についてのみ、検察官に送致し、成人と同様の刑事手続に移行することとされていた。
 しかし、近年、年少少年による凶悪重大事件が多発していることにかんがみ、14歳以上16歳未満の少年であっても、罪を犯せば処罰されることがあることを明示することにより、社会生活における責任を自覚させ、その健全な成長を図る必要があることから、少年法の改正により、刑事処分可能年齢を刑事責任年齢に一致させて、その下限を14歳まで引き下げることとされた(改正少年法第20条第1項)。また、殺人、強盗殺人、強姦致死等、故意の犯罪行為によって人を死亡させる罪を犯した場合には、その反社会性、反倫理性の高さにかんがみ、少年であっても刑事処分の対象となるという原則を明示することが、少年の規範意識を育て、健全な成長を図る上で重要なことであると考えられることから、少年法の改正により、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては、検察官に送致する決定をしなければならないと定め、この種の事件については、検察官送致決定を行うことを原則とすることとされた。ただし、この種の事件においても、家庭裁判所の調査の結果、犯行の動機、及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、検察官送致決定を行わないことができることとされており、個々の事件の性質や少年の特性等を考慮して、保護処分に付することも可能とされている(改正少年法第20条第2項)。
 また、刑事手続に移行し、刑に処せられる場合でも、少年の特性を考慮し、18歳未満の児童に対する死刑・無期刑の緩和、収容時の成人との分離、仮出獄を許可するまでの期間の短縮等種々の特例が認められているほか、少年に対し、罰金が言渡された場合、換刑処分としての労役場留置は禁止されている。

児童の社会復帰及び社会での建設的な役割を担うことが促進されることの配慮

296.第1回政府報告パラグラフ257から260に述べたとおり、矯正施設においては、少年の健全な育成の内容として人の尊厳及び価値を尊重する意識の促進、他者の人権及び基本的自由を尊重する意識の強化を十分に考慮に入れ、少年の年齢に応じた処遇や少年が社会復帰し、社会での建設的な役割を担うことが促進されるよう配慮した処遇を実施している。
 少年が社会復帰し、社会での建設的な役割を担うことが促進されるようにするため、第1回政府報告以後、少年刑務所における職業訓練の充実が更に図られており、フォークリフト訓練等の種目が増加されている。また、少年院における職業補導も積極的に実施されており、2000年中の少年院出院者5,484人のうち、1,817人が各種の職業補導の種目に関する資格、免許を取得している。また、少年院では教科教育も積極的に行われており、2000年中に中学校の修了証明書を授与された者は256人となっている。
 少年法の改正により刑事処分可能年齢が14歳以上とされ、14歳以上であれば、保護処分だけでなく、刑事罰を科することができることとなったが、併せて懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年は16歳に達するまで、少年院に収容して矯正教育を授けることができることとされた(少年法第56条第3項)。少年院において刑の執行を受ける少年に関しては、児童の権利に関する条約の趣旨も踏まえ、義務教育未修了者については義務教育を、また、医療的な手当てが必要な者については医師の管理の下での治療的処遇を優先して行い、加えて、非行の重大性を認識させ、罪の意識の覚せいを図ること、生命の尊さを認識させ豊かな人間性をかん養すること、及び、共感性・思いやりの気持ちを育成することに重点を置いた生活指導を徹底して行うこととしている。
 また、少年刑務所に収容された少年についても、その心身の発達・成長段階にかんがみると、いまだ可塑性に富んだ存在であり、的確な働き掛けを行うことによって改善更生を図れる可能性が高いことから、犯罪行為に至った問題性を分析して明確化し、個々の少年の特性に応じた個別的な処遇計画を作成し、人の尊厳及び価値を尊重する意識の促進、他者の人権及び基本的自由を尊重する意識の強化等の目標を設定し、計画的に処遇を実施していくとする新たな施策を導入した。その処遇の内容としては、個別面接、日記指導等の個別指導、各種処遇技法を用いた処遇類型別指導その他の指導、被害者の痛みを理解させ、罪障感の覚せいを図る指導等、指導内容や方法の面でできる限り多様化を図るとともに、少年の年齢を考慮し、少年が出所後社会での建設的な役割を担うことが促進されるよう、特に教育活動の充実を図るとともに職業訓練の受講を督励することとしている。
 さらに、少年鑑別所及び拘置所においては、鑑別の実施や拘禁の目的等に支障が生じない範囲で自習時間の確保、学習図書や教材の整備、少年が在籍する学校の教員との面会に関する配慮など義務教育年齢にある少年の学習機会の付与について配慮することとしている。
 なお、第1回政府報告パラグラフ261参照。

(a-2)少年司法分野で適用可能な関連国際文書および第40条2を確保するための立法その他の措置

国際文書関連規定

297.条約40条2にいう「国際文書の関連規定」とは、市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)、少年司法の運用のための国際連合最低基準規則(いわゆる「北京規則」)、少年非行の防止に関する国連ガイドライン(いわゆる「リャド・ガイドライン」)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(いわゆる「1990年規則」)の中の罪を犯した者の取り扱いに関する規定をいうものと考える。

少年法における抗告・再抗告

298.第1回政府報告パラグラフ268参照。
 なお、少年法の改正により、検察官関与決定があった事件について、家庭裁判所の決定に重大な事実誤認等があることを理由として、検察官は、抗告受理の申立てができ、高等裁判所は、抗告審として事件を受理するのを相当と認めるときは、これを受理することができるとされた(改正少年法第32条の4)。
 また、改正前の少年法においては、保護処分決定が確定した後であっても、保護処分の継続中は、本人に対し審判権がなかったにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、その保護処分を取り消すとしていたが、少年法の改正においては、さらに、保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁判所は、決定をもってその保護処分を取り消さなければならないとされた(改正少年法第27条の2第2項)。

罪の告知

299.罪の告知については、刑事訴訟法が、公訴の提起は公訴事実及び罪名等を記載した起訴状を提出してこれをしなければならない旨規定している(同法第256条)ほか、裁判所は公訴の提起があったときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならないと規定している(同法第271条第1項)ことから、被告人は起訴状の送達を受けることにより、いかなる犯罪事実により訴追されているのかを知ることができる。
 少年審判手続きにおいては、少年審判規則が少年鑑別所送致決定手続及び第一回の審判期日の冒頭において、少年に対し、審判に付すべき事由の要旨を告げなければならない旨規定しており(同規則第19条の3、第29条の2)、また、審判開始前の家庭裁判所調査官による調査の段階でも審判に付すべき事由の告知を行う運用が定着している。

不利益供述の強要の禁止

300.第1回政府報告パラグラフ266参照。
 少年審判規則は、裁判官に少年鑑別所送致決定手続及び第一回の審判期日の冒頭において、少年に対し、供述を強いられることはないことを分かりやすく説明することを義務づけている(同規則第19条の3、第29条の2)。

証人尋問権、反対尋問権

301.刑事訴訟手続については、憲法第37条第2項が「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を十分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と規定しており、これを受けて刑事訴訟法は、被告人又は弁護人の証人尋問請求権、証人尋問の立会権及び証人尋問権を保障するとともに、反対尋問を経ない供述調書の証拠能力を制限している。
 少年法は、刑事訴訟法中の証人尋問に関する規定は保護事件の性質に反しない限り、少年審判にも準用される旨定めており、少年審判においても少年の証人尋問権及び反対尋問権は十分保障されている。
 また、証人出席を求めること等について、少年法は職権主義的審問構造(パラグラフ295.(ii)参照)をとっていることから、少年及び付添人からの直接的な証人尋問請求権に関する規定はないが、少年、保護者及び付添人は家庭裁判所に証人尋問等証拠調べの申出をすることができる(規則第29条の3)上、一定の場合には家庭裁判所に職権証拠調義務が生じ、裁判官が合理的な理由なく証人を尋問せず、それが保護処分の決定に影響を及ぼす場合には抗告理由となる。

(a-3)刑法を犯したと申し立てられ、訴追される等した児童に特別適用される法律等の制定

302.刑事責任能力については、前記のとおり、刑法で満14歳以上と明記している。
 刑事手続ではない少年審判手続については、パラグラフ294.295.記載のとおり。

(a-4)保護、指導等

303.第1回政府報告パラグラフ261参照。

(a-5)専門家に対する条約及び北京ルール等を含む関連国際文書に関する研修

304.パラグラフ44.から52.参照。

(a-6)進捗状況、問題点等

305.パラグラフ295.参照。
 なお、児童の権利条約40条2項(b)(vi)について、参考となる資料は以下のとおり。

(資料)一般事件終局人員国籍別通訳人・翻訳人別
 
国籍
通訳人・
翻訳人の有無
総数 アメリカ ヴィエトナム 韓国・朝鮮 コロンビア タイ 中国 フィリピン ブラジル ペルー その他
1996 総数 1,090 16 30 729 18 9 146 23 52 17 50
  913 13 17 722 2 2 79 20 14 8 36
177 3 13 7 16 7 67 3 38 9 14
1997 総数 1,404 29 26 778 34 12 305 32 105 17 66
  1,085 21 15 769 9 6 146 25 37 10 47
319 8 11 9 25 6 159 7 68 7 19
1998 総数 1,437 14 26 787 8 13 290 49 160 23 67
  1,092 8 15 771 6 6 150 30 47 12 47
345 6 11 16 2 7 140 19 113 11 20
1999 総数 1,368 14 38 710 9 6 291 41 178 24 57
  1,006 9 23 697 1 4 128 36 60 12 36
362 5 15 13 8 2 163 5 118 12 21
2000 総数 1,219 16 28 619 10 11 172 47 220 36 60
  934 10 22 613 4 6 110 41 76 14 38
285 6 6 6 6 5 62 6 144 22 22

(b)あらゆる形態の抑留、拘禁又は保護収容を含む自由を奪われた児童(第37条(b)、(c)及び(d))

(b-1)抑留・拘禁、保護収容

捜査段階の身柄拘束

306.第1回政府報告書パラグラフ274、275参照。
 また、捜査段階の少年の身柄拘束については、やむを得ない場合でなければ勾留することはできず、勾留する場合には少年鑑別所を勾留場所とすることができ、勾留に代えて観護措置をとることができるなど、少年の特質が考慮されている。
 少年の保護手続においては、少年を少年鑑別所に収容する観護措置は、家庭裁判所の決定によることとされている。その期間は原則として2週間であり、2週間ごとに更新することが可能であるが、どんなに複雑な事件でも、その収容期間は通じて8週間を超えることはできないとされている(改正少年法第17条)。
 なお、改正前の少年法においては、観護措置期間は最長4週間とされていた。しかしながら、少年事件においても、多数の証拠調べが必要であるなど相当の審理日数を要する事件があり、そのような審理を最長4週間の期間内で終えることは極めて困難である。そのような場合には、従前の制度では,やむを得ず身柄を釈放して審理を続けることになるが、少年が逃亡したり、自殺自傷行為等に及ぶこともあり得るところである。そのような事態を防止しつつ、的確な事実認定を行い、少年に最もふさわしい処遇を決定するためには観護措置期間を延長する必要があると考えられた。そこで、少年法の改正においては、観護措置期間を最長8週間まで延長できることとされた。他方、従前の観護措置に対しては異議申立制度が存しなかったところ、このように、観護措置期間が延長されることに伴って、少年の身柄拘束の判断を一層適正ならしめるため、少年法の改正においては、併せて、観護措置決定及び更新決定について、異議申立て制度が新設された。なお、これについては、少年、その法定代理人又は付添人が、家庭裁判所に対してすることができる(改正少年法第17条の2)(第1回政府報告パラグラフ279及びパラグラフ280参考)。

拘禁

307.第1回政府報告書パラグラフ274、277参照。
 また、少年院及び少年刑務所に収容されている少年の収容の定期的な見直しを行い、最も適当な期間のみ拘禁の手段を用いるための制度として、懲役又は禁錮受刑者として少年刑務所に収容されている者に対して仮出獄の制度があり、少年院収容中の者に対して仮退院の制度がある。これらの制度は収容されている少年の改善更生と健全な社会復帰を目的としている。
 2000年の少年院の仮退院者の平均収容期間は、問題性が単純又は比較的軽い少年を対象とした一般短期処遇においては148日、問題性が上記の少年よりも進んでおらず、開放的な環境で処遇するのに適した少年を対象とした特修短期処遇においては80日、短期処遇では矯正教育の効果を十分にあげることのできない少年を対象とした長期処遇においては380日となっている。

(b-2)自由の剥奪に代わって執られる既存の措置(含む統計)

(資料)一般保護事件の終局総人員の観護措置の有無別人員
年次 総 数 観 護 措 置
あり なし
1994 203,217 14,249 188,968
1995 188,409 13,865 174,544
1996 188,683 14,739 173,944
1997 204,824 16,839 187,985
1998 214,304 18,865 195,439
1999 78,186 15,939 62,247
2000 76,737 18,072 58,665
*1999年以降は、一般保護事件から車両運転による業務上(重)過失致死傷事件及 び簡易送致事件及び移送・回付又は併合された事件を除いている。

(資料)終局決定別既済人員(補足説明-家庭裁判所は審判を経た場合,不処分,知事・児童相談所長送致,検察官送致,保護処分の終局決定を行う。保護処分のうち,少年院送致は少年の自由を拘束するものであるが,その他に,保護観察及び児童自立支援施設又は児童養護施設送致がある。)
  総 数 検察官へ送致 保護処分
総数 刑事処分
相当
年令超過 総数 保護観察 児童自立
支援施設
等への
送致
少年院
送致
1994 少年総数 328,083 21,926 16,256 5,670 58,308 53,989 255 4,064
一般保護 203,217 4,038 1,520 2,518 26,076 22,140 254 3,682
道路交通 124,866 17,888 14,736 3,152 32,232 31,849 1 382
1995 少年総数 297,007 17,324 12,648 4,676 55,473 51,314 268 3,891
一般保護 188,409 3,672 1,321 2,351 26,004 22,181 268 3,555
道路交通 108,598 13,652 11,327 2,325 29,469 29,133 0 336
1996 少年総数 295,296 16,343 12,009 4,334 56,092 51,522 270 4,300
一般保護 188,683 3,320 1,182 2,138 26,477 22,349 268 3,860
道路交通 106,613 13,023 10,827 2,196 29,615 29,173 2 440
1997 少年総数 313,093 16,278 11,850 4,428 59,648 54,277 289 5,082
一般保護 204,824 3,095 1,055 2,040 28,661 23,763 288 4,610
道路交通 108,269 13,183 10,795 2,388 30,987 30,514 1 472
1998 少年総数 319,298 15,714 11,218 4,496 60,373 54,545 343 5,485
一般保護 214,304 3,120 1,040 2,080 30,221 24,855 343 5,023
道路交通 104,994 12,594 10,178 2,416 30,152 29,690 0 462
1999 少年総数 302,937 14,977 10,631 4,346 59,936 54,022 337 5,577
一般保護 201,872 2,948 917 2,031 29,825 24,452 337 5,036
道路交通 101,065 12,029 9,714 2,315 30,111 29,570 0 541
2000 少年総数 284,998 14,072 9,665 4,407 58,176 51,635 380 6,161
一般保護 197,223 3,240 1,034 2,206 32,650 26,653 377 5,620
道路交通 87,775 10,832 8,631 2,201 25,526 24,982 3 541
    児童相談
所長等送致
不処分 不開始 移送・回付・
併合された事件
1994 少年総数 170 88,122 124,374 35,183
一般保護 169 44,508 106,449 21,977
道路交通 1 43,614 17,925 13,206
1995 少年総数 151 78,033 114,800 31,226
一般保護 151 39,895 98,696 19,991
道路交通 0 38,138 16,104 11,235
1996 少年総数 155 74,617 117,085 31,004
一般保護 155 37,848 101,431 19,452
道路交通 0 36,769 15,654 11,552
1997 少年総数 146 72,553 132,139 32,329
一般保護 145 36,196 116,180 20,547
道路交通 1 36,357 15,959 11,782
1998 少年総数 170 71,095 138,063 33,883
一般保護 168 36,883 121,881 22,031
道路交通 2 34,212 16,182 11,852
1999 少年総数 175 66,911 127,625 33,313
一般保護 175 36,464 111,082 21,378
道路交通 0 30,447 16,543 11,935
2000 少年総数 193 61,908 116,513 34,136
一般保護 191 36,913 100,770 23,459
道路交通 2 24,995 15,743 10,677

(b-3)不法に恣意的に及び合法的に自由を剥奪された児童数等の関連統計

308.「不法に恣意的に自由を剥奪された児童」に該当する例はない。
 合法的に自由をはく奪された児童数等の統計は以下のとおりである。

(資料)少年鑑別所1日平均収容人数
年次 総計
1996 873 120 993
1997 1,026 138 1,164
1998 1,119 147 1,267
1999 1,181 140 1,321
2000 1,309 164 1,473

(資料)少年院1日平均収容人数
年次 総計
1996 2,576 369 2,945
1997 2,977 381 3,358
1998 3,509 407 3,916
1999 3,784 414 4,198
2000 4,052 476 4,528

(資料)少年受刑者1日平均収容人数
年次
1996 21 0
1997 25 1
1998 17 0
1999 23 0
2000 25 1
*少年受刑者とは、少年法の適用を受け、同法56条の規定により、行刑施設に収容されている者をいう。

・一般保護事件終局人員観護措置有無別人数及び少年保護事件の終局決定別既済人数については、(b-2)参照。

(b-4)自由を剥奪された児童が以下の取扱いを受けることの確保

矯正施設における処遇

309.矯正施設に収容されている少年が、非人道的な取扱いを受けないことが確保されていることは、第1回政府報告パラグラフ107から110で述べたとおりであり、また、矯正施設においては、少年の健全な育成を期するとする少年法の目的に沿って、人の尊厳及び価値を尊重する意識の促進、他者の人権及び基本的自由を尊重する意識の強化を考慮に入れ、少年の年齢に応じた処遇を実施している(第1回政府報告パラグラフ277参照)。

矯正施設の監督・モニター、不服申立手続

310.第1回政府報告の審査後に児童の権利に関する委員会で採択された最終見解では監視及び不服申立手続について注意が払われるべきである旨勧告されているが(パラグラフ48)、矯正施設に収容されている少年の処遇の状況を監視し、矯正施設の適正な管理運営を図るための制度として、法務本省(矯正局)が全国の矯正施設を対象として実施する巡閲・監査があり、また、各矯正管区が管轄区域内の矯正施設を対象として実施する管区監察がある。いずれも当該官庁の幹部職員が施設を監査し、処遇の状況を監視するとともに、適切な指導を行うものであり、これらの巡閲・監査及び管区監察の結果は,前者の場合は法務大臣に、後者の場合は法務省矯正局長にそれぞれ報告され、改善すべき事項として指摘されたものについては、速やかに改善されている。
 不服申立てに関し、矯正施設に収容されている少年は、請願、人権侵犯申告等の行政上の救済手段、民事訴訟、刑事上の告訴・告発等の司法上の救済手段を利用することができる。
 さらに、少年院では、院長は在院者から処遇又は一身上の事情に関する申立を聴くため、随時在院者に面接するよう努めなければならないとされており(少年院処遇規則第4条)、この面接の際、少年は処遇等に関して不服を申し立てることができる。さらに、少年院では担当教官が親身になって少年と接し、常日頃から個々の少年の心情の把握に努めていることから,少年は気兼ねなく担当教官に相談し、意見を自由に申し出ることができる。
 行刑施設では、所長に対し処遇一般又は一身上の事情について面接する機会が与えられており(監獄法施行規則第9条)、この面接の際に不服を申し立てることができる。また、施設の処置について不服がある場合は、法務大臣又は巡閲官吏に対して不服を申し立てることができる情願制度がある(監獄法第7条)。
 少年鑑別所については、収容期間が比較的短期間であるため、関係法令には、当該少年に対する施設の処遇上の不服の申し出を処理するための制度は設けられていないが、運用上、職員との自由な相談、意見・不服の申し出の機会の付与、生活及び処遇内容への少年の意見の反映等について実務上少年院と同様の配慮をしている。

(b-5)児童の状況等に関する定期的見直し。

311.パラグラフ196.参照。 教育及び保健サービスの提供。

312.教育設備に関して、少年院においては、中学校教育、高等学校教育及び大学入学資格検定受験指導等の学科教育を行うための教室、教科書等の図書及び各種の備品・文房具、職業能力を高め、職業資格を取得させるための実習用教室、各種機械及び車両、実習用の素材及び工具、学校教育を支援し、職業資格を取得するためのコンピュータ機材及び専用教室等を備えている。少年鑑別所においても、在所者の学習機会を保障する一環として学習用のコンピュータを全庁に整備中である。
 少年刑務所においては、教育活動として、教科教育、通信教育、生活指導等のほか、覚せい剤事犯者、暴力団関係受刑者等個々の受刑者の特性や問題性に着目した類型別指導などを実施しており、そのための教室、教科書等の図書及び各種の備品・文房具を備えているほか、被収容者に公の免許若しくは資格を取得させ、又は職業的知識及び技能を習得させるための職業訓練を積極的に実施しており、そのための訓練場、機械設備等も備えている。
 医療体制に関して、少年院及び少年鑑別所においては常勤医師又は非常勤医師を配置し、初期診療に必要な医療設備を整備の上、治療等に当たることとしているが、少年院に収容される少年のうち、専門的な医療の対象となる者は、複数の常勤医師が配置され、治療や検査に必要な医療機器を整備した医療少年院に収容し、治療等を実施することとしている。また、救急疾患等については、外部の医療機関で治療等を行うこととしている。
 少年刑務所においても、常勤医師又は非常勤の医師を配置し、被収容者からの申し立てがあった場合には、その症状等を見極めた上で適切な処置を行っている。また、専門的な医療を要する者及び長期の療養を要する者については、集中的な医療を施す医療刑務所等に収容し、治療等を実施することとしている。また、必要な場合には外部の専門医療機関に通院又は入院させる等万全の医療体制を整えている。

(b-7)自由を奪われた全ての児童について、以下の権利の確保)

313.矯正施設における弁護人又は付添人との面会の権利の保障については、第1回政府報告パラグラフ279で述べたとおりであるが、さらに、いずれの矯正施設においても、弁護人又は付添人との面会が訴訟手続等において果たす重要な役割にかんがみ、休庁日であっても、一定の条件で認めることとしている。

(b-8)法的その他の援助が供与された事例及び自由の剥奪の合法性が確認された事例の全体の状況に関する情報。割合等に関する統計

(資料)保護処分決定等に対する抗告人員
年次 保護処分決定総数
(少年院送致決定数)
抗 告
人員 比率(%)
1994 58,308(4,064) 392 0.7(9.6)
1995 55,473(3,891) 372 0.7(9.6)
1996 56,092(4,300) 452 0.8(10.5)
1997 59,648(5,082) 565 0.9(11.1)
1998 60,373(5,485) 604 1.0(11.0)
1999 59,936(5,577) 661 1.1(11.9)
2000 58,176(6,161) 792 1.4(12.9)
*比率の( )内は、抗告人員の少年院送致決定総数に対する比率を示したものである。
*準少年保護事件の決定に対する抗告が含まれている。

(c)少年に対する判決、特に死刑及び終身刑の禁止(第37条(a))

314.改正少年法第51条第1項は、「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。」とし、同条第2項は、「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、10年以上15年以下において言い渡す。」と規定している。さらに、同法第58条は、前記第51条第1項の場合、すなわち、犯行時18歳未満の者に対して死刑をもって処断すべきときに無期刑を科する場合を除き、無期刑については、言渡しのとき、20歳未満であれば7年の経過で仮出獄を可能としている。第51条第1項の場合及び言渡し時20歳以上の場合は、10年の経過により仮出獄が可能とされている。このように、我が国の少年司法上18歳未満の者について、死刑又は釈放の可能性がない終身刑が科されることはない。
 なお、改正前の少年法第51条は、「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科し、無期刑をもつて処断すべきときは10年以上15年以下において、懲役又は禁錮を科する。」と規定し、無期刑についても、言渡しのとき、20歳未満であれば7年の経過で、20歳以上であれば10年の経過により仮出獄が可能とされていた。しかし、前記少年法改正により、無期刑を科すか有期刑を科すかを、裁判所が選択できることとされた。また、犯行時18歳未満の者に対して死刑をもって処断すべきときに無期刑を科する場合に、更に仮出獄期間についても緩和することとすると、いわば二重に刑の緩和をすることにより、本来死刑に処すべき者が相当短期間で社会復帰をする可能性を認めることとなって、罪刑の均衡、被害者感情、国民感情の点からも、適当ではないと考えられるので、死刑を緩和して無期刑とした場合には、仮出獄期間の特則は適用しないこととした。

(d)児童の身体的及び心理的な回復及び社会復帰(第39条)

被害少年の保護

315.警察では、1999年4月、少年の保護対策の充実強化を図るため、警察庁少年課に少年保護対策室を設置し、同室が中心となって被害少年の保護に関する業務を行っている。
 また、犯罪等の被害を受けた少年等を対象に、都道府県警察に設置された少年サポートセンターを中心として、少年相談専門職員、少年補導職員等によるカウンセリング活動や、保護者、関係者等と連携した継続的な支援活動を推進している。
 警察では、家出人の発見・保護活動を行っており、生命又は身体に対する危険や福祉犯罪の被害に遭うおそれのある家出少年については、特にその迅速な発見・保護に努めている。特に、少年が精神的に不安定になる進学・就職時期や開放感が強くなる夏休みなど少年の家出の増加が予想される時期には、家出少年を重点として発見保護活動を強化している。

(資料)警察が発見保護した家出少年
区  分 1996 1997 1998 1999 2000
警察が発見した家出少年 26,139 27,649 26,957 25,372 27,159

児童福祉法等に基づくケア

316.刑罰法令に触れた児童に対しては、児童福祉法等に基づき、その児童の状態に応じて、児童自立支援施設などでケアを行い、児童の身体及び心理的な回復等を図っている。

BACK / FORWARD / 目次

外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省