評価年月日 平成19年7月9日
評価責任者 有償資金協力課長 岩間公典
1.案件概要
(1)供与国名
イラク共和国
(2)案件名
バスラ上水道整備計画
(3)目的・事業内容
本案件は、イラク南部バスラ県バスラ市及びハルサ市において、上水道施設の整備等を行うもの。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
429.69億円 | 0.75% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価):不要
(ロ)用地取得及び住民移転:不要
(ハ)外部要因リスク:治安の変化、経済情勢の変化
2.資金協力案件の評価
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
バスラ市及び近隣のハルサ市の上水道施設は約20年前までに整備されたものであるが、イラン・イラク戦争や湾岸戦争等の紛争や経済制裁により上水道施設に対する投資が行われず、また、同施設に対する維持管理も不十分な状況にある。両市における浄水場の処理能力は日最大需要量の約半分であり、水質に関するWHO基準やイラク国内基準を十分に満たしていない。このため、両市において、上水道施設の整備を行うことにより、両市における上水供給の改善を図る本案件のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
国際的なイラク復興支援の枠組みの下、我が国は自衛隊派遣による人的貢献とODAによる支援を「車の両輪」としてイラク復興支援を実施してきた。ODAによる支援については、2003年10月のマドリッド会合において、「当面の支援」として電力、教育、水・衛生等イラク国民の生活基盤の再建及び治安の改善に重点をおいた総額15億ドルの無償資金供与及び基本的に円借款により、電気通信、運輸等のインフラ整備も視野に入れて、最大35億ドルまでの支援を行うことを表明した。さらに、2007年2月に我が国は国際機関を通じ、基礎的生活分野(BHN)、治安、人材育成等の人道復興支援案件に対し、総額1億450万ドルの支援(緊急無償)を決定した。
本案件は、上水供給能力の改善によりイラク国民の生活基盤の再建に資するものであり、我が国の基本政策に整合する。
(2)効率性
本案件の実施において進捗状況を適切に監理することにより、案件の効率性が確保される。
(3)有効性
本案件の実施により、上水供給能力の改善による民生の向上を図り、もってイラクの経済・社会復興に寄与することが期待される。また、経済関係が強化され、二国間関係の増進、さらには我が国の安全と繁栄の確保に資することになる。
3.事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
要請書、F/S、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html)、その他国際協力銀行より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力銀行のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/archives/jbic/news.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力銀行が行う予定。