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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成19年5月1日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広

1.案件名

1-1.供与国名

 ウガンダ共和国

1-2.案件名

 「中波ラジオ放送網整備計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は、ウガンダ放送公社(UBC)の中波ラジオ送信所の整備及びラジオ放送用スタジオ機材の調達により、同国において情報媒体として大きな役割を果たしているラジオ放送網を復旧させ、教育、社会生活上の啓蒙等、国民の生活改善に資するラジオ放送サービスの安定的な提供を図るものである。供与限度額は11億1,200万円であり、現在、資機材の老朽化により稼働していない中波送信所のうち、多くの人口をカバーするマワガ及びケリバ中波送信所の整備ならびにカンパラ放送局のスタジオ機材の整備を行うものである。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がウガンダ共和国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により建設された施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

(3)中波送信所は高電力を扱う施設であり、安全性の観点から本件にて整備される両送信所への関係者以外の容易な進入を防止する措置をとること。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)ウガンダ政府は、「貧困撲滅行動計画(PEAP)」(2004年)において「2017年までに絶対貧困率を10%以下にする」ことを目標に掲げており、ラジオ放送が、1)教育への平等のアクセス、2)農業活動および健康管理の改善、3)国民意識の啓蒙、4)様々な分野における技術の習得を通じ、貧困削減施策の効果向上に大きな役割を果たすとの認識のもと、各種施策の実施において積極的にラジオ放送を活用している。

(2)ウガンダにおけるラジオ受信機の普及台数は約400万台で、世帯を対象とした普及率は76.5%と、テレビ(7.5%)に比べて極めて高い割合となっている。地域によっては、住民にとって唯一の情報媒体がラジオである地方もあり、生活改善、政治、経済等の情報伝達、国民の意識啓蒙を促進する手段としてラジオ放送が大きな役割を担っている。

(3)こうした中、2005年11月に設立されたウガンダ放送公社(UBC)は、唯一の全国ラジオネットワークを有する公共放送機関として、国民に対する教育・啓蒙活動や地域情報格差の是正などで最も効果的な手段としての役割を期待されている。しかし、UBCの基幹施設である7カ所の中波送信所および本部スタジオの機材は、すべて70~80年代に整備されたものであり、内戦や落雷の被害に加え機材の老朽化が著しく、旧式の機材の製造停止に伴うスペアパーツ不足も加わって放送に深刻な障害を与えている。現在稼働している中波送信所は2送信所であるが、そのうち問題なく稼働しているのはブデボ中波送信所のみで、サービスエリアも当初は国土の90%をカバーしていたが、現在25%に縮小している。

(4)このような状況の下、ウガンダ政府は、稼働していない5カ所の送信所のうち、多くの人口をカバーするマワガ中波送信所及びケリバ中波送信所の整備ならびにカンパララジオ放送局のスタジオ機材の整備に必要な資金につき、我が国に無償資金協力を要請したものである。

2-2.効率性

(1)本件を実施するにあたり、対象施設及び機材の数量設定は、財務的負担能力、維持管理能力、費用対効果等のデータに基づき、UBCの前身であったウガンダ・ラジオが当初有していた機能を回復するための必要最小限の規模を設定した。

(2)本件の基本設計にあたり、2カ所の送信所に設置する中波送信機は、当初要請のあった真空管方式のものから、消費電力が少ない半導体方式(真空管方式の6割程度)に変更することで運用コストの低減を図った。また、中央地域及び西部地域のほぼ全域をサービスエリアとして確保することができる出力のものを選択することで、50キロワット出力合成器/切替器を除外するなどのコスト削減を図り、効率性を高めた。

2-3.有効性

(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。

  • UBCの放送サービスエリアが現在の国土の25%から77%に回復し、本件対象地域である中央及び西部地域住民1,415万人が新たに中波放送を受信可能となり、ウガンダ国民の情報格差是正に貢献する。
  • 政治、経済、保健・衛生等、多様な情報の入手が可能となる結果、生活環境の改善ならびに経済産業活動の促進に資することから、同国が取り組んでいる貧困削減の推進に寄与する。
  • 公共放送に必要な番組製作機材ならびに中波放送設備の整備により、安定した放送サービスの実施が可能となる。

(2)我が国は、対ウガンダ支援において、人的資源開発及び基礎生活支援を重点分野として位置づけており、ウガンダ国民がラジオ放送を通して等しく情報にアクセスする機会を拡大し、同国の「貧困撲滅行動計画(PEAP)」の目標達成、生活改善、ならびに民生安定に寄与する本案件は、右方針を促進するものであり、開発効果が大きい。

(3)ウガンダは、政治・経済の両面において大湖地域の平和と発展に積極的な役割を果たしており、我が国との関係も良好である。同国の目標である貧困削減に資する本件の実施は、ODA大綱の重点課題である「貧困削減」及び「持続的成長」の観点からも意義が大きく、日本とウガンダ共和国との友好関係を強化するものである。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ウガンダ共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki.html



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