評価年月日:平成16年4月8日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰
1.案件名
1-1.供与国名
ベトナム社会主義共和国
1-2.案件名
「フエ中央病院改善計画(国債本体)」 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
1992年11月にわが国が円借款を再開したことを契機に、両国関係は将来を見据えた新たな段階に入り、また、近年の首脳の相互訪問等を経て、両国関係は経済面のみならず政治、文化に亘る幅広い分野での交流が進んでいる。なお、2003年には日越外交関係樹立30周年を迎えた。
2-2.対象国の経済状況
(1) |
ベトナムの一人当たりGDPは388ドル(2000年)で、低所得国に属する。主な産業は、農林水産業及び鉱業である。 |
(2) |
1989年頃より「ドイモイ(刷新)」の成果が上がり始め、1995~1996年には9%台の高い経済成長を続けた。しかし、1997年に入り、成長率の鈍化等の傾向が表面化したのに加え、アジア経済危機の影響を受け、外国直接投資が急減し、また、輸出面でも周辺諸国との競争激化に晒され、1999年の成長率は4.8%に低下した。 |
(3) |
2000年の成長率は6.7%、2001年は6.8%、2002年は7.0%を記録し、2003年も7%台の成長率を達成する見込み。しかし、慢性的貿易赤字、未成熟な投資環境等、懸念材料も依然残っている。 |
2-3.対象国の開発ニーズ
(1) |
わが国はこれまでベトナムに対し、無償資金協力にてチョーライ病院(南部拠点)及びバックマイ病院(北部拠点)の整備を実施してきたが、経済成長の中心から離れ貧困人口の多い中部地域は、細長い国の形状や地勢条件から上記拠点病院の医療サービスを受けることが難しい状況にある。 |
(2) |
ベトナム政府は、保健医療セクター開発計画「ヘルスケア・保護10ヵ年戦略」(2001-2010)にて、高度医療センターの早期建設を掲げるともに、「病院ネットワーク開発基本計画」ではティアティエンフエ省のフエ中央病院を、中北部の中核病院と位置づけ追加的投資の必要性を指摘した。 |
(3) |
フエ中央病院のような高度医療・教育訓練・技術指導を担う3次レベル病院は、本来トップレファラル病院として地域全体の住民を対象とする最終紹介病院であるべきながら、1次・2次レベル病院のサービスの質が低いことから周辺地域の軽症患者までもフエ中央病院に集中する傾向が顕著となっている。また、中央診療機能部門と外来機能部門が敷地内に分散配置されている非効率な診療機能と、施設・機材の老朽化が医療サービスの低下を招き、外来患者の増加と規定数を超過する入院患者への対応が困難な状況である。 |
(4) |
このような状況の下、ベトナム政府はフエ中央病院の施設機能を中央化・集中化すえうため、中央診療棟・外来棟等の建設、両棟及び既存小児科・産婦人科に必要な医療機材の整備を目的とする「フエ中央病院改善計画」を策定した。 |
2-4.わが国の基本政策との関係
2000年6月に策定された対ベトナム国別援助計画の重点分野の一つである「医療・保健」に合致している。
2-5.無償資金協力を実施する理由
ベトナムは低所得国であり、本件の実施について、ベトナム政府より高い優先順位を付して要請が行われている。
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3.案件概要
3-1.目的
本案件は、フエ中央病院に中央診療棟と外来棟を新設して、保健医療サービスを向上されることにより、ベトナム中部の地域医療を強化することを目的としている。
3-2.案件内容
供与限度額は、28億2,500万円(3ヵ年総額)。フエ中央病院の中央診療棟・外来棟等の建設、両棟及び既存小児科・産婦人科に必要な医療機材の整備を行うもの。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
次の事項がベトナム政府によって確保される必要がある。
(1)建設予定地の整地及び既存施設等の撤去が行われること。
(2)予算が確保され、適切に施設及び機材橋梁の維持管理が行われること。
3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) |
本計画により、老朽化した施設・機材が充実し、質の高い3次医療サービスの提供が可能となる。 |
(2) |
敷地内に分散されている中央診療機能・外来機能の集約により、移動距離の短縮等、各種医療サービスの改善が見込まれる。 |
(3) |
ベッド数の増加により、病床占有率が改善され、入院待ち日数の短縮が可能となる。 |
(4) |
新棟の建設と機材更新で手術件数・検査件数は増加し、診療費の収入増加が見込まれるため、右は病院の財政的自立性を高める要素となることが期待される。 |
(5) |
中北部地域の3次医療拠点が整備されることにより、中北部全域の医療水準の向上が期待され、ひいては二国間関係の増進に寄与する。 |
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4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等
(1)先方政府からの要請書。
(2)JICA基本設計調査報告書を参照。
(3)第11回無償資金協力適正会議にて検討。
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