評価年月日 平成19年4月27日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名1-1.供与国名インドネシア共和国 1-2.案件名「持続的沿岸漁業振興計画」 1-3.目的・事業内容本プロジェクトは、漁船への氷・燃料・水等の補給から漁獲物の水揚げが集約的に実施できる水産物流通拠点としての漁港施設を建設し、効率的で衛生的な漁業活動と水産物流通体制の整備形成を通じて地域経済の発展に貢献することを目的とする。供与限度額は10億7,000万円。東ヌサテンガラ州東フローレス県ラランツカ郡に、水産物流通拠点としての漁港施設の建設、水揚・荷捌き支援機材等の供与及び漁港運営に係る技術指導を実施するものである。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がインドネシア共和国政府により実施される必要がある。 (1)本計画により建設された漁港及び機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)インドネシア政府は海洋水産中期戦略において、「水産業の再活性化」、「地域社会の水産物アクセス改善」、「水産業の持続的推進と水産インフラ整備」及び「水産資源・環境の保全・管理の推進」の4点を基本戦略としている。 (2)東ヌサテンガラ州東フローレス県ラランツカ郡は、我が国が2000年~2002年に実施した開発調査において、経済開発が最も遅れており、資源開発・地域供給の潜在力が高いとされ、開発優先度の高い地域と位置づけられた。東フローレス県は、東ヌサテンガラ州の州都があるクパン県に次いで漁獲量が多い地域(2004年:1万4千トン)であり、漁業資源の開発レベルは約30%と将来発展の余地を残しているが、当該地では水産基盤施設が整備されておらず、1)沿岸一体が遠浅地域となっており干満差が約3メートルに及ぶため、干潮時には漁船の接岸が困難となり、干潮時の漁獲物水揚げ、漁船への水・油等の補給作業には多大な労働・時間ロスが生じている、2)盛漁期の漁獲量に対応できる製氷施設が整備されておらず、水揚げ場所が分散されているため、流通業者の機会ロスが発生している、等の問題が生じている。 (3)このような背景のもと、インドネシア共和国政府は、上記問題に対処するために、漁船への氷・燃料・水等の補給から漁獲物の水揚げが集約的に実施できる水産物流通拠点としての漁港施設を建設し、効率的で衛生的な漁業活動と水産物流通体制の整備形成を通じて地域経済の発展に貢献することを目的とした「持続的沿岸漁業振興計画」を策定し、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 (4)なお、我が国は、政府開発援助の一環として、開発途上国の水産業の振興を通じ、我が国との友好関係の維持強化を図るとともに、長期的展望の下に我が国漁船の漁場確保等に資するため、水産無償資金協力を通じて、水産関係施設の建設等を推進している。 2-2.効率性(1)本件を実施するにあたり、水揚桟橋や連絡桟橋、小型漁船用水揚護岸等の土木施設の建設を行うが、約3メートルの潮位変動があり、陸側から沖に向け約250メートルの遠浅形状である計画サイトにおいて、漁船の操船安全性、効率的な接岸利用、及び海象条件に対する経済的構造形式とすること等を総合的に考慮の上、複数の構造形式を比較検討し、杭による水揚桟橋及び階段式の小型漁船用水揚護岸を採用した。 (2)上記の設計方針に基づき、桟橋、護岸それぞれにおいて工法等につき経済性、施工性等の観点から最適な形式を選択することにより、本案件の効率性を高めている。 2-3.有効性(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。
(2)水産分野においては、マグロに関する国際場裡等でのIUU(違法・無規制・無報告)対策等の協力関係が重視されるようになっており、我が国はインドネシア共和国との間で水産分野で友好的な協力関係を有しているが、本案件の実施はこれを維持強化するものである。 (3)さらに、本計画の実施により、日本とインドネシア共和国の二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)インドネシア共和国政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |