評価年月日:平成17年4月22日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木 秀生
1.案件名
1-1.供与国名
東ティモール民主共和国
1-2.案件名
「サメ・アイナロ上水整備計画」 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
(1) |
我が国は、東ティモールの安定と発展がアジア太平洋地域全体の安定のために重要との認識の下、これまで同国における平和の定着・国造りの取り組みに対して積極的に協力し、同国の自立に向けた国造りのために国際社会とともに可能な限りの支援を実施してきている。 |
(2) |
東ティモールは、2002年5月20日に国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)から全ての権限を引き渡され独立を達成した。独立後は国連東ティモール支援団(UNMISET)による支援の下、様々な問題解決に取り組んできた。独立後3年近くが経過し、基本的国家機構の確立、荒廃したインフラの回復等において一定の進展が見られたものの、立法・司法・監査機関の強化、法秩序の確立、治安維持体制の強化などにおいて様々な課題を抱えている他、自立的な行政能力の確立が課題となっている。2005年5月20日に予定されているUNMISETのマンデート終了後、如何に東ティモール人による自立的な国家運営を行っていくかが大きな課題となっている。(3)我が国は、1999年12月の第一回支援国会合を東京で開催し、支援国として最大の3年間で1億3千万ドルの支援を表明し、これを着実に実施した。また、東ティモールの独立直前の2002年5月に首都ディリで開催された第六回支援国会合においても、我が国として引き続き人道支援並びに人材育成、農業開発、インフラ整備の三分野を重点分野とした復興開発支援として3年間で最大6千万ドルの支援を表明し、2004年3月までにこれを達成した。
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2-2.対象国の経済状況
(1) |
所得水準(1人当たりGNI)は、494ドル(2002年)。 |
(2) |
2002年5月に2002/03年度から2006/07年度にわたる国家開発計画を作成し、全体目標を「貧困削減」及び「公平・持続可能な経済成長」の2点に定め、8分野について開発戦略を提示した。更に、2003年8月より、国家開発計画をより具体的に進めていくために、15セクターにおいてセクター別投資計画(SIP)の作成を開始した。SIPは各セクターにおける中期的なセクター開発戦略及び2004/05年度から2006/07年度にかけての政府の優先プログラムを提示するものであり、東ティモール政府はSIPに基づいて開発パートナーに対し支援を要請することとしている。 |
(3) |
東ティモールの財政は他国よりの支援に大きく依存しており、2002年の財政支出の約90%はドナー支援によって賄われている。東ティモールの主要産業である農業、漁業は経済成長の要であるが、製造業のGDPに占める割合が2.5%(2002年)と低く、主要な工業製品の大半を輸入に依存している。
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2-3.対象国の開発ニーズ
(1) |
インドネシア統治時代、東ティモールの上水道施設による水供給はそのほとんどが簡易水道であり、水量・水質の面から満足なシステムではないものの、47の主要都市で水供給が行われていた。 |
(2) |
しかし、1999年の独立をめぐる紛争により、水道局事務所の破壊や、設備、器具、車両、記録・資料の紛失・盗難等が発生した。独立後は上水設備の運営・管理に携わっていたインドネシア人が退去したため、人材が不足している。また、既存の施設は大部分がポルトガル及びインドネシアの統治時代(1950~1974年及び1975~1995年)に建設されており、施設の改修が課題となっている。 |
(3) |
東ティモールは、「国家開発計画」では、水供給分野においては都市人口全体の80%に対して管路により安全に水を供給することを目標としている。一方、サメ(人口11,800人)及びアイナロ(人口4,900人)の給水率は27%、66%と低い水準にとどまっている。 |
(4) |
このような状況の下、東ティモール政府は、サメ及びアイナロの水供給を改善するための水道設備の整備改修に必要な資金につき、我が国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
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2-4.わが国の基本政策との関係
我が国は、対東ティモール支援の重点三分野の一つとしてインフラ整備への支援を積極的に実施してきており、本案件は我が国の対東ティモール支援の基本政策に合致している。
2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
東ティモールは低所得国であり、本案件の実施について、同国政府より高い優先順位で要請が行われている。本案件はサメ及びアイナロでの水供給状況を改善するものであり、浄水施設の適切な維持管理と保健衛生の改善が期待されるため、本案件による効果は大きい。 |
3.案件概要
3-1.本プロジェクトの目的
本計画は、東ティモールの地方都市サメ及びアイナロの水道施設の整備改修を行い、当該地区での水供給状況を改善することを目的とする。
3-2.実施内容
本計画の供与限度額は、10億6,400万円(国庫債務負担行為。平成17年度7,200万円、18年度6億7,000万円、19年度 3億2,200万円)であり、サメ及びアイナロの水道施設の整備改修を行うものである。
3-3.環境社会配慮など留意すべき点
東ティモール政府によって、適切な維持管理が実施される必要がある。
3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
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サメ、アイナロの給水率が27%から71%、66%から97%に増加する。 |
(2) |
施設が整備されることにより、浄水施設の適切な維持管理が可能となる。 |
(3) |
水因性疾患の発生が抑制され、地域の保健衛生の改善が期待される。 |
(4) |
上記のような貢献によって二国間関係が増進される。
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4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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先方政府からの要請書。 |
(2) |
JICAの基本設計調査報告書。 |
(3) |
第19回無償資金協力実施適正会議にて検討。 |
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