評価年月日 平成19年3月30日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
スリランカ民主社会主義共和国
1-2.案件名
「新マナー橋建設及び連絡道路整備計画」
1-3.目的・事業内容
本計画は、1990年に反政府勢力により爆破され落橋したマナー橋(現在は仮設橋が設置されている)を架け替え、また老朽化した連絡道路(コーズウェイ)を整備することにより、マナー島と本島の間の安全で円滑な道路交通を確保することを目的とする。供与限度額は18億3600万円(国庫債務負担行為。平成19年度:3.36億円、平成20年度:9.94億円、平成21年度:5.06億円)であり、北部州マナー県にあるマナー島と本島を結ぶ橋梁及び連絡道路合計約3.75キロメートルの建設・整備を行うものである。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がスリランカ民主社会共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設・整備された橋梁・道路の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な用地の確保・既存施設の移設等を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
スリランカ国の北部州にあるマナー県(人口約10万人)は、マナー島に県庁他 主要な公共施設が集中し、島内には県民のほぼ半数にあたる約5万人が生活しているが、国道A14号線上に位置する橋梁及び連絡道路(コーズウェイ)がマナー島と本島を結ぶ唯一の交通手段であり、住民の往来や生活必需品等の輸送が本橋梁及び連絡道路を通じてなされているだけでなく、上水道も本道路に沿って敷設されており、マナー島の住民にとってまさにライフラインとなっている。 |
(2) |
橋梁(約100メートル)は、1930年の英国統治時代に建設されたが、1990年に中央経間は全て落橋した。1995年には仮設の橋梁がかけられたが、幅員は4メートルと狭く大型車1台が通行できる程度のため交通の隘路となっている。また、橋脚も、亀裂が生じるなど損壊が激しいが、現在に至るまで補修されておらず、右仮設橋は落橋寸前の大変危険な状況にある。 |
(3) |
連絡道路(約3.5キロメートル)は、1918年のオランダ統治時代に建設されたが、建設後約90年が経過したことから擁壁護岸の傾倒・倒壊や舗装の劣化等の老朽化が激しく、また、平均幅員も6.3メートルと狭いことから、脱輪や転落の危険性が生じている。また提体の低い箇所では、雨期の満潮時に冠水が生じており、車両・歩行者の安全な通行の障害となっている。 |
(4) |
このような状況の中、スリランカ政府は、マナー島と本島を結ぶ新橋の建設と連絡道路の整備に係る無償資金協力を要請してきたものである。 |
2-2.効率性
(1) |
本計画を実施するにあたり、橋梁に関しては、基本構造、橋脚形式、橋台形式等につきそれぞれ複数案を作成し、経済性や施工性を勘案してもっとも妥当な形式を採用している。また、連絡道路についても、擁壁形式や沈下対策等につきそれぞれ複数案を作成し、経済性、施工性を勘案してもっとも妥当な形式を採用している。
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(2) |
上記の設計方針に基づき、橋梁、連絡道路それぞれにおいて工法等につき経済性、施工性等の観点から最適な形式を選択することにより、本案件の効率性を高めている。
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2-3.有効性
(1) |
本計画の実施により、以下のような成果が期待される。
・新橋の建設により、落橋の危険性が除去される他、重量制限の緩和や幅員の拡張により、安全で安定した人及び物資の輸送が可能となり、スリランカの中でも所得の低い周辺地域の住民生活の向上が確保される。
・連絡道路の整備により、1車線から2車線に拡幅されるほか、嵩上げによる冠水防止により、安全で安定した人及び物資の輸送が可能となる。
・国道A14号線はアジア・ハイウェイに位置づけられており、インド~マナー島間のフェリー航路(現在は運休中)が再開された際には、スリランカとインドを結ぶ路線の一部を構成することとなる。
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(2) |
また、同国の国家開発戦略において、地方開発の促進を重視していることから、橋梁・道路インフラを整備する本案件は、同国における開発効果が大きい。 |
(3) |
さらに、本計画は、スリランカの民族紛争の最も直接的な影響を受けた北・東部州の住民に直接裨益する、同国の「平和の定着と国造り」に大きく資する案件であることから、本計画の実施により、日本とスリランカの二国間関係強化への効果が期待される。 |
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3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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