評価年月日 平成19年4月9日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
エリトリア国
1-2.案件名
「デブブ州地方都市給水計画」
1-3.目的・事業内容
本計画は、エリトリアの首都アスマラ近郊の地方4都市において、地下水開発のための深井戸掘削と給水施設の建設を行うものである。本事業により、住民の22.1%という極端に低い現在の給水率を改善し、全世帯に安全な飲料水を供給することを目的とする。供与限度額は15億2,400万円(平成19年度3億1,600万円、同20年度10億1,200万円、同21年度1億9,600万円)であり、電動ポンプ付井戸の敷設に加え、給水塔の建設、市内への水道管を整備し、また機材維持管理の技術指導を行う。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がエリトリア国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設された給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)対象4市当局と協力し、幹線水道管から各戸、共同水栓への配管を確保すること。 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
エリトリアは国土の大部分が乾燥・半乾燥地帯に属し、首都アスマラ以外は水道が未発達で、全国の平均給水率は約30%と低い状況にあり、特に近年数年おきに発生する干魃により、給水事情は悪化している。本事業の対象であるデバルワ、デケムハレ、マイディマ、アディケイの4都市では、地下水開発技術の不十分さや資金不足から給水施設整備が遅れ、住民は高額な給水車の水を利用するか、または非衛生的な河川、伏流水の使用を迫られており、それでさえ乾期には渇水し、婦人、児童が遠方までの徒歩の水汲みを余儀なくされている。更に、不衛生な水の利用は、感染症などの原因ともなっている。 |
(2) |
エリトリア政府はこうした状況を打開するため、「国家水供給・衛生緊急行動計画」を策定し、地方・農村を中心とする全国的な水不足への対応を図っている。同計画では、2015年までに地方住民の60%に安全な水を供給することを目的に、政府自身の取組に加え、ユニセフ等の国際機関や各国に支援を要請している。 |
(3) |
エリトリアは1993年のエチオピアからの独立以来、経済発展と社会施設の整備に努め、2004年には持続的経済成長を目指す貧困削減戦略文書(PRSP。暫定版)を作成するなど努力を続けている。しかし、30年に及ぶ内戦により各種施設も破壊され、産業の育成も大きく阻害され、一人あたり国民所得(GNI)も220米ドル(2005年)と世界でも最も低い水準となっている。財政状況も厳しく、同国各地の給水施設の整備を自助努力で行うのは困難であるため、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 |
2-2.効率性
(1) |
当初エリトリア側からはデブブ州内7都市の給水施設建設の要請があったが、ドイツ援助機関(GTZ)等と調整し、我が国は4都市で実施することとした。また、エリトリア側は全世帯個別の各戸給水を希望していたが、工事が複雑化し将来的に住民の負担も増加することから、一部を共同水栓とし、適正ながら過大な規模とならないようコスト削減を図り、効率性を高めた。
なお、既存施設の解体や整地はもとより、各戸、各共同水栓などの末端部分の配管工事はエリトリア側(事業対象の各市)が負担することとした。
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(2) |
施設完成後の維持管理能力を高めるため、ポンプ、配水管等の技術的な維持管理を含め、料金徴収を含む水道の運営などの技術指導を地元市職員等に行い、長期的な施設のメインテナンスの費用対効果を高める。
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2-3.有効性
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
(1) |
対象地域の4都市において、現在平均22.1%の給水率が、2015年には本件事業により、100%となる。なお、この100%はエリトリアの高い人口増加率(10年間で約60%増加)を考慮したものであり、給水人口は現在の約2万人から約15万人に増加する。 |
(2) |
良好な水質の安定的な供給により、衛生状況が改善され、水因性疾患の減少が期待され、また住民の高価な給水車配水への依頼が減少し、貧困削減に寄与出来る。また、長距離、徒歩の水汲み労働から婦女子が解放される。 |
(3) |
エリトリアはスーダンの紛争地域と隣接し、南部では紅海の狭い出入口を扼するなどアフリカ地域の平和の定着に重要な地政学的位置にあり、1993年の独立以降、我が国との関係も良好である。エリトリアでは、エチオピアとの国境紛争等により、社会の諸施設が相当破壊され、上記の通り安全な飲料水の供給はエリトリアがその開発上高い優先度をおいている分野である。 |
(4) |
我が国がその高い地下水開発の技術により本計画を実施することは、注目度も高い事業であり、その外交的効果も大きく、両国の友好関係を強化するものである。 |
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3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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