評価年月日 平成19年3月27日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
ケニア共和国
1-2.案件名
「西部地域県病院整備計画」
1-3.目的・事業内容
本計画は、ケニア西部で二次診療の中核的な役割を果たすニャンザ州キシイ県立病院と、リフトバレー州ケリチョー県立病院の、病棟建設と医療機材の整備を行うものである。本事業により、地域の診療所では対応できない患者への医療サービスや救急医療体制を向上させ、現在患者が集中している州立病院の混乱の緩和を目的とする。供与限度額は12億6,300万円であり、キシイ県立病院では産科を含む外来診療棟、ケリチョー県立病院では救急病棟の建設を中心とし、緊急手術機材などの医療機材を供与する。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がケニア共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設された病棟と、供与された医療機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)医師、看護士等活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
ケニアでは、妊産婦死亡率が1000人/10万人、乳児死亡率が78人/1,000人と、他の東部アフリカ諸国と同様、医療・保健状況が極めて困難な状況にある。特に、同国の西部地域では、マラリア、結核、HIV/AIDSなどの感染症が延しており、本計画が対象とするニャンザ州では乳児死亡率が133人/1,000人の高率を記録している。(日本では3人/1,000人)。我が国は、ケニア共和国に対する国別援助計画に於いて、経済インフラ整備等と共に「保健・医療」を重点協力分野にしている。 |
(2) |
ケニア政府はこうした状況を打開するため、「国家保健医療政策」(第一次:1999年~2004年、第2次:2005年~2010年)を策定し、保健分野に於ける地方への権限委譲と人員の適正な配置と共に、病院、診療所など地方の医療・保健施設の整備を重点課題としている。特に地元診療所の拡充と、診療所では対応しきれない手術が必要な患者などを対象とする上位病院への患者搬送体制の整備を重視し、地域医療サービスの向上を図っている。今回の協力対象である県立病院は、この二次診療施設の中核となるものである。 |
(3) |
ケニアはサブサハラ・アフリカの中で民主化、経済改革に取り組み、近年着実な経済成長を遂げてはいるが、1990年代後半からの断続的な干魃やエルニーニョ現象による大雨、洪水による農業への打撃などにより、一人あたり国民所得はなお460米ドルである。
財政状況も厳しく、老朽化した県立病院の施設・機材の整備を自助努力で行うのは困難であるため、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 |
2-2.効率性
(1) |
両病院の外来診療棟、救急病棟の建設では、その規模を現状の診療実績を基本として、診療対象地域の人口増加率や、両県病院の稼働率などを踏まえた患者数に基づいて設計し、適正ながら過大な規模とならない設計を行った。なお、既存施設の解体や整地はもとより、基本的な電気系統の設備はケニア側が負担することとした。
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(2) |
また、時折発生するマラリアの一時的大流行などの非常時に於いても、医療活動が阻害されないよう、院内感染の防止、軽減が可能な設計とした。 |
(3) |
医療機材の選定では、ベッド等病院で必要な一般家具や血圧計等基本的な備品はケニア側で調達することとし、当方が供与する機材もケニア側で維持管理が可能なものを選定し、当初要請のあった眼科手術機材など過度に複雑な機材を除外するなどのコスト削減を図り、効率性を高めた。
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2-3.有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
(1) |
キシイ県立病院では施設が老朽化し、また外来診療機能と中央診療機能が分散するなどの非効率から患者に負担がかかっているが、これを新築の外来診療棟に集約し、最適な規模とすることで病院本来の診療機能が回復する。
ケリチョー県立病院では、救急患者も一般外来受付で対応してきたため、病院全体の能力低下が生じているが、救急診療専門棟の新築により、重傷の救急患者に対する対応能力が高まると共に、一般外来患者の受診能力も向上する。 |
(2) |
本件では、ニャンザ州キシイ県住民(約52万人)及びリフトバレー州ケリチョー県住民(約53万人)にとって、地域の中核となる第二次診療病院の機能回復により医療・衛生環境が改善する。また、現在患者が集中している上位病院である州立病院との適正な役割分担が可能になる。 |
(3) |
ケニアは東アフリカの政治・経済面で指導的役割を果たしており、我が国との関係も良好である。保健、医療分野の改善はケニア自身がその開発で高い優先度を置いており、我が国が本計画により中枢的な医療施設の改善を行うことは、いわゆる「日本の顔の見える事業」として、その外交的効果も大きく、両国の友好関係を強化するものである。 |
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3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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