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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成22年2月1日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚英樹

1.案件概要

(1)供与国名
 イラク共和国

(2)案件名
 デラロック水力発電所建設計画

(3)目的・事業内容
 クルド地域ドホーク県において、水力発電所(流れ込み式発電設備、約30メガワット)等を整備することにより、電力供給量を増加させ、もって同国の経済・社会の発展に寄与するもの。

(イ) 主要事業内容

  • デラロック水力発電設備の新設:流れ込み式発電設備建設(設備容量30メガワット程度(15メガワット級×2基)
  • 関連設備整備:132キロボルト送電線建設、既存変電所設備増設
  • コンサルティング・サービス:詳細設計、入札補助、施工監理等

(ロ) 供与条件

供与限度額 金利 償還(据置)期間 調達条件
169.96億円 0.65% 40(10)年 一般アンタイド

 (注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

(イ)EIA(環境影響評価):環境への影響に関するセクター特性、地域特性に鑑みて、本件計画の環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。本件計画に係る環境影響評価報告書は、クルド地域環境省、連邦環境省より承認済み。

(ロ)土地収用及び住民移転:約90ヘクタールの用地取得を伴い、イラク側国内手続きに沿って取得が進められる。土地供与及び工事中の一時的な土地利用に対しては国内基準に従って補償がなされる。住民移転は発生しない。

(ハ)外部要因リスク:対象地域の治安情勢は改善傾向にあるほか、事業実施に当たって安全確保に最大限の措置を講ずる。

2.資金協力案件の評価

(1)必要性

(イ)開発ニーズ
 イラクにおける電力セクターは、長年の経済制裁と戦争により、新規投資や維持管理の不足、略奪のために発電、送電、変電、配電全ての分野で機能が低下している。1990年代に9,000メガワットを超えていた発電容量は、イラク戦争後に4,000メガワット未満まで低減している。かかる状況から、電力セクターの復旧は、国際社会による復興支援の大きな課題に位置付けられているが、今なお夏の需要ピーク時には、12時間を超える計画停電が余儀なくされる状態にある。クルド地域の電力は、現在、2つの水力発電所、独立発電事業者による火力発電所、隣国からの電力輸入により賄われているが、電力不足は深刻で、一日あたり平均停電時間が約15時間以上に及ぶ。燃料供給面の不安に影響されず、安定的な稼働が期待できる新規発電所設備の整備が喫緊の課題となっている現状を踏まえると本件計画のニーズは大きい。

(ロ)我が国の基本政策との関係
 我が国は、「民間セクターの活性化」を対イラク支援の重点分野の一つに設定している。右重点分野の中で本件計画は、重点課題「電力復興」の下に位置付けられる「電力供給システム改善プログラム」に合致するものである。

(2)効率性
 我が国は、これまでイラク人研修員約670名以上に対し、水力発電分野の研修を実施してきており、本件計画との高い相乗効果が見込まれる。また、本件計画の実施に際しては、進捗状況を適切に監理することで案件の効率性が確保される。

(3)有効性
 本件計画の実施により、クルド地域において安定した発電能力が30メガワット増強、事業完成2年後の2017年には、送電端電力量152ギガワットアワー/年が見込まれ、経済成長の基盤強化、民間セクターの活性化等の効果が期待される。また、電力分野の復興に対してはイラク政府も高い優先度を付与しており、本件計画の支援により、二国間関係の強化が期待される。

3.事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html 他のサイトヘ)、その他国際協力機構より提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html 他のサイトヘ)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html 他のサイトヘ)を参照。
 なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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