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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成19年1月4日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広

1.案件名

1-1.供与国名

 バングラデシュ人民共和国

1-2.案件名

 「モウルビバザール気象レーダー設置計画」

1-3.目的・事業内容

 本プロジェクトは、バングラデシュ北東部に新たな気象レーダーを建設すること等により、これまで観測できなかった地域の雨量等を観測することにより、洪水予報や暴風雨予警報の適切な発令を可能とし、バングラデシュにおける洪水や暴風雨による被害軽減を図ることを目的とする。供与限度額は10億円であり、モウルビバザールに新たに気象レーダーを建設すると共に、既存の観測施設の機能を改良するもの。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がバングラデシュ人民共和国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備された気象レーダー等施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)バングラデシュでは、雨季の豪雨等による洪水やフラッシュフラッド(鉄砲水)による被害が、過去15年間で死者・行方不明者2,722人、負傷者約240万人、被災者約7,892万人に上っており、バングラデシュにおける自然災害の中で最も大きな経済的損失を発生している。また、バングラデシュ北部・中部においては、竜巻を伴う暴風雨による災害も深刻であり、過去8年間で死者・行方不明者956人、沈没船舶数34隻に上っている。

(2)バングラデシュ国内の洪水やフラッシュフラッド(鉄砲水)は、降水量国内最大のシレット県北部と世界一の豪雨地帯であるインド側メグナ河上流域及びメガラヤ山脈域の降雨が主な原因になっている。暴風雨については、前線を伴った温帯低気圧がインド側からバングラデシュ国内に入り込んだ後に勢力が強くなり、時にはトルネードを伴って被害を発生している。しかしながら、既設の気象レーダー観測網では、洪水やフラッシュフラッド(鉄砲水)の主な原因となるインド側メグナ河上流域及びメガラヤ山脈域の雨量データが観測区域外になっている。また、バングラデシュの北部・中部を観測範囲とする既設の気象レーダーでは、暴風雨の発生状況等を観測することができない上、雨雲を観測することはできるものの雨量データを精度良く解析・処理できる機能を有していない。このため、バングラデシュ全土の洪水予報、フラッシュフラッド(鉄砲水)の予警報、暴風雨の予警報が適切に発令できない状態にある。

(3)このような状況の中、バングラデシュ政府は、バングラデシュ国内に重大な被害をもたらす洪水の予報精度の向上、フラッシュフラッド(鉄砲水)の適切な時期の予警報発表、暴風雨警報の迅速な発表を実現するため、バングラデシュ北東部のモウルビバザールに新たな気象レーダーを設置すると共に、既存の気象レーダー観測に雨量解析機能を追加することについて無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)本件を実施するにあたり、気象レーダー設置地域の地盤や気象レーダー観測に支障とならないように周辺の建築物の高さを考慮して、必要最低限の条件の下で気象レーダー塔の設計を決定した。また、気象レーダー塔の施工方法において、現場コンクリート打設によるプレキャストコンクリート工法を採用することで、工期の短縮を図ることとした。

(2)上記の設計方針に基づき、洪水等を災害が発生しても継続して観測できる安定性を考慮した上で、気象レーダー塔の工法等につき経済性、施工性等の観点から最適な形式を選択することにより、本案件の効率性を高めている。

2-3.有効性

(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。

  • 洪水の原因となる豪雨の予警報発令が、1日1回から豪雨探知後1時間以内に発令される。
  • フラッシュフラッド(鉄砲水)の予警報が、発令できなかったものが豪雨探知後1時間以内に発令される。
  • 暴風雨の予警報が、6時間毎から豪雨探知後1時間以内に発令される。
  • バングラデシュ国内における洪水被害のハイリスク地域に居住する約8,200万人(全人口の約67%)のために、適切な洪水・暴風雨の予警報が発令される。

(2)また、バングラデシュにおいては、洪水、暴風雨及びサイクロン等による自然災害が社会経済へ甚大な影響を与えており、同国の開発計画である貧困削減戦略文書において、早期警戒を含む災害管理体制の整備が重要であることが示されていることから、本件の実施は、同国の開発計画に合致する。また、我が国の対バングラデシュ国別援助計画においても、重点目標「社会開発と人間の安全保障」における重点セクター「災害対策」の目標として「災害監視及び予警報・避難システムの強化」を位置づけており、我が国の援助方針とも合致する。

(3)さらに、本計画の実施により、日本とバングラデシュの二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)バングラデシュ人民共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html



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