パキスタン・イスラム共和国

平成27年3月12日
3月9日(月曜日)から12日(木曜日)にかけて、中根一幸外務大臣政務官は、パキスタン・イスラマバードを訪問し、第8回日・SAARC(南アジア地域協力連合)エネルギー・シンポジウムに出席し基調講演を行ったほか,パキスタン政府要人等と会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。

1.第8回日・SAARCエネルギー・シンポジウム


 

(1)経緯

SAARC(南アジア地域協力連合。加盟国は、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ)は1985年に発足した地域協力の枠組み。日本は2007年からオブザーバー国として参加し、SAARC諸国共通の課題である電力供給不足の解消を目的に、2006年から「日・SAARC エネルギー・シンポジウム」を開催。これまでエネルギー協力、地域連結性、再生可能エネルギー、省エネ等のテーマについて議論。

(2)内容

3月10~11日、イスラマバードにおいて「第8回日・SAARCエネルギー・シンポジウム」を開催。日本からは、中根政務官を代表として、外務省、JICA、大学関係者が参加。SAARC加盟国8カ国からそれぞれ官民の代表者、SAARC事務局(カトマンズ)、SAARCエネルギー・センター(イスラマバード)、パキスタン政府関係者、国際機関、主要ドナー国等から約100名が参加。

(3)中根政務官による基調講演

10日午前、中根政務官は、開会式において基調講演を行ったところ、概要は以下のとおり。
(ア)これまで日本は、電力分野におけるSAARC各国との協力を積極的に推進。各国の抱えている多様な問題に適確に対応するため、テイラーメイドの支援を心がけている。今回のシンポジウムにおいて、過去7回のシンポジウムにおける議論を総括し、「SAARC地域エネルギー連結性のための中期ビジョン」を取り纏める。
(イ)日本は、今後ともSAARC域内のエネルギー連結性強化のために、JICAを始めとする日本の実施機関によって個別のプロジェクトを進めていきたい考え。将来的には、電力に余裕のある国から不足している国に融通する等、地域全体として問題の解決を図るメカニズムが出来ることを期待。日本としても、これまで二国間関係の文脈で行ってきた支援の点と点を繋ぎ「線」とし、更には線と線を結び、地域協力の「面」を描くといった新しい視点からの協力を行っていきたい。
(ウ)昨年11月、3年振りとなる第18回SAARCサミットが開催され、カトマンズ宣言を採択したほか、SAARC域内のエネルギー協力を進めるための基礎となる「SAARCエネルギー協力協定」に署名。今後は、加盟国において必要なメカニズムの整備を加速化する必要がある。今年、SAARCは、設立30周年という記念の年でもあり、このモメンタムを活用したい。SAARC域内の人口は16億人以上であり、ASEANや中央アジア、中国といった周辺地域にまで目を移せば、世界の人口の半分以上にもなる極めてダイナミックな地域。この潜在性を最大に発揮するためには、全ての加盟国が同じ船に乗り、安定と発展という共通のゴールを目指す必要がある。そのために日本も積極的に協力していきたい。
(エ)今年は、戦後70年の節目の年。日本は、戦後一貫してアジアと世界の平和と発展に貢献。積極的平和主義の立場から、今後も世界の平和と繁栄に一層の貢献を果たしていく。日本は、SAARCのオブザーバー国として、SAARCとの関係強化を図り、ウィン・ウィンのパートナーシップを構築する考え。エネルギー分野の協力については、SAARC加盟国は元より、SAARC事務局及びSAARCエネルギー・センターとの協力を更に強化し、地域全体が裨益するような案件の形成に努めていきたい。日本は、SAARCの持つ可能性を顕在化させるための協力にコミット。今次シンポジウムが日・SAARC協力の新たな一歩となれば幸い。

2.二国間会談

中根政務官は、上記シンポジウムに参加したほか、パキスタン政府要人と会談を行い、日本人学校及び日本が過去に無償資金協力を行ったパキスタン医科学研究所を視察等を行ったところ,概要は以下のとおりです。

(1) 第二次洪水警報及び管理能力強化計画に関する交換公文署名式(3月10日)


 
パキスタンにおいては、2010年に建国以来最大と言われる洪水が発生し、約2千人、被災者約1800万人の被害が発生したところ、洪水予測システムの適用範囲の拡大や精度向上、並びに人材育成によって洪水被害の軽減に資する、ユネスコとの連携による無償資金協力(4.89億円)に関する交換公文の署名式が中根政務官立ち会いの下で行われました。この模様は、パキスタンのメディアでも大きく取り上げられました。

(2) ファテミ首相特別補佐官(3月10日)

 
 
中根政務官から、ファテミ首相補佐官が3月14日から仙台で開催される第3回国連防災世界会議にパキスタン代表として参加することを歓迎するとともに、パキスタン政府が取り組んでいる経済・財政改革及び治安改善に向けた努力を支持し、パキスタンが民主主義と法の支配の下で安定し、発展するために協力したい旨述べました。これに対し、ファテミ特別補佐官から、第8回日・エネルギー・シンポジウムへの参加に感謝するとともに、日本が行ってきた長年にわたる支援に謝意を述べ、幅広い分野において日本からの投資が進むことを期待する旨述べました。中根政務官から、在外邦人の安全確保に対する協力を引き続きお願いする旨要請したところ、ファテミ特別補佐官から現在展開中の軍事作戦に触れつつ、日本を含めパキスタンに在住する外国人の安全確保はパキスタン政府にとり極めて重要であると述べました。

(2)アーシフ国防兼水利・電力大臣(3月10日)

     
   
中根政務官から、第8回日・SAARCエネルギー・シンポジウムの開催における水利・電力省の協力に謝意を述べるとともに、テロに立ち向かうパキスタンの取組への支持を表明し、これまで日本が行ってきたテロ対策支援について説明しました。また、中根政務官から、在外邦人の安全確保に対する協力を引き続きお願いする旨要請しました。これに対し、アーシフ国防兼水利・電力大臣から、テロ対策と電力問題はパキスタンの経済発展を妨げる要因であり、パキスタン政府にとっての最重要課題であるので、引き続き日本政府からの支援を期待する旨述べるとともに、パキスタンに在住する外国人の企業関係者や労働者はパキスタンの発展に貢献していると認識しており、安全が確保されなければならないと述べました。

(3)イスマイル投資庁長官(3月11日)

      
 

中根政務官から、既にパキスタンに進出している日本企業が抱える様々な問題点を取りまとめた要望書をパキスタン政府に提出しており、これらの問題の解決に向けたパキスタン政府の協力を要請しました。これに対し、イスマイル長官から、日本企業の抱える問題点についての具体的な取組について詳細な説明があるとともに、引き続きインフラ整備等に対する日本からの投資の促進に期待する旨述べました。

(4)ダール財務大臣(3月11日)

    
ダール財務大臣から、今年の1月に訪日し、麻生財務大臣や宮沢経産大臣といった経済閣僚のほか、官民を含め多くの要人と有意義な会談を行うことができたことに感謝し、日本からの投資や貿易をはじめとする長年にわたる緊密な関係に謝意が述べられるとともに、パキスタンの経済状況及び治安改善に向けた取組について詳細な説明がありました。中根政務官から、シャリフ政権による経済・財政改革及び治安改善に向けた努力を引き続き支持する旨表明し、在外邦人の安全確保についてパキスタン当局の協力を要請しました。

(5)パキスタン日本下院友好議員連盟(3月11日)

中根政務官は、本年2月に訪日したパキスタン日本下院友好議員連盟のレイラ・カーン下院議員やシャザ・ファーティマ・ホワジャ下院議員のほか、アマル・アユーブ・カーン下院予算委員会委員長、アイーシャ・ラザ・ファルーク上院議員等の議会関係者と懇談し、今後の議員交流等について意見交換を行いました。

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