評価年月日平成19年2月28日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
ベナン共和国
1-2.案件名
「ラギューン母子病院整備計画」
1-3.目的・事業内容
本計画は、ラギューン母子病院の新病棟、手術棟及びその他の施設の建設、また医療機材の調達により、ベナンにおける最上位医療機関の一つとしての役割を担う医療機関として機能回復及び衛生的な医療サービスの提供を図るものである。また、同病院の施設・機材の老朽化及び必要機材の不足により、十分な医療活動が提供できていない状況を改善するとともに、母子病院としての機能に加え、母子保健医療に従事する医師、助産婦、看護師等を対象とした教育病院としての施設体制の強化を図ることも目的とする。供与限度額は12億2,400万円であり、既存施設のうち特に老朽化や狭小化が著しいために機能が低下し、保健医療活動に著しく支障をきたしている病棟、小児外来部門及び新生児病棟を含む地上3階建ての新病棟、平屋建ての分娩棟及びそれらに関連する設備機械のための施設等を新築し、また、超音波診断装置、分娩台、手術台、X線撮影装置等の機材整備及び維持管理の技術指導を行うものである。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がベナン共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設された施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
(3)医療施設として必要かつ十分な環境対策を行うため、本件にて建設される施設から排出される汚水及び雑排水を適切に処理する計画を策定すること。 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
ベナンの乳児死亡率は出生1,000件あたり90(2004年、開発途上国平均59)であり、妊産婦死亡率は出生10万件あたり850(2003年、開発途上国平均440)と高い数値になっており、医療保健分野の状況は一層の改善が必要である。ベナン保健省は「保健分野発展のための政策と戦略(2002-2006年)」を策定し、リプロダクティブヘルスを含む母子保健サービスの強化を図り、質の良いサービスの提供を目指すことを目的に、全国各地にある保健医療施設の改善等に取り組んでいる。 |
(2) |
ラギューン母子病院は、1958年にラギューン産院として開設されて以来現在に至るまで、ベナンにおける最大かつ最も歴史のある母子病院として、住民からの信頼を受けている。近年では同病院は母子及び小児医療に従事する医師、助産婦、看護師、臨床検査技師等を対象とした教育病院としての役割も果たし、ベナンの最上位病院に位置づけられるなど重要な役割を担っている。 |
(3) |
同病院の既存施設の大半は1950年に建設されたものであり、老朽化が進み、病棟では入院患者の増加によるベッド不足で、臨時に通路や廊下に仕切を設けて患者を収容することが恒常化しており、緊急に整備が必要な状況にある。これに加え、医療機材の老朽化や機材の不足が生じており、患者への適切な医療活動が十分行い得ない状況にあるものの、財政難により状況改善のための機材整備が困難な状況にある。 |
(4) |
このような背景のもと、ベナン共和国政府は、上記問題に対処するために本件計画を策定し、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 |
2-2.効率性
(1) |
本件を実施するにあたり、対象施設及び医療機材の数量設定は、財務的負担能力、維持管理能力、費用対効果等のデータに基づいて定量的に評価することで対象施設及び供与機材の適正規模を設定した。
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(2) |
本件の基本設計にあたり、ベナン政府の策定した同病院の将来計画に沿い、施設の拡張や新設される建物が相互にかつ合理的に連携する構造とし、ベナンの技術的、財務的な自立発展性を確保することで案件の効率性を高めている。 |
(3) |
本件の施設管理については、技術的、財務的な自立発展性を確保しうるものとするため、既存施設における医療従事者数、技術レベル及び管理維持能力を考慮し、経済的かつ少人数で維持管理が可能となる計画とした。
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2-3.有効性
(1) |
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
・医療機材の調達・強化により、安全かつ衛生的な医療活動を行うことが可能となる。
・施設の建設・整備により、現在やむを得ず不十分な施設の下位レベルの医療施設で対応している患者が同病院へ搬送されることが可能となり、レファレル患者数が増加する。
・医療サービスを提供する環境が改善されることにより、外来患者数、分娩件数及び手術件数の増加に対応可能となる。
・医療機材のマニュアルの作成により、維持管理手法の技術指導の実施により医療機材の不具合・故障が軽減され、適切な維持管理体制が確立される。
・保健医療従事者のための教育病院として機能が強化されることにより、ベナンの医療技術レベルが向上する。
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(2) |
同国の貧困削減戦略文書(PRSP)では保健サービス裨益人口拡大が目標の1つであり、「妊産婦・新生児死亡率削減国家戦略(2006-2015)」においても、治療及び保健サービスの質の向上、及びこれらを享受できる環境の提供、貧困住民に対する保健医療サービス状況の改善等を最重点項目としている。同国最大の都市コトヌにおける主要な母子病院の施設整備を実施することにより、妊産婦の死亡率と新生児死亡率の低下に貢献する本案件は開発効果が大きい。 |
(3) |
保健分野においては、我が国はこれまで1993年度に「コトヌ国立大学病院医療機材整備計画」、2001年度に「予防接種拡大計画」を実施しており、本案件の実施は同国保健分野の協力に対する我が国の一貫した協力方針を維持強化するものである。 |
(4) |
また、MDGs(乳幼児死亡率の削減及び妊産婦の健康の改善)に重点を置き、2005年に我が国が表明した「保健と開発イニシアティブ(2005-2010)」達成へ向けたアフリカ支援の一環として我が国のリーダーシップを強化するものであり、外交的意義が高い。さらに、本件実施により、日本とベナン共和国との二国間関係強化への効果が期待される。 |
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3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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