記者会見

外務大臣会見記録(要旨)(平成23年9月)


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外務大臣会見記録(平成23年9月30日(金曜日)15時28分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)韓国訪問について

【玄葉大臣】1つは訪韓の件でございますけれども、国会の日程を含めて、諸般の事情が許せば、10月6日から7日にかけて韓国を訪問する予定でございます。韓国の訪問中には、金星煥長官と会談をするほか、李明博大統領への表敬等を調整しております。今回、外務大臣として初めて韓国を訪問いたしますけれども、韓国は最も重要な隣国でございます。忌憚のない意見交換を行いたいと考えております。

(2)平成24年度予算の概算要求について

【大臣】次に、平成24年度の概算要求でありますけれども、本日、平成24年度の概算要求を財務省に提出したところでございます。今回の要求は、我が国の最近の内向き志向から脱却をして、着実に外交を実施するという考えの下、次の3つを柱としてとりまとめたところでございます。
 第1に、開かれた復興と新たな成長のための取組みを推進する。震災に際して国際社会から寄せられた温かい支援に感謝をし、国際社会との絆をますます強化していく。また、外国の活力を取り込みながら力強い復興を実現したいと考えております。
 第2に、多層的なネットワークの形成と国際社会における一層の貢献であります。日本外交の基軸である日米同盟を深化・発展させて、また、アジア太平洋地域の平和と安定に貢献したい。更に、ODAも積極的に活用したい。
 第3に、着実に外交を展開していく上で基礎となる、海外における外交実施体制を強化したいと思います。
 この点に関して、概算要求の詳細に関しましては、このすぐ後になると思いますけれども、担当課より記者ブリーフを行いたいと考えております。

(3)偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)の署名式について

【大臣】次に、偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)の署名式の開催でありますけれども、本日の閣議におきまして、我が国がACTAに署名することが決定されたところでございます。同協定の署名式は、明日、10月1日(土曜日)午前11時から飯倉公館において行われます。
 本協定は、2005年のG8サミットにおきまして、我が国が模倣品・海賊版防止のための新たな国際的枠組みの策定を提唱したことに端を発して、日米共同のイニシアティブとして交渉をリードしてきたところでございます。交渉は我が国を含む10か国及びEUの間で行われ、昨年10月、我が国で行われた交渉会合において大筋合意し、本年4月、協定のテキストが確定をいたしたところでございます。
 署名式には、交渉に参加したすべての国・地域の代表が出席し、そのうち国内手続を終えた8か国が協定に署名する予定です。署名式には、グレイグ・エマーソン・オーストラリア貿易大臣、エド・ファスト・カナダ国際貿易大臣、金宗(キム・ジョンフン)韓国通商交渉本部長、ミリアム・サピロ米国次席通商代表始め、各国からハイレベルが出席される予定です。我が国については私(大臣)が署名をいたします。

(4)グローバルフェスタJAPAN2011について

【大臣】次に、グローバルフェスタJAPAN2011が、明日、10月1日、日比谷公園で行われる予定になっております。震災後に世界中から届いた応援の絵、そして、メッセージ、被災地の子どもたちが描いた「私の10年後」という絵のメッセージなどの展示がございますので、視察をする予定になってございます。

(5)シュワルツェンベルグ・チェコ第一副首相兼外相の訪日について

【大臣】カレル・シュワルツェンベルグ・チェコ第一副首相兼外相の訪日でありますけれども、10月6日から10月8日までの日程で、外務省賓客として訪日いたします。滞在中、外相会談を行い、意見交換を行う予定でございます。

(6)国際保健政策室の新設について

【大臣】最後に、今般、国際協力局地球規模課題審議官組織に国際保健政策室を新たに設置いたしました。MDGs、いわゆる国連ミレニアム開発目標の中でも、特に保健分野の進捗が遅れていると言われております。このため、毎年多数の人命が失われており、世界的な関心を集める外交課題となっているということで、国際保健政策室を立ち上げたいと。そのことによって、この分野のさらなる積極的な貢献を実現したいと考えております。

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日韓関係

【NHK 吉岡記者】日韓関係についてお伺いします。玄葉大臣はニューヨークでの日韓外相会談で「日韓は死活的利益を共有している」と伝えていらっしゃいます。「死活的利益」、これを英語で「Vital Interest」と表現されるようですけれども、私はこの言葉を少し調べたのですが、例えば、冷戦当時の米国のケネディ大統領が「西ヨーロッパを防衛することは、米国のVital Interestだ」とか、最近ではブッシュ前大統領が「米国の自由を守って、世界に自由を広げることがVital Interestだ」というように、国家の根幹に係わる極めて重要な利益を指すという言葉のように思うのですけれども、日本にとって韓国との関係がいかに死活的なのでしょうか。

【大臣】まず日本にとっての死活的な利益とは何かということだと思います。私(大臣)は、アジア太平洋地域において、民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序を作り上げることが、日本にとって死活的な利益だと思っています。それは韓国も同じであるというように私(大臣)自身考えておりますので、その点でまさに利益を共有するということでございます。

【NHK 吉岡記者】先日の外相会談の内容で、安保協力についても話し合ったという下りがあったのですが、具体的にどのような政策をイメージされているのかということと、なぜ日本にとって韓国と安全保障面で協力を進める必要があるのでしょうか。 

【大臣】何を話し合ったかということは、具体的に今申し上げることは適当でないと思っておりますけれども、特に、韓国内において、ややセンシティブな話であります。それでも、そういったことを乗り越えて信頼醸成をしていくことは、私(大臣)は日本と韓国にとっては、非常に大切なことだと考えております。これは、安保面だけではなくて、今回、韓国を最初に訪問するということの意味は、文字通り、先ほど吉岡記者が質問された「死活的利益を共有しているからだ」と。ですから、外相同士がまず頻繁に会う、そのこと自体が極めて大切で、頻繁に連絡を取り合える、個人的な信頼関係をしっかりと築く、これが私(大臣)は大事だと。ですから、まさに極めて重要な隣国だと思っています。

【共同通信 下江記者】先のニューヨークでの日韓首脳会談で、野田総理は国賓としての李明博大統領の訪日をと、先方からも野田総理の訪韓というのがあったと思うのですが、玄葉大臣の初めての訪問地、韓国を訪れることで、この二つが具体化する、その渡りを付けるというのか、目途というのは、どのようになるのでしょうか。

【大臣】議題そのものは、もう一言で言えば、現在調整中です。ただ、私自身は、一つ一つの会談で、何か必ず一つ一つ結実化させるということよりも、先ほど申し上げたように、特に日韓の場合は、外相同士が頻繁に会って、忌憚のない意見交換をしている、時に飲みながら腹蔵なく話し合う、そういう関係を築きあげるということが大事だと思っています。

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中国の海洋調査船の動向

【読売新聞 白石記者】中国との関係についてお伺いするのですが、昨晩も中国の船が日本のEEZの中で調査を行っていて、日本側に事前に通報があった海域外での活動だったということが伝えられていますが、今週に入ってからでもそういう事案というのが結構多発していると感じているのですが、この現状について率直に大臣としてどう受け止めておられるのかというのが一点と、日本として外交ルートを通じて何度も申し入れをしていますけれども、いたちごっこ的になっております。これについての抜本的な何か対策を含めて、どういうようにすればいいのかという二点について教えて下さい。

【大臣】2001年に事前通報の制度の枠組み、口上書でできあがっているということだと思います。それで私(大臣)としては、本日、改めて申し入れを行うと同時に、よく話し合うようにということの指示を事務方にしたところでございます。

【読売新聞 白石記者】よく話し合うようにということですが、具体的にはどういったことについて中心的に話し合うべきだという何か論点とか、そういった部分というのは今何か大臣の中ではありますでしょうか。

【大臣】私(大臣)の中ではありますけれども、あまり申し上げることは控えた方がいいのではないかと思います。要は事前通報外のエリアで活動してしまっていると。海洋調査船、EEZ、お互いの立場が違う、主張が違う中で作り上げたあの事前通報制度の枠組みの中で事前にきちんと通報してくれればだいたいは同意しているわけです。だけども、残念ながらその事前通報の外のエリアで活動してしまっているわけですから、それはしっかり話し合えば、私(大臣)は解決し得る可能性があるというように思っています。

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北方領土問題

【産経新聞 酒井記者】文部科学省も後援している国際地理オリンピックという大会の募集のポスターに北方領土がロシア領であると記載されていました。これは中川文科大臣も認めていることですが、そういう記載がされていたことについて北方領土問題を担当する外務大臣としての見解を教えて下さい。

【大臣】それはもう新聞を十分読んでいなくて、むしろ2面から読んだのかも知れませんが、一言で言えば我が国の北方領土に関する立場はご存じのとおりで一貫しておりますので、それ以外申し上げようがないということだと思います。記事の内容、あるいは地理オリンピックそのもののことについて分からないので、申し訳ありませんが、分かった上でコメントいたしますが、北方領土に関する立場は全く一貫をしているところでございます。

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野田内閣発足1か月

【読売新聞 舟槻記者】外交を離れてですけれども、野田内閣発足1か月ということで、課題として脱官僚依存に対する、いわば脱「脱官僚依存」というのはいいのですけれども、ちょっと官僚依存がすぎるのではないかという指摘があったり、情報発信が乏しいという指摘があったりするわけですけれども、この2点について大臣はどのように思われますでしょうか。

【大臣】これは野田内閣全般ですか。野田首相ですか。

【読売新聞 舟槻記者】特に野田首相です。

【大臣】情報発信については、総理はご自身でいろいろお考えになるのではないかと思っています。私(大臣)自身も、まず1か月間、今までの方々のスタイルを、例えばプレスとの関係も踏襲して、何か改善できるかどうかということを正直言って考えているところです。ですから、総理もまず1か月は試運転的におやりになられたのではないかと思います。情報発信面においては、そのように思います。本日、両院総会に私(大臣)も出ていましたけれども、ローギヤでスタートして、これからセカンド、サード、トップと言われていましたので、これからというところではないでしょうか。

【読売新聞 舟槻記者】脱官僚依存については。

【大臣】これは、私(大臣)自身はもう以前から申し上げていますが、やはり政と官の関係というのは、民主党政権になって一部履き違えがあったと考えています。
 それは、政治の役割と官僚の役割というのがあって、政の役割は、やはり政策形成を主導する。つまり主要政策の形成を主導する、あるいは政策の大綱を決めていくと。官の役割というのは、やはり中立性、専門性、あるいは技術的な部分、そういったことをしっかりと担保しながら、しっかりそれを支えていくということだと思いますけれども、やはり鳩山政権になって、気負いもあって、政治主導ということで、本来政治が入らなくてもいい官の領域にまで入っていったところが、私(大臣)はあると思います。あのときは、私(大臣)は政権の閣僚でいたわけではありませんけれども、そう見えました。
 ですから、そういった反省も踏まえながら、本来の政と官の役割に戻している段階なのではないかと。あるべき政と官の役割を模索している段階ではないかと考えます。

【フリーランス 上出氏】野田内閣発足1か月近く経ったということに関連しまして、各国からはころころと大臣も代わり、外務大臣も残念ながら代わって、先ほど韓国との関係で個人的な信頼関係と言ったのですけれども、そういう厳しい目もある中で、ほぼ1か月経って、大臣ご自身が感じている各国の日本の政治の問題点をどうとらえておられて、実際それが改善する手ごたえがあるのかということが1点。
 もう一つ、先ほど言った脱官僚に関係するのですが、たしか昨年5月に朝日新聞のスクープ記事で、ウィキリークスが日本の外交が大臣の頭ごなしに、政府の頭ごなしに外務省の官僚と米国とが直接つながってやっているという指摘がありました。今、言ったようなそれぞれの役割ということも考えて、そういう意味での信頼関係も含めてどうお感じになっているか、率直にお伺いしたいと思います。

【大臣】最初の話は全く同感です。同感という意味は、極めて大切なことですけれども、安定した政権をつくること。これは、今の日本にとって最重要なことだと思っています。それがなければ経済も、また外交も力強く展開しにくいという面はあると思います。ですから、安定した政権をつくっていく、そのことを私(大臣)は野田総理も心がけておられるのではないかと思います。例えば外交面においても、さまざまな交渉事をするときに、政権が力強い政権かどうかというのは、非常に大きな要素でありますので、そういう意味で安定政権をつくることが極めて大切だと思います。
 あとウィキリークスの話で云々という話がありましたが、基本的に当時どうだったのか私(大臣)はよくわかりません。18年前に国会議員になった、その前の話はよくわかりませんけれども、いずれにしても、先ほど申し上げたような、あるべき政と官の関係、つまりは政治は政策の大綱を決め、主要政策の形成を主導するという政治がしっかり役割を果たしていけば、今おっしゃったような懸念はなくなるのだろうと思いますし、一方で、政治家が、これも先ほど申し上げたように、本来、官僚が行うべきような領域にまで踏み込んでしまって、その資源を使い果たしていくことがいかに非効率的か、非生産的化かということも、私(大臣)は感じています。
 ですから、大いにそれぞれ一人ひとりの役所の資源なども活用して、政治家が果たすべき役割を果たしていけば、自ずから結果は出てくると考えています。

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日米関係

【琉球新報 松堂記者】先日、開かれた日米首脳会談についてお聞きします。大臣も同席なさった首脳会談の場で、オバマ大統領が野田総理に対して「結果を求める時期に近づいている」と発言して、進展を強く迫ったと報道されていますが、一方で総理は国会の答弁で、大統領の話として進展に期待しているというものだったと説明して、報道内容を否定しています。総理の答弁と報道内容は、どちらが正確なのでしょうか。また、もし総理がご指摘になったとおり、ブリーフィングした方の個人的な思いから出たものであれば、米側に対して事実関係の問い合わせや、ブリーフィング内容の訂正を求めたりすることはありますでしょうか。

【大臣】これは、一言で申し上げれば、総理が国会で答弁されたわけでございます。そのとおりだと考えます。

【琉球新報 松堂記者】米国側に対して事実関係の確認など、訂正を求めたりすることはありませんでしょうか。

【大臣】特に必要ないと私(大臣)は思っていますが。たしかブリーフの内容を読みましたけれども、そんなに大きく違っているように、私(大臣)にはあまり見えませんけれども、いずれにしても具体的な進展を期待しているということだったのではないかと。
 私(大臣)自身からは、日米外相会談では、沖縄の負担の軽減などについても要請したところでありますけれども、それぞれというか、厳しい国内事情を抱えている中で、何とか全力を挙げて理解を求めることをしていかなければいけないと思っています。

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日露関係

【共同通信 明石記者】ロシアの大統領選に関連してお尋ね致します。プーチン首相が出馬を表明し返り咲きが濃厚になっている状況ですが、プーチン氏についてはロシアの指導者の中でもユーラシアへの思い入れが大変強く、過去には領土交渉でも一定の前進をさせたというような評価・指摘があります。そういうこともあって現ロシア政権で停滞、あるいは後退している感がある領土問題への変化・期待をする声もあると思うのですけれども、大臣から見てプーチン氏への領土問題に関する評価と、あと、改めて我が国の領土交渉の方針、あるいは戦略を教えていただけないでしょうか。

【大臣】ロシアは、確か私(大臣)の記憶では、1998年から2008年までの10年間、約平均6%から7%の成長をしていたと思います。これは言うまでもなくエネルギー価格の上昇に伴って起きた現象だと思います。それによって、ある意味自信を深めた、強めたというところがあって、ナショナリズムの高まり、あるいは軍の近代化といったことがあると思います。そういう中で日露関係をどうしていくかと、本来、私(大臣)は日露関係は潜在力はあると思います。しかし、その潜在力が発揮できていない。だからこそパートナーとしてふさわしい関係を築きたいという言い方を実はしているわけでありますけれども、その潜在力を発揮できていないのは今おっしゃたとおり、北方領土問題があるからだと、まさに領土問題があるからだと思っています。この北方領土問題を解決して平和条約を締結するということが当然必要で、その点についてはいつも申し上げますけれども、静かな環境の中でやっていくということですが、同時に二つ、一つはやはり安全保障・安保間の対話を強化する、もう一つは経済面での展開というのをどう考えていくかということを併せて考えながら、あらゆる分野での協力を模索しながら日露関係というものを発展させたいと考えております。

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衛藤衆院副議長の北朝鮮訪問

【時事通信 西垣記者】衛藤征士郎衆院副議長が、議連の訪朝団を率いて、11月中旬に北朝鮮を訪問する計画をしているということのようですが、これを外務大臣としてどう受け止めていらっしゃるかということと、また一部の報道では、衛藤副議長が大臣に訪朝の意向を伝えられたというように報じられていますけれども、事実関係、どのようにお答えになったのかということを教えてください。

【大臣】衛藤福議長から、ひとつのアイデアとして、サッカー議連として訪朝する可能性があるというように聞きました。私(大臣)からは、さまざまな要素を考慮して、慎重に判断をする必要があるのではないかということを申し上げたところでございます。

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外務大臣会見記録(平成23年9月16日(金曜日)17時43分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)国連総会出席について

【玄葉大臣】国連総会について、国会のご了承が得られました。来週月曜日から国連総会に出席をいたします。出張いたします。
 世界各国の外相等とお会いし、再生に向けた日本の歩み、国際社会に貢献するとの変わらぬ決意を訴えていく考えでございます。滞在中の日程は調整中でございますけれども、例えば気候変動首脳対話、G8外相会合、ミレニアム開発目標、これは主催です。そして、第3回軍縮・不拡散イニシアティブ外相会合(NPDI)、原子力安全・核セキュリティに関する国連ハイレベル会合、これは閣僚セッションで議長を務めます。さらに第7回CTBT発効促進会議、また、アフリカレセプション、これは主催でございます。そして、言うまでもないことですけれども、各国の代表が一同に会しますから、この時に特にバイの会談、あるいはマルチの会談などを通してそれぞれの外務大臣等と信頼関係を構築したいと考えておりまして、そういったバイの二国間の会合、あるいは多国間の、例えば日本とGCCとか、そういった会合が合わせて先ほど申し上げた以外に10強あるということでございます。なお、クリントン米国国務長官とは19日の夕刻に会談をする予定ということです。

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パレスチナの国連加盟申請

【NHK 吉岡記者】パレスチナの暫定自治政府が独立国として、この国連総会で国連の加盟申請をするという見通しが濃厚になっていますが、日本政府としてこれを支持しますでしょうか。そして、この問題はアラブ世界との関係、そして、日米関係にとっても非常に重要なものだ思うのですが、そういう認識も併せてお伺いできればと思います。

【大臣】結論から申し上げますと、実はこの会見が終わってから省内の関係者と私(大臣)が議論することになっています。総会での態度は現時点で申し上げるべきではないだろうと思っています。大事な観点だけ申し上げれば、私(大臣)も実はパレスチナという地域は確か選挙監視団のメンバーの一員として、小渕団長だったと思いますけれども、行ったことがございまして、いわゆるパレスチナの国家樹立への悲願というものは私(大臣)自身は理解をしているつもりです。同時にイスラエルとこの将来のパレスチナ国家というのが、いわゆる共存する二国家解決というものを支持をするという立場であります。同時に、本来はやはり国連ではなくて直接交渉というのがよいという立場でありまして、これからそういった観点を踏まえて、総会での態度などについてしっかり検討して対応したいと考えております。

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脱北者の取り扱い

【読売新聞 白石記者】脱北者とみられる9人の関係について二点お伺いいたします。先ほど、夕方の官房長官の記者会見の中で法務大臣が一時庇護についての上陸を許可したという発表があったようですが、これを受けて外務省としても脱北者とみられる9人から話を聞くことになると思いますが、これについてはもう既に今日から始めていらっしゃるのかどうか、どういったスケジュールでやっていくのかという点が一点。
 それから、今後、その9人が韓国への移送を希望しているということで、韓国政府とも調整をされると思いますが、この調整や出国の時期については、来週以降、総理大臣や玄葉大臣が外遊にも出られるということで、時期とも絡んでくるのかなと思いますが、外遊前に移送の判断なり、そういったスケジュールを早期にやっていこうというお考えがあるのかどうか、その二点について教えて下さい。

【大臣】一時庇護を法務省が許可をしたということ、そして、「韓国に行きたい」ということを言われているとの情報に接しております。その上で申し上げれば、当然そうなれば、我が国としてまずきちんと情報収集をした上で、外務省としては韓国側と連絡を取り合うということにしております。具体的なことは、やはりプライバシーの問題とか特に安全確保の問題などがありますから、具体的には詳細は差し控えたいと考えております。
 時期についても先ほど申し上げた観点も含めて、しっかりと対応しながら時期を適切に、しかし、やはり一定程度の迅速性をもって対応しなければならないのではないかと私(大臣)自身は考えております。

【共同通信 斎藤記者】本日、自民党の部会で外務省を含めた政府関係者と自民党の皆さんの間で質疑応答がありました。その中で、今回の脱北者問題をめぐる政府の連絡体制にまずい点があったのではないかとの指摘が自民党から出ました。
具体的には、1つは官房長官が13日の日に記者会見で、13日の夕方の段階では、現時点では連絡会議を立てるという状況にはないという発言をしたけれども、実際には省庁会議は行われるに至ったと。この点が1つ。
もう一つは、海上保安庁が外務省に対して、脱北者9人が「私たちは韓国に行きたい」という発言内容を速やかに外務省に伝えていなかったのではないかという点です。この点について、事実関係も含めて、経緯も含めて、大臣のご見解をお伺いしたいと思います。

【大臣】私(大臣)は以前も申し上げたと思いますけれども、たしか閣議の段階で、もっと言えば閣議直後に私(大臣)自身のところには連絡があったということでございます。ただ、全般的に対応に遅れがあったかと言えば、必ずしもそうではないのではないかと、適切に対応しているのではないかと考えております。
「韓国に行きたい」ということを希望している云々という話は、どの段階だったかというのは申し上げるのが適切かどうかということはありますけれども、かなり早い段階で、皆様には申し上げませんでしたけれども、私(大臣)のところには入っていたと記憶をしています。早い段階というのがどの段階かというのはありますけれども。

【共同通信 斎藤記者】本日の自民党部会に出席された海上保安庁の方が、外務省に伝えた時間について、伝えた中身は今お話が出ました、「韓国に行きたい」という発言の部分です。これを伝えたのは、13日の午後1時ですね。

【大臣】13日は閣議の日ですか。

【共同通信 斎藤記者】閣議の日です。その日の午後1時に関係省庁会議をやって、その場で外務省さんにお伝えをしたと。その夕方に記者会見がありまして、私どもに聞かれたときに、大臣の方からは正確に把握していないという話がありました。ということは、そこから類推すると、きちんと海上保安庁が外務省に事実関係を伝えていたのかどうかという疑問点が1つ。もしこれが伝わっていたとするならば、午後1時から会見までの間に事務方がきちんと大臣に報告をしていなかったのではないかという疑問点を感じるのですけれども、この点について整理していただけますでしょうか。

【大臣】時系列で私(大臣)も用意しておりませんので、記憶でしかありません。ただ、事実というのは、やはりしっかり確認をした上で外に対して申し上げないといけないということなのではないかというように思います。ですから、そこら辺りは、私(大臣)自身も経緯を調査しないと、この場で何とも評価のしようがないというようにしか現時点では申し上げられないと思います。

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TPP

【NHK 池川記者】米国のシカゴでTPPの交渉会合が終わりました。終了後の会見で米国の代表は、議論に重要な進展があったということを明らかにしましたが、ベトナムの代表からは、交渉が進展すればするほど後からほかの国が加わって、合意できている部分をまた改めて交渉し直すことは難しくなるというご懸念が示されました。
 9か国は11月のAPECでの大枠合意を目指していますが、大臣はそれまでに日本が交渉に参加するかどうか、今、どのようなお考えをお持ちですか。

【大臣】ベトナムの方がどういうようにおっしゃったのか、まだ十分把握をしておりませんが、しっかりと情報収集をそれぞれの国々からしたいというように思っています。
 スタンスは全く変わりません。つまりは、しっかりと議論して、できるだけ早期に参加について判断するということだと思います。同時に、私(大臣)自身のスタンスは、これまで何回も申し上げておりますけれども、2046年に1億人を切るという、ほぼ人口統計というのは当たると言われておりますけれども、そういう状況の中で、アジア太平洋の活力というのを日本の内需にしていかないといけないということを重視していかなければならないのではないかというように私(大臣)自身は考えております。

【NHK 池川記者】つまり、APECの機会を逃してしまうと、日本はそこで入りたいといっても、ほかの9か国に受入れてもらえないのではないかという心配とか懸念は、大臣はございませんか。

【大臣】しっかりと情報収集して、そういうことも含めて、すべて総合的に判断をしていくということが大切なのではないかというように思います。本当にそうなのかということもあるでしょうし、実際の交渉の進展具合というものはどうなのかということもあるでしょうし、日本が入らないTPPというのは一体どういうTPPなのかということもあるでしょうし、すべてそういったことも含めて情報収集をした上で、時期も含めて、これからの判断の貴重な材料にしていくということだと思います。

【NHK 池川記者】今度の日米外相会談でも、このTPPのテーマは話題にされるおつもりでしょうか。

【大臣】それはやはり日米外相会談となれば、当然日米同盟がゆるぎない同盟であるべきだということ、つまりは安全保障、そして経済、更には人的交流、文化、こういった面で議論がなされますし、いつも私(大臣)自身が申し上げておりますけれども、アジア太平洋地域の不安定要因をどうやって取り除いていくか、あるいはアジア太平洋地域の中でしっかりとした共通の理念とかルールメイキングというか、ルールづくりというものをしていく必要があるのではないか。
 更に申し上げれば、中東・北アフリカの問題など、一定程度幅広く議論するということになると思いますので、当然経済の議論の中でそういった経済連携について意見交換をすることは、私(大臣)は当たり前だというように思います。

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米軍再編問題

【時事通信 西垣記者】本日午前中に沖縄関係閣僚会議が開かれましたけれども、この席上では大臣からはどういう意見をおっしゃったのかということを教えていただければと思うのが1点と、あと本日の会議には、大臣がかねておっしゃっていた民主党与党の経験ある方というのが参加されなかったわけですけれども、この点に関しては引き続き参加すべきだという意見をおっしゃっていくつもりなのかどうかという2点をお願いします。

【大臣】本日は沖縄の基地負担の軽減の問題、そして、振興策の問題などについて、率直な意見交換をいたしました。今、西垣さんが指摘されたような党との連携の在り方などについても率直な意見交換をさせていただいた。私(大臣)自身は、私(大臣)の意見を、つまりこの普天間の問題について何点かにわたって申し上げましたし、これからの議論の進め方について、沖縄の皆さんへの理解の求め方について、あるいは具体的な負担軽減策などについて、かなりいろいろなことを申し上げましたけれども、それは本日は言わないということで関係閣僚のルールになっておりますので、ご勘弁いただければというように思います。

【読売新聞 小川記者】この関係閣僚会議で基地の問題と振興策の問題を全員の大臣で情報共有されたというように理解しておりますけれども、このように両方の問題をすべての大臣が共有して意見をすり合わせるということの意義、ねらいについてはどのようにお考えでしょうか。

【大臣】それはやはり政府の関係閣僚でありますので、まずワンボイスに少なくともしていかなければならないということだろうと思います。そういう意味では、しっかりと認識を共有させて物事を進めていくということは大切だと思います。

【琉球新報 松堂記者】これまで政府は基地と振興策はリンクしないという立場だったと思いますが、本日の関係閣僚会議では、普天間問題と振興策、同時に話し合われたということですけれども、その背景について教えていただけますか。なぜ両方同時に話し合うことになったのか。

【大臣】本日も野田総理がお話を国会でされたと思います。リンクはしないということだろうと思います。

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六者会合

【日本経済新聞 田島記者】本日、中国外交部の会見で、19日に北京で六者会合に関連するセミナーを開いて、そこには関係国の代表が集まるという内容について発表しました。北朝鮮からも首席代表を務めている李容浩外務次官が出席するようですけれども、日本政府から首席代表の杉山アジア大洋州局長を派遣するお考えはあるのでしょうか。日本政府の対応についてお聞かせください。

【大臣】すみません。田島さんの今のお話は、私(大臣)自身は、現時点で承知しておりません。

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反原発デモ

【週刊金曜日 伊田記者】反原発デモの逮捕者が外交に与える影響についてお聞きしたいと思います。9月11日に新宿で反原発デモがあって、12人の方々が逮捕されたと報道されています。その中にイタリア人がいらっしゃったということで、それが逮捕されている映像がYouTubeで5万6,000回以上再生されておりまして、更にこれは増えるのではないかと思われます。その映像を見る範囲では、排外主義者と思われる方々が「日本から出ていけ」とか「逮捕しろよ」という声に警察が応じるような形で逮捕に動いたと見られかねないような映像になっております。この点について2点お聞きします。
 1つは、そういうイタリアの方と見られる方が逮捕されたということについて、在日のイタリア大使館から何らかの働きかけというか申し入れが外務省にあったかどうか。
 2番目は、そういった、日本が憲法で保障されている、言論の表現の自由すら脅かされるような国ではないかという見方がされることによって、日本外交にどういった影響があるか。この2点についてお聞きしたいと思います。

【大臣】これもすみませんけれども、本当に事実を全く承知しておりませんでしたので、現時点でのコメントは差し控えたいと思います。

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外務大臣会見記録(平成23年9月13日(火曜日)17時49分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)国連総会への出席について

【玄葉大臣】来週からニューヨークで国連総会が始まります。国連総会は私(大臣)にとりまして、外務大臣就任後初めての外国出張ということになります。一般討論が行われる来週にニューヨークに出張し、世界各国の外相等と会って、再生に向けた日本の歩み、そして、国際貢献への変わらぬ決意というものを伝えたいと考えております。いずれにいたしましても、国連総会の出席が新政権の日本外交の良きスタートとなるようにしっかりと準備をしていきたいと考えております。

(2)ルース駐日米国大使の表敬について

【大臣】ルース駐日米国大使の表敬ですけれども、昨日午後、約40分間表敬を受けた件につき簡単にご説明をいたします。これまでも、ルース大使は私(大臣)が政調会長に就任をした、あるいは国家戦略担当大臣に就任をした時に表敬をいただいた経緯がございます。また、同時に大使公邸などでも食事をしたり、あるいはAPECの席上でご夫妻と歓談したりというこれまでの経緯がございましたけれども、今回は外務大臣就任後初めてお会いをするということになって、これまで以上に密接に緊密に意思疎通をしようということで確認をしたところでございます。今回は顔会わせと、顔会わせと言っても何回もお会いをしているのですけれども、基本的には日米安保、そしてTPP、米国産の牛肉輸入問題、あるいは子の親権問題、文化人材交流等に関して意見交換をして、いずれにしてもしっかりと取り組んで日米同盟を深化・発展をさせようということで一致をしたところでございます。

(3)インドネシア外務大臣との電話会談について

【大臣】インドネシアの外務大臣との電話会談でありますが、インドネシアは実はASEANの議長国でございます。しかも、ASEANの中核として、日本政府として重視をしているということをしっかりお伝えをしたいということで、電話会談を行ったところでございます。私(大臣)から3.11の支援に対する謝意を申し上げ、同時に電話会談では今後も両国の戦略的パートナーシップを深化をさせるために外相間の戦略対話とか閣僚級の経済協議などのハイレベル対話を今後も着実に実施をする、そして、11月にASEAN関連の首脳会議、特にEASとか日本・ASEAN首脳会議に向けて緊密に連携をしていくということを確認したところでございます。

(4)日コロンビア外相会談について

【大臣】本日行われました日本とコロンビアの外相会談でございますが、既にご案内のことは省かせていただいて、いずれにしても基本的に投資協定に署名をし、本日、ラジオ放送局に係る文化無償の資金協力の交換公文への署名を行ったわけでありますけれども、コロンビアも非常に南米では力のある国といいますか、大事な国だと認識をしておりますので、今後、特にEPAのための共同研究ができるだけ早く進むようにということでお互いに事務方に指示をしようということで一致をしたところでございます。

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国連総会

【NHK 吉岡記者】本日の野田総理の所信表明演説でこういうくだりがありました。「多極化する世界において各国との確かな絆を育んで行くためには世界共通の課題の解決に共に挑戦する大きな志が必要です」と。グローバルな課題といいますと、原子力の安全とか核軍縮・不拡散、気候変動、MDGsとか中東の民主化支援などありますが、今年の国連総会の場では日本政府としてどのようなテーマで世界に向けてメッセージを打ち出していくのかと、今の時点でおっしゃられる範囲で伺えればと思います。

【大臣】今のご質問でありますが、現時点で申し上げられる範囲で述べますと、ひとつは我が国が今回東日本大震災で経験した、この教訓をしっかり伝えなければなければならない。特に原子力安全の問題については透明性が極めて大切で、しっかりと情報公開をし、そのことによって導かれる教訓というものは、我が国がしっかりと申し上げていかなければならないだろうと思います。それと、これまでも我が国がある意味リードしてきたと申し上げてもよいと思いますけれども、軍縮・不拡散の問題についても引き続き我々の果たすべき役割というものを考えて会合に臨まなければならないと思います。さらに申し上げれば、例えば開発の問題、これはODAの問題が中心になりますけれども、額が減ったとはいえ我が国には厚い信頼が寄せられていると考えていますので、当然こういった問題にも引き続きコミットするということが大切だと思います。
 また、北朝鮮の問題とか先ほど触れられた中東の問題等々についても、当然私たちは役割を果たしていかなければなりませんので、それらについてどういう形でスピーチをし、また、取りまとめを行っていくかということについて、今最終の準備をしているとご理解いただければと思います。
 ちなみに、おっしゃったとおりグローバルな課題ということもありますが、今回バイの、二国間の会談というものをしっかりと行って、個人的な信頼関係というものを構築していかないといけないというようにも思っていまして、そのことにも精力を注ぎたいと考えています。

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脱北者乗船漁船の発見

【共同通信 斎藤記者】脱北者関連でお伺いしますが、能登半島沖で、ご案内のとおりで、9人が海保に保護されて、現在、事情聴取を受けているということのようですが、この案件について、外務省は現在、どのような形でコミットし、そして、今後どう対応していくのか。この点について、ご説明願います。

【大臣】今、斎藤さんが言われた話については、当然早い段階で海上保安庁から連絡を受けているということでございます。今、海上保安庁が事実関係を確認中であるということではないかと思います。したがって、これはまず、入管法が出てきて、この主管大臣は当然、私(大臣)ではなくて法務大臣になりますが、現在は、まず海上保安庁、そして、次に入管法の世界ということでありますけれども、いずれにしても、外務大臣として、あるいは外務省としましては、関係各省庁と緊密に連携し合って適切に対応していくことが大切だと考えております。

【共同通信 斎藤記者】ご案内のとおりで、この9人のリーダー格とされる人は韓国へ行きたいと、このように海保に話をしているということのようです。もちろん、人定、スクリーニングはまだ終わっていませんけれども、政府として、または外務省として、こうした意向に基本的に応えていく立場で臨むのか、あるいは違う立場で臨むのか、基本的なスタンスについてお伺いしたいと思います。

【大臣】まず、今、韓国に行きたいということをおっしゃいましたけれども、そこはまだ正確に私(大臣)自身は把握していません。大事なことは、まず正確に把握すること。これを間違えてしまいますと的確な判断ができないということになりますので、まずきちんと正確に把握するということだと思います。その上で、さまざまな報道があったり、さまざまな情報がありますけれども、現段階で予断をもって対応するということは、むしろ差し控えた方がいいと考えていますので、いずれにしても、しっかりと、いわば正確な情報が出た時点で適切な対応をいたします。

【共同通信 斎藤記者】この個別の事件とは切り離して、野田政権としてどういうように脱北者の問題に取り組んでいくのか。いわゆる脱北者、あるいは北朝鮮で、人権でいろいろな形で弾圧を受けた、被害を受けた方々に対してどう臨んでいくのか。この点について、基本的なご認識をお聞かせください。

【大臣】いずれにしても、事案はそれぞれにおいて違ったりするわけでありますから、それぞれの事案についてしっかりと事実を確認した上で適切に対応するということだけ、現時点では申し上げておきたいと思います。

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東アジア共同体

【日本経済新聞 田島記者】東アジア共同体についてお聞きします。先週発売された月刊誌に野田総理が論文を寄稿して、この時期に東アジア共同体などといった大ビジョンを打ち出す必要はないとの主張を展開されました。この東アジア共同体構想は鳩山元首相のときに打ち出されたものですが、現首相が事実上、棚上げをする方針を示したことについて、大臣のご見解をお願いいたします。

【大臣】まず1つは、東アジアというのは日本にとっては極めて戦略的に大事な地域であるということは言うまでもありません。もともとアジア太平洋ということも申し上げていましたけれども、たしか私(大臣)は就任会見で、「東アジアのリスクを最小化する。そして、成長の機会を最大化する」という表現をどこかで使った記憶がございます。ですから、東アジアというのは極めて大切であると。
 アジア太平洋と言うと米国が入るイメージになり、東アジアと言うと米国が入らないイメージになるという問題もあるかもしれません。ただ、いずれにしても、この東アジアの中でさまざまな、いわば機能別、あるいはさまざまな段階の地域協力というものが積み重なっていくということがまずは大事なことだと、私(大臣)自身は考えています。
 そもそも東アジア共同体という定義そのものが、まだ明確になっていないと思いますので、私(大臣)自身はそういった東アジアのさまざまな地域協力の枠組みというものをきちんと積み重ねていくことが大事なことで、冒頭これも就任早々に申し上げましたけれども、余り大言壮語をせずに、着実にその成果を上げていく外交が私(大臣)はいいし、野田政権として、あるいは野田総理として、そういう思いで多分おっしゃったのではないかと推測をいたします。真っ向から否定しているとか、そういうことではないのではないかと思います。

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日米関係

【NHK 島田記者】先日、ルース大使と会談された際も、大臣はクリントン長官とお会いするのを楽しみにしているといったようなことをおっしゃっていましたけれども、日米の外相会談を調整されていると思いますが、同盟の深化や普天間の問題、それからTPPなど諸課題がありますけれども、こういった課題に関連して、また、それから初の外相会談で大臣としてはどういったメッセージを伝えたいとお考えでしょうか。

【大臣】それは、これまでも電話会談等で申し上げたこと。やはり日米同盟というのが日本外交安全保障の基軸であると。私(大臣)自身もそう考えておりますし、野田総理も揺るぎない、そういった方針をお持ちでありますから、まずそのことをしっかりと確認をし合うことが大事であると思います。その上で、さまざまな各論について、少しでも前進をさせていくということが大切だと思います。

【日本経済新聞 佐藤記者】今のルース大使との会談の中で、米国産牛肉の話が出たというようになっていますけれども、これは具体的にはどういう要請なり、あるいは大臣なりの発言があったのか、ご紹介をいただけますか。

【大臣】今のご質問については相手のこともあるので、率直に申し上げて、今この場で詳細に申し上げない方がよいかと思っています。ただ、ご存じのように長年の懸案であるということは間違いのない事実であります。
これは今、国内ではセシウムの問題などがあって、畜産農家が非常に困難な立場にあるという状況が一方である中、同時に本当にどこまで科学的根拠なのかという議論が一方で提起をされているという状況の中で、これは政府の中でしっかりと調整をしていかなければならない、私(大臣)は大事な案件だというように考えています。
 やり取りそのものは、相手のこともありますから、こういうやり取りがあったという言い方はいたしません。

【日本経済新聞 佐藤記者】ニューヨークでの首脳会談なり、外相会談でこの話題がまた取り上げられる可能性というのは高いと考えてよろしいのでしょうか。

【大臣】それはまだわかりません。先方がどういう話をされるかということは、まだわかりません。

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報道対応のあり方

【朝日新聞 松村記者】閣僚の報道対応のあり方ですけれども、本日の閣僚懇談会で何か注意喚起があったということだったのですが、更に輿石幹事長の方が情報管理の徹底をということを本日何度かおっしゃっていましたけれども、この辺り、経産大臣の辞任の経緯にもありましたが、大臣としてはどのようにお考えになっていますでしょうか。

【大臣】本日の閣僚懇のことは、それこそまた表に出さないという話になっています。ただ、いずれにしても、やはり政府の中でいわゆる調整された案件について外に出していただきたいという趣旨なのではないかというように考えております。
 ただ、確かに情報管理というのは大事なことだと思うのです。それによって、実は進むものが進まなくなるということが、政治の調整の中では実際にございます。ですから、特に相手があることの場合、信頼関係の問題などがあって、情報管理というのは、私(大臣)自身は大切にしたいともともと考えておりましたし、これは今後も大切にしたいというように思っています。

【フリーランス 上出氏】情報管理とちょっと違うのですが、例の経産大臣の辞任で、それがある意味でメディアの伝え方にも問題があったのではないかということで、輿石幹事長辺りが、その問題で動きがあったというようなことを本日の藤村官房長長官会見で言われたようなのですが、これはまかり間違うと報道の事実上の規制みたいにつながったり、いろいろな問題があると思うのですが、本日、枝野さんにもお伺いして、そういうことは心配ないとは言っているのですけれども、そこら辺の党内の雰囲気も踏まえて、大臣としてはどのようなお考えでございましょうか。

【大臣】私(大臣)は、できるだけこうした公式の会見以外にもフランクな意見交換をしたりとかということを率直に言うとしたいなと思っている人間です。少なくとも、これまでそういうようにしてきた。しかし、同時に情報管理もしっかりできてきたというように自分自身は考えております。
 今回の経産大臣の辞任そのものについてあえて申し上げれば、大変残念な事態だというように思います。本日、総理が、「福島で生まれて、福島で育って、福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てて、福島で働いて、そして福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢だ」という高校生の言葉を紹介して、福島県民の今の思いというのは本当にそうなのですね。同時に何を申し上げたかったかというと、福島県民が今望んでいることは、そういった発言によって政治が混乱すること、国会が混乱することではありません。むしろ国会が混乱せずに、政治が混乱せずに、政治が前進すること、そして復興が前進すること。このことを福島県民の皆さんは望んでいるということだけは、私(大臣)は本日いらっしゃる皆さんにも知っていただきたいと思います。

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価値観外交

【共同通信 水野記者】大臣はバイの会談などで、価値観を共有する国との関係の強化を強調されています。かつて安倍首相時代にも、価値観外交というものを推進したことがあると思うのですが、大臣の持つ価値観を共有する国との関係強化のイメージとか、あるいはねらいというものはどのようなものなのでしょうか。お聞かせください。

【大臣】今、この価値の発信の問題は、実は私(大臣)自身が問題提起をして改めて省内で議論を開始したところでございます。誤解を招かないような発信の仕方もしなければいけないということも含めて、今、議論をしている最中であります。ただ、少なくともいわゆる民主主義的価値観というものをしっかり、特に東アジアとかアジア太平洋で守っていく。これは日本にとっては死活的に重要な利益ではないかと私(大臣)自身は考えております。
ですから、例えば人間の安全保障という一人ひとりの尊厳、あるいは一人ひとりの能力を発揮させていく。そういったことに対して力を注ぐことも含めて、どういう形の発信の仕方があるのかということを今議論しているところでありまして、行うべきは価値観の単純な押しつけということではないと私(大臣)は思うのです。むしろほぼ普遍的と思われる価値観について、しっかりとアジア太平洋地域で共有していく、そのためにどうしていくか、それが実際に安定というものを創出していくことになるのではないか、そういう問題意識の中で申し上げているということだけ申し上げておきたいと思います。

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主要国における指導者交代

【朝日新聞 土佐記者】来年の2012年は各国主要国の首相の交代の時期に重なります。米国、フランス、中国、韓国、ロシア、もしかしたら北朝鮮もそうかもしれません。それに対して、多分、交代の時期になると各国が内向きになる可能性もあります。また、リーダーが各国の国内の人気を得るために、ナショナリズムをあおるような動きも出てくるかもしれません。そのために日本が準備すべきことは何なのか。その準備期間というのも、多分もう実は年内に限られていると思いますが、そこについてどういう準備が進んでいますでしょうか。

【大臣】今おっしゃったように、2012年は主要国各国選挙の年であります。傾向として、今おっしゃったようなことが起きていくという可能性はあると私(大臣)自身も思います。だからこそ的確なマネジメントというか、そういったことが大切になっていくのだろうと。それは、相手国がどの国かでも違ってまいりますし、そのときどきの事案によっても違ってくるということでありますので、私(大臣)自身もそのことは実際に分析する中でも常々感じているところでありますので、そういったことに留意をしっかり払いながら、一つひとつの対応を考えていきたいと思っています。

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価値観外交

【共同通信 斎藤記者】1つ前の価値観外交のところに戻りたいのですけれども、この価値観外交については、ご案内のとおりでいろいろな議論がありまして、積極論もあるし、あるいは疑問視する見方もあると。一つポイントとしては、その価値観外交のメッセージの発信の仕方によっては、いわゆる西側の民主主義制度をとっていない国々、例えば中東などもそうでしょう。あるいは北朝鮮、中国も若干違います。こうした国々を排除する論理になるのかどうか。私は別に排除が悪いと申し上げているわけではありません。戦略的にそうであれば、やることもあるかもしれませんが、野田政権として、やはりそこは明確に一線を画して、民主主義国家との連携を含めて、そしてそうでない国々に対してさまざま戦略的に働きかけていく立場を取るのか。あるいはそうではなくて、もう少し開かれた形でネットワークをつくっていくお考えなのか。つまり、そうではない国々を取り込んでいくのか。その辺の大まかなベクトルをご説明いただければと思います。

【大臣】まず、日本自身が発出すべき価値観、つまり、先ほどの質問は若干違っていて、価値観の共有という話を実はされたのです。そういう共有という観点で言えば、民主主義の価値観とか、あるいは自由という価値観とか、そういったものは、特に民主主義的価値観というのは、私(大臣)はもう普遍的な価値観としてほぼ定着をし、これはやはりルールに生かしていくことが大切だと思います。
 一方、いわゆる価値観外交という話になりますと、若干ニュアンスが違ってまいりまして、例えば日本が発出すべき価値観の一つ、特に独自の価値観とは何だと言ったら、例えば我が国はご存じのように歴史的にさまざまな国の文化を柔軟に受け入れてきた歴史なわけであります。例えば漢字が入ってきたら、平仮名ができて、片仮名ができてと。仏教が入ってきたら、今度は神仏混淆ができてと。あるいは鉄砲が伝来したら、もう数年後には世界一の鉄砲輸出国になって、今の技術を誇る日本になっていると。そういう開放的で、かつ柔軟性のある日本のこれまでの歴史というものを、例えばどういうふうに外に向かって発出するのかとか。あるいは現実の外交に生かすのかとか。さまざまなアプローチがあるのだろうと思っていまして、そういうことも含めて、今議論しているということであります。
 ですから、私(大臣)も若干関わっていたのですが、今日、クールジャパンのバッジを配られたのですけれども、クールジャパンをもう少し超えて何かできないかという問題意識は、私(大臣)自身の中にはあるということでございます。

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外務大臣会見記録(平成23年9月9日(金曜日)16時27分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)リビア新政府との関係について

【玄葉大臣】1つは、リビア新政府との関係についてでございます。リビアでは、本年2月に反政府デモが発生して以来、国内で戦闘が続いていましたけれども、現在、カダフィ旧政権に代わり、リビア国民暫定評議会(NTC)によりまして、民主化プロセスが進んでおります。これを受けて、我が国はリビアとの友好関係の継続を同評議会に通報することといたしました。この旨、本日の閣議において、私(大臣)より発言をいたしました。

(2)シリア政府関係者等に対する資産凍結等の措置について

【大臣】次に、シリアの制裁でございますけれども、シリアにおきましては、本年3月中旬から各地で反政府デモが発生をし、治安部隊との衝突により多数の死者が生じております。我が国はこれまで国際社会と緊密に連携しつつ、シリア政府に対して一般市民に対する武力の行使の即時停止を要求をしてきています。主要国もシリアに対する資産凍結等を実施する中で、我が国としてシリア問題の解決を目指す国際的な努力に対し寄与するため、本日の閣議におきまして、本日よりシリア政府関係者等の資産凍結等の措置を講ずることにつき、了解を得たところでございます。

(3)各国との外相電話会談について

【大臣】3つ目でありますが、一連の電話での外相会談について、それぞれできるだけ簡単にご紹介申し上げたいと思います。7日に米国、韓国、8日はオーストラリアとイギリス、本日、中国とロシアということで電話会談を外務大臣と行ったところでございます。
 最初に、7日の午前に行った米国のクリントン国務長官との電話会談でございますが、最初の相手として、米国のクリントン長官と電話会談を行って、日米同盟は日本外交の基軸であり、同盟の深化・発展に努めることを確認できたことは重要であると思っています。会談では私(大臣)から安全保障・外交、繁栄、価値の3つが国家の根幹と考えていると。こういった考え方は米国と利害が一致をしていると。日米同盟は日本外交の基軸であり、アジア太平洋地域の平和と安定のための公共財である。この地域のリスクを最小化して、成長の機会を最大化することが求められており、クリントン長官と極めて緊密に協議を行っていきたい旨伝えたのに対し、クリントン長官は、完全に同意する。日米同盟は礎であり、日米同盟を深化させることへの私(大臣)のコミットを再確認した旨述べておりました。そして、特に印象的だったのは、クリントン長官から、私(大臣)が福島県出身であると。他の人々よりも現地のニーズを知っているのではないかと。復興支援のための手段を模索していきたいと述べていたということが印象に残りました。
次に、韓国でありますけれども、韓国の金星煥外交通商部長官でありますが、1月に国家戦略担当大臣としてお会いをしておりました。自分から、これまでの民主党の基本的な方針を継続していく考えであるということを伝えました。また、日韓EPAについては、日韓が主導してルールメイキングを行っていくためにも、早期再開が重要であり、政治的なリーダーシップを発揮して、レベルの高いものをつくっていきたいという旨を伝えております。金長官からは、日韓EPAは東アジアの経済統合において重要な枠組みになると考えていると。成果のある交渉再開のための環境づくりに努力したい旨述べておりました。北朝鮮問題については、おおむね報道発表どおりのやり取りがございました。
次に、オーストラリアでありますが、日豪EPAについて、ラッド大臣から、交渉再開への強い要求が示されたところ、私(大臣)から早期に再開をさせ、しっかりとした成果を出していきたいという旨伝えました。また、本年11月のEASにつきまして、ラッド大臣から、防災分野を含め、EASに向けた協力について積極的な発言があり、私(大臣)から、EASでは本年からの米露の正式参加を踏まえ、海上安全保障、不拡散、民主的価値の共有、そしてラッド大臣が言われた防災等の政治、安全保障分野での取組みを強化していきたいというように伝えたところでございます。ラッド大臣から、日本の復興を支援するとの観点からも、日本への渡航情報を見直したと述べたので、私(大臣)から感謝の意を伝えたところでございます。
次にイギリスでありますが、ヘイグ外務大臣、日EU・EPAについて、ヘイグ大臣から交渉が開始されるよう努力してきたということが述べられて、私(大臣)から、さまざまな壁を乗り越えて、何とか交渉を成功させたいということを伝えました。リビアについて、ヘイグ大臣から、これまでコンタクトグループの下で協力をしてきたけれども、新たな段階において日本政府のご支援をいただきたいという旨の発言があったところ、私(大臣)から、リビア、いわゆるNTCについては、先ほど承認の話を閣議決定したと、承認という言葉は適切ではないかもしれませんけれども、通報したということを申し上げましたが、国造りを積極的に支援するつもりであるということを伝えたところでございます。また、私(大臣)から、世界の成長を牽引するアジアにおいて、同時に不安定要素が存在する中、我が国は地域に開かれた多層的なネットワーク、そしてルールづくりのメカニズムを構築しようと考えており、価値観を共有する英国とも協力していきたいという旨伝えました。
 そして本日、中国の楊潔チ外交部長との電話会談てありますが、楊部長から、日本の新内閣発足後、温家宝総理は、いち早く日本側の要望を受け、野田総理との間で電話会談を行ったことは、両国指導者が日中関係を大いに重視していることの現れである旨の発言がありました。個別の議題については、私(大臣)から個別の問題によって日中関係の安定的な発展が阻害されることは望んでいないと。その観点から、東シナ海資源開発に関する国際約束締結交渉の早期再開、そして不測の事態に備えた重層的な危機管理メカニズムの構築など、海洋に関する協力を特に重点的に進めたいというように伝えたところでございます。
 楊部長からの反応は、印象としては前向きでございました。交渉再開に向けて意思疎通を図ること。そして、海上の危機管理メカニズムの構築において両国の外交当局は大きな責任を有しており、ともに努力をしていきたいと述べておりました。ハイレベルの往来、接触について、野田総理の訪中に関し、先日の日中電話首脳会談でのやり取りを改めて確認したところでございます。そのやり取りというのは、温総理から早期訪中を招請、野田総理から双方の都合のよい時期に訪中したいということでございます。
 最後に、先ほどロシアのラブロフ外務大臣との電話会談を行ったところでございます。私(大臣)から、アジア太平洋地域は成長センターであると同時に、不安定な要素も存在している。自分はこのようなアジア太平洋地域に開かれた多層的なネットワークとルールづくりのメカニズムを構築しようと考えており、アジア太平洋地域で役割を果たそうとしているロシアとの関係を重視しているという旨伝えました。また、本年秋は日露間の経済的アジェンダが盛りだくさんであると。日露関係は真に戦略的次元で発展させるためには、こうした経済面での協力とともに、領土問題を解決して、平和条約を締結することが不可欠であるということを述べました。ここ数日の日本周辺におけるロシア軍機の動きを取り上げて、日本側の関心を伝えるとともに、刺激的な行動の自制を要請したところでございます。それに対してラブロフ外相からは、就任のお祝いと今般の台風へのお見舞い、そして日露関係の深化を目指しますという気持ち、そして、近代化等の経済会議の成功に向け協力をしていきたいという話。そして、平和条約については対話を継続する用意があるという話。そして、軍事演習につきましては、ロシア側の立場を述べた上で、関係当局を通じ、必要に応じ情報提供する用意があるというように述べておりました。

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米軍再編問題

【共同通信 斎藤記者】本日、大臣は沖縄の仲井真知事とお会いになりました。普天間問題をめぐり、大臣の方からどのような政府の立場を示したのか。それに対して仲井真さんの方からどのような話があったか、ご説明ください。

【大臣】本日は、仲井真知事がわざわざご訪問いただいたところでございます。最初はカメラが入っておりましたので、皆さんもご存じではないかと思いますが、私(大臣)がたしか1996年から2000年まで民主党の、旧民主党ですけれども、外務部会長という立場で沖縄の問題などにも、その当時取り組んでいたこと、あるいはこれまで政調会長という立場で、いわゆる地域振興策などにも関わっていたことなどを述べつつ、同時に知事のお立場というものは承知をしているけれども、私(大臣)としても誠心誠意向き合って、何とか昨年5月の日米合意を踏まえた形で、着実に基地の問題は進展させたいということ。そして、同時に沖縄の負担軽減についても積極的に取り組んでいく、あるいはある意味地位協定に関連いたしますけれども、事件事故の話、環境の話、東日本大震災の後、米側との防災協力というのを結びたいという意思がございますので、そういった問題などを話し合いました。
 最後は、本当は10分の予定だったのですけれども、結局20分か25分になりましたが、二人きりでいろいろ話をさせていただいて、私(大臣)としては是非、誠心誠意向き合いたいので、よろしくお願いを申し上げたいということを伝えたということでございます。

【共同通信 斎藤記者】知事は会談後、ぶら下がりに応じまして、そこで従来のご認識ではありますけれども、改めて辺野古への移設というのは時間がかかると。反対されている方も多いと。むしろ内地で滑走路があるところを探した方が、むしろ早いのではないかという話もちょろっとしたとおっしゃっていました。こうした知事の考え方はどういうように受け止められるのか。こうした知事の考えに対して、政府としてどういうように話をしていくか。この点についてご認識をお伺いします。

【大臣】まさに、今おっしゃったこと、確かに知事は本日も私(大臣)に対してもおっしゃっておられました。それに対して、いつも申し上げますけれども、誠心誠意向き合うには、胸襟を開いて話し合えるような関係にまずなっていかないといけないと思っておりまして、そういう意味で本日二人きりでお話できたのは、私(大臣)にとっては大変貴重だったと申し上げたいと思います。

【読売新聞 小川記者】今の普天間移設の日米合意を実施する時間軸の話ですけれども、菅政権の末期に環境影響評価書について、年内に提出したいという意向を沖縄県や米側に伝えたという経緯がありますけれども、玄葉大臣はこのような時間軸については同じような立場でしょうか。

【大臣】今おっしゃった環境影響評価書、このことについては基本的には同じ立場でございます。そのためにどういうふうにこれから運んでいくのか、ご理解をいただけるように向き合っていくのかということなのではないかと思っております。

【時事通信 西垣記者】誠心誠意向き合っていきたいとおっしゃったこととの関連ですけれども、前回の会見でもお聞きしましたけれども、沖縄への訪問、本日、会談の中でも出ておりましたけれども、これはやはり近いうちにやりたいとお考えなのでしょうか。であるとすれば、具体的にはいつごろ行かれるお考えなのかということが一つと、あと先般、官房長官に提言された関係閣僚会議の現在の検討状況、見通しについて教えてください。

【大臣】沖縄の訪問はもちろん、適切な時期を見て訪問させていただきたい。まだ時期を特定しているわけではありません。これから知事ともしっかり信頼関係を築きながら、時期をしっかり探りたいと思っております。
 また、関係閣僚会議につきましては、本日も藤村官房長官に川端大臣とともに早めに調整してほしいということを申し上げて、来週の早い時期になるのではないかと予測しているところでございます。それはインフォーマルなのかフォーマルなのかは、まだわかりません。
 なお、一部、野党の方も参加してというように誤解をしている方もいらっしゃるようでありますけれども、私(大臣)が申し上げたのは、野党のこれまでの人脈とか蓄積が有効に活用できるものは活用していくということなので、決して協議を一緒に関係閣僚会議でやるという意味ではございませんので、念のため申し上げておきたいと思います。

【時事通信 西垣記者】来週、早い時期に開けるのではないかということだったのですけれども、となると枠組みというか、玄葉大臣は与党のこれまでの経験者の方にも入っていただきたいという話だったと思うのですけれども、どういう枠組みで開かれる見通しになっているのでしょうか。

【大臣】ですから、そこをまさに話し合う会を、まずインフォーマルにやった方がいいのではないかというのが、率直なところでございます。

【琉球新報 松堂記者】沖縄政策協議会について、いつごろ開催なさるのか。決まっていれば教えてください。

【大臣】この沖縄政策協議会の時期については、私(大臣)自身が直接決める担当ではございませんので、今、時期について私(大臣)から申し上げることはできません。

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日露関係

【産経新聞 酒井記者】先ほど日露外相電話会談をやられたということで、軍事演習についてロシア側の立場を述べたというくだりがありましたが、これがどういうことかということが一点。
 玄葉大臣も野田首相も、領土に関わる問題に関しては毅然とした対応を取るという姿勢を見せてらっしゃいますが、中国も先月、日中中間線を超えて空軍機が来たと、それでスクランブルをかけたという事案がありました。こういった挑発的な中国、ロシアの行動に対して、どのように臨むのか。あと今回の件は、これは抗議なのかどうか。これを教えていただけますか。

【大臣】ロシア側の立場というのは、いわゆる今回の軍事演習が国際法上問題はないのだということだろうと思います。そして、私(大臣)はそれに対して、やはりここ数日のロシア軍機の動きというのは、日本国民の間でその意図とか対応について疑念が生じているということがあるので、そのことを指摘をして、その上で、先ほども申し上げたような刺激するような行動の自制を要請し、同時に関連情報の提供を求めたということでございます。
 いずれにしても、主権に関わる問題については、粘り強く対応していくこと。受け入れられないものは受け入れられないということを、しっかりと言うことが大切だし、同時に静かな環境で領土問題はしっかりと解決させていくということが特に、例えば北方領土などでは大事だと思います。

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米国同時多発テロ事件から10年

【NHK 吉岡記者】米国同時多発テロから間もなく10年となります。米国が主導したアフガニスタンとイラクでの戦争で犠牲になった人は民間人で13万人を越えると伝えられ、この中には外務省の二人の職員も含まれるのですけれども、現地では今もテロが止まず、安定からはほど遠い状態が続いていると。この間、日本政府は一貫して米国を支持してきました。玄葉大臣はこの10年を振り返って日本政府として反省すべきこと、教訓にすべきことがあったとお感じになることがあればお願い致します。

【大臣】確かに「9.11」、10年前ということでございます。改めてお亡くなりになられた、あるいは犠牲になられたご遺族の方々、あるいはご家族の方々にお見舞いを申し上げたいと思います。今のご質問でありますけれども、ウサマ・ビン・ラーディンの死亡ということで、この間それぞれテロ対策を強化をしてきて一定の成果はあったのだろうというようには思います。ただ、残念ながら深刻な脅威が存在しているということは事実ではないかと思っておりますので、これからやはり国際社会とよく連携をして引き続きこのテロ対策にあたっていくということだろうと思います。

【NHK 吉岡記者】私の質問は、この10年間、米国を一貫して支持してきた日本政府の姿勢に問題はなかったとお感じになられるかということだったのです。要するに、例えば2003年のイラク戦争の時に民主党は、国連決議がないまま米国が一方的に戦争を仕掛けたということに対して非常に慎重な立場を取るべきだということを国会でもおっしゃられていると思うのですが、アフガニスタンの侵攻、イラク戦争と、当時は自民党政権ではあったのですけれども、この10年間で日本政府として、今外務大臣として、あの時はどうだったとか、そういった反省とか当時の教訓とかをお感じになることはないでしょうかということです。

【大臣】確か私(大臣)もテロ対策関係の委員会に入っていたかもしれません。やはり米国としっかりと対話をし、時に言うべきことをしっかり言うということが大事だということを当時の民主党は言ってきたということはそのとおりではないかと思います。ただ、基本的にはこの10年を振り返って、現実に起きてしまったわけでありますので、その後の対応について、他にどういう対応が具体的にとれたかというと、残念ながら今明確に回答を出せないということではないかと思っております。ですから、この間、入国管理とかテロ資金対策などの、いわゆるテロ対策というのをやってきたわけでありますけれども、それ以外に何ができたかと言われたら、それはなかなか明確な回答は生み出せないというのが率直なところでございます。

【朝日新聞 大島記者】今の質問に関連して、特にイラク戦争ですが、これまでの民主党政権の外務大臣が、確か岡田大臣と前原大臣だと記憶しているのですが、イラク戦争を支持した判断についての検証をするということを国会の答弁等でおっしゃっているわけです。そして、ご承知のようにイラク戦争についてのそれぞれの国の判断というのは、それぞれの国で検証作業等をしている国が多いわけです。玄葉大臣としてこの件について、改めて検証というのを急ぐように事務方に指示するという考え方はございますか。

【大臣】今の話は、実は省内でまだ私(大臣)自身議論しておりませんが、そういう意味では今の吉岡さんの質問にも大いに関連するのですけれども、これまで実は検証してきたものがあるというように私(大臣)も聞いていますので、そこのところはしっかりと押さえていきたいと考えています。その結果、どういうことを導くことができるのかということはあり得るのだろうと。ただ現時点で、今明確に回答を出せるかと言われれば、残念ながら今すぐに明確な回答は出せないけれども、そういった検証を通じながらまさに今後のための教訓というものを導くことは可能かなとは思います。

【NHK 吉岡記者】今おっしゃった、これまで検証してきたものがあるのだということを、もう少し具体的にお願いします。

【大臣】省内からまだいただいておりませんけれども、外務大臣引き継ぎの時にそういうものがあると聞いておりますので、まさに申し上げたよう、今すぐその検証の内容についてどうだこうだと、教訓についてどうだこうだということを申し上げることはできませんけれども、その検証をどのように進めていくかによって、何らかの教訓を得てくということは十二分にあり得るだろうと思います。

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訪日外国人観光客の減少

【ニコニコ動画 七尾記者】日本を訪れる外国人の消費総額が、前年比4月から6月でおよそ5割減りました。また、旅行者も7月で36%減となっています。この背景には震災があったことに加えまして、やはり原発事故の影響が大きいと言われていますが、こうした現状への対応などについて、ご見解をお願いしたいと思います。

【大臣】これは開かれた復興の重要な一つが、観光客の方々の訪問数だと思っています。特に直接的でありますけれども、例えば仙台空港はもう飛んでいますが、実は福島空港などはソウルと上海に定期便を持っています。しかし、残念ながら飛んでおりません。福島県内は実際、例えばソウルから観光客がいらっしゃって、ゴルフをして、温泉に入って、ときにいわゆる医療などの検査もしてお帰りになられるという方々も出てきていて、大変な打撃を受けているというのが、率直なところでありまして、そういったことも含めて、外務省としてできることを実はやりたいと思っていまして、内々、そういう準備をしております。

【ニコニコ動画 七尾記者】重ねてですが、前回、大使館の、いわゆる外国の政府レベルに今回加えまして、今大臣がおっしゃられたことは、海外の国民に届く形で、放射能に関する情報開示を行うなどの必要性の関連という理解でよろしいですか。

【大臣】例えば福島空港については、便そのものが止まっていますので、来たくても来れないという状況になっています。まず、その便そのものを、飛べるような状況にしていかないといけないということで、できることをやっていかなくてはいけないのではないかという意味です。同時に、おっしゃる通り、在外公館などを通じて、日本はそういう意味で安全であると、科学的根拠に基づいてしっかり判断をして欲しいということを、迅速かつ正確にお伝えしていくということが大切だと思います。

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外務大臣会見記録(平成23年9月6日(火曜日)16時28分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)サントス・コロンビア大統領の訪日について

【玄葉外務大臣】サントス・コロンビア大統領の訪日について申し上げたいと思います。9月11日(日曜日)から14日(水曜日)にかけて、サントス・コロンビア共和国大統領及び大統領夫人が実務訪問賓客として来日される予定でございます。滞在中、天皇皇后両陛下が大統領及び大統領夫人と御会見になり、また日コロンビア首脳会談が予定されております。サントス大統領の訪日により、中南米地域において豊富な資源と高い経済的潜在力をもつコロンビアとの友好関係が一層強化されることを期待したいと思います。

(2)グループインタビューにおける拉致問題に係る発言について

【大臣】昨日のグループインタビューで、私(大臣)の方から、拉致問題の解決について発言をさせていただいたときに、あるいは質問にお答えをさせていただいたときに、一部誤解を与えるような表現があったかもしれませんので、一言付け加えたいと思います。あくまで安否不明の拉致被害者の皆様がすべて生存されているとの前提で全力を尽くすということでございますので、その点は誤解のないようにしていただければと思います。

(3)電力料金の引き上げについて

【大臣】全く外交と直接は関連いたしませんけれども、つい最近までエネルギー・環境会議の議長でございましたので、一言申し上げたいと思います。報道によりますと、電気料金の引き上げ・値上げが検討されているということでございます。これは、すでにエネルギー・環境会議の下で、当面の需給の対策をまとめたときに、来年夏が一番電力不足になる、いわば危険性がある訳でありますけれども、いわゆる需要の構造改革を先行して進めることで電力不足も起こさせないし、電力料金の引き上げも起こさせないという、そういう大方針を明確にしているところでございます。したがって、私(大臣)から関係の大臣にそれぞれ、これはもう大方針として決まっていることなので、政府として許可する、認可することがあってはならないということを強く申し上げたということを、この場で一言言わせていただきたいと思います。

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日中関係

【NHK 吉岡記者】日中関係についてお伺いをいたします。明日で、昨年の尖閣諸島沖での中国漁船による衝突事件から一年となることで、この間、やはりガス田交渉など中断したままで、なかなか日中関係がギクシャクしたままであるという指摘があります。この点についてどう改善を図っていこうと思われているのかということと、少し具体的なことについて伺うと、日中の電話での首脳会談を調整されていたり、月末にニューヨークでの国連総会での場で二国間の会談を予定されているのかとか、あるいは、本年がシャトル外交の中では、日本側の首脳が中国を訪問する年にあたりますが、その点の見通しも併せてお伺いできればと思います。

【大臣】おっしゃるように、ちょうど一年前に尖閣の事件が起きたということでございます。昨日のグループインタビューでも申し上げましたけれども、一つはやはり、日中間の誤解というものを生じさせないための重層的な危機管理メカニズムというものを、なんとか構築できないかと考えています。それと、国民感情の問題もやはり大事なので、これは、今、絆プロジェクトということで外務省でも考えておりますが、やはり青少年交流というものをしっかりやっていくということも、地味だけれども長い目で見ると非常に大切なことになると思います。それと当然、首脳間の直接対話、あるいは外相同士の会談というのは、必要なことでございますので、そこは、まさに大体ご想像のとおり、さまざまなことを視野に入れて、現在考えているところであります。ちなみに、来年、日中国交正常化40周年だと思います。したがって、そういった中で、どのような、先ほど申し上げたような国民感情の改善というのが出来るのかということを再度考えたいと思います。

【共同通信 下江記者】先ほどの危機管理メカニズムの話ですが、これは5月の日中首脳会談で菅前総理と温家宝首相との間で早期に構築しようということだったのですが、それから数ヶ月経ちまして、今まだ具体的な進展がないと思うのですけれど、もし具体的に進展があるのであれば進展状況と、ないのであれば今後どのようにこれを具体的に進展させていくのか、お聞かせ下さい。

【大臣】おしゃるように問題は具体化です。昨日のグループインタビューでも申し上げましたけれども、ホットラインというのがあっても、いつ・誰が・どこで電話を取るのかということでホットラインにならないという側面もあるわけです。ですから、そういった具体的な詰めをしていかなければならないし、今している状況であると。つまり、危機管理メカニズムをかつてのホットラインのように作ったといってそれで終わりでは、何もならない、つまりは実が上がる、実際に機能するものを作り上げるために今両国間、実務者間で協議をしているということです。

【共同通信 下江記者】尖閣事件から1年経って、しかし、8月24日にあのような領海侵犯が起きたと。2008年以来の領海侵犯だと思うのですけれども、これの再発防止策というのはどうなるのでしょうか。

【大臣】先般の領海侵犯について、極めて遺憾な事態だと思っております。だからこそ、先ほど申し上げたようなメカニズムを構築していくということが大事ですし、同時にこれは実は東シナ海だけではなくて南シナ海を含めてさまざまな国際的な関心事項があるわけでありますので、やはり、これは中国も含めて国際的なルールをしっかり作り、かつそれを遵守するという形を作り上げていかないといけないと。極めて大切な課題だと考えております。

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普天間移設問題を巡る関係閣僚会議

【毎日新聞 犬飼記者】午前中の官房長官会見でも出たようですが、昨日の外相のインタビューで普天間の移設問題を巡る関係閣僚会議について官房長官に提案したみたいですけれども、これについて新設するという報道もあるのですが、これまでいわゆる関係閣僚会議というのもあったと思うのですが、それとの違い、あるいは中身、それと官房長官にどのような提案をされていつぐらいにそういうものをやるのかということについてお伺いできればと思います。

【大臣】確か本日、官房長官は近日中にフォーマルかインフォーマルか別として開きたいと、こうおっしゃったのではないかと思います。私(大臣)としては既にある関係閣僚会議を活用するということでも良いかと思いますが、ただ、私(大臣)個人の提案で申し上げれば、やはりこれまで例えば前原さんはじめ、あるいは枝野さんもそうかもしれませんけれども、この間、信頼関係の構築に努めてきた方々の資産というものがあるわけです。今回は党に正式な形で役職として残っているのは前原さんでありますけれども、かつて私(大臣)は政調会長でありましたが、正式にそういった関係閣僚会議に出たのは最後の会合だけだったのです。ですから、今までの関係閣僚会議をさらにより強化するような形でそれらができあがるとい良いなと。だから最初はインフォーマルにさまざまな意見交換を行っていくのが良いのではないかと。そして、その次の段階で正式なものにしていくということが私(大臣)は良いのではないかと思っています。

【毎日新聞 犬飼記者】そうすると、党の幹部の方も含めた会議に発展的にさせるというのと、もう一点ですが、沖縄への訪問、沖縄の理解を求めるために、正直言うと、これまで沖縄問題は余り関わっていらっしゃらなかったと思うのですけれども、そういう意味でも、その辺の沖縄との相互信頼をどう深めていくかについてお伺いできればと思います。

【大臣】当然、適切な時期に訪問させていただきたいと思っています。
 ちなみに、関わってこなかったかと言われれば、政調会長として全く関わってこなかったわけではないということが1つあるのと、私(大臣)は2期目はずっと3年間外務部会長でおりましたので、そのときに沖縄訪問を何度かさせていただいて、当然、普天間も嘉手納もそれぞれ視察をしております。ですから、全く土地カンがないとか、そういうことではございませんので、ただ、これから現在のキーマンと言うと語弊があるかもしれませんが、責任ある立場の方々との信頼関係は極めて大切になりますから、どういう形で臨んでいくことが、向き合っていくことが一番、信頼関係構築に近道なのか、そのことを考えながら、ひたすら誠心誠意、向き合いたいと考えております。

【週刊金曜日 伊田記者】普天間の移設に絡んで、基本的な沖縄への認識についてお伺いしたいと思います。
 昨日のインタビューで、「沖縄の負担軽減は大事なので、踏まれても蹴られても、誠心誠意、沖縄の皆さんに向き合っていく」というように発言されております。この真意についてお聞かせください。というのは、つまり、これを素直に読みますと、玄葉氏側が踏まれ蹴られる側で、沖縄側が踏み蹴る側、つまり加害者というように聞こえます。これは別に言葉じりを取り上げている問題ではなくて、基本的な認識の問題だと思っております。日本の陸地面積の0.6%を占めるにすぎない沖縄に在日米軍の74%が所在しているのは著しい不平等であり、ここに構造的な差別があるというように沖縄の人たちが思っていると考えております。発言の真意についてお聞きしたいと思います。
 関連してですが、2日の会見で、正確な情勢認識をすることが大事だと述べられております。沖縄に関しては、平成22年2月23日の会見で、当時の岡田外相が『琉日戦争1609』という本を読んで勉強していると言われたことがあります。菅首相が『琉球処分』という小説を読んで勉強していると言われたことがあります。玄葉大臣は、正確な情勢認識をするときに、例えば岡田さんとか菅さんみたいに、こういったことで勉強していきたいとか、そういうようなお考えがありましたら併せてお聞かせください。

【大臣】踏まれても蹴られてもということを申し上げましたけれども、決して加害者とか被害者とか、そういうことを意図して申し上げたとは、私(大臣)はほとんどの方は解釈されないと思います。つまり、私(大臣)自身がある意味、非常に厳しい立場に立ってもさまざまな不満を、あるいはさまざまなお話を、どんなことを言われても、やはり私たちが耐えなければいけないという意味で申し上げたわけでございます。
 それと、小説を読むことが勉強か。確かに、それも一つの勉強の方法だと思います。私(大臣)自身も、小説名は忘れましたけれども、あるいは本のタイトルは忘れましたが、何冊か、当然、沖縄関連の本は読んだことがございます。ただ同時に、さまざまな方にお会いして、沖縄の事情をお聞きすることも大切だと思います。ですから、そういったことを電話で、今もう既に行い始めておりますし、また同時に、お会いして、そういった事情をしっかりとお聞きするということをやっていかなければならないと思います。

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国会との関係

【読売新聞 白石記者】外務省と国会の関係について2点お伺いします。
 1点目、昨日、民主党の党や国会の役員人事が内定したと思うのですが、その中で、衆議院の外務委員長に、外務大臣を務められた田中真紀子さんがなられたということで、これについて大臣として所感とか受け止めがありましたら教えていただきたいのが1点。
 もう一点は、松本前外務大臣の時代もそうですけれども、衆議院、参議院、予算委員会のときに全閣僚が出席していて、なかなか慣例で外務大臣が外遊に行きにくいという状況があったと思うのですが、この点について、大臣としてはどう国会に理解を求めるのか。また、何か総理や外務大臣の外交を優先するような仕組みとか、そういったものを考える必要があるというようにお考えになっていらっしゃるのか。
 その2点について教えてください。

【大臣】まず、田中真紀子委員長は、外務大臣の経験をされた方でございますので、私(大臣)はむしろ心強いと考えておりますし、個人的には財務金融委員長のときに、たしか文科の委員長をされておられて、毎週1回、国対の会議で顔を合わせて、実は隣同士でよくお話をさせていただいた経緯があります。同時に福島県にも縁がある方で、夫の田中直紀先生は福島県からもともとお出になっていたということもあって、共通の話題もあって、私(大臣)自身は非常に気さくにいろいろとご指導いただいているということでございます。
 外遊の話は、私(大臣)はかつてよりは自民党を始め、野党の方々も理解を示していただけるようになってきたのではないかと思います。これからも更に国益、国民益を考えれば、必要な国際会議に政治家が、特に大臣が出られないというのは、国益を害するというのは実は多くの国会議員が認識をしている、共有していると実は思っておりまして、私(大臣)は徐々に野党の皆さんの理解、これはさすがに与党を長く務めてこられた自民党、公明党さんが今、野党だということもありますので、私(大臣)はかつてよりはそういった理解は深まっていると思いますので、これから更にそういった外遊を国会中もお認めいただくようにお願いをしたいなと考えております。

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電力料金の引き上げ

【テレビ朝日 花村記者】大臣が冒頭おっしゃった電気料金の件で確認させてください。お話されたのは鉢呂大臣、ほかの方もでしょうか。どなたにどうお話をされて、その方はどうお答えになったか教えてください。

【大臣】これは、いわゆる仕切り役は国家戦略担当大臣であり、古川国家戦略担当大臣にも申し上げましたし、ただ、法律上は経産大臣でございます。
電力料金の引き上げをいかに抑えるかということについては、基本的にはいくつかの手法があるのですけれども、やはり電力会社の中で吸収する努力をやらなければなりません。今、財務の調査委員会が結論も出ていない状況の中で申請するというのは、まだ申請していないのですが、私(大臣)は余りに非常識だと思っておりまして、もともとの大方針にも全く背く話ですし、このことについては看過できないと思っています。

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TPP

【NHK 池川記者】TPPについてお伺いさせていただきます。
 大臣は先日の記者会見でも、農業に力を入れてTPPについて政府の方針としても早期に判断したいとお話しされていらっしゃいますけれども、今年11月にはAPECの閣僚会合、首脳会合があります。できるだけ早期とは言われますが、交渉に参加するにもタイミングというのがあると思います。経産大臣に鉢呂さんが就かれて、農水大臣には鹿野さんが再任ということで、新たなトライアングルの体制でTPPの交渉参加の判断に臨まれると思うのですけれども、APECまでに交渉参加の判断をすべきかどうかとまず思われるかどうか、教えてください。

【大臣】まず、昨年11月に高いレベルの経済連携を行うという大方針を立てたと。これは党も含めて立てたと。タリフラインは大方の国は90%以上にもかかわらず、日本は実は80%台である。それをまず90%台に上げたということの意味は、以前も申し上げましたけれども、大きいです。
 TPPにどう臨むかということに関しては、本来は二国間の高い経済レベルを進めながらTPPに向き合っていく、そして結論を出していくというのが、実は1つの有効なプロセスだと今なお思っているところがあります。ただ、3.11があって、残念ながらそういった時間的余裕がなくなってきているという側面があるということだと思います。
 ただ、いずれにしても農業に対して、特に畜産、小麦ですけれども、日本人全体で、国民全体で支える農業をつくり上げると。以前も申し上げましたけれども、92年にマクシャリーさんという人がEUでは改革を行って、直接支払い制度を導入している。7割方たしか直接支払いになっている。米国でさえ4割である。日本は23%だったと思いますけれども、個別所得補償制度を導入してたしか4割近くになりました。
 やはり直接支払い制度を本格的に導入するということをしっかりうたって、そして、それは別に1年の予算でできるわけではありませんし、実際に交渉は1年で終わるわけではありません。交渉は仮に早く終わっても、実際はもっとかかると思いますけれども、早く終わっても、実際の自由化というのは時間がかかるわけでありますから、その間にそういった農業、つまり「攻めの農業」ができ上がればいいわけです。ですから、そういったプロセスをしっかり踏んでいくことで、実はTPPに対して早期判断の道筋が描けるようになるのではないかと思っています。
 9月に何を見るか、11月に何を見るかというのは、これから政府部内で調整をしたいと思っています。

【NHK 池川記者】そうすると、11月までには政府としての方針は何かしら決めなければいけないという認識をされているということでよろしいのでしょうか。

【大臣】まずTPPそのものについての、それこそ情勢認識というか、情報分析が必要です。以前は11月にすべてがまとまるという状況だという大前提で物事をお考えになっていた方が多いと思います。私(大臣)は現状はそうなっていないと思います。だから、すべての情報をしっかりと把握しながら、いつが適当なのか。それはなるべく早い時期が私(大臣)は適切だと思います。ルールメイキングに参加することがいいと私(大臣)も思います。
 ただ、先ほど申し上げた、一定の国内合意を取り付けながら行っていくことが、最終的に国会で批准しなければいけませんから、当然、交渉結果を見ての批准になるのですけれども、やはりそういったことをしっかり見通しながら、最終的に11月に何を申し上げるかということを判断することになろうかと思います。

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今後の外国訪問の考え方

【読売新聞 向井記者】2点伺います。
 まず1点目が、大臣の外遊に対する考え方をお聞きしたいのですけれども、9月下旬にニューヨークで国連総会があります。日本の外相は就任後、米国に初めて行かれるケースが多いようですが、大臣は9月下旬までにどこかほかの国に外遊に行かれることも視野にいろいろ今検討中なのか、それともやはり米国に一番に行かれたいというお考えなのか、その考え方を伺いたいのが1点。
 2点目は、先ほどの普天間の関係閣僚会議の在り方についてお話になりました。大臣の政調会長、国家戦略相を兼ねられた際の経験を踏まえたお話だと思うのですけれども、今、党の政策調査会は在り方を見直していますが、逆に党政調会長も入ることで外交の機能が、司令塔が分散してしまうおそれはないのでしょうか。その辺りはどのように整理するべきとお考えでしょうか。

【大臣】1つは外遊でありますけれども、当然、国連総会には出させていただくと。その前後をどうするかということについては、今検討中ですが、1つだけ申し上げることができるのは、本格的な第3次補正予算を審議する臨時国会、つまりは総理の最初の所信表明の演説の国会ではなくて、本格的にいつ招集なのかわかりませんけれども、第3次補正予算が国会に提出されて、それらが審議される国会の前に、やはりできるだけ私(大臣)としては外遊をした方がいいという考え方でございます。
 そして、普天間の関係閣僚会議の在り方でありますが、先ほど申し上げたのは私(大臣)の全く個人的な私案でありまして、やはりそれぞれの今までの資産というか蓄積は活かした方がいいと思うのです。もっと言えば、野党の方々の資産だって、私(大臣)は活用すべきだとさえ思っているのです。大事なことは、どこできちんとまとめるか、どこできちんと統合するかということで、てんでばらばらに脈絡もなくやっていることがむしろ問題で、例えばそういった会議に入らないまま、沖縄でいろいろなことを例えば発信したり、さまざまな方と会ったりする方がむしろ混乱のもとになりかねないので、むしろ関係している方々はきちんと一元化するためにも、しっかりと1つの会合に集まるという方が私(大臣)個人は望ましいのではないかと考えております。

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風評被害対策としての情報発信

【ニコニコ動画 七尾記者】3.11に絡んでですが、一部報道によりますと東京のドイツ大使館で現在、参事官などの重要ポストを含む約10のポストが空席となっておりまして、この背景には福島第一原発による放射能汚染に対する懸念によって、日本への赴任を思いとどまっているということが言われております。
 大臣が先日の会見で、放射能に対する世界のリテラシーの問題点を指摘された上で、今後、国際会議などで正確な情報発信を行っていくと発言されましたが、今、申し上げた大使館の事例や、大臣の言われる国家ブランドの推進等々を考えますと、今後、更に対策を強化していくなどのお考えはございませんでしょうか。

【大臣】とってもいい指摘をしていただいたと思いますけれども、今のドイツ、個別の大使館のことを申し上げて、私(大臣)もいいのかどうかということはあるのですが、仮にそれが本当であれば非常に残念な話であると私(大臣)は思っております。
 一言で言えば、いわゆる風評被害に対する対策というのは強化するというよりも、本当にもっともっと強めていかないといけないと思っていまして、在外公館はもとよりでありますが、在京の大使館がそうであるということになると、しっかり在京の大使館の方に向けてもしっかりとした発信をし、説明をしていかなくてはいけないのではないかと思います。

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グループインタビューにおける拉致問題に係る発言

【共同通信 斎藤記者】大臣が冒頭でおっしゃられた例の拉致問題発言のところですが、私はそこに出席していないので、グループインタビュー毎に表現が違ったりするとあれですので、一応大臣が誤解がなきように修正したい、そこの部分の質疑を、記憶の範囲で結構ですが、誤解をなくすために紹介していただけますでしょうか。こう発言したのだけれども、ここはこう変えたい。あるいは誤解するおそれがあるのでこうしたいというところをもう一回整理してお伺いしたいと。お答えをお願いできますでしょうか。

【大臣】私(大臣)自身も詳しく読んでないのですけれども、民主党のいわゆる外交安保調査会の分科会で、何をもって拉致問題の解決とするのかという話について云々という質問が実はあったときに、私(大臣)としての答えをさせていただいたと。そのときに報道を私(大臣)自身も今朝、読ませていただいて、これはもしかしたら誤解を与えるかもしれないなということで、少なくともとにかくすべての拉致被害者の安全確保と即時帰国、そして、真相の究明等の実現を目指していくのだという立場は言うまでもないことですけれども、変わらないし、同時に先ほど申し上げましたが、安否不明の拉致被害者、その方々はすべて生存しているという前提で全力を尽くしますと。そこが誤解される可能性があるなと思ったので、念のため私(大臣)としては一言冒頭に申し上げたということです。

【共同通信 斎藤記者】今おっしゃられたことが民主党の党側から出ていた、何をもって解決とすべきかという部分に対する政府の立場だと受け取ってよろしいでしょうか。

【大臣】それは結構です。

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外務大臣会見記録(平成23年9月2日(金曜日)21時23分~ 於:本省会見室)(動画版他のサイトヘ

冒頭発言

(1)就任挨拶

【玄葉大臣】皆さん、こんばんは。初めて霞クラブで会見をさせていただきます。
 先ほど、官邸でお話を一部させていただきました。この度、外務大臣に就任いたしました、玄葉光一郎です。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど申し上げましたけれども、やはり外交というのは、どうやって我が国の国益を最大化するかということに尽きるのではないかと考えております。そのために何が大事かといえば、国家戦略担当大臣をしていたから申し上げるわけではありませんけれども、やはり戦略的な思考、もっと別の言い方をすれば、合理的な思考というのが大切なのではないかと思います。
 まずは、正確な情勢認識をするということだと思います。その上で我が国が守るべき、死活的に重要な国益とは何かというのをしっかりそれぞれの諸課題について定義をして、そして合理的な手段の組合せを考えていくということをそれぞれの課題についてこれから行っていきたいと思っています。
 省内でも、私(大臣)は政と官の役割というのが、外務省でそうであったとは申し上げませんけれども、民主党政権になって、一部、政と官の役割分担について、あるいは政治主導について履き違えがあったということを国会答弁などでも申し上げてまいりました。やはり政治は政策形成を主導する、あるいは政策の大綱を決めると。官の役割というのは専門的・技術的・中立的な立場でしっかりそれをサポートするということだと思います。そういった役割分担をしっかり行って、プロの外交官を十二分に活用していくと。先ほども申し上げましたけれども、東アジアのリスクを最小化する、成長の機会を最大化する、このことが大事だと。
 先ほど孔子の「兵・食・信」という話をしましたが、「兵」というのは防衛力であり、日本の場合はやはり外交・安全保障だと思います。「食」というのは繁栄ですから、さまざまな手段が当然あるわけであります。これは社会保障や税の一体改革もそうでしょう。ただ、外交的に言えば、これまでも民主党政権になって進めてきた経済外交はやはり大事にしなければならないと思います。
 そして、価値というのは、例えば、我が国は言うまでもなく、歴史的にさまざまな、いわば外国の文化などを、あるいは技術もそうでしょう。しっかり取り入れて、そういった柔軟な対応をして、日本流にアレンジをして、日本ブランドというものをある意味築いてきたように私(大臣)自身は考えております。そういった、ある意味、日本ブランドといいますか、今、実は国家戦略室では国家ブランドというのを内々検討させてまいりましたけれども、国家戦略室などともこれから連携して、クールジャパンを超えるような、単なる文化の発信に終わらない、価値の発信というものがどういうようにできるのかということを、今、私(大臣)自身は問題意識として非常に強く持っているということを冒頭申し上げておきたいと思います。
 あとは、先ほど官邸での会見をお聞きいただいたと思いますので、繰り返す必要はないかなと思います。

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北朝鮮関係

【毎日新聞 犬飼記者】大臣にお伺いしたいのは、北朝鮮外交です。先ほど官邸で、六者協議の見通しについてお話がありましたけれども、一方で日朝協議、北朝鮮は4月に南北協議、米朝協議とやりまして、また、中露の首脳会談をやり、対話の姿勢を強めております。そういった中で、拉致問題、核問題について早期解決を図るために日朝協議をどういうようにやっていくのか、あるいは早期に開催する意欲があるのか、そういったことについてお話しください。

【大臣】基本的に、この問題は従来からの方針どおり、いずれのときにか、不幸な過去を清算して国交正常化するという基本的な方針に変わりはないと考えていただいてよいかと思います。ただ、我々は言うまでもなく、対話を拒むなどと言うつもりはございませんし、その必要もない。ただ、日米韓とよく連携をしながら、先ほど申し上げましたけれども、まず北朝鮮自身が対応をしなければいけない課題が現時点ではあるということを私(大臣)自身は認識しています。これから先は、新たにできる政務三役、あるいは省内でしっかり議論して対応していきたいと考えております。

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インテリジェンス体制

【NHK 吉岡記者】冒頭お話がありました、まずは正確な情勢の認識をすることが重要だというお話の中で、玄葉大臣はご自身のホームページの中でもインテリジェンス体制を確立するのだということで、これまでの国会審議でも現状の体制はお粗末だということでこの点を取り上げてこられました。過去には危機管理庁の創設というのも提言されていますが、改めて外務大臣になって、このインテリジェンス体制を強化するお考えはおありですか。具体的にどうなされるおつもりか、今のお考えをお聞かせください。

【大臣】よく昔の私(大臣)の質問を勉強されているなと思いますが、かなり過去の話ではないかと思いますけれども、私(大臣)自身は今も強い問題意識を持っています。情報がなかなか上がらなかったり、回らなかったり、漏れたりという問題は、十二分な改善がなされているとは私(大臣)自身認識しておりません。したがって、このインテリジェンス機能というのは、ヒューミントも含めてでありますけれども、やはりより深く考え、同時に何らかの対応をしていかなければいけないのではないかと。
 実は政調会長のときに、外交・安全保障の調査会の中でもこの問題をあえて検討してほしいということを私(大臣)自身が投げかけて、実は一定の中間報告が来ております。ですから、党の方ともその具体的な中身の在り方についてしっかりと議論して、同時に省内でも議論して、もっと申し上げれば、これは外務省だけではないのですよ。警察も関連すれば、官邸そのものの危機管理も含めた問題でありまして、お互いがお互いに牽制し合って、なかなか情報が共有されないということがあるのはご存じのとおりでありますので、私(大臣)は先ほど申し上げたように、情勢認識をきちんと正確に把握するということを考えれば、そのためだけに先ほど申し上げたわけではありませんけれども、このインテリジェンス機能というのは日本にとって、これは外交のみならず、極めて大切な問題だと思っています。
 ですから、去年の秋に先般の尖閣の、例の公務執行妨害の話がありましたね。あのときに、いわゆる情報の保護の問題といいますか、保全の問題が議論になって、私(大臣)自身はそういったことは大いに進めるべきだと。以前から、たしか私(大臣)は野党の立場であるにもかかわらず、しかも民主党という政党の中で、どこかの委員会で指摘をした記憶があります。ですから、そういったこともやはり国民の皆さんによく理解をいただく中で、当然、プライバシーの問題とか、表現の自由の問題とか、いろいろ関係ありますから、しっかりバランスの取れた結論を出して、インテリジェンス機能を高めていくということもこれから具体的に考えたいなと思っています。

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外交基本方針

【時事通信 西垣記者】外務大臣に就任するに当たって、総理からどのような指示があったのかということと、あと、外務省に入られて幹部の方々と協議されたと思うのですが、何か指示をされた点、要望した点等あれば教えてください。

【大臣】ちなみに、こういう指示書がございまして、ただ、私(大臣)は政調会長として全体をチェックしていますので、これを渡されるのです。これはかなり抽象的でありまして、9点あって、例えば、「世界に開かれた復興を実現するために日本の復興・再生に関し効果的な対外情報発信等に努める」と。ちなみに、私(大臣)は福島の出身だということは申し上げましたけれども、放射能に対するリテラシーというものは、私(大臣)は世界中で問題点が大いにあるというように考えていまして、この点について正確な情報発信をそれぞれの会議の場で行っていくと。そして、「福島の復興なくして日本の復興なし」と総理がおっしゃいましたけれども、やはりそういったことをきちんと成果を出してみせるということが日本全体の存在感というものを大いに高めていくことにつながるのではないかと思っています。
 2つ目は、「21世紀にふさわしい形で日米同盟の深化、そして普天間と沖縄県における基地負担の軽減について、日米合意を踏まえて必要な取組みを関係大臣と連携して速やかに進める」。
 3つ目は、「強固な日米関係を基盤として、中国、韓国、ロシア等の近隣諸国との協力・連携を推進する。ASEAN、豪州、インド等とも関係を深め、開かれたネットワークを発展させる」。
 4つ目は、「包括的経済連携に関する基本方針に基づき、世界の成長を取り込み、産業空洞化を防止する観点から、高いレベルのEPA/FTA実現のために必要な施策の実施に全力で取り組む。TPP交渉参加の判断時期については、総合的な検討を加えた上で早期に決定する」。
 5つ目は、「世界の平和と繁栄の実現に向けて、国際協調の下、核軍縮、核兵器廃絶、国連平和維持活動などの諸課題の解決に全力で取り組む」。
 6つ目は、「北朝鮮の核、ミサイル、拉致等の問題の解決に全力を尽くす」。
 7つ目は、「テロの脅威を除去するため、アフガニスタンなどの復興支援や近郊の国々に対する積極的な支援を行う」。
 8つ目は、「緊迫化する中東・北アフリカ情勢を含め、さまざまな国際事案に関し情報の収集・把握に努めながら、邦人保護に万全を期すとともに、エネルギーを始めとする経済情勢の変化などに的確に対応する」。
 最後の9つ目、「地球温暖化対策を政府全体で推進するとともに、日本が国際的に主導的な役割を果たせるよう関係大臣と密接に連携する」。
 あえて読みましたけれども、こういう指示書を渡されて、特に、たしか日米、日中を建て直すべきところがあるように思うので、しっかりと取り組んでほしいという話をいただいたということでございます。

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北方領土問題

【北海道新聞 相内記者】北方領土問題です。ロシア要人が次々と訪れ、社会基盤整備も急速に進んでいる北方領土ですけれども、北方領土問題をどのように取り組み、対処されていかれようと思っていらっしゃるか。
 それと、前原元大臣が四島で日露共同経済活動は何かできないか双方議論していくということを提唱され、ロシア側も同意されましたけれども、大臣はどのようにお考えになられるか、教えてください。

【大臣】これは言うまでもなく、日露間の最大の懸案だというように思います。これはこれまでの歴史的なそれぞれの諸文書が、あるいは諸合意がございますけれども、北方四島の問題の帰属、その帰属の問題をしっかり解決しながら、いわゆる平和条約を締結すると。1956年に日ソ共同宣言があって、そのときに、残念ながら領土の問題があり、平和条約にしなかったという経緯があるわけでありますので、それをどういうように進めていくかというのは、前原元大臣がいわば仕掛けをされたその点についてもよく検討して、基本的にはその考え方を継承したいなと現時点では考えております。

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領土・海洋権益問題

【共同通信 斎藤記者】今、北方領土の話が出たので、ほかの領土問題等々、包括的にお伺いしようと思うのですが、もうご案内のとおりで、日韓の間には竹島があると。それから、尖閣の場合には、あえて我が方の立場からすれば、領土問題と言わず尖閣問題と言った方がいいでしょうか。ほかにもガス田問題、いわゆる海洋権益の問題などもあります。玄葉大臣は、一連のこの領土・海洋権益問題に厳しい交渉に臨んでいく基本的なスタンスについて、どういうように臨んでいこうとしているのか。これをお伺いしたいしたいのと、もう一点あります。
 これは全然関係ないのですが、前原さんは就任のときに、「経済外交」というネーミングを付けました。その後の松本さんは、「復興経済外交」と名を付けたわけです。では、玄葉大臣はどのように名づけられるかと。もしお考えがまだ今なかったら、あえてと申し上げませんが、何か言ってやろうというものがございましたら、ご披瀝をと思います。

【大臣】最後のところはもう少し時間をいただけたらと思います。やはり人間関係には、例えば与野党の政策協議であっても、情の世界というのが非常に大きく支配するところがあります。しかし、外交は、ある冷徹な世界だと思います。そして、特にこの主権に関する話というのを私たちは大事に扱っていかなければいけないことは言うまでもないことではないかというように思います。
 尖閣は言うまでもなく、領土問題は存在しないというのが我々の立場でございます。竹島と北方領土は、粘り強く対応するということだけ、現時点では申し上げたいと思いますが、本日も佐々江次官を始め、皆さんいらっしゃったので、やはりこの問題は、私(大臣)自身も含めてというか、新しい政務三役も含めて、よく議論しようではないかということを申し上げています。現時点では、それだけ申し上げておきます。

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経済外交

【日本テレビ 野口記者】まずは、大臣ご就任、誠におめでとうございます。先ほどの斎藤さんの質問とも少し関係することですけれども、経済外交ということを大臣は冒頭に強調されて、まず1つの例示として、クールジャパンを超えるものを打ち出したいというようにおっしゃいましたが、それ以外に何か経済外交の指針や方向性として、今、具体的なビジョンをお持ちのものはあるのかということを伺いたいと思います。例えば、前原大臣は自由貿易体制の確立ですとか、資源やエネルギーの確保といったことを挙げられましたけれども、そういったことをまとめて4本柱とか、5本柱のような形で玄葉ビジョンのようなものを打ち出すお考えがあるのかも併せてお聞きしたいと思います。

【大臣】そういったことも含めて、もう少しそこはどういう打ち出し方をするかも含めて、これから考えようと思っています。
 ただ、経済外交にはさまざまございます。私(大臣)自身が国家戦略担当大臣として全体の統括を新成長戦略についてしておりました。ですから、パッケージ型でインフラ海外展開をするというのも、私(大臣)は直接の担当ではなかったわけでありますけれども、そのために、例えばご存じのように、それぞれの大使館などにいわゆる担当外交官を配置するなどやったわけです。場合によっては資源の問題などでも、そういう担当官を置くというのも一つの考え方になるのかもしれません。そういったこともございます。
 同時に、これも先ほど申し上げましたが、包括的経済連携の基本方針は、私(大臣)が責任者となってまとめたものであります。高いレベルの経済連携について、かつて自民党政権では、党内がまとまらず合意することができませんでした。しかし、昨年11月、TPPの結論は出ませんでしたけれども、少なくとも日豪も含めた高いレベルのバイラテラルな経済連携については、党内も含めてゴーサインが出たというのは、私(大臣)自身は大変大きな成果だと思っています。
 3・11があって、残念ながら別にそれだけを理由にするわけではありませんけれども、農産物の風評被害などもあって、被災地の心情にかんがみて、今、高いレベルの経済連携について、やや滞っている感はありますけれども、やはりどこかで再スタートを切らなければならない。そのためには、風評被害の防止をきちんとやらなければいけない。そのために、私(大臣)自身はしっかりそれぞれの会議で発信をしていくつもりです。
 そして、農業そのものも、これも私(大臣)自身が責任者になって、攻めの農業の在り方についてまとめました。実際は、本当にTPPに入っていくことになると、大事なことは、先ほど北海道新聞の方が質問されましたけれども、やはり畜産とか小麦とか、そういった分野についての直接支払いの制度なり何なりというものをしっかり確立をしながら、そういった高いレベルの経済連携に入っていくことが戦術としては適当ではないかと思っていまして、前政調会長でもありますし、前国家戦略担当大臣でもありますので、そういったことを、今度は前原さんが政調会長になっていただきましたし、その辺りはよく連携をして、どういう形で高いレベルの経済連携を実現していくのか。ご存じのように、今、日中韓は共同研究を1年前倒しにしました。日EUも進みつつあるという側面があります。残念ながら日韓はもう一つ進み具合がよくありませんけれども、これから何を皮切りに、どういう手段を使って高いレベルの経済連携を進めていくのかということを、まさに戦略・戦術をきちんとつくって、国内対策も含めてやっていかないと、ただ単に自由貿易にすればいいということを、私(大臣)自身が外務大臣として声高に申し上げているから実現するかといったら、そうはなりません。大事なことは結果を出すことだと思っていまして、私(大臣)は華々しく外務大臣としてスタートしなくてもいいと思っています。しっかりとさまざまな皆さんの意見を聞きながら、玄葉流の外交スタイルというか、外交を確立していきたいと考えております。

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原発輸出

【朝日新聞 松村記者】2点伺わせていただきたいのですけれども、外務大臣として戦後最年少の外務大臣だと承知しております。一方で、外交手腕については未知数という評価も早くも出ているわけですけれども、今回、野田総理は玄葉大臣に何を期待して外務大臣に起用されたとお感じになっているか、それがまず一点。
 あと、原発輸出の方針に関してですけれども、玄葉さんは減原発とずっとおっしゃっていたと承知していますけれども、原発輸出に関しては前政権の方針を踏襲されるおつもりなのか、その2点についてお聞かせください。

【大臣】戦後最年少ですかね、それは初めてお聞きをしましたけれども。当然、外務副大臣をやったわけでもありませんし、未知数であるというのは多くの皆さんがそう考えるのだろうと思います。ですから、大事なことは結果を出すことだと思います。これは、実は野田政権全体にも言えることでありまして、泥んこになりながら、格好よくなくてもいいから前進するのだと言っています。
 でも、私(大臣)自身も、菅政権1年3か月、改造、再改造があって、ずっと私(大臣)自身は政調会長でありましたけれども、やはり華々しく打ち上げるのですけれども、大きな問題をたくさん扱い過ぎてテーマが拡散するのです。ですから、私(大臣)はそろりそろりスタートしていいと思っているのです。ただ大事なことは、だんだんテーマを絞り込んでいく、そして結果を残すということに、私(大臣)自身は尽きると思っています。
 それと原発輸出は、おっしゃるように、私(大臣)自身が「エネルギー・環境会議」の議長としてとりまとめたものであります。減原発という方針はですね。この原発輸出そのものについては、私(大臣)自身が入らないで、たしか官房長官と外務大臣と細野大臣と経産大臣で、この間、小野寺さんの質問主意書にお答えになられていると。これからその関係大臣と、私(大臣)も今度ある意味で関係大臣に、そういう意味でなりましたので議論はいたしますが、基本的には今までの質問主意書の内容を踏まえていかざるを得ないということではないかと思います。
 これは、相手国の意向というのがあるわけです。ですから、これだけの事故があったけれども、それでもなお逆に日本人のことなので、むしろ最高水準の技術をつくり上げるのではないか、むしろこの事故の反省を踏まえるのではないかということで、相手国がある意味希望しているという場合について、基本的には最高水準のものを提供するということなのだろうと思いますけれども、ただ私(大臣)自身は、やはり気持ちの中でどうしても積極的になれるかと言われたら、私(大臣)は必ずしもなれない。やはり今の日本の状況を、逆に言えば相手国に丁寧に丁寧に説明していくことがまず大事だと思います。その上で日本人を、いわば信頼をし、その技術を買うということであれば、それはもう我々としてもやぶさかではないということではないかと思います。

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日中関係

【日本経済新聞 田島記者】日中関係についてお尋ねします。先ほど大臣は、官邸での会見で、中国との戦略的互恵関係を特に商いの面、経済の面で果たしていくと、それがアジア太平洋全体の平和と安定のためにも極めて重要だとおっしゃいました。これで、具体的にどういったことを考えていくのか。どの分野で中国との戦略的互恵関係を強めていくのか。まず頭に浮かぶのが東シナ海のガス田の共同開発だと思うのですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】私(大臣)は、東シナ海のガス田の問題もさることながら、先ほど商いという話をいたしました。私(大臣)は「日米基軸・日中協商」という言葉を、かつて使っていました。「協商」というのは商いを協力して行うということであります。それは、中国が経済的にこれだけ伸びてきていると。もちろん、政治的にも存在感が増していることも事実でありますけれども、やはりこの内需を米国だけではなくて、あるいはASEANだけではなくて、中国の内需というものを日本が取り込まないで、どうやって日本の成長を図っていくのかということを、我々は意識せざるを得ないと思います。
 ですから、そういう意味ではどうやって、先ほど日中韓のいわゆるFTAの話もいたしましたけれども、どうやってそういうことも含めて、米国との関係を最も大事にしながらも、しっかりと土台をつくり上げていくのかということが大事ではないかと思います。

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