評価年月日 平成19年4月2日
評価責任者 有償資金協力課長 岩間公典
1.案件概要
(1)供与国名
イラク共和国
(2)案件名
原油輸出施設復旧計画
(3)目的・事業内容
イラク南部バスラ県沖合の原油輸出施設に関し、内陸部の原油貯蔵施設と沖合の海上出荷ターミナルを結び、原油を輸出するためのパイプライン及び海上出荷設備を建設する。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
500.54億円 | 0.75% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価):イラク政府が実施済み
(ロ)用地取得及び住民移転:不要
(ハ)外部要因リスク:治安の変化、経済情勢の変化
2.資金協力案件の評価
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
イラクにおいて、石油セクターからの年間収入は235億ドルでGDPの約7割、国家歳入の約9割を占める最大の基幹産業であり、ほぼ唯一の外貨獲得源である。しかしながら、イラン・イラク戦争や湾岸戦争等の紛争や経済制裁により石油セクターへの投資が行われず、石油関連施設の増強や維持管理が不十分であったことにより、戦後も原油輸出量は湾岸戦争前のレベルには到っていない。中でも、バスラ県ファオ沖合の原油輸出施設は、原油輸出の約8割を担う重要施設であるにもかかわらず、老朽化により設備の信頼性が低下しており、原油輸出能力の不安定化をもたらしている。以上を踏まえれば、本案件に対するニーズは高いと考えられる。
(ロ)我が国の基本政策との関係
国際的なイラク復興支援の枠組みの下、我が国は自衛隊派遣による人的貢献とODAによる支援を「車の両輪」としてイラク復興支援を実施してきた。ODAによる支援については、マドリッド会合において、「当面の支援」として電力、教育、水・衛生等イラク国民の生活基盤の再建及び治安の改善に重点をおいた総額15億ドルの無償資金供与、2007年までの中長期的な復興需要に対しては、上記の分野に加え、電気通信、運輸等のインフラ整備も視野に入れて、基本的に円借款により、最大35億ドルまでの支援を行うことを表明した。さらに、2007年2月に我が国は国際機関を通じ、基礎的生活分野(BHN)、治安、人材育成等の人道復興支援案件に対し、総額1億450万ドルの支援(緊急無償)を決定した。
今後の我が国のODAの方針としては、(イ)エネルギー分野等のインフラ整備を支援し、イラクの成長・歳入増加を目指し、(ロ)人材育成、特に行政能力向上を重視し、(ハ)国民融和の観点からスンニ派・クルド地域への配慮も行うこととしており、イラクの成長に資する本案件は我が国の基本政策と整合する。
(2)効率性
本案件の実施において進捗状況を適切に監理することにより、案件の効率性が確保される。
(3)有効性
本案件を通じ、原油輸出施設の安定的稼働及び設備能力の強化を図り、もってイラクの経済・社会復興に寄与することが期待される。また、日イラク経済関係が強化され、二国間関係の増進、さらには我が国の安全と繁栄の確保に資することになる。
3.事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
要請書、F/S、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html)、その他国際協力銀行より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力銀行のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/archives/jbic/news.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力銀行が行う予定。