演説

国連の場における演説

第62回国連総会における気候変動に関するテーマ別討論
高須国連大使ステートメント(仮訳)

平成20年2月13日

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議長及びご列席の皆様、

 世界中の国が、気候変動は人類史上最も深刻かつ緊急の課題であると認識しています。バリ会合において、2013年以降の枠組みの交渉プロセスの合意に至った際、我々はこの死活的な問題に如何に取り組んでいくかについて共通の理解に達しました。我が国は、コペンハーゲンでのCOP15までに、バリ・ロードマップが最も効果的な枠組みを生み出すことを確保するためにあらゆる可能な努力をします。

クールアース推進構想

 ダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、福田総理は「クールアース推進構想」を発表しました。総理は、我が国が他の主要排出国とともに、温室効果ガスの排出削減について、国別総量目標を掲げて取り組んでいく決意を表明しました。世界的に大幅な温室効果ガスの削減を実現するためには、削減負担の公平性を確保することが不可欠です。

 また、福田総理は、技術移転や資金メカニズムを通じて、我が国が国際環境協力の分野においても行動をとることを発表しました。

 我が国は省エネを進めることによって経済成長と環境保護の両立を実現しました。我が国は優れた環境技術を他国に移転することによってこの経験を共有していきたいと考えています。例えば、我が国の発電効率を米、中、インドの3カ国に普及させれば、そのCO2削減効果は日本の年間排出量に相当する13億トンになります。我が国は、世界全体で、2020年までに30%のエネルギー効率の改善を世界の共有目標とすることを提案します。

資金メカニズム

 我が国は、排出削減に努力し気候変動による深刻な影響と闘っている途上国に対し、今後5年間に100億ドルの支援を行うために、クールアース・パートナーシップを立ち上げます。支援は緩和、適応及びクリーンエネルギーへのアクセスに向けられます。他国の温室効果ガス排出により、土地の侵食や砂漠化といった危険に直面している小島嶼国や内陸開発途上国に特別の配慮をします。また、我が国は、米国及び英国とともに多国間の新たな基金を創設することを目指し、他のドナーにも参加を呼びかけます。

 新たな技術の開発や低炭素社会の創造など、イノベーションの重要性を強調する必要があります。2050年までに温室効果ガス排出量を半減するためには、技術の飛躍的進歩が不可欠です。我が国は、石炭火力発電所からのCO2排出量をゼロにする技術や、低コストで高効率の太陽光発電技術、グリーンITなどの開発を加速します。我が国は、環境・エネルギー分野の研究開発投資を重視することとし、今後5年間で300億ドル程度の資金を投入することとします。国際的にも、例えば、IEAなどの国際機関と緊密に連携して技術開発を加速し、その成果を共有する枠組みの構築を提案します。

民間セクターとの連携

 気候変動に対応するためには、エコ・ライフスタイルへの意識を高め、公的部門のみならず民間セクターからもリソースを動員することが不可欠です。国連のグローバル・コンパクトは有効なものです。

 民間セクターは技術の開発、普及及び移転において重要な役割を果たします。低炭素社会を実現する努力においては、民間投資が促進されなければなりません。かかる投資を引き込み、民間セクターをアクティブにするためには、例えば、知的所有権保護や人材開発に関する投資環境を改善する必要があります。

国連の中心的役割

 我が国は、地球規模の取組みの組織化において国連システムが積極的な役割を果たすことを期待します。また、国際的な交渉プロセスを前進させるために必要な政治的モメンタムを生み出すために、事務総長及び総会議長がとったリーダーシップを評価します。

 IPCCの第4次評価報告書は、気候変動の原因に関する論争を終結させ、気候変動がもたらす深刻な影響を科学的な方法で明らかにすることによって、交渉プロセスの進展に大きな貢献をしました。事務総長報告にも述べられているように、気候変動枠組み条約(UNFCCC)は他の国連機関の支援を得ながら、交渉において中心的役割を果たさなければなりません。活動の重複をなくし、効果的な方法で問題に取り組むために、国連機関間の一貫性と調整を進めることが重要です。

 2009年の交渉期限が近づくにつれて、国際的な議論が高まることが予想されます。我が国は、本年のG8議長国として、交渉プロセスに前向きな貢献をすべく取り組んでいきます。

エコ・ライフスタイルの促進

 将来を見据えると同時に、今すぐできることがあることを認識し、それを始めるべきです。最も重要なことは、エコ・ライフスタイル-「もったいない」ライフスタイル-を促進することです。例えば、リサイクルを進めることや、自宅や職場のエネルギー効率を高めることが考えられます。

 我が国は、全ての関係者に対し、この問題に人類の英知を注ぐことを呼びかけます。そうすることによって、我々は低炭素社会を作り上げ、気候変動との闘いに勝つことができるのです。

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