2010年10月
タンザニア連合共和国(ダルエスサラーム,モシ,アルーシャ)(国際電話国番号255)
タンザニアは東アフリカの赤道近く南緯1度から12度に位置しています。インド洋に面した沿岸部、東北部にはキリマンジャロにつながる山岳地域、また西北部国境にはタンガニーカ湖やビクトリア湖を擁する大湖沼地帯が広がり、地勢は非常にバラエティに富んだ国です。沿岸部では高温多湿の熱帯気候、高地では寒暖の差が激しく時に暖房を必要とするような多様な気候帯のもとにあります。季節的に3月から5月にかけての大雨期と10月から12月の小雨期があり、時期や地勢によって気候が非常に異なります。年間平均気温は、ダルエスサラームなど沿岸部では30度近くになりますが、山岳地域では20度を下回るところもあります。このため短期の旅行の場合には、季節と行き先の環境を十分考慮した服装の準備が必要です。
都市部でも上水道や電気、交通など基本的なインフラの整備が遅れています。生活用水の多くは井戸水や"買い水"ですが、上水道が整っている地区でも水質は悪く飲用には適しません。また電力供給が不安定のため生鮮食料品の保存にも問題を生じることがあります。また幹線道路をはずれると未舗装路ばかりのため水溜まりができやすく、雨期には蚊や蝿の発生が増加するなど、感染症が広く蔓延しやすい状況にあります。
病気以外の怪我にも注意が必要です。道路状況だけでなく、運転マナーが悪い、信号がよく故障する、警官の交通整理がルーズである、など交通事情がかなり悪いため交通事故の発生頻度も高く注意してください。また傷害等の犯罪も増加傾向にあり、被害に遭わないように注意深く行動する様にしてください。
タンザニアの平均寿命・乳児死亡率等主要な保健指標は世界的にも最低の水準であり、世界の3大感染症であるAIDS、結核、マラリアをはじめ多くの感染症が広く蔓延しています。その他ウイルス性のB型肝炎、C型肝炎や梅毒等も蔓延しており生活の身近にこれら感染症の脅威が存在します。上記以外の熱帯特有の風土病は感染の機会は少ないと考えられますが、一旦感染すると治療に難渋する場合があるので注意が必要です。
医療水準としては、ダルエスサラーム市内では外資系の医療機関を中心に徐々に整備されつつあり、外国人医師の勤務する病院や超音波診断装置・MRIなどの最新機器を導入する施設も現れてきました。しかし、後に紹介する最も進んだ医療機関であっても日本の医療に比べ水準はまだまだ低く、特に脳神経、循環器、麻酔などの専門医の数は非常に限られています。都市部を離れた病院では基本的な診断ですら不確実な状況です。都市部の一般開業クリニックでも検査機器を備えているところはほとんどありません。
体調不良を感じたらできるかぎり速やかに大都市の病院を受診することをお勧めします。予約不要で24時間体制で救急外来を開いている病院もあります。しかしマラリアに関しては誤診が多いので十分に注意が必要です。医師に「マラリアではない」、若しくは「治療後マラリア原虫はいなくなった」といわれても体調の変化を自分で十分注意して適切な行動をとることを心がけてください。マラリアでないのにマラリアと診断される過剰診断にも注意が必要です。
外科手術が必要な場合、衛生環境や万一の輸血のことを考慮すると、他の先進地域での治療をお勧めします。重症状態におちいった場合には、国外へ緊急移送されることもあります。コストは移送費だけで数百万円になります。当地への渡航の際は万が一に備え、十分な額の海外旅行傷害保険(特に、疾病治療費用、傷害治療費用、救援者費用)に加入しておくことを強くお勧めします。
薬局で購入できる薬品は大半が輸入品ですが、製造元の国によっては品質にばらつきがあって効果に絶対の信頼がおけず、また薬局に薬剤師がいないことが多いため、風邪や腹痛などの市販薬は持参してくる方がよいでしょう。持参される場合には、錠剤やカプセルの薬品を選ぶようにしてください。粉薬ですと麻薬・覚醒剤等の輸入禁止薬であることを疑われて入国審査の際に没収されることがあります。
年間を通じてマラリアが流行しています。薬剤耐性を持った「熱帯熱マラリア」が主流となっています。初期に適切な治療が行われなければ貧血、腎不全、内出血などの他に脳障害によって死亡することもあり「悪性マラリア」とも呼ばれます。熱が出たら病院で早期にマラリア検査を受ける必要があります。
対策としては、マラリアを媒介するハマダラ蚊に刺されないように工夫することが一番です。ハマダラ蚊は日没から日の出まで活発に活動するため、夜間は特に注意が必要で、長袖シャツ、長ズボンを着用し、虫除け剤(repellent)、蚊取り線香、電子蚊取り機器などを使用するとよいでしょう。(なお2010年よりデング熱も流行し始めており、昼間吸血行動を行うネッタイシマカにも刺されないように注意する必要があります。)
マラリア予防薬を服用するかどうかは行き先や滞在期間にもよりますが、まず渡航前にあらかじめ日本の医師と相談して説明を十分に受けることをお勧めします。服用の方法、副作用などが薬によって異なるため、自分にあった処方を受けるよう心がけてください。予防薬としては、日本でも購入できるメフロキン(商品名メファキン)があります。現地で購入できるアトバコン・プログアニル合剤(商品名Malarone)も良い効果を上げています。治療薬としては、アルテミシニンの合剤(ACT)であるコアーテムなどが有効です。アルテミシニンの単剤(コテキシンなど)では、耐性(薬が効かないこと)が報告されています。
信頼できる病院施設のない地方に長期滞在する場合には、医師に相談の上、治療薬を持参し、初期の自己管理を行ったあと都市部の病院を受診するという方法もあります。
帰国後1か月(マラリア流行地を離れて1か月)の間に発熱があった場合には、マラリアの可能性も想定し、受診先の医師にマラリア汚染地域に滞在していた旨を告げ、相談するようにしてください。国内での治療機関については、最寄りの検疫所に問い合わせて、感染症科のある病院をご利用ください。
タンザニアを旅行中に下痢を経験することは稀ではなく、原因や程度はさまざまです。軽度のものであれば水分補給や市販薬の服用で有効なことも多いですが、水のような下痢が頻繁にある、血液混じりの便が続く、発熱を伴う、腹痛の強い時や嘔吐を伴う場合には病院受診によって治療を受けた方が賢明です。散発的ではありますが、コレラや赤痢、腸チフスの発生も見られていますので注意が必要です。下痢や嘔吐がマラリアの随伴症状であることもあります。
統計によるとタンザニア国民のHIV成人罹患率は6.2%(2008 Report on the global AIDS epidemic, UNAIDS/WHO)と高率です。感染者の血液・体液との接触により感染が起こるため、母子感染による小児の患者も稀ではありません。HIVキャリアの血液・体液との接触や、輸血を受けるような事態を避けるよう、またケガ人の手当、危険な性交渉、交通事故、マラリア感染などには十分注意する必要があります。
デング熱(2010年に初報告)、黄熱病、トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)、フィラリア症、リーシュマニア症、リフトバレー熱(2007年に流行)、チクングンヤ症、回帰熱、発疹チフス等
コレラ、腸チフス、赤痢、ウイルス性肝炎(A,E型)、ブルセラ症、腸管内寄生虫症等
ウイルス性肝炎(B、C型)、梅毒、その他性病
住血吸虫症、土壌伝搬性寄生虫症、南京虫等の虫さされ等
結核、破傷風、狂犬病、髄膜炎菌性髄膜炎(2002年に流行)等
タンザニアの動物の中には、毒性を持つため注意が必要な動物も見られます。
アオバアリガタハネカクシ(ナイロビ・フライ)は、日本でも見られますが、「フライ(蝿)」というよりは、羽の小さなハチか、大きなアリのように見えます。体長1センチほどで、頭と体が赤と黒のしま模様になっており、とても目立ちます。この虫の体液にはペデリンという毒があるため、不用意につぶすと毒の付着した部位がひどい皮膚炎になります。虫の体液が着いた手で目をこすると、激しい目の炎症を起こし(ナイロビ・アイ)、失明することさえあるといいます。つぶさずにそっと払いのけるようにしてください。
また、当地で見られるヘビ類がすべて有毒という訳ではありませんが、大都市でも比較的目にすることの多いグリーンスネーク(グリーン・マンバ)は、神経毒を持っており注意が必要です。体長1メートル弱で、木の上から落ちてくることもあるので、見かけたら捕まえようなどとせず、接触を避けてください。
急激な中古車の増加により十分整備の整わない車が走り回っていたり、道路の整備が追いつかないなどの理由によって、交通事故が急増しています。市内の乗り合いバスは定員以上に人が乗り込み、また整備も悪いこともあってブレーキがきかず多くの事故を起こしています。また最近はバジャジと呼ばれる小型3輪タクシーによる事故が急増しています。適切な救命施設もないために、日本では助かる程度の外傷であっても、死に至る可能性がありますので十分注意して下さい。
キリマンジャロ山への登山者が高山病や登山による持病の悪化で死亡するケースが毎年発生しています。同山そのものは登山道の傾斜が緩いため特別な登山技術や装備を必要としませんが、5800メートルもの高度に順応できないため体調を崩し、高山病になる可能性があります。肺や心臓の持病が高度によって急激に悪化することも稀ではありません。
肺や脳への影響が重症化し、緊急に下山が必要になっても、救助体制の問題で下山するのに1日近くかかるため、その間に死亡しているケースがほとんどです。高山病の初期症状である頭痛・吐き気等が見られたら、スケジュールを気にして急いだり、「せっかく来たんだから」と無理をすることなく、即刻下山(ゲートまで)することを検討してください。無理をしない行動が自らの命を救うことを忘れないようにしてください。また、緊急単独下山に備え、ガイドやポーターの人数にも余裕を持たせてください。
山頂近くではマイナス10度まで気温が下がることもありますので、防寒装備は必須です。
(1)コップに注いで出された水を飲むことは避け、飲料水は市販のミネラルウォーターの利用をお勧めします。レストランでも食事中の水を注文する時にはミネラルウォーターを選び、目の前で開栓するのを確認してください。同様の理由で、氷も清潔な水から作られたことを確認する必要があります。
食事も、現地食のレストランでは生野菜は食べない方が無難です。不安定な電気事情から食品の保存にも問題があるため、生ものには特に注意が必要で、十分に加熱調理されたものを選ぶよう心がけてください。
(2)滞在中は蚊に刺されないように対処して下さい。(虫除けスプレー、殺虫剤、蚊帳の使用、長袖長ズボンの着用など。)
(3)土壌からの破傷風や寄生虫の感染も多く、裸足で歩くことは避けてください。また、河川や湖沼の淡水には、住血吸虫などの感染性微生物が多く存在し、現地ですぐには診断のつきにくいものが多いため、淡水での水泳は避けた方が無難です。
(4)節度ある行動をとり、事故や犯罪に遭わないよう十分注意してください。夜間ダルエスサラーム市内を歩行中の在留邦人がなた状の刃物で斬りつけられ、前額に重傷を負ったケースが報告されています。ダルエスサラーム・アルーシャ間の行程で、日本人旅行者の薬物強盗による被害が多発しています。旅の道すがら見知らぬ人に物をもらって口にすることは避けるようにして下さい。
(5)日中は日差しが強いため、熱中症・脱水症、皮膚や目に対する紫外線傷害等が生じる危険があります。長時間屋外で活動をする場合は、帽子やサングラスを着用し、皮膚の露出の少ない服装を心掛けて下さい。
成人:(a)必要性が高いものは※黄熱病ワクチン、A型肝炎ワクチン、破傷風トキソイド(b)次いでB型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン(c)余裕があれば髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチンの接種をお勧めします。季節性インフルエンザの流行もありますので、ワクチン接種をお勧めします。
小児:日本で受ける小児の定期予防接種に加えて(a)必要性の高いものは、※黄熱病ワクチン、A型肝炎ワクチン、インフルエンザ菌b型ワクチン(b)次いでB型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン(c)余裕があれば髄膜炎菌ワクチン、腸チフスワクチンの接種をお勧めします。季節性インフルエンザの流行もありますので、ワクチン接種をお勧めします。
旅行や仕事などで黄熱病の常在するアフリカ諸国間を移動する場合は、入国時に無用のトラブルをさけるためにもできるだけイエローカード(黄熱病予防接種済みの証明書)の携行をお勧めします。
※WHOは2011年よりタンザニアの黄熱病リスク指定をはずす予定です。
| ワクチン | 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 |
|---|---|---|---|---|
| 結核(BCG) | 出生時 | |||
| ポリオ(生ワクチン) | 出生時 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 |
| 三種混合(DPT) | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | |
| B型肝炎 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | |
| インフルエンザb菌 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | |
| 麻疹 | 9~11ヶ月 |
日本で行われている乳児健診のようなものはないと考えてください。
公立の病院では毎月無料で乳児健診を行っていますが、その内容は体重のみの測定で終わります。通常医師の診察はありません。
次項に記載の会員制のISTクリニックでは、定期ワクチン接種時に乳児健診として体重、身長、頭囲の測定と簡単な診察を行ってくれます。アガ・カーン病院では毎月体重測定と看護師による指導があります。
所在地:Ocean Road, Dar es Salaam
電話:(022)-2115151、ファックス:(022)-2115904
概要:24時間対応の総合病院です。CTスキャン・MRIがあり、専門医の診察は曜日の指定があります。比較的入院設備が整っていますので、邦人が外来・入院時に利用しています。
所在地:Ruvu Street, Msasani, Dar es Salaam
電話:(022)-2601307
概要:オランダ人医師が経営する会員制クリニックで通常受診前に予約を入れます。会員は夜間でも24時間対応してくれ、電話連絡により血液検査やマラリア検査にも応じてくれます。妊婦検診、乳児検診、予防接種に利用している邦人が多くいます。会員でなくても受診可能ですが、診察の順番を待たされたり、診察料が割高になります。
所在地:P.O.Box 3867 Yacht Club Rd, Msasani Peninsular Dar es Salaam
電話:(022)-2602500,2501、Helpline:(0783)-331333, (0755)-039666
概要:アフリカ内に6病院、6クリニックを有する南ア資本の外国人向け病院です。最新式設備を備える清潔な病棟です。ただし料金も南ア並で高額(1泊400$など)です。救急は24時間対応しています。
所在地:Alykhan Road, Upanga, Dar es Salaam
電話:(022)-2150500、ファックス:(022)-2150180
概要:24時間対応の総合病院です。CTスキャンあり、専門医の診察は曜日の指定があります。大使館現地職員・JICA関係者の健康診断などで利用されています。
所在地:(ロイヤルパーム・ホテル内)Royal Palm, opposite swimming pool, Dar es Salaam
電話:(022)-2136801
概要:スウェーデン人歯科医。義歯の精密調整等はナイロビにいるスウェーデン人歯科技工士まで送っておこなっています。要予約です。
所在地:P.O.Box 3010 Moshi Tanzania
電話:(027)-2754377, (027)-2754381
概要:タンザニア3大公立病院の一つで、総合病院です。2次救急までの対応は可能ですが、それ以上の重症であればナイロビ等外国への搬送が望まれます。
所在地:Ghalla Rd W Rord Moshi Tanzania
電話:(027)-2751843、救急時電話:(027)-756-585985
概要:医師3人が常勤、他専門医も日替わりで診療を行っており、日常の診療に利用可能です。診療費は高めですが外国人・富裕層が多く利用しています。初期対応(1次救急)は可能ですが、それ以上についてはKCMC病院、あるいはナイロビ等外国への搬送が必要になります。
所在地:Wachaga Street (Makao Manya RoadとWachaga Streetの角)、 Arusha Tanzania
電話:(027)-2548030, 2545118, 2545119
概要:ルーテル教会経営の最新、最大の病院です。米国人医師による経営が行われており、設備、清潔面、メインテナンスも良好であり、タンザニア内でもベストの病院の一つと言えます。
所在地:Old Moshi Road, Arusha Tanzania
電話:(027)-2503181~7
概要:AICC国際会議場のために建設された公立病院ですが、通常は一般に開放されています。古く、設備的、清潔面でもやや問題がありますが、初期対応は可能です。
所在地:Haile Selassie Road, Plot 54, Arusha
電話:(027)-2508654, 2508020
概要:古めですが、個人病院としては十分な設備を有しており、さらにCTまで設置しています。24時間週7日間休み無く営業しており、緊急時の選択肢の一つとなりえます。
タンザニアの公用語はスワヒリ語です。地方や都市でも英語が思うように通じないことが多く、双方の誤解から事故や事件に巻き込まれるケースも発生していますので十分注意してください。