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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成17年3月29日
評価責任者:有償資金協力課長 相星孝一


1.案件名等

1-1.供与国名
 インド

1-2.案件名
 「バンガロール上下水道整備計画(II-1)」
2.有償資金協力の必要性

2-1.二国間関係等

 世界最大の民主主義国家・資本主義国家であり、かつ、世界の貧困人口の4分の1以上を擁するインドの社会及び経済の発展及び安定のために円借款によって支援を行うことは、次のように(1)日印二国間関係の緊密化、(2)日印経済関係での利益増進、(3)日本の安全保障環境の改善、(4)貧困削減への貢献等による国際社会からの共感・信頼確保といった点において、国際社会の平和と発展、ひいては日本の安全・繁栄の確保というODA大綱の確保に資するものであり、我が国外交政策上の必要性が非常に高い。

(1) 日印二国間関係の緊密化
 インドは、発展途上国のリーダーとして国際社会での存在感を高め、安保理改革で我が国と協調行動をとるとともに、日米・ASEAN諸国と連携してテロとの闘いにも参画しており、同国との間で「グローバル・パートナーシップ」として二国間関係を緊密化させる必要性が高い。
(2) 対外経済関係での利益増進
 近年インドへの進出を狙う日本企業は増加しているが、これら企業においては電力、運輸等のインフラ整備に対する要望が高くなっている。したがって、インドにおける投資環境を整備することは、我が国からの投資先・生産拠点・市場としての将来性が有望であることにもかんがみると、対外経済関係上の利益増進につながる。
(3) 日本の安全保障環境の改善
 インド沿岸域は我が国シーレーンを確保する上で重要な地域であり、親日的な大国であるインドが南アジアで安定的な発展を継続することは我が国の安全保障環境を改善するためにも重要である。
(4) 貧困削減への貢献等による国際社会からの共感・信頼確保
 我が国がその経済規模と国際的地位に見合った形で世界最大の貧困層を有するインドの貧困削減に貢献し、ひいてはMDGs(ミレニアム開発目標)達成に寄与することは、インドのみならず広く国際社会からの共感と信頼獲得にも資する。


2-2.対象国の経済状況

 インドの一人当たりGNIは530ドル(2003年:世銀資料)であり、円借款供与対象国区分のうち、貧困開発途上国として位置付けられる。人口は10億4,828万人(2002年:世銀資料)、GDP5,990億ドル(2002年:世銀資料)、経済成長率は8.2%(2003年度 印側資料)を達成している。
 外貨準備高は1993年度末の193億ドルから1,117億ドルと順調に増加している。経常収支は、2001年度以来黒字を記録している。長期債務残高は、1,126億ドル、対GDP比17.6%、DSR(債務返済比率)は18.3%である(2003年度末:印側資料)。GDP成長率は、昨年度第一四半期(4~6月)の前年同期比7.4%であり、今年は6.0~6.5%の成長が見込まれている(インド準備銀行資料)。
 インドの経済政策は、昨年5月に発足した新政権においても、前政権により推し進めてられてきた経済自由化政策は基本的に維持されており、年率7~8%の経済成長、国内外の投資促進、規制緩和、財政赤字削減、社会部門への公的支出の拡大等を経済政策として掲げてきた。今後とも、引き続き外国直接投資(FDI)の緩和、規制緩和、財政再建責任法に基づく財政赤字の縮減、VAT導入による税収拡大等を施策としている。直近の経済状況では、インフレ圧力、経済収支黒字幅の縮小、財政再建のペースの鈍化に注目する必要はあるものの、好調な経済成長を続けているほか、堅調なFDI、外貨準備の積上、DSRの低下が見られることから、インドの債務返済能力が問題となる蓋然性は低い。

2-3.インドの開発ニーズ

 インド南部カルナタカ州の州都バンガロール市は、人口約600万人を擁する都市であり、インドにおけるIT、電子機器、機械部品等の産業拠点として急速な成長を遂げている。しかし、同市は年間降水量が少なく、同市の上水供給量は急増する需要に対して対応することができず、現状の給水時間は隔日で1日平均6時間に過ぎない。特に、工業用水等は需要の3分の1が満たされるのみであり、不足分は地下水汲上等で補わなければならないことは、同市の産業立地上の課題となっている。今後とも、同市の人口増加に合わせた生活用水の需要増加や産業成長による工業用水の需要増加が見込まれていることから、同市における上水道整備が急務となっている。

2-4.我が国の基本政策との関係

 インドの人口の約3分の1が貧困状態にあること、電力、運輸等の経済インフラが依然として絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえて、我が国は、円借款による支援において、(1)電力・運輸等を中心としたインフラ整備、(2)農業・農村開発を始めとする貧困対策、(3)植林、水質改善等の環境対策を「重点分野」として掲げている。また、これら重点分野を支援する上では、日印経済の増進に資するための投資環境整備の視点が重要である。
 なお、インドが1998年5月に行った核実験に対して我が国は「経済措置」を採っていたが、核実験モラトリアムの継続等を踏まえて2001年10月に同措置を停止している。

2-5.インドに対して有償資金協力を実施する理由

 本計画は、上記2-3.に示すとおり開発ニーズが高く、上記2-4.(1)及び(3)に該当する。  
3.案件概要

3-1.目的(アウトプット)

 バンガロール市及び周辺自治体に対し、コーヴェリ川を水源とする上下水道施設の整備を行う。

3-2.実施内容

 供与限度額:419億9,700万円
 金利:年1.3
 償還(据置)期間:30(10)年
 調達条件:国際・国内競争入札
 実施機関:カルナタカ州バンガロール上下水道局

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

(1) EIA(環境影響評価):不要
(2) 用地取得:用地取得が必要な土地は、約123haであり、2005年中に取得する見込み。
 住民移転:なし
(3) 外部要因リスク:気候条件の変化による水源からの取水量の変化


3-4.有償資金協力の成果の目標(アウトカム)

 本計画を通じ、上水供給能力の改善による民生の向上及び産業の活性化が期待され、ひいては上記2-1に掲げた諸目的の達成に資する。
4.事前評価に用いた資料等及び有識者の知見の活用

 要請書、F/S、国際協力銀行より提出された資料等


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