広報・資料 報告書・資料

政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成19年6月18日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広

1.案件名

1-1.供与国名

 インドネシア共和国

1-2.案件名

 「鳥インフルエンザ等重要家畜疾病診断施設整備計画」

1-3.目的・事業内容

 本プロジェクトは、高病原性鳥インフルエンザによる死者80人と世界一の被害(2007年6月14日現在)が発生しているインドネシアにおいて、鳥インフルエンザの恐れのある鳥の検査能力を向上させ、鳥インフルエンザ対策に資することを目的として、国立家畜疾病診断センター(DIC)の新設1箇所(スバン)及び既設DICの改修2箇所(メダン、ランプン)及び検査機材の操作及び検査に係わる技術指導を実施するものである。供与限度額17億8,100万円。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき事項

 以下の事項がインドネシア共和国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により建設された施設及び機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
 供与後の維持管理にあたっては、以下の点が適切に実施される必要がある。
 1)診断施設からの排水は化学処理槽ならびに汚水処理施設にて適切に処理する。
 2)診断施設からの廃棄物は高圧滅菌処理の後、敷地内で焼却処分をするなど適切に処理する。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)インドネシア政府は2005年12月に国家鳥インフルエンザ防圧戦略(NSP)を策定し、鳥インフルエンザの感染拡大防止とその変異による人への感染阻止に取り組んでいる。
 NSPでは、防圧に係る診断機能強化、ワクチン品質管理能力強化が定められているが、その対策のためのインフラ整備が遅れている。

(2)NSPにおいてインドネシアにおいて死亡した検体(鳥)の診断を担当することとされていた国立家畜疾病診断センター(DIC)においては、世界保健機関(WHO)の定める鳥インフルエンザ診断に必要な安全性を有する検査施設は存在しないことから、やむを得ずウィルス検査・診断施設の一部を改造して診断にあたっており、検査スタッフはもちろんのこと、近隣住民にとっても大変危険な状態である。

(3)また、鳥インフルエンザ診断施設及びその診断能力が充分でないため、鳥インフルエンザ感染の恐れがある検体(鳥)の診断に期間を要し、感染拡大防止のための措置が早期に実施することができない状態である。特に、感染被害が最も大きいジャワ島においては、DICがジャワ島中部のジョグジャカルタにあるのみで、最も感染被害の大きいジャワ島西部においては、診断施設がない状態である。

(4)このような状況の下、インドネシア政府は、鳥インフルエンザ診断能力向上のため、国立家畜疾病診断センター(DIC)の新設1箇所(スバン)及び既設DICの改修2箇所(メダン、ランプン)及び検査機材の操作及び検査に係わる技術指導のために必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)本件を実施するにあたり、インドネシア政府が資金手当が困難な部分を無償資金協力で支援することにより、遅れている鳥インフルエンザ診断施設を早期に整備することができるが、このことは、インドネシアの国家計画である国家鳥インフルエンザ防圧戦略(NSP)にも合致している。

(2)当初インドネシアからの要請は、国立家畜疾病診断センター(DIC)及び国立動物医薬品検査所(VDAL)の整備であったが、インドネシア側の維持管理能力(人員・費用・技術等)に課題があるVDALを支援内容から外し、DIC支援を先行させ、迅速な支援を可能とし、本案件の効率性を高めた。

2-3.有効性

(1)本案件の実施により、以下のような成果が期待できる。

 1)鳥インフルエンザウィルス等に関する世界保健機構(WHO)の勧告が遵守され、検査スタッフ及び近隣住民の安全が確保される。

  • 整備前:バイオセイフティレベル1(対応可能な病原菌:大腸菌等)
  • 整備後:バイオセイフティレベル2+一部レベル3(対応可能な病原菌:鳥インフルエンザ、ニューカッスル病、狂犬病等)
 2)インドネシアの人口の63%(約1.5億人)、家禽飼養羽数70%(約13億羽)が集中するジャワ島及びスマトラ島において、国立家畜疾病診断センター(DIC)における診断能力を向上させることができる。
  • 整備前:ジャワ島の診断可能件数:約12,000件程度/年
  • 整備後:ジャワ島の診断可能件数:約24,000件以上/年

 3)ソフトコンポーネントの実施によって、スバン、メダン、ランプンにおける鳥インフルエンザ診断能力及び検査施設の維持管理能力が向上する。

(2)本案件は、鳥インフルエンザ被害が最も多いインドネシアに対して、初めて鳥インフルエンザ診断のための施設を整備するものであり、保健分野における意義は大きく、また、外交上のインパクトは大きい。

(3)さらに、本計画の実施により、日本とインドネシア共和国の二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)インドネシア共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki.html



このページのトップへ戻る
目次へ戻る