評価年月日 平成22年12月24日
評価責任者 国別開発協力第一課長 清水茂夫
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
ギソン火力発電所建設計画(第二期)
(3)目的・事業内容
ベトナム北部タインホア省ティンザー郡のギソン工業団地内に600メガワット(300メガワット×2基)の石炭火力発電所及び関連施設の建設を行い,首都ハノイを含む発展著しい北部地域への電力の安定供給を図るもの。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
298.52億円 | 年1.2% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)本件に係る環境影響評価報告書は,2005年12月にベトナム天然資源環境省により承認済み。2006年8月に放水路・放水口等の位置が変更されたため,追加環境影響評価報告書が作成され,2006年11月にベトナム天然資源環境省により承認済み。
(イ)事業開始後の発電所からの排気については各排出基準を満たすべく対策がとられる予定。また,温室効果ガス排出抑制策を検討するためSAPI(案件実施支援調査)を実施予定。
(ウ)約201ヘクタールの用地取得及び579世帯の住民移転が必要であり,国内法及びギソン工業団地における住民移転の方針を定めたタインホア省決定に沿って関連手続が進められる予定。
(エ)外部要因リスクは特になし。
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
近年,ベトナムは8%前後の高いGDP成長率を記録し,本傾向は,昨今の世界的な経済危機(同時不況)の影響を受けるものの,中長期的には再び高い経済成長へと回帰するものと想定される(国際通貨基金(IMF)の見込み(2010年4月時点)によれば,2013年には7.2%成長が想定される)。2007年に承認された「第6次国家電力マスタープラン」では,2015年に向けて毎年約17%の電力需要増を見込んでおり,2008年から2015年にかけて,計30ギガワット近くの電源開発を想定している。しかし,同マスタープランに記載される電源開発投資計画の多くは遅延しており,ベトナムの電力需給バランスが一層緊迫する状況となっていることから,本計画のニーズは大きい。
(イ)我が国の基本政策との関係
2009年7月に改訂した国別援助計画は,1)経済成長促進・国際競争力強化(ビジネス環境整備・民間セクター開発,資源・エネルギー安定供給,都市開発・運輸交通・通信ネットワーク整備),2)社会・生活面の向上と格差是正(基礎社会サービス向上,地方開発・生計向上),3)環境保全(都市環境管理,自然環境保全),4)ガバナンス強化(行財政改革,法整備・司法改革)を重点分野としている。本計画は上記1)に資するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
隣接地に整備予定の第2火力発電所(BOTを予定)と冷却水放水路や排水路,灰捨場等の基礎インフラを共有し,効率的な施設整備を行うことで,案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により,同国における最大電力需要(2014年時点で約11.3ギガワット)の約5%相当の電力を供給することが可能となる。それにより,首都ハノイを含む発展著しい北部地域への電力の安定供給を図ることで,同国の経済及び社会開発の促進が期待される。また,ベトナムの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。