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ウガンダ国別評価

1. テーマ:国別評価 写真

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2.調査対象国:ウガンダ共和国
  現地調査国:ウガンダ共和国
3.評価チーム:
(1)評価主任:斎藤文彦
  (龍谷大学 国際文化学部 国際文化学科 教授)
(2)アドバイザー:吉田栄一 
  (アジア経済研究所 地域研究センター 研究員)
(3)コンサルタント:
  株式会社 日本開発サービス 
=現地調査団メンバー
4.調査実施期間:2010年9月~2011年3月

5.評価方針 

(1)目的
  • 日本の対ウガンダ援助の意義を踏まえ,これまでの同国への援助政策を総括的に評価し,今後の方向性に係る教訓・提言を得ること
  • ウガンダ周辺国並びにアフリカ全体への援助の在り方及び援助協調の盛んな国における日本の支援に対する教訓・提言を得ること
  • 評価結果を公表することで国民への説明責任を果たすとともに,関係国政府や他ドナーに評価結果をフィードバックすることで,これら政府の日本のODAへの理解促進に役立てること

(2)対象・時期
 評価調査の対象は,これまでの日本の対ウガンダ援助政策全般とする。対ウガンダ援助政策に対する評価は,対ウガンダ援助の意義,これまでの両国間の経済協力政策協議を踏まえて策定された対ウガンダ援助の基本方針及び重点分野(人的資源開発,基礎生活支援,農業開発,持続的経済成長)をベースとする。
 援助政策の対象期間は,日本の対ウガンダ援助方針を決める最初の経済協力政策協議が開催されたのが1997年7月,またPEAPが策定されたのが同年6月であったため,1997年から2010年までとする。ただし1997年に策定された政策が実際に案件に反映されるのは2~3年後に開始された案件からと想定されるので,調査対象案件としては2000年以降開始のものとする。

(3)方法
 評価調査の実施に当たっては,外務省発行の「ODA評価ガイドライン(第5版)」(2009年2月)に準拠し,「政策の妥当性」「結果の有効性」「プロセスの適切性」の3つの観点から総合的に評価を行った。

6.評価結果:

(1)「政策の妥当性」に関する評価
  1997年及び2006年の経済協力政策協議で確認された日本の援助政策は,支援の目的・内容・手法などにおいて,日本のODA上位政策との整合性が高い。また,日本の援助重点分野はウガンダの国家開発戦略の政策変更を踏まえて策定され,1997年の経済協力政策協議においては,プロジェクトレベルでは必ずしも相手国の中心課題に直接対応していなかったもののその妥当性も次第に高まってきたことが認められる。同重点分野は国際的優先課題の実現に向けて支援目標・支援内容を考慮しており,また2006年の経済協力政策協議での支援重点分野は,日本の援助の特徴並びに技術的独自性・優位性を考慮したものであることから妥当であるといえる。

(2)「結果の有効性」に関する評価
  対ウガンダ援助における日本の貢献は,金額的には少ないものの,案件形成の段階で可能な限り個々のプロジェクトを束ね,プログラム化がなされている。対ウガンダ援助政策の結果については,相手国政府よりおおむね有効との評価を得ている。特に,「コメ振興プログラム」については,スキーム間の連携が強く,同国の稲作が地域的に広がりをみせるなどインパクトをもたらしている。しかし,一方では,個々のプロジェクトとしては有効性を発揮しながらも,同一プログラムに属するプロジェクト間やスキーム間の連携が薄く,相乗効果を発揮できずにいる例もある。無償資金協力の場合,事前評価段階でのウガンダ側の維持管理能力を十分に勘案するとともに,案件実施中にその維持管理能力の育成・強化を図り,さらに案件終了後の維持管理能力不足を補うフォローアップ体制を明確にすることも重要である。
  なお,現地調査において,援助担当であるウガンダ財務・計画・経済開発省の次官は,「日本の援助案件は目的を明確にしており,しかも付加価値の高いプロジェクトを実施しており,有益な効果をもたらしている」と評価している。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価
  対ウガンダ国別援助方針は未策定であるが,過去2回,日本とウガンダ間で経済協力政策協議が実施された。より政策策定プロセスの適切性を高めるためには,同協議はウガンダの国家開発政策の発表や改訂の都度,実施されるのが望まれる。
  大使館開設やJICAウガンダ事務所の人員体制が整ってきたのは比較的最近であり,政策策定段階においては,実施体制についてはまだ整備されていなかった。ウガンダに対する支援が急速に拡大した一方で,日本の現地実施体制の陣容については近年整備されてきたとはいえ微増にとどまっている。
  援助協調のため,日本は様々なレベルのウガンダ政府やドナーとの会合に参加している。しかし,会議においては必ずしも活発に発言をしているわけではなく,さらなる積極性を期待するドナーもあり,日本側からの情報発信を希望する声が聞かれた。
  ウガンダ政府内の省庁や支援ドナーからは,開発案件の種類・特徴・フェーズ,実施するカウンターパートのキャパシティ・行財政能力などに応じて,ウガンダのニーズに合ったより高い効果が望める支援内容を想定しつつ,財政支援とプロジェクト型支援の連携を図っていくことが望ましい,という意見が現状では大勢を占めた。

7.提言

 提言は大きく3つに分けられ,それぞれの内容は次の通り。

(1)対ウガンダ援助政策の改善に係る提言

  • 対ウガンダ援助の戦略的位置付けを明確化する。そのために,現地ODAタスクフォースを支援する学術研究者,民間企業関係者を含む意見交換の拠点(「拡大タスクフォース(仮称)」)を設置する。
  • 対ウガンダ援助政策の枠組みを確立し,早急に国別援助方針を策定・公表する。
  • 対ウガンダ援助の位置付けを明確化した上で,優先的に協力すべき分野の選択を行い,そのうえで重点開発課題の解決に向けた戦略的開発協力プログラムの形成促進に努力する。
  • 積極的な情報開示と継続的な対話を通して,日本の援助の明確な姿勢を国際社会に発信し,他ドナーとの協議・調整を強化する。
  • 重点支援分野を選定するに当たっては,ウガンダ側の要望との調和化を図る。そのためのウガンダ側関係者との継続的対話を促進する。

(2)対ウガンダ援助実施体制の改善に係る提言

  • 現地実施体制の整備・強化を図る。特に,現地ODAタスクフォースの機能の拡充・強化,及び現場主義の強化を推進する。
  • 在ウガンダ日本国大使館とJICAウガンダ事務所を通じてNGO及び市民社会との連携・協力関係を強化する。

(3) ODAの効果的・効率的実現に係る提言

  • 財政支援型援助とプロジェクト型援助のより柔軟な連携促進を図る。
  • 対ウガンダ援助のように,日本の援助割合の少ない国に対して小額援助でも大きな成果を生む効率性の高いODAについての研究を促進するため,JICAの研究調査機能を強化する。
  • 要請から決定(採択)までを迅速化できるよう,政策決定プロセスを効率化する。
  • 政策策定プロセスについて援助政策がどのようなプロセスで策定されるのかの標準化と実際に行われたプロセスの文書化を図る。
注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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