2010年10月
マリ共和国(バマコ,サンガ,バンジャガラ,モプチ,ジェンネ,セグー,トンブクトゥ)(国際電話国番号223)
マリはアフリカ諸国の中でも特に衛生状態や医療事情の悪い国の一つです。短期滞在や長期滞在にかかわらず、さまざまな健康上の問題が生じていますので十分注意してください。
水道は一部で利用できますが、水道水は濁っていることがあり、そのまま飲用するには適しません。下水道は普及しておらず、汚水は溝や川に垂れ流しで、人々はその水で洗濯したり水浴びしたりしています。ゴミをゴミ箱に捨てるという習慣がないため、街中ゴミだらけです。ペットボトルやビニール袋が道路や溝や川に散乱しています。牛や山羊や羊が道路を歩いて糞をし、ゴミの山でゴミをあさっています。舗装道路は少なく、雨季には水たまりやぬかるみが増え、蚊の発生が多くなります。また、年間を通してハエが多いです。野菜や果物や卵などの食品が道ばたの露店で売られていますが、衛生的に管理されているとは言えません。輸入品を扱う外国人向けのスーパーマーケットはありますが、賞味期限が切れている食品や、腐った卵が売られていたりします。このような衛生事情のため、マラリアや感染性胃腸炎をはじめさまざまな感染症が発生します。
マリ人の平均寿命は男性が45歳、女性が48歳です。5歳以下の乳幼児の死亡率はアフリカ諸国の中でも高い方です。その原因として、衛生状態の悪さとともに、医療レベルの低さと医療体制が整備されていないことがあげられます。病院や診療所はありますが、信頼できる医療がおこなわれているわけではなく、診察・検査・診断・治療という先進国では当たり前の基本的な医療の流れは期待できません。そのため、病気にならないように予防することが最も大切です。万が一重症の病気になってしまったら、マリでの治療はあきらめて、できるだけ早期に医療先進国へ治療に行く必要があります。
マラリアの中でも重症化しやすい熱帯熱マラリアの患者の発生が一年を通して見られます。雨季の6月から10月は特に多く発生します。この時期、当地のクリニックの外来患者の80%がマラリアと言われています。ハマダラカによって媒介され、予防が重要です。夜間や早朝は、蚊の吸血活動が盛んになるため、外出を控えたり、防虫剤を使用したり、蚊帳を使用することが重要です。発症は、4日から14日の潜伏期の後、急激な高熱と倦怠感、悪寒、嘔吐などが見られます。しばしば感染性胃腸炎との鑑別が困難な場合があります。当地では、高熱が出ればまずマラリアとして治療が始められています。初期に適切な治療をしないと、脳性マラリアとなり致死的です。そのため、高熱や消化器症状があり、少しでもマラリアを疑ったなら、医療機関を早期に受診することが重要です。診断は、血液を採って顕微鏡でマラリア原虫を確認したり、診断キットでおこなったりします。治療は、当地で入手可能なCoartemという薬が良く効きます。予防薬もありますが、予防薬を内服しているからと言って必ずしもマラリアを発症しない訳ではありません。
衛生状態が悪いため、一年を通してマリ人の間でも非常に多い疾患です。生水の飲用、卵、魚介類、生ものや生野菜の摂食の後、嘔吐・発熱・下痢などの胃腸炎症状を来します。サルモネラ菌、コレラ菌、赤痢菌、赤痢アメーバ等の寄生虫、ウイルス等さまざまな原因で発症します。当地の医療機関では、原因となる菌や寄生虫が同定されることはなく、嘔吐・発熱・下痢などの感染性胃腸炎症状が見られたら、数種類の抗生物質を同時に内服する治療が一般的です。感染性胃腸炎の頻度は高く、重症化する場合もあるので予防と早期の医療機関受診が重要です。
マリは野犬が多く、狂犬病のリスクは高いと考えられます。狂犬病ウイルスの感染により発症し、早期に治療をしないと致死的です。狂犬病ワクチンで治療します。バマコの医療機関でも治療が可能なので、咬まれたら至急医療機関を受診することが重要です。地方で咬まれた場合は、地方の病院で治療するよりもバマコに戻って治療することをお勧めします。
旅行で来られる方は特に注意してください。マリは、サヘル乾燥地帯に位置し、最高気温は35度~45度になるため、発汗が多く、こまめに水分摂取をしないとすぐに熱中症・脱水症になります。倦怠感で始まり、意識障害を来すこともあります。熱中症や脱水症の予防のためには、スポーツドリンクの飲用をおすすめします。炎天下では帽子の着用が必要です。外出時には安全な水がすぐに手に入らない場合が多いので、あらかじめ水を携帯して行く必要があります。また、下痢や嘔吐の場合でも脱水症になりやすく、スポーツドリンクの飲用で失われた水分と電解質の補給が必要です。
ハルマッタンと呼ばれるサハラ砂漠から飛来する細かい粉塵が舞う12月から4月頃までは、咳や痰などの呼吸器症状を訴える人が多くなります。また、乾季から雨季に変わる5月は、気温は非常に高くなり、風邪症状を訴える人が多いです。さらに首都バマコは、年間を通して車やバイクの排気ガスが激しいため、呼吸器症状を訴える人が多く見られます。気管支喘息の人は、当地の環境で悪化させる可能性があります。
さまざまな寄生虫症があり、特に地方では多く見られ、注意が必要です。予防が大切です。
オンコセルカ症(回旋糸状虫症)ブユに刺された後、掻痒感、腫瘤を形成し、長期間放置すると失明に至ります。
メジナ虫症(Guinea Warm) 川や貯水場のケンミジンコを水と一緒に飲用することで感染し、成虫になれば強い掻痒感と虫体が皮下を移動するのがわかります。
ロア糸状虫症 アブに刺されると虫体が腫瘤を形成します。
トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病) ツェツェバエが媒介し、発熱、リンパ節炎を呈し意識障害が見られることがあります。
マンソン住血吸虫症・ビルハルツ住血吸虫症 川や池に素足で入ると皮膚から浸入し、皮膚炎、血尿、倦怠感が見られます。
ハエ蛆症 さまざまな種類のハエが、人の皮膚や耳などに卵を産んだり、ハエの卵が衣服で孵化し、着た人の皮膚に幼虫が進入したりして痒みを伴う硬いしこりができます。
乾期に流行することがあります。気道を介して飛沫感染します。発熱・頭痛・項部硬直・嘔吐・意識障害などの症状が見られ、早期の診断と治療が必要です。予防接種があります。
ネッタイシマカにより媒介されます。マリ入国の際には予防接種の証明書(イエローカード)の提示が必要です。マリ入国の10日前までに接種する必要があります。予防接種の有効期間は10年です。
A型肝炎ウイルスに汚染された生水や野菜、魚介類を飲食することで発症します。治療は、対症療法です。手洗いと飲食物を十分加熱処理することが重要です。予防接種もあります。
土壌中の破傷風菌が、傷口から進入し感染します。4日から7日の潜伏期の後、口が開けにくい・首筋が張る・手足の異常感覚などが現れます。治療が遅れると、全身性のけいれんを起こし致死的です。早期の診断・治療が必要です。小児期に予防接種を済ませている場合でも、10年以上経過している場合は追加接種が必要です。
マリでは結核患者が増えています。しかし、患者が十分把握されて管理されているわけではなく、治療も不十分です。そのため、未治療で結核菌を排菌しながら生活している人がたくさんいると考えられます。人々の密集した市場や家屋に長時間滞在することは、結核感染のリスクを高めます。
首都バマコでは、狭い道路に車・オートバイ・自転車・リヤカー・人・家畜等があふれているため、交通事故が頻繁に起こっています。大学病院の救急室に搬送される患者は、交通事故による負傷者が最も多いようです。また、地方の幹線道路では、狭い道路を時速100km超で車同士がすれ違うため、重大事故がしばしば発生しています。地方で交通事故にあった場合、地方の病院での治療は困難なため、早期にバマコに搬送し、場合によっては先進国に緊急移送する必要があります。
生水を飲まないこと。煮沸した水道水かスーパーで買ったミネラルウォーターを飲むようにする。(道ばたの店で売っている袋入りの水は、細菌に汚染されている場合があります。)
卵や乳製品はできるだけ食べないようにする。
生野菜はできるだけ食べないようにする。食べる場合は、十分消毒する。
肉や魚は十分火の通った物を食べる。
地元の屋台での食事はできるだけ避ける。レストランでの食事でも安心はできません。
冷凍食品であっても保存状態が不明なため、安心はできません。(当地はしばしば停電があり、長期間冷蔵庫が使えない場合があり、自然解凍されて再冷凍されたような冷凍食品が売られています。)
外出時は水分を持参し、こまめに飲用する。
日差しや紫外線が強いので、外出時は、サングラスと帽子を着用し、日焼け止めを塗っておく。
夜間や早朝は、マラリアを媒介する蚊の吸血活動が盛んになるので外出は控える。
睡眠時は蚊帳を使う。
体調不良を感じたら、我慢せず早期に医療機関を受診する。
旅行でマリを訪れる場合、下記の物を持参または現地で購入されることをおすすめします。スポーツドリンクの粉末、サングラス、帽子、日焼け止め、防虫剤、ウェットティシュ。
(1)赴任者に必要な予防接種
成人:黄熱病、破傷風、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、髄膜炎菌性髄膜炎、腸チフス。
小児:上記に加え日本で実施されている定期の予防接種と任意の予防接種。
(2)現地の小児定期予防接種は、決まった接種計画がないため一例を示します。
| 初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
|---|---|---|---|---|
| BCG | 出生時 | 5歳 | ||
| ツ反 | 陰性時 | |||
| PENTACOQ | 注1 2~6ヶ月 | 2~6ヶ月 | 2~6ヶ月 | |
| 麻疹 | 9ヶ月 | |||
| 黄熱病 | 9~15ヶ月 | 10年毎 | ||
| R.O.R | 注2 12~18ヶ月 | 10歳 | ||
| B型肝炎 | 出生時 | 1ヶ月 | 2~9ヶ月 | 5年毎 |
| 髄膜炎(A、C) | 2歳 | 5歳 | 3年毎 |
注1:ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ(不活化)、インフルエンザB、の5種混合。ポリオは日本と違い、経口生ワクチンでなく不活化ワクチンです。
注2:麻疹、おたふくかぜ、風疹
いずれも、接種時期、回数が日本と異なり、接種計画を立てる際、注意が必要です。接種は薬剤を自分で薬局で購入し、それを医療機関に持って行って接種してもらうのが一般的です。
(3)現地の私立校やインターナショナルスクールに入学する場合、必要とされる予防接種や接種証明書は学校によって異なります。
定期的な乳児健診は行われていないため、信頼できる小児科医を見つけるか、医療先進国へ行って健診を受けることになります。
軽度の疾病の場合は、下記(1)、(2)、(3)のクリニックが利用可能です。しかし、医療レベルは低く、入院設備はあまり清潔ではないため、長期の入院が必要と考えられる場合は、早期に先進国での治療を考えた方が良いです。マリでの入院は、日本の病院での入院とは全く異なります。個室でテレビや冷房はありますが、薄暗い病室でハエや蚊が飛びかい、ナースコールを押してもすぐには来てくれません。食事は家族が差し入れするか、近所のホテルやレストランから出前を取ることになります。病状に応じた食事は期待できません。当地の医療従事者でさえ清潔・不潔の区別は曖昧です。定期的な医師や看護師の回診があるわけではありません。下記(4)、(5)は大学病院で重症患者を扱い、手術が可能で、下記(1)、(2)、(3)のクリニックで治療が困難と考えられた場合に移送されます。しかし、衛生面や医療技術の面で下記(4)、(5)での邦人の継続した治療はお勧めできません。先進国への搬送を早期に考えるべきです。
また、地方病院は、医療レベルと衛生面からあくまで一時的な応急処置の場と考えて、早期にバマコに戻り、下記(1)、(2)、(3)のクリニックで治療を受けるか、そのまま先進国への移送を考えなければなりません。そのためにもマリを訪れる場合、海外旅行傷害保険に必ず加入し、先進国への緊急移送もカバーされている事を確認しておく必要があります。
所在地:Avenue du Mali-ACI2000
電話:2029-1010、ファックス:2029-1438
概要:入院、手術に24時間対応可能な入院病室24床、集中治療室4床を有する私立病院です。マリ在住の外国人が多く利用しています。内科、外傷科、産婦人科、心臓病科、耳鼻科、小児科、眼科、皮膚科、神経科、精神科があります。X線撮影・エコー検査も可能です。CTはありません。英語・フランス語が通じます。マラリアや感染性胃腸炎での、邦人の入院治療実績もあります。
所在地:Badala-Est,Rue 18,Porte19
電話:2022-2207
概要: 32床、集中治療室4床。24時間体制で診療を行っています。CTはありません。英語、フランス語が通じます。マラリアや皮膚化膿症で邦人の入院治療実績もあります。
所在地:ロシア大使館のそば
電話:6673-0215
概要:新設のクリニックで、4人の常勤医師と7人の非常勤医師がおり、24時間体制で診療をおこなっています。救急車を2台保有しており、救急をはじめあらゆる診療科に対応していますが、X線撮影はできません。病床は6床あり、分娩も可能です。医師は英語が通じます。
所在地:Centre commercial, Avenue Van Vollenhover
電話:2022-2712
概要:街の中心部にある内科、心臓病科、消化器科、糖尿病科、外科、外傷科、小児外科、耳鼻科、産婦人科、泌尿器科、放射線科、救急蘇生科、小児救急蘇生科、等を有する393床の大学病院です。救急手術に対応可能です。交通事故の患者が多く運ばれてきます。輸血は血液センターに依頼し取り寄せます。英語を理解する医師もいますが、受付はフランス語しか通じません。病棟は不潔で、邦人の入院はお勧めできません。
所在地:Point G
電話:2022-5002
概要:市街より車で20分の丘の上にある内科(内視鏡)、心臓病科、感染症科、血液・腫瘍科、神経科、呼吸器・結核科、腎臓病科(透析室)、精神科、泌尿器科、産婦人科、放射線科、救急科等を有する498床の大学病院です。CT検査も行えます。マリ国内では唯一、人工透析が可能です。英語を理解する医師もいますが、受付はフランス語しか通じません。病棟は不潔で、邦人の入院はお勧めできません。
所在地:Cite du Niger 2
電話:2021-0421
概要:日本大使館そばの新しい歯科クリニックです。主に外国人を対象に診療しています。院内は清潔で感染症対策もなされています。小児歯科やホワイトニングや矯正もおこなっています。
所在地:ホテルから5分ほどの岩山の上
電話:2144-2030
所在地:町の中心より徒歩10分
電話:2144-2048
所在地:ニジェール川に沿った道に面し、ホテルKanagaより50メートルのところ。
電話:2143-0240
所在地:モスクより徒歩10分
電話:2142-0489
所在地:町の中心部
電話:2132-0251,2132-0051, 2132-0015
所在地:町の中心部
電話:2192-1041, 2192-1169, 2192-2654
世界保健機関(WHO)国別情報
http://www.who.int/country/mli/en/![]()
国立感染症研究所感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html![]()
厚生労働省検疫所
http://www.forth.go.jp/index.html![]()
インターネット
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