
シンポジウム「平和を築(つく)る-日本と国連」(概要)
2008年1月28日
1月24日(木曜日)、外務省主催にて、都内のホテルにおいて、シンポジウム「平和を築(つく)る-日本と国連」が開催された。同シンポジウムは、我が国が現在国連平和構築委員会(PBC)の議長を務めていること、及び、本2008年は5月に第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)開催、7月にG8北海道洞爺湖サミット主催と、平和構築に関連する外交上の大きな行事が催されることを踏まえ、そのような年の幕開けに、平和構築における日本の取組を紹介・議論することを目的とした。
シンポジウムの最後には、高村正彦外務大臣が「平和の創り手「日本」」と題し平和構築政策に関するスピーチ(骨子・本文)を行った他、シンポジウムでは、バングーラ・シエラレオネ共和国外務大臣、カマナ・ブルンジ共和国内務・地方開発大臣、ウェッセ・リベリア共和国外務副大臣、高須PBC議長/国連大使、マカスキー国連平和構築支援事務局(PBSO)長等がパネリストとして出席するとともに、約150名の聴衆が参加して活発な議論が行われた。
1.各セッションの概要
(1)第1セッション「国連平和構築委員会(PBC)とは何か?-PBCの活動を理解する:設立から最近の活動までの概観」
- 冒頭セッションとの位置付けから、高須PBC議長及びマカスキーPBSO長が、PBCの設立や概要、議長国としての日本の役割等について説明した。質疑応答においては、PBCとPKOとの関係・調整や、PBCにおける人間の安全保障の概念の適用等について議論がなされた。
(2)第2セッション「平和構築に欠けているもの(ギャップ)とは何か?それに如何に対処すべきか?-PBCの国別活動と日本の貢献」
- バングーラ外相は、シエラレオネの平和構築において特に電力供給問題が喫緊の課題である旨指摘するとともに、同問題を含めPBCにおいて規定した若者の雇用等の5優先分野について、国際社会とともに取組を行っていく旨の強い決意を述べた。また、同国への我が国の支援に関し、日本国民に対する深い謝意と今後の一層の協力への期待を表明した。
- カマナ内務・地方開発相は、ブルンジにおいて特に難民・避難民帰還が平和構築において大きな課題であり、またそれ以外にも、PBCにおいて規定したガバナンス、治安部門改革、人権、インフラ整備等の分野で取組が必要である旨等を述べた。また、バングーラ外相と同じく、日本の支援に対する謝意と期待を表明した。
- ウェッセ副外相は、リベリアはジョンソン=サーリーフ大統領の下、治安・経済再活性化・ガバナンス・基礎サービスの分野で取組を行っている旨紹介した。また、先の両閣僚の発言と呼応して、我が国の支援に謝意と期待を表明した。
- 高須PBC議長・国連大使からPBC国別活動における日本の取組について、大島JICA副理事長からJICAの取組や最近のシエラレオネ訪問について発言がなされた。
- 次の第3セッションにて併せて行われた質疑応答においては、シエラレオネにおける元反政府勢力兵士の社会復帰やブルンジにおける難民帰還がそれぞれの国の平和構築に与える影響、地域機構の役割、ギニアビサウにおけるPBCの取組の展望等について議論がなされた。
(3)第3セッション「PBCを含む国際社会は何ができ何をしなければならないか?-より効果的な平和構築の取組はどうすれば可能か?」
- カプラン・オックスフォード大教授及びモレット・ケア・インターナショナル・アドバイザーは、平和構築における多数のアクター間の調整、知識や教訓の活用、監視メカニズムや評価等の課題について取組が必要である旨述べた。
- 佐藤富山大教授及び遠藤東大教授は、1990年代からの平和構築の概念を巡る国際的潮流や、アフリカの脆弱な国家における平和構築の取組のあり方等について議論を展開した。
- 木山JEN事務局長及び脇阪朝日新聞論説委員は、市民社会やジャーナリズムの観点から、紛争の現場や一般の市民の視点を踏まえた平和構築の取組のあり方の必要性について述べた。
- 質疑応答においては、知識と実務のギャップを埋める方法、平和構築と復興と安定化の関係等について議論がなされた。
(4)第4セッション「総括協議:平和構築における日本の役割と貢献」
- 国内外のパネリストから、先のセッションにおける議論を踏まえ、平和構築における日本の強み・弱み・課題、一般市民が関心を持つことの重要性、人材の育成と活躍の場の確保の必要性、国際的な日本の役割の拡大等について発言がなされた。
- マカスキーPBSO長は、PBCにおける日本の主導的役割に加え、平和構築人材育成事業の拡大やG8におけるリーダーシップについて期待を表明した。高須PBC議長は、PBCが今後成果を出していくことや新たな対象国について取組を行っていくこと、また 日本が平和構築の分野で、政治的指導力、知的貢献、資金援助、二国間協力強化、人材育成の5点について取り組んでいくべきである旨述べた。
- 質疑応答においては、PKOと比較した平和構築の体制のあり方、大国の関与の重要性、平和構築における正義の扱い等について議論がなされた。
- 最後に秋元外務省総合外交政策局審議官・国連担当大使から、我が国として、PBCにおけるリーダーシップの継続的な発揮、アフリカについての取組強化、PBCの議論を二国間支援に反映する必要性について述べ、本日の議論を今後の我が国の施策の参考にしたいとしつつ、議論を締めくくった。
2.高村正彦外務大臣による総括スピーチ「平和の創り手「日本」」
高村外務大臣より、シンポジウムの総括スピーチを行い、我が国として平和構築分野において更なる取組を行っていく決意を表明した。(高村外務大臣のスピーチ(骨子・本文))
3.小野寺五典外務副大臣によるレセプション
シンポジウム終了後、小野寺外務副大臣主催で、パネリスト、実務者、学識者、在京大使館関係者等を招いたレセプションを開催した。同レセプションでは、小野寺副大臣が主催者である外務省を代表して、バングーラ・シエラレオネ外務大臣がパネリストを代表してそれぞれ挨拶を行い、盛況のうちに執り行われた。