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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成19年5月8日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広

1.案件名

1-1.供与国名

 ナイジェリア連邦共和国

1-2.案件名

 「小児感染症予防計画(ユニセフ経由)」

1-3.目的・事業内容

 本計画は、世界最大のポリオ野生株発生国及び輸出国であるナイジェリアに対し、ポリオワクチンの供与、5歳未満児の死亡の主要原因であるマラリア対策として蚊帳の供与、さらにより効果的な保健サービスの実施のための医薬品等の供与により、同国の保健事情の改善に貢献することを目的とする。
  供与額は、ポリオワクチン約7.0億円、蚊帳約1.4億円、医薬品約0.2億円等を含む11.01億円。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がナイジェリア連邦共和国政府により実施される必要がある。

  • ポリオワクチン投与、蚊帳の配布等の活動に必要な人件費を確保すること
  • 対象者に対して確実にポリオワクチン投与、蚊帳の配布等を実施すること

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)ナイジェリアの保健指標は改善傾向にあるものの、出生1000人あたりの乳児死亡者数が100人、5歳未満児死亡者数が194人(共に2005年、世界子供白書)と依然高い数字を示している。また、乳幼児の死亡原因は、マラリア、下痢、急性呼吸疾患、麻疹の順である。

(2)世界のポリオ撲滅活動は着実に進展しているものの、アフリカと南アジアにおいて依然としてポリオ撲滅が達成されていない。ナイジェリアはポリオ野生株残存4カ国(ナイジェリア、インド、パキスタン、アフガニスタン)のうちの一つであるが、2006年は801件、2007年は35件の発生が新たに報告され、依然として世界最大の発生国である。また、周辺国を始め世界各地へのポリオウイルスの最大の輸出国(全世界の輸入株症例の8割以上が同国を原因とする)であることから、全世界におけるポリオ撲滅にあと一歩と迫っている中、ナイジェリアにおける撲滅を通じたアフリカ大陸における撲滅は国際社会におけるポリオ対策の最重点課題となっている。このような状況の中、ナイジェリア政府は、各ドナーの援助の下、2007年も全国一斉投与(NID)等を計画するなど、全国的な予防接種を計画しているが、ワクチンが不足している状況である。
 なお、2007年2月末に開催された「ポリオに関する緊急関係者会議(WHO主催)において、「ポリオ撲滅に向け最終的な対策が必要な時期に差し掛かっており、特にナイジェリアを始めとする野生株残存4カ国におけるポリオ撲滅が最重要である」ことが改めてドナー間で確認されたところである。

(3)マラリアは、ナイジェリアの5歳未満児の死亡原因の第1位であり、地域によっては1歳未満児の死亡原因の半数を占めている。また、7割の妊産婦が妊娠期間中にマラリアに罹患しており、妊産婦死亡の主要原因となっている(国家マラリア対策計画報告書2005年)。このため政府は、「国家マラリア対策計画」を策定し、蚊帳の普及を含むマラリア対策に取り組んでいるものの、必要な蚊帳を確保できている状況にはなく、最低1帳の蚊帳を有する家庭は全家庭の20%、蚊帳を使用している5歳未満児及び妊産婦の割合は6.8%にすぎない(同報告書)。この状況に対し我が国は他ドナーと共にマラリア対策に取り組んでおり、我が国も2005、2006年にユニセフを経由して蚊帳の供与を行った。このように他ドナーとの連携した取組みによって、本計画の対象地区である111地方行政区において蚊帳を所持する5歳未満児及び妊産婦の割合は平均22%(ユニセフ)と向上したところであるが依然として保有率は低い。

(4)このような状況のもと、ナイジェリア政府及びユニセフは小児感染症予防計画を策定し、当計画に必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)ユニセフは独自の調達機関(UNICEF Supply Division:ユニセフの調達部門)を通じてワクチン、医薬品、蚊帳等を集中購入していることから、本案件をユニセフ経由で実施することでコスト面において効率的な調達が可能となる。

(2)ポリオ撲滅に関してはUNICEF、WHOや各国保健省など予防接種の専門家やドナーから構成される会議において、各国の予防接種時期を決定している。今回のポリオワクチンは同会議で決定されたナイジェリアにおける一斉投与キャンペーンに使用される等、ドナー協力による効率的投与がなされる。

(3)ポリオワクチン、医薬品、蚊帳の単独サービスではなく、これらを組み合わせた複合的サービス(例えば、予防接種に訪れた子どものうち、全ての予防接種を受けた子どもに対し蚊帳を渡し、妊産婦検診時に妊産婦に対し蚊帳・貧血予防薬を渡す、等)を実施することで、より効率的・効果的サービスが可能となる。

2-3.有効性

(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。

(イ)特にポリオ感染の危険が高い12州において、ポリオ一斉投与の実施のためのポリオワクチンを供与することにより、一度もポリオ・ワクチンを接種したことのない子どもが減少すると共に、同国、ひいては、アフリカ大陸におけるポリオ撲滅に資する。

(ロ)5歳未満児の主要な死亡原因であるマラリア対策として、感染の危険が高い111地方行政区において、本案件による蚊帳約20万帳の供与は、蚊帳の下で眠ることのできる5歳未満児や妊産婦の割合が2006年末の22%(111地方行政区平均)から少なくとも25%以上に改善させる効果を有する。

(ハ)貧血や脱水症状等の改善に資する保健サービス等を組み合わせることにより、同国の乳児死亡率、5歳未満児死亡率、妊産婦死亡率等が改善される。

(2)本件はアフリカにおけるマラリア対策のために我が国が表明した1,000万帳の蚊帳の供与の一環として実施するものである。

(3)本件の実施により、日本とナイジェリア連邦共和国との二国間関係強化が増進される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ナイジェリア・ユニセフ事務所からの要請書

(2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki.html



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