評価年月日 平成21年10月23日
評価責任者 国別開発協力第一課長 清水茂夫
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
第八次貧困削減支援貸付(景気刺激支援含む)
(3)目的・事業内容
世銀が実施している第八次貧困削減支援貸付に協調融資することにより、各種改革の推進を支援するとともに、世界的な金融・経済危機の影響を受ける同国政府へ緊急財政支援を行い、景気刺激策の実施を支援するもの。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
549億円 | 変動金利 | 15(3)年 | 一般アンタイド |
(注)変動金利は円LIBOR(6か月)を適用
上記供与限度額のうち、貧困削減支援貸付一般分(70億円)については、金利年1.2%、償還(据置)期間30(10)年の条件で供与。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
特になし。
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
ベトナムは、1986年のドイモイ(刷新)政策開始以降、著しい発展を遂げており、近年は年率8%を超える経済成長を記録するに至っている。それを受け、貧困層の割合が1998年の37.4%から2006年には16.0%まで低下しているが、都市部と農村部で格差が顕在していることから、引き続き、貧困削減のための取組が必要である。
他方、昨今の世界的金融・経済危機の影響を抑えて経済成長を維持するため、同国は、総額約80億ドルの景気刺激策を実施しているが、その結果、財政赤字が年当初見込みの倍以上となる約90億ドルに拡大することから、一部について我が国や世銀等の主要ドナーに財政支援を要請している。
貧困削減に向けた施策の推進、及び金融・経済危機に対応するための景気刺激策実施の観点から、本案件のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
本年7月に改訂した国別援助計画は、1)経済成長促進・国際競争力強化(ビジネス環境整備・民間セクター開発、資源・エネルギー安定供給、都市開発・運輸交通・通信ネットワーク整備)、2)社会・生活面の向上と格差是正(基礎社会サービス向上、地方開発・生計向上)、3)環境保全(都市環境管理、自然環境保全)、4)ガバナンス強化(行財政改革、法整備・司法改革)を重点分野としている。本案件の対象分野は広範囲に渡るため、すべての重点分野を網羅する形で該当し、我が国の基本政策と合致する。
(2)効率性
昨今の、ベトナムに対する世界的金融・経済危機の影響を分析し、必要となる緊急的財政支援の規模を精査することや、各種改革の進捗状況を適切に監視することにより、案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本案件の実施により、貿易における国際統合、国営企業改革、金融セクター改革、インフラ整備及び汚職対策等に係る各種改革が進むことを通じて、ベトナムの貧困削減の促進(貧困層割合16.0%(2006年)→10%(2011年目標))が期待される。また、緊急的財政支援を通じて同国の景気刺激策(総額約80億ドル)を支援することにより、持続的な経済成長の促進(2009年の経済成長目標年率5%の達成)、国際競争力の強化が期待される。また、ベトナムの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書、これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。