評価年月日 平成23年2月18日
評価責任者:国別開発協力第一課長 清水 茂夫
1.案件名1-1.供与国名カンボジア王国 1-2.案件名第三次プノンペン市洪水防御・排水改善計画 1-3.目的・事業内容プノンペン市で頻発する洪水被害の抑制のため,下水管路新設,貯留槽改修等の施設建設と,排水システム維持管理機材等の機材調達,排水管路の維持管理計画の策定・運用にかかる技術指導を行うもので,供与限度額は37.00億円である。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項が,カンボジア王国政府により実施される必要がある。 (1)事業実施に必要な土地の確保及び整地。 (2)本事業実施場所までの配電,給水。 (3)本事業で建設・調達された施設・機材を適正かつ効果的に維持管理し,使用すること。 (4)施工期間中の定期的な環境モニタリング。 (5)トラベックポンプ場の調整池であるトラベック池の現在の貯水容量を維持すること。 (6)既に実施中の廃棄物対策(排水施設の目詰まり対策)が今後も適切に実施されること。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)カンボジア市内の洪水防御・排水施設は,フランス植民地時代から1960年代に整備された施設が多いため老朽化が著しく,また70年代~80年代にかけての内戦による荒廃の影響により,十分な機能を有していない。これに起因した洪水被害・排水不良は,家屋の浸水や道路の水没等,市民生活に大きな支障を来しているほか,人間の生命・健康に直結する衛生問題発生の一因にもなっている。カンボジアは2006年に策定された国家戦略開発計画(NSDP)において,水資源管理を優先的な開発目標の一つに位置づけており,その中に洪水対策も明記されている。 (2)我が国は総合計画策定の段階から継続的に洪水防御・排水改善に係る支援を行っている。本計画は,これまで実施したプノンペン市主要部分における洪水防御・排水改善に関する取組と一体となって効果を発揮することからも,実施の意義は大きい。 2-2.効率性(1)可能な限り特殊な機材や技術を必要としない一般的な工法を計画した。 (2)建設資機材及び労務は,可能な限り現地調達とし,現地で調達できない場合は,所定の品質,供給能力が確保される範囲で最も確実かつ経済的となる第三国又は日本からの調達とした。 (3)対象地区で発生している浸水深は現状で最大100 センチメートル,浸水継続時間は最長7時間となっており,両者を共にゼロとする計画では施設規模が非常に大きくなり,多大な費用が必要となる。そのため排水管網の計画規模は,自然条件調査で得られた最新の降雨データに基づき,2年確率規模の雨量に対して,許容浸水深を20センチメートル以下,浸水継続時間を2時間以下とする計画とした。 (4)老朽化による強度低下が著しい貯留槽については,既存設備の機能を維持した上で改修し,更に設備の維持管理が容易となるような設計とした。 (5)排水管の維持管理作業の安全性を高め,かつ作業効率の向上を図るため,現在の人力による作業から機械によるものとし,必要最小限の機材を調達する計画とした。 2-3.有効性(1)プノンペン市南東部のトラベック地区で発生している浸水被害が軽減される。 (2)市内の商業,観光,官公庁地区における洪水・浸水被害による経済的被害発生を防止する。 (3)衛生環境が改善され,長期間の浸水による皮膚病,下痢,腸チフス,赤痢等の水因性疾病の発生,まん延の改善に寄与する。 (4)浸水による交通遮断が解消,軽減され,主要道路及びう回路で発生する交通渋滞が改善される。 (5)防災分野で優れた日本技術の海外への普及・促進に資する。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)カンボジア王国政府からの要請書 (2)JICAの準備調査報告書(JICAを通じて入手可能) |