評価年月日 平成22年11月10日
評価責任者 国別開発協力第三課長 石塚 英樹
(1)供与国名
トルコ共和国
(2)案件名
ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画(II)
(3)目的・事業内容
本計画は,2004年度に円借款が供与された,「ボスポラス海峡横断地下鉄整備計画(II)」に対し,資機材価格の高騰等を理由とする事業費の増加に対処するため,追加的に円借款を供与するもの。上記計画は,ボスポラス海峡(イスタンブールをアジア側と欧州側に分断する海峡)を横断する地下鉄の建設及び既存の鉄道線の改修を行うことにより,イスタンブール市の交通需要に対応し,もって乗客輸送の円滑化による経済社会活動の効率化を図るとともに,燃料消費量の削減による窒素酸化物等の排出削減により環境改善に資することを目的とする。
本件資金不足は,計画施工区間において歴史的文化遺産が発見されたことに伴い,遺跡発掘のため工事の中断を余儀なくされた間に資機材価格が国際的に高騰したという,予測不可能かつやむを得ない事情によるものである。なお,トルコ側は可能な範囲で自己資金による手当てを行う等,自助努力をしている。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
420.78億円 | 0.75% | 40(10)年 | 部分アンタイド |
(注)コンサルタント部分は二国間タイド
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
ア 本計画は,トルコにおける環境影響評価(EIA)制度の適用範囲外となる1993年2月以前に承認された計画であり,EIAの作成義務はないが,1998年に実施機関がEIAを作成し,環境省の評価を得ている。
イ 必要な約18ヘクタールの用地取得及び101世帯の住民移転は完了している。
(1)必要性
ア 開発ニーズ
イスタンブール市は,ボスポラス海峡により住宅地区であるアジア側と商業地区である欧州側に分断されており,両地区を結ぶのは現状では2カ所の橋梁及びフェリーのみである。2カ所の橋梁の交通量は平均39万5千台/日(2009年)に達し,慢性的な交通渋滞が発生しており,更に交通渋滞による大量の排気ガス発出による大気汚染が問題となっている。同市においては今後人口増加による交通需要の増大が見込まれ,本計画に対するニーズは大きい。
イ 我が国の基本政策との関係
我が国は,対トルコ事業展開計画において,(ア)環境改善,(イ)経済社会開発のための人材育成,(ウ)防災,(エ)格差是正及び(オ)南南協力を経済協力の重点分野としている。本計画は(ア)に該当するものであり,我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
本計画により整備される鉄道施設に関しては,実施機関を含めた関係者に対して運営・維持管理にかかる研修を実施してきており,効率的な運営・維持管理が図られる。
(3)有効性
本計画の実施により,海峡横断部に地下鉄が開通し,事業完成2年後の2017年には,海峡横断部で新たに3,201千人・キロメートル/日の乗客輸送量が期待できる。これによりボスポラス海峡両岸を結ぶ2つの橋梁の交通渋滞が緩和され,燃料消費量の削減により年間6,715トンの窒素酸化物,18,063トンの一酸化炭素排出量の削減が見込まれる。さらには,トルコの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書,これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html ),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。