L.条約の広報
(a)条約の広報
(各国の言語等への翻訳及び在日外国人の多くが使用する言語への翻訳)
41.従前より、日本語及び英語によりリーフレットの作成を行っている。また、仏、西、露、中、アラビア、ポルトガル語、韓国語、タイ語、タガログ語、ベトナム語条約全文を在日外国人からの希望に応じ提供できるようにしている。
条約の広報は極めて有益であり、これまで行った広報活動の反響や条約の周知の程度を勘案の上、今後も引き続き条約の趣旨、内容、正しい理解等の普及に努めていく予定である。
(ホームページ等による広報)
42.外務省ホームページ(日本語・英語版共)において、児童の権利条約に関するページを設け、児童の権利条約(全文)、第1回政府報告書、同報告書に対する児童の権利委員会の質問及びこれに対する政府の回答並びに条約の最終見解をはじめ、シンポジウム等など各種関連文書を掲載しており、容易な閲覧及びダウンロードを可能にしている。なお、ホームページへのアクセス件数(ページビュー)は2000年4月から2001年3月までに167,884件(うち日本語ホームページへのアクセスは153,896件)である。
また、外務省情報FAXサービス(MOFAX)においても同様の広報を行っているほか、外務省が編集協力している各種出版物や、講演会等において、この条約の紹介・知識普及に努めている。
(学校教育のカリキュラムへの反映)
43.学校においては、この条約等人権に関する国際法の意義と役割、基本的人権の尊重、児童の成長や人間形成について指導することとなっている。1998に告示した学習指導要領においても、児童の権利条約にも留意し、学校の教育活動全体を通じて人権に配慮した教育を行うことを一層推進することとしたところである。教職員を対象とする研修においても、児童の権利に関する条約に関する講座を含む、人権に関する内容を盛り込んでおり、その充実に努めているところである。
(b)児童と係わる公務員等への条約に関する教育
(教員)
44.教員の研修については、各都道府県市において、初任者研修をはじめ、経験年数に応じて行われる教職経験者研修等の機会に人権や生徒指導に係る研修を実施しているところである。
国レベルの研修を一元的、総合的に実施する独立行政法人教員研修センターにおいても、各都道府県市において中心的役割を果たすことが期待される教員を対象とした研修で人権に関する内容を盛り込んでいるほか、生徒指導、教育相談の理論及び実際について実践的な研修が行われている。
(警察官)
45.警察官に対しては、警察学校において、新たに採用された警察官や昇任する警察官に対し、少年の保護活動等に関する教育を行っているほか、少年警察活動に従事する警察官や少年補導職員等に対し、児童の権利の擁護に配意した適正な職務執行を期するための専門的な教育を行っている。
また、職場における教養において、警察官等に対して、児童の権利擁護に関する教育を行っている。
(矯正施設職員)
46.第1回政府報告の審査後に児童の権利に関する委員会で採択された最終見解では児童の権利に関する訓練について勧告されているが(パラグラフ33)、矯正施設の職員に対しては、矯正研修所及びその支所における各種研修プログラムの中で、児童の権利に関する条約を含む被収容者の人権に関する国際準則の内容についての研修を実施している。例えば、上級幹部職員となるために必要な教育訓練の中で外部講師及び法務省(矯正局)職員により児童の権利に関する条約等を含む国連文書に関する研修を実施し、本条約の趣旨、内容についての周知徹底を図っている。
(人権擁護行政に携わる職員)
47.人権擁護行政に携わる公務員の研修として、法務省では、全国の法務局及び地方法務局職員に対し、本省において人権に関する専門科研修を毎年実施しており、カリキュラムの中に児童の人権に関する科目を設け、児童の権利条約に関する講義を行う他、研修員が講演者となり、児童の人権をテーマとして模擬講演等を行っている。また、全国の法務局及び地方法務局においても、人権擁護行政に携わる職員を対象として、人権実務研修を実施しており、その中で本条約を始めとする児童の人権に関する講義が行われている。この他、法務省では、地方公共団体の人権啓発担当部局の職員に対し、人権啓発指導者養成研修会等を実施しており、児童の人権及び本条約についての講義を行っている。
(入管職員)
48.各種職員研修において、児童の権利条約等を含めた人権関係条約について講義を実施した。
(保護観察官)
49.更生保護行政の基本法である犯罪者予防更生法第2条において、「更生の措置は、本人の改善及び更生のために必要且つ相当な限度において行うものとし、その実施に当っては、本人の年齢、経歴、心身の状況、家庭、交友その他の環境等を充分に考慮して、その者にもっともふさわしい方法を採らなければならない」と定められており、従来から少年の保護観察に当たっている保護観察官に対しては、本条の基準を遵守するよう徹底を図っている。
特に、新任保護観察官に対しては、保護観察官中等科研修において、本条の趣旨についての理解を深めるとともに、児童相談センターへの実地実習により、少年の保護や福祉について学ぶ機会を設けている。また、少年等の発育に関するカリキュラムを設けているほか、カウンセリングのカリキュラムも設定し、保護観察を受けている少年の意思表明を促すこと、その意思を相応に考慮することの重要性について学ぶ機会を設けている。保護観察官に対し提供された少年等の発育に関するコースの時間数は、保護観察官中等科研修において6時間。
(裁判官等)
50.裁判官については、最高裁判所において、条約の批准に際し、通知「児童の権利に関する条約の公布及び効力の発生について」を高等裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所あてに発出するなどして、裁判官等の関係者に対する周知を図っているほか、各種研修において、少年事件や子の監護をめぐる諸問題に関する共同研究や、少年事件の報道と人権に関する講義など、児童の権利、保護又は福祉に関する諸問題をテーマとしたカリキュラムが行われており、その中で、児童の権利に関する理解を深めている。
また、裁判官、検察官及び弁護士になるいずれの者も、原則として、司法研修所において司法修習を受けた後、法曹資格を取得するが、この司法修習においても、子どもの人権に関する講義を行い、本条約の実施やその内容、趣旨(日本政府報告書(1994年)、NGO報告書(1994年)、国連委員会における審査・勧告(1998年)を含む。)についても言及しているほか、少年事件や子の監護が問題となる事件を取り上げたカリキュラムを実施しており、児童の権利、保護又は福祉について学ぶ機会を設けている。
このような裁判官の研修及び司法修習におけるカリキュラムでは、児童の利益を最大限考慮すべきこと及びこれらの事件において児童の意思を表明させ、これを考慮する必要があることも当然に学んでいる。
(検察官)
51.検察官に対しては、「児童買春法の制定並びに児童及び女性に対する配慮について」などをテーマとした研修を実施した。
また、その経験年数に応じて、憲法及び人権に関する諸条約における人権保障、児童の人権問題等の各種人権課題等をテーマとする各種研修を実施した。
(児童福祉関係職員)
52.児童福祉の中心的行政機関である児童相談所の児童福祉司等に対しては、国が実施する初任者研修において条約の趣旨等についての周知を推進している。
(c)専門教育・服務規程
(専門教育)
53.パラグラフ44.から52.参照。
(警察大学校等)
54.年1回、警察大学校の少年警察専科において、都道府県警察本部の幹部警察官に対して、児童の権利の擁護に関する教育を実施しているほか、年2回(1998年から実施)、管区警察学校の少年警察実務専科において、都道府県警察の警部補、巡査部長に対して、同様の教育を実施している。
各都道府県警察の少年サポートセンター等に勤務する少年補導職員等に対しては、大学教授やカウンセラー等の専門家を講師としたカウンセリング技術専科等の集合教育等を実施している。
(大学)
55.大学におけるカリキュラムの編成は、各大学がその理念・目的に応じ、自主的に決定し、自らの責任において実施するものである。
なお、大学において、児童の権利に関する授業科目は、1999年度現在、110大学174科目(国立大学34大学61科目、公立大学8大学9科目、私立大学68大学104科目)が開設されている。
具体的には、「子どもの人権」、「少年問題と人権」、「児童問題論」、「児童福祉論」、「子どもの権利擁護・職業倫理」、「児童相談事例研究」などの授業科目を開設し、子どもの権利擁護、子どもが一個の人格として社会参画できる条件作りに関する教育などが行われており、なかには実際に子どもと接するフィールドワーク等を必修科目としている大学もある。
(d)NGOの条約啓蒙・啓発キャンペーンへの参画とNGOの活動の支援
56.我が国のNGOにあっては、地域住民、児童、教職員等の参加で条約の勉強会を開催したり、また、条約に関する冊子を発行する等の活動をしていると承知している。
|