1.テーマ:TICADの主要課題の一つである「人間の安全保障」の促進を評価~紛争下における子供の権利~ |
2.ケーススタディ:国内避難民キャンプ(ウガンダ北部) |
3.評価チーム: (1)評価主任:リディア・ワンブグ(Dr. Lydia Wambugu) (シンクタンク「ISS(国際安全保障研究所)」研究員) |
4.調査実施期間:2007年10月~2008年3月 |
5.評価方針 (1)目的:
1)アフリカにおける平和・安全保障分野における日本のODAの現状・教訓につき日本政府及びパートナー国(被援助国)政府へ情報提供すること (2)対象 紛争後のウガンダ北部アチョリランドにおける国内避難民(IDP)キャンプにおいて、UNICEFを通じ実施された緊急支援(約2百万米ドル:基礎サービスの提供)に関し、同プロジェクトが「人間の安全保障」をいかに促進したかを考察。 (3)方法: 【現地調査】 【資料等の分析】 |
6.評価結果 (1)「目的の妥当性」に関する評価: 本プロジェクトは、国内避難民(IDP)に対する基礎サービスの提供を行うことで、「人間の安全保障」の促進及びMDGsの達成に役立っており、アフリカの平和・安全保障分野を強化するのに適切な案件内容である。また、「人間の安全保障」という概念は、開発という幅広いコンセプトに影響を与えるという意味で、開発支援のあらゆる分野にわたるものである。 (2)「結果の有効性」に関する評価: (イ)本プロジェクトは、コミュニティーと政府を連結し、裨益者であるウガンダ北部アチョリ地方のIDPのニーズ、特に保健、栄養、シェルター等へのアクセスの問題に対応する形で計画・実施されていた。また、最も本プロジェクトの恩恵を受けたのは女性と子供達であった。 (ロ)「人間の安全保障」の概念がプロジェクト全体を通じて明白に存在しており、各レベルでのコンポーネント(保健、栄養等)の間に相乗効果をもたらしていた。 (ハ)本プロジェクト下で実施されていたコンポーネント(保健、栄養、非食料品の供給等)は全てどれもがTICADの主要課題であるMDGsの達成及び平和の定着という目標に合致していた。 (ニ)本プロジェクトの下で実施されていた活動のほとんどは2007年11月に調査でアチョリ地方を訪問した際には既に終了していた。一部完了していなかった活動は、2007年にウガンダを襲った洪水の影響で実施が遅れていた。 (3)「プロセスの適切性」に関する評価: (イ)日本の援助は、アチョリランドの住民の生活の向上にあらゆる面で役立っていた。 (ロ)例えば、保健分野でいえば、保健センターに様々なファシリティが導入され、サービスの向上につながっていることに加え、HIV陽性の母親に対し、母子感染予防のためのサービス等が提供されている。カラディマ保健センターでは、全住民約6万人が裨益し、2万5千家族が食糧以外の生活必需品(毛布、料理用鍋、石けん、シェルター等)を受け取った。 (ハ)更に、約2万人の保健分野従事者が必要な訓練、医療用具を受け、緊急基本処置を行えるようになり、軽度のけが等で遠く離れた街へ治療のために移動する必要がなくなった。 |
7.提言 (1)アフリカにおける平和と安全保障の定着を目的とした本プロジェクトは、当該地域住民、特に子供及び女性の生活を向上させるものであった。しかし、IDPの地元への帰還に伴い、故郷での彼らの基礎サービス(水、保健、教育)へのアクセス向上のためには更なる資金支援が必要とされている。現時点では、地元の村では基礎サービス提供が行われていないために、IDPは、基礎サービスの享受が可能であるIDPキャンプと地元の村の間を往復しており、それが可能となるまではIDPの帰還は完了しないであろう。 (2)(既にUNICEFを通じたプロジェクトのほとんどは終了しているが)ウガンダ北部を引き続き支援することは、TICADの主要課題である「人間の安全保障」の促進を向上させることとなり、TICADプロセスを支援する上で日本政府とアフリカ諸国及びAU間の対話及びパートナーシップを促進することとなろう。 (3)調査でウガンダ北部を訪れた際、裨益者の多くは、資金支援はUNICEFを通じて行われており、日本政府によるものであると認識していなかった。そのため、日本政府による支援により実施されている活動を強調し、裨益者らにメディア、特に地元メディアを通じ広報することを提案する。 |
注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。