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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成19年4月9日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広

1.案件名

1-1.供与国名

 カンボジア王国

1-2.案件名

 「第二次プノンペン市洪水防御及び排水改善計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は、プノンペン市において、市内を流れる川沿いの護岸の補強・改修や配水施設の改修・新設により、洪水や浸水の被害を低減することを目的とする。供与限度額は25億9500万円(国庫債務負担行為。平成19年度:3.75億円、平成20年度:13.25億円、平成21年度:8.95億円)であり、トンレサップ川沿い護岸2カ所(70メートル、260メートル)の補強・改修とともに、ポンプ場及び貯留槽並びに排水路などの排水施設の改修・新設を行うものである。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がカンボジア王国政府により実施される必要がある。

  • 本計画により改修・新設されるポンプ場等関連施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
  • 活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

  • カンボジアにおいて1970年代より20年にわたって続いた内戦の間、プノンペン市内の洪水防御・排水施設の維持管理がなされないまま放置されたため、それら施設の機能が著しく低下している。この結果、市内を流れるトンレサップ川の堤防は毎年越水の危険にさらされていることに加え、降雨の度に浸水被害が市内各所で頻発しており、被害規模は最大で浸水深60センチメートル、継続時間12時間に達する大規模かつ甚大なものとなっている。
  • 一方、国内の政治的安定と治安回復に伴い、プノンペン市の人口は急激に増大しており、首都機能の保全や経済活動への悪影響の軽減、衛生改善等の視点から洪水・浸水に対する早急な改善対策が喫緊の課題となってきた。
  • このような状況のもと、カンボジア政府からの要請を受けた我が国は1998年2月から1999年8月にかけて「プノンペン市都市排水・洪水対策計画調査」を実施し、マスタープランを策定した。その後、このプランに基づき我が国は、2002年12月から2004年9月まで、プノンペン市西部・南部地域を対象とする「プノンペン市洪水防御及び排水改善計画」(第一次)を実施し、十分な治水・排水能力の改善が確認された。この結果を受け、今般、カンボジア政府は、第二次計画としてプノンペン市北部・東部・南部の一部を対象とする本件を要請してきたものである。

2-2.効率性

 上述の先方の要請のうち、プノンペン市北部の排水区は官公庁や商店が建ち並ぶ地域であり、かつ地形的に自然排水が困難なためポンプ場の建設が必要となる地域である。このポンプ場の機械・電気設備と、それに併設される大型地下構造物である貯留槽の建設は、カンボジアの現在の技術レベルでは実施が困難であることから、優先度が高くかつ日本の技術を必要とするものと判断し、北部地区のみを対象として絞り込んだ。また、費用対効果を十分に勘案し、許容浸水深を20センチメートル以下・許容浸水継続時間を1~2時間とする設計を採用することでコスト削減を図った。

2-3.有効性

(1)本計画の対象地域は、官公庁や観光スポット、商店・市場等の首都機能が集まる地域であるにも拘わらず、年4回以上の浸水被害が発生している。本計画での排水施設の改修・新設により2年確率の降雨に起因する浸水被害規模が、これまでの最大浸水深60センチメートル(家屋内でも膝上まで浸水する程度)から20センチメートル以下(家屋に浸水しない程度)に、最長浸水継続時間が12時間から1~2時間未満に軽減される。これにより約4万世帯(約12万人)、約3,000軒の商業施設、約50軒の公共施設が裨益する。
 また、護岸補強工事の実施によりプノンペン市の洪水防御機能が強化され、既往最大洪水(約30年確率)に対して破堤・越水を生ずることがなくなり、約12万世帯(約46万人)、7,600軒の商業施設、約100軒の公共施設の安全が確保される。
 加えて北部3排水区の汚水排水をプノンペン市南部の湿地に排水し、湿地の浄化作用で浄化された水を河川に戻すこと(遮集方式)により、河川汚染の低減効果が期待される。間接的効果として、経済的被害発生の防止、衛生環境の改善、浸水による交通遮断時間の縮小に寄与する。

(2)本案件は同国の首都であるプノンペン市の中でも、官公庁や商業・観光スポットの集まる北部地域を対象としたものであり、我が国の顔が見える案件として外交的インパクトが大きい。また、日・カンボジア二国間の要人往来を控え、本計画の実施により、両国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)カンボジア王国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki.html



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