2010年10月
モロッコ王国(ラバト,カサブランカ)(国際電話国番号212)
モロッコは、北は地中海、西は大西洋に面しています。国土のほぼ中央に北東から南西に向け、アトラス山脈が走っており、南部には砂漠地帯があります。こうした地形がモロッコの気候を変化に富んだものとしています。気候は北部の地中海性気候、東部の大陸性気候、南部の乾燥性気候と大きく3つに分けられます。宗教はイスラム教が殆どで、主に使用されている言語はアラビア語(公用語)、ベルベル語、フランス語です。そのため医療施設でも、これらの言葉が主要言語として使われております。また英語を話す医師も少しずつですが増えているようです。
当地の医療事情は、大都市と地方都市、さらに農村部では大きく異なります。 大都市には大学病院をはじめ、24時間受付の私立救急病院もありますが、都市部で医療を受ける時は、民間の医療機関(救急車、私立クリニック等)を利用した方が良いと思われます。その場合、まず滞在しているホテルに尋ねてみてください。往診医を呼んでくれるかもしれません。民間の救急車には医療器具を持った医師が同乗しているものもあります。また海外医療保険に加入されている方は、保険会社によっては連絡すると医師を推薦してもらえる場合もありますので、事前に条件を確認しておいて下さい。
薬局では、処方箋無しでも購入できる薬剤もありますので、事前に血液型、アレルギー・喘息・糖尿病・高血圧などの持病の有無、服用中の薬剤、連絡先をアラビア語かフランス語で書いた物を準備し携帯すると良いでしょう。歯科治療、検眼・眼鏡作成は、本邦出発前に完了しておいて下さい。
ウィルス、細菌、寄生虫などがあります。Boil it, peel it, or forget it. 「沸騰させるか、剥くか、食べるのをあきらめなさい。」という言葉があります。それを守って下さい。毒を除く以下の疾患は生ものを食べたときに発生します。
(A)ランブル鞭毛虫(ジアルジア症):
潜伏期間: 7日~10日程度。
症状:下痢と嘔吐と腹部痙攣を伴う胃腸炎症状。
治療:メトロニダゾール内服。
(B)アメーバ赤痢:
潜伏期間:約2週間
症状:大腸、直腸や肝臓に潰瘍が生じ、腹痛やイチゴゼリー状の粘血便と激しい下痢。
治療:メトロ二ダゾール、テトラサイクリン系抗菌薬の内服。(放置すると慢性化する事もございますので注意してください。)
(A)ブルセラ病(地中海熱):2006年に当地にて流行しました。
原因:主な感染経路として、牛乳、生チーズ、バターの飲食による。
潜伏期間:2~4週間
症状:午後から夕方にかけて40度程度の発熱が続くのが特徴的。
治療:ドキシサイクリン、ストレプトマイシン等の抗菌薬を併用し数週間投与。
(B)腸チフス:
潜伏期間:1~2週間
症状:「稽留熱(けいりゅうねつ)と呼ばれ、40度前後の高熱が1週間から2週間も持続すること、バラ疹と呼ばれる腹部や胸部にピンク色の斑点が現れる症状とが特徴。
治療:ニューキノロン系抗菌剤が多く用いられている。耐性菌を押さえるためにはシプロフロキサシンやトリメトプリムスルファメトキサゾール(ST合剤)を使用する。弱毒生ワクチン(4回経口接種)と注射ワクチン(1回接種)が存在するが、日本では未承認。
A型肝炎:
潜伏期間:2~6週間
症状:一般に小児では不顕性か発症しても軽い症状で終わることが多い。一方、成人では明瞭な黄疸症状を呈する事が多く灰白色便、発熱、下痢、腹痛、吐き気などの風邪と類似の症状がある。高齢者ほど症状が重くなりやすい。 4~8週間で回復し慢性症状に移行することはないとされている。
治療:特異療法はなく、A型肝炎ワクチンの接種が有効とされている。
原因:感染した動物の咬み傷などから唾液と共にウィルスが伝染する場合が多く、傷口や目・唇など粘膜部を舐められた場合も危険性が高い。
潜伏期間:脳組織に近い傷ほど潜伏期間は短く、2週間程度。遠位部では数か月以上。
症状:前駆期には風邪に似た症状のほか、咬傷部位にかゆみ、熱感などがみられる。急性期には不安感、恐水症状、恐風症、興奮性、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れ、その2日から7日後には脳神経や全身の筋肉が麻痺を起こし、昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡する。
治療:発症後の有効な治療法は存在しない。ただし、感染前(暴露前)であれば、ワクチン接種によって予防が可能である。万一咬傷を受けたらまず傷口を石鹸水でよく洗い、消毒液やエタノールで消毒すること。そしてすぐに医療施設にて、暴露後ワクチン接種を開始する。
外出時の帽子、サングラスの着用と水分、ミネラルを十分に取りましょう。外出前には日焼け止めを使用しましょう。
交通ルールの無視、道路事情の不備等により交通事故は多く、手術、輸血が必要な救急外傷への対応は、都市部以外では非常に困難と思われます。
(1)入国時の時差(日本とはマイナス9時間、夏時間中はマイナス8時間)をはじめ、当地の気候・自然・人的環境への順応に数か月を要すると、考えましょう。その間に知識、情報を蓄積し、人的ネットワークの形成を図ることをお勧めいたします。
(2)飲料水は沸かした水を飲むか、または信用できる物を飲みましょう。野菜や果物は全ての目に見える汚れを取り除くために布やブラシでこすりましょう。洗うのが難しい葉物の野菜や表面がでこぼこした食物(カリフラワー、ブロッコリー、マッシュルーム等)は、消毒薬で洗う必要があり、生で食べてはいけません。消毒薬としては、家庭用塩素系漂白剤(5%塩素)を使うのが一般的で、表面が食物に触れる食器類等だけでなく食物そのものを消毒するためにも用いることができます。全ての肉は徹底的に焼きましょう。この他、うがい、手洗いの習慣を身につけてください。
(3)夏季には、かなり気温が上昇する日もあり、常に水分補給に心掛け、日射病・熱射病にならぬ様に対策を講じてください。脱水の状態は排尿の有無で確認するのが簡単です(Cecilの教科書より:32度から2度上がる毎に500ミリリットルの補水(1日当たり)が必要)。
(4)ラマダン期間など、現地の人達の働き方に合わせること、「郷に入りては郷に従え」は時に応じて採用すべきでしょう。
(5)特にお子さんを迷い猫、動けない鳥など動物に触れさせてはいけません。寄生虫の侵入、更に破傷風菌感染があるので裸足で土の上を歩かないようにしましょう。皮膚から浸入する寄生虫がいますので、湖などの淡水では泳がないようにしましょう。また、病気を媒介しない刺咬昆虫も多いため、昆虫忌避剤(DEET)や蚊取り線香を使用するとよいでしょう。またなるべく長袖、長ズボンで体を覆うことも虫に刺されないために効果的です。なお、汚れている自分の手で目を触れると結膜炎の危険性があります。外出後は、家に入る前に髪の毛や服の汚れを振り落とし、家に帰ったら手を洗いましょう。
(6)家電用電気は日本より高電圧(220ボルト)です。くれぐれも感電に気を付けましょう。
(7)当地の陶器製品は食べ物などに鉛が溶け出してくる可能性があります。特にお子さんに関しては、釉薬として鉛を使用していないものを注意深く選ぶことを推奨します。
(8)一部の地域で流行している病気などは他の地域ではわからないことがあります。旅行する前には旅行会社などから旅先についての十分な情報を得るようにして下さい。
(9)海外傷害保険への加入をお勧めします。
(1)赴任者に必要な予防接種 (成人・小児)
入国時に必要なワクチン接種はありません。小児は「小児定期予防接種スケジュール」にしたがって実施して下さい。地方都市に滞在される場合は、破傷風、腸チフス、ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、細菌性髄膜炎など医師と相談して予防接種を行ってきて下さい。小児にはインフルエンザB桿菌、肺炎球菌ワクチンの接種を勧める医師もいます。
(2)無料小児定期予防接種一覧とスケジュール
(母子手帖Carnet de Santeがあります。活用して下さい。)無料予防接種の種類は2007年に変更されました。
| 生直後 | BCG、ポリオ、B型肝炎 |
| 6週 | ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、B型肝炎 |
| 10週 | ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ |
| 14週 | ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ |
| 9か月 | 麻疹、B型肝炎 |
| 18か月 | ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ |
| 6才 | 麻疹、風疹 |
(3)予防接種は公的機関で接種すれば無料です。クリニックでの受診、予防接種は有料です。 スケジュールには入っていませんが、インフルエンザ桿菌(Hib)、耳下腺炎のワクチン等は強く推奨されています。肺炎球菌、髄膜炎菌、水痘、インフルエンザウィルスも可能です。
(4)小児が現地校に入学・入園する際に必要な予防接種・接種証明
幼稚園・小・中・高校に入園・入学・転入に際し、「小児定期予防接種一覧」に従った証明が必要です。ご子弟を帯同される予定の方は、必ず日本の母子手帳を持参し対応して下さい。
予防接種の際、無料で行われます。また、有料ですが小児科医で行うこともできます。
薬品・食物等の各種中毒症(洗剤・殺虫剤の誤飲時や食中毒のときなど)や、動物(毒蛇、サソリ、蜂、その他毒虫など)による毒について専門医が常駐し、モロッコ全国からの電話相談に応じる。入院施設はない。
救急車(有料、24時間対応)
救急外来のある私立病院(24時間対応)
救急車(有料、24時間対応)
モロッコ保健省ホームページ http://www.sante.gov.ma
(仏語、アラビア語)
世界保健機関地域事務所ホームページ http://www.emro.who.int/morocco/
(仏語)
公用語はアラビア語ですが,日常では仏語も通じますので,主要言語の仏語をご参照下さい。