評価年月日 平成19年10月9日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田 裕憲
1.案件名1-1.供与国名エチオピア連邦民主共和国 1-2.案件名「オロミア州小学校建設計画」 1-3.目的・事業内容
本計画は、エチオピア中央部に位置し、人口約2,500万人(同国全体の約1/3)を擁するオロミア州において、小学校教室、その付属施設及び給水施設の建設を行うと共に、教育家具等の調達を行うものである。本事業により、教室充足率が低い地域での就学率が向上し、教育環境や、洗面所等の整備を通じて衛生環境が改善されることを目的とする。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がエチオピア連邦民主共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設される施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)エチオピアでは、一人当たりGNIが110ドルと世界でも最低水準にあり、貧困削減が最大の課題となっている。同国政府はその解決のために教育の振興を重視し、「教育セクター開発計画」を策定し、初等教育の就学率は1997年の34.7%から2005年の79.2%と大幅に改善した。しかし、就学率増加に施設の拡充が追いつかず、深刻な教室不足が生じている。本計画の対象地域でも、1教室当たりの児童数は平均140人と、二部制授業を実施してもなお過密な状況にあり、また学校数の不足により一部児童は長距離徒歩通学も余儀なくされている。 (2)こうした状況を打開するため、エチオピア政府は上記計画の中でも教室の増設を優先項目に挙げ、特に人口、面積共に同国最大の州であるオロミア州における小学校建設計画を策定し、整備に努めている。我が国は、エチオピア政府の要請を踏まえ、同州の3県を対象とする技術協力「住民参加基礎教育改善計画」によって、住民参加による学校建設及び持続的な運営モデル作成の協力を実施している。しかし、エチオピア政府の財政事情は厳しく、教室等の整備及び教育家具の調達は困難なため、同事業に必要な資金につき、無償資金協力の要請があったものである。 (3)本案件はコミュニティ開発支援無償資金協力を活用して実施される。学校施設の維持管理と、トイレの使用に慣れない児童の衛生教育を含めた便所、給水施設の維持管理に関する技術指導を併せて行い、コミュニティによる持続的な学校運営、衛生環境の改善への貢献も計画している。 2-2.効率性(1)本件計画による建設、増設対象校の選定は、オロミア州政府の作成した優先整備校リストに基づき、治安上の観点及び、学校間の距離等施工・監理上の観点から行った。各学校で建設や増設が必要な教室の数は、エチオピア政府が設定している1教室50名の基準に則し、プロジェクト完成予定の2010/11年度の就学児童数を、人口増加率と現生徒数から算出した。また設計では、特に、図書室と教材制作室については、既存校の使用状況等を検討して規模を一部縮小し、教室の増設を優先させることとして効率性の向上を図った。 (2)本件は、コミュニティ開発支援無償を活用して実施される案件であり、資機材は全て現地調達とし、またオロミア州の気候・地理的条件や、同州教育局の学校施設基準に合わせた設計仕様を採用することにより、適正ながら過大な規模とならない設計を行い、コストの縮減に努めている。 2-3.有効性本件の実施により、以下のような成果が期待される。 (1)学校教室等の建設や改修、及び教育家具の調達により、就学児童数の増加と、教育環境の改善が見込まれるとともに、給水施設及びトイレの建設により、学校の衛生環境が向上する。また、施設の使用、維持管理に関する技術指導により、地域住民による持続的な学校運営や、衛生環境の改善に対する意識向上が図られ、適切な学校運営体制が構築される。 (2)エチオピアでは、「貧困削減のための加速的かつ持続可能な開発計画(PASDEP:エチオピア版PRSP)において、人的資源の開発、特に教育を重点分野としており、また、教育省の「教育セクター開発計画」では、初等教育の質の向上と、児童の教育へのアクセス向上を目標として掲げている。本事業はこのようなエチオピアの開発計画と合致している。 (3)エチオピアは東アフリカで最大の人口を有し、我が国との関係も良好である。人材開発や教育はエチオピア自身がその開発上高い優先度を置いており、我が国が本計画により、技術協力とあわせて教育環境の改善に貢献することは、いわゆる「日本の顔の見える事業」として、その外交的効果も大きく、両国の友好関係を強化するものである。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)エチオピア連邦民主共和国政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)第34回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ
参照。 |