7.提言
(1)「選択と集中」の徹底とより細目の目標設定
援助の有効性を高めるため,目的やスキームに応じて対象分野・地域を絞り,事業間の連携を強化すべきである。その際,フィリピン側と十分に政策協議を行い,同国施策との連携を図るために,例えば事業の目標(小目標)と最終ゴール(大目標)の間に中間的な目標(中目標)を設定し,フィリピン政府に対して日本の援助をより分かりやすくパッケージとして提供することが望ましい。
(2)無償資金協力事業の長期的な視点での評価
無償資金協力案件のうち,事業完成後10年以上を経ても現地から感謝され,今日まで丁重に維持管理されている施設がある。このような施設では,わずかな支援(機材の修理や更新)で,高い援助効果がさらに持続するものと思われるので,例えば事業実施後10-15年を経た段階で,提供された施設や機材が有効に使われているかを検証し,将来に向けた追加的なニーズがある場合には,草の根無償等を通じて補完的な支援を行うことも有効であろう。
(3)草の根無償の機能強化
草の根無償では,基礎保健,初等教育,障害者支援,少数民族,農村開発といった分野で,大型プロジェクト同士の連携強化や地域レベルへの広報に貢献することが期待される。今後も,大型事業と併せて足下の貧困対策や環境関連事業を継続的に実施することが望ましい(洪水対策施設と地域住民へのキャパシティ・ディベロップメントを併せて実施する等)。
(4)ODAの認知度向上と広報活動
日本の援助マークを貼るといった従来のODA広報は一定の効果をあげているが,より高い効果をあげるために,今後は個別事業のレベルで広報専門家を投入する等の新たな方法を検討すべきである。概して,受益住民が積極的に参画している案件については,案件完成後かなりの年月が経っても維持管理が良好に行われ,日本への感謝が地元に根付く傾向にある。右を踏まえ,今後は地域住民の一層の関与を促進し,WEB情報を充実させる等の新たな広報活動のあり方も検討していくべきである。 |