評価年月日 平成22年11月5日
評価責任者 国別開発協力第一課長 清水茂夫
(1)供与国名
フィリピン共和国
(2)案件名
道路改良・保全計画
(3)目的・事業内容
フィリピン全域の既存の幹線国道1の舗装・改良を行うことにより,輸送能力・効率の向上をはかる。また,道路維持管理計画やガイドラインを整備することにより,政府の道路維持管理に対する組織能力を強化し,既存道路の耐久性,保持性を高めるもの。
(ア)主要事業内容
(イ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
408.47億円 | 年1.4%(コンサルティング部分は年0.01%) | 25(7)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
(ア)EIA(環境影響評価):事業対象区間のうち,環境適合証明が必要と判断された区間については,フィリピン環境天然資源省からすべて同証明を取得済み。
(イ)用地取得及び住民移転:用地取得及び29世帯の住民移転を伴う可能性があるが,用地取得及び住民移転は,実施機関(公共事業道路省)及び地方自治に関する国内法に沿って適切に実施される。
(ウ)外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
(ア)開発ニーズ
フィリピンでは,道路交通が旅客輸送の約90%,貨物輸送でも約50%を占めているが,道路の舗装率は極めて低く,国道で70%,州・市等管轄の道路を含めた全国平均は23%にすぎない。同国の更なる経済発展には舗装された道路網の整備が不可欠である。
また,フィリピンでは,これまで道路網の新規拡張に力点が置かれてきた一方で,いったん建設された道路管理については,維持管理に必要とされる予算が不十分で,道路維持管理に係る計画の策定もされておらず,維持管理実施に要する技術・能力が不足している。
また,本件実施対象区間には,貧困地域も含まれるところ,本件実施により貧困地域の生計向上に資する。更に,本年6月のアキノ新大統領の就任演説においても,新政権の重点政策として「インフラ整備と雇用の創出」が挙げられており,交通,観光,貿易に必要なインフラ不足の解消を優先課題と位置づける新政権の政策とも合致する。
(イ)我が国の基本政策との関係
2008年に改定した対フィリピン国別援助計画では,3つの重点開発課題を掲げており,そのうちの一つである「雇用機会の創出に向けた持続的経済成長」において,「インフラ整備に加え,運営維持管理能力の改善等ソフト面の支援を行う」こととしている。我が国は,フィリピンの道路交通セクターにおける最大の援助国であり,これまでにも有償,無償,技術協力の各スキームを通じて,開発計画の作成,基幹道路網の整備等を行っている。道路改良や道路維持管理体制強化は,同国の輸送能力・効率の向上及び道路の持続性確保に資するものであり,我が国が支援を実施する意義は高い。
(2)効率性
本件と併せて,専門家派遣,技術協力プロジェクト等の技術協力を実施することで,総合的な道路維持管理体制を強化し,案件の効率的な実施を図る。
(3)有効性
本計画の実施により,完成2年後の2022年には,年平均日交通量及び所要時間が,ボンガボン~バレル間(2,077台/日(2008年実績値)→3,117台/日)(10分(2008年実績値)→5分),アリンガイ~ラオアグ間(8,850台/日(2008年実績値)→17,050台/日)(360分(2008年実績値)→290分)に改善されるなど,輸送能力・効率の向上が図られる。
単に既存道路の舗装改良を行うのみならず,道路維持管理計画やガイドラインを整備することで,フィリピン政府の道路維持管理能力を向上させ,既存道路の耐久性,保持性が向上することが見込まれ,案件の有効性は高い。
要請書,国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )
その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。
1 約1,380キロメートルを想定。事業開始後詳細設計等で変更となる可能性有り。
2 道路の維持管理をあらかじめ決められた規定に則り,5年間民間に委託する契約。
3 舗装に深刻な損傷を生じる前に行われるオーバーレイ等による定期補修。