評価年月日 平成22年2月18日
評価責任者 国別開発協力第三課長 石塚 英樹
(1)供与国名
ルーマニア
(2)案件名
ブカレスト国際空港アクセス鉄道建設計画
(3)目的・事業内容
ブカレスト都市部において、同市中心部からヘンリ・コアンダ国際空港を結ぶ鉄道整備を実施することにより、同区間の輸送力増強、交通渋滞及び大気汚染の緩和を図り、もって地域経済の発展及び都市環境改善に寄与するもの。
(イ) 主要事業内容
(ロ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
418.70億円 | 1.7% | 25(7)年 | 一般アンタイド |
注:コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価): EIA報告書は、2007年12月にブカレスト地域担当の地域環境保護局(REPA)により承認済み。
(ロ)土地収用及び住民移転:約24.4ヘクタールの用地取得、7世帯の住民移転を伴い、同国国内手続きに基づき手続きが進められる。
(ハ)外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
ルーマニアでは、経済成長に伴い首都ブカレスト市に流入する自動車の数が1998年当時56,000台だったものが2007年には156,000台と急増しており、激しい渋滞や大気汚染が問題になっている。また、本計画の対象とする鉄道の始点となっているヘンリ・コアンダ国際空港は、ルーマニアの玄関口であり、その利用客数は、2006年に約350万人に達しているが、2007年1月のルーマニアのEU加盟を受けて、今後のEUとの経済交流の強化等を背景に、2015年には630万人まで増加する見込みである。これを受けて、ルーマニア政府は、運輸セクター戦略を策定し、本計画が対象とする鉄道の建設を優先事業の一つに位置づけており、本計画は先方開発ニーズに大きく応えるものである。
(ロ)我が国の基本政策との関係
我が国は、2003年11月にルーマニア政府との間で行った政策協議の結果に基づき、対ルーマニア支援では環境保全及び産業育成と貿易・投資促進を重点分野として取り組んできた。2007年のEU加盟後は、依然として多くの課題が残っている産業育成と貿易・投資促進の分野について、特に1)社会・経済インフラ整備、2)農業、3)中小企業振興、4)外国投資促進のサブセクターを重点的に支援してきている。今回の支援は、1)の社会・経済インフラ整備にあたる。
(2)効率性
国際空港と都心部間を事業予定地とする本事業では、都市化が進んだ地域であることから、用地収用・住民移転を考慮し、一部シールドトンネル工法を採用することにより、費用と期間のバランスを確保している。また、本計画の実施において進捗状況を適切に管理することにより、案件の効率性を確保する。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完成2年後の2020年には、ビクトリア広場駅―バネアサ空港駅間において312(列車本数/日)、バネアサ空港駅―ヘンリ・コアンダ国際空港駅間において299(列車本数/日)の運行数が期待され、乗客輸送量については、1,766人・千キロメートル/日が見込まれる。また、渋滞緩和や都市環境改善のほか、ルーマニアの経済・社会発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書、これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。