
野田総理の第67回国連総会出席(概要)
平成24年9月27日
- 野田総理は,9月24日(月曜日)から26日(水曜日)まで,第67回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。滞在中,総理は一般討論演説を行ったほか,人間の安全保障をテーマとしたレセプションを開催した。
- 一般討論演説では,複雑化する国際社会の諸問題の解決に向けて,(1)「未来」を慮る能力,(2)地球を俯瞰するという視点,(3)紛争をルールに基づいて理性的に処理するという作法,という人類の三つの叡智を活用し,直面する課題を現在の世代で解決すべきこと,そのために日本が貢献していくことを世界各国の指導者に伝えた。また,今次総会の主要テーマの一つである「法の支配」については,日本はいかなる場合においても,国際法に則って紛争を平和的に解決するという国際社会の原則を堅持していくこと,国際社会における法の支配の強化に向けて貢献していくことを訴えた。
- 滞在中,野田総理はギラード豪首相,ユドヨノ・インドネシア大統領,エルベグドルジ・モンゴル大統領,サントス・コロンビア大統領,ムルスィー・エジプト大統領,イェレミッチ第67回国連総会議長,潘基文国連事務総長との会談を行った。
1.主要行事の結果概要
(1)総理主催レセプション(25日(火曜日))
野田総理は,各国の首席代表,国連関連基金・計画・専門機関の長,ジャパン・ソサエティ関係者ほかを招待し,「人間の安全保障」をテーマとしたレセプションを主催した。
冒頭,野田総理より,9月10日に国連で「人間の安全保障」の共通理解に合意できたことを歴史的な成果と紹介するとともに,日本は率先してリーダーシップを発揮し,具体的成果につなげていくとの決意を表明した。また,その一環として,来年6月には「第5回アフリカ開発会議(TICADV)」を開催し,2015年には「第3回国連世界防災会議」の我が国での開催を目指す旨述べるとともに,各国の取組への期待を表明した。
レセプションには,14カ国の首脳の他,多数の外相,国際機関職員,日系企業関係者など,250名を越える方々が出席した。
(2)一般討論演説(26日(水曜日))
25日(火曜日)から始まった一般討論演説では,「平和的手段による国際紛争または国際情勢の調整または解決」のテーマの下,各国の首脳,閣僚等が演説を行った。野田総理は26日(水曜日)に演説を行い,概要以下のとおり述べた。
ア.第一の叡智~「未来」を慮る能力~
- 多くの国で財政健全化が共通の課題になっているが,今を生きる世代がこの問題を克服しなければ,将来世代が借金の返済を負う。これは,未来を搾取する構図。「未来」を慮る力を発揮し,この課題は現在を生きる世代で解決すべき。
- 「決断をしない国」の象徴のように見られてきた日本を変えるため,「社会保障と税の一体改革」の実現に,政治生命をかけて取り組んできた。課題を先送りせず「決断する国」に変わるべく第一歩を踏み出している。
イ.第二の叡智~地球を俯瞰する視点~
- 本年6月の「リオ+20」は重要な成果。我が国は「緑の未来イニシアティブ」を公表し,「持続可能な成長」の模索を提唱。
- 昨年の東京電力福島第一原発の事故を踏まえ,国際的なエネルギー情勢などの将来展望を慎重に見極めながら不断に検証,見直しを行いつつ,2030年代に原発に依存しない社会を目指し,あらゆる政策資源を投入し,グリーンエネルギーへのシフトと経済成長の確保を両立させていく。
- 一つひとつの命の尊さにも目を向けるべき。今月採択された「人間の安全保障」に関する総会決議も踏まえ,MDGsの達成と新たな開発目標の策定に向けて議論をリードしていく。「人間の安全保障」の観点から重要なアフリカについて,来年6月に「第5回アフリカ開発会議(TICADV)」を開催。
- アフガニスタンの復興,南スーダンの国造り,ミャンマーの民主化と国民和解に向けた支援を行う。
ウ.第三の叡智~紛争をルールに基づいて理性的に処理するという作法~
- 北朝鮮やイランの核・ミサイルの問題について,両者に具体的な行動を求める。唯一の被爆国として,「核兵器のない世界」を先導する。
- 北朝鮮による拉致問題は,基本的な人権の侵害という普遍的な問題であり,国際社会の重大な関心事項。各国との連携を強化しながら,すべての被害者の一日も早い帰国に向けて全力を尽くす。日朝関係については,日朝平壌宣言に則って諸懸案の解決を図り,不幸な過去を清算して,国交正常化を追求していく。北朝鮮の前向きな対応を求める。
- 平和を守り,国民の安全を保障すること,国の主権,領土,領海を守ることは国家として当然の責務。我が国もそのような責務を,国際法に則って果たしていく。
- 世界の平和・安定・繁栄の基礎となる法の支配を確立し,強化すべき。法の支配は,紛争の予防・平和的解決のために不可欠。自らの主義主張を一方的な力や威嚇を用いて実現しようとする試みは受け入れられない。
- 日本はこれまでも,国際司法裁判所(ICJ)の強制管轄権を受諾するなど,法の支配を重視する考えを実践。各国にICJの強制管轄権の受諾,国際刑事裁判所(ICC)及び国連海洋法条約(UNCLOS)の未加盟国に早期の加盟を呼びかける。
- 世界の各地では,領土や海域をめぐる紛争が数多く存在。我が国は,国際法に従い紛争を平和的に解決するとの原則をどのような場合でも堅持し,国際法に従い平和的な解決を図っていく。世界は,国際司法機関が果たしうる機能により注目すべき。
- 中東・北アフリカにおける民主化・改革努力を支援。シリアにおける暴力と弾圧,深刻な人権侵害を強く非難。国際社会とともに,シリア政府への圧力強化,人道支援等を進めていく。
- 国際法の下で,文民の保護,外交官などの安全が確保されなければならない。暴力行為は許されない。
- 法の支配は,アジア太平洋地域の秩序と繁栄をもたらす重要なインフラ。貿易投資拡大,海洋秩序の構築などルールづくりに積極的に貢献していく。
- 国家間,国際機関内部における法の支配,「グローバル・ガバナンスの強化」が重要。経済成長著しい国がその国力に見合った責任を果たすことを期待。国連のマネジメント改革を支持。安保理改革交渉を加速し,真の交渉を開始すべき。
(3)二国間会談等
ニューヨーク滞在中,野田総理はギラード豪首相,ユドヨノ・インドネシア大統領,エルベグドルジ・モンゴル大統領,サントス・コロンビア大統領,ムルスィー・エジプト大統領,イェレミッチ第67回国連総会議長,潘基文国連事務総長との会談を行ったところ,概要以下のとおり。
ア.ギラード豪首相
野田総理より,第4回日豪外務防衛閣僚協議(日豪「2+2」)において,日豪の戦略的パートナーシップを更に深化させるために有意義な議論ができたことを歓迎する旨述べるとともに,日豪EPA交渉については,お互いに協力して早期の妥結を目指したい,また,環太平洋パートナーシップ(TPP)については,昨年11月にTPP交渉参加に向けた関係国との協議に入ることを表明した際の自分の考えは変わっていない旨説明した。また,両首脳は,地域情勢について意見交換を行い,地域の平和と繁栄のために日豪が引き続き緊密に対話・協力を行っていくことで一致した。
イ.ユドヨノ・インドネシア大統領
野田総理より,両国ハイレベルで緊密な意思疎通が行われていることに歓迎の意を表明するとともに,24日,宮城県沖で我が国漁船が貨物船と衝突して沈没し,インドネシア実習生1名を含む13名乗組員が行方不明であり,全力で捜索に当たっており,全員の無事を祈念している旨述べ,ユドヨノ大統領より謝意が表明された。また,両首脳は,国連安保理改革についても議論したほか,野田総理より,現下の日中関係に関する我が国の立場を説明した。
ウ.エルベグドルジ・モンゴル大統領
野田総理より,モンゴルとの関係を従来以上に強化したい旨述べたところ,エルベグドルジ大統領より,「戦略的パートナーシップ」の構築という目的に向けて関係が発展してきていることを嬉しく思う旨発言があった。また,野田総理より,本年6月に日モンゴルEPA交渉が開始されたことは両国関係を象徴する歴史的出来事である旨述べるとともに,モンゴルの鉱物資源開発への日本企業の参画支援を期待する旨述べた。野田総理より,モンゴルが安保理改革に関する我が国の立場を一貫して支持してきたことへの謝意を始め,国際場裡において協力が行われていることに言及した他,現下の日中関係に関する我が方の立場を説明した。
エ.サントス・コロンビア大統領
野田総理より,両国の経済関係が緊密化しており,一層の関係強化を期待する,その観点で,東日本大震災後の日本からの輸入品に対する規制を全面的に解除いただき感謝する旨述べた。また,両国首脳は,日・コロンビアEPA共同研究最終報告書の完了を歓迎するとともに,日・コロンビアEPA交渉を開始することで一致した。
オ.ムルスィー・エジプト大統領
野田総理より,民主的な選挙によるムルスィー大統領の就任に対する祝意を表するとともに,民主化プロセスの進展,及び経済・社会面での課題克服に向けたエジプトの改革努力を,日本は引き続き支えていく旨述べた。また,野田総理より,ムルスィー大統領の早期の訪日を招請したところ,ムルスィー大統領から,招待に感謝する,双方の都合の良い時期に訪日したい旨述べた。野田総理より,シリアに関する人道状況の悪化や地域への波及等に関する強い懸念を表明しつつ,日本として,エジプトをはじめ国際社会と連携し,シリア問題解決のため,圧力強化や人道支援等に引き続き取り組む考えを述べた。
カ.イェレミッチ第67回国連総会議長
野田総理より,現下の日中関係に関する日本の立場を説明しつつ,日本は「法の支配」,国際紛争の平和的解決を一貫して重視している旨述べたのに対し,イェレミッチ議長より,世界の安全・安定の確保のために国際法は不可欠であり,国際法に基づくあらゆるイニシアティブ重視も支持する旨発言があった。また,野田総理より,安保理改革について,日本は柔軟性をもって幅広い国々と協議し,実現可能な改革を探っていくとして,イェレミッチ議長の指導力発揮に対する期待を表明した。
キ.潘基文国連事務総長
野田総理より,事務総長主催の24日の「法の支配」ハイレベル会合の成功を歓迎するとともに,日本は国際社会における「法の支配」の実現を重視する旨述べた。また,潘事務総長より,東アジア地域の現状を心配しているとの発言を受けて,野田総理より,現下の日中関係における我が国の立場を説明した。さらに,潘事務総長より,PKO,TICADイニシアティブ,防災などにおける日本の貢献への謝意が表明された。
2.日程
9月24日(月曜日)
- 午後
- 羽田発 ニューヨーク着
- ニューヨーク在留邦人との懇談
9月25日(火曜日)
- 午前
- 日豪首脳会談
- 日インドネシア首脳会談
- 午後
- 日モンゴル首脳会談
- 日コロンビア首脳会談
- 総理主催レセプション
9月26日(水曜日)
- 午前
- 日エジプト首脳会談
- イェレミッチ国連総会議長との会談
- 潘基文国連事務総長との会談
- 一般討論演説
- 午後
- 内外記者会見
- ニューヨーク発(翌日羽田着)