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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成16年4月8日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰


1.案件名

1-1.供与国名
 モンゴル国

1-2.案件名
 「ウランバートル市給水施設改善計画(国債本体)」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 1990年の民主化以降、わが国とモンゴルの関係は急速に強まっている。1998年5月にモンゴル元首として初めてバガバンディ大統領が公式訪日し、日モンゴル両国政府は、「総合的パートナーシップの確立」の確認とモンゴルの民主化、改革への日本の継続的支援等の内容を盛り込んだ「友好と協力に関する共同声明」を発表した。1999年7月には小渕総理(当時)がモンゴルを、2001年2月にはエンフバヤル首相が初めての外国訪問として我が国をそれぞれ訪問したほか、2003年11月の第10回「対モンゴル支援国会合」へ出席するため、エンフバヤル首相が来訪するなど、「総合的パートナーシップ」を機軸とする友好と協力関係が一層促進されている。

2-2.対象国の経済状況  
(1) モンゴルの一人当たりGDPは約445ドル(2002年)で、低所得国に属する。主な産業は、鉱業、牧畜業及び軽工業である。
(2) 1990年の改革開始当初は、移行経済に伴う諸困難から経済は低迷を続けるが、経済の構造改革努力、日本をはじめとする外国からの支援等を基軸に1994年には経済の低下は鈍化、GDP前年比数値が1990年以降初めてプラスに転じ(2.3%)、1995年にはプラス6.3%となった。
(3) 1996年から2002年までもプラス成長を記録したが、銅やカシミヤの国際価格の変動に影響を受け、財政赤字と貿易赤字が続いている。


2-3.対象国の開発ニーズ
(1) モンゴルは、2003年5月に閣議承認した首都ウランバートル市の総合計画「ウランバートル市マスタープラン2020年」で、水供給対策を優先事項に掲げているが、現在使用している水源での水量確保が難しく2006~2007年頃には水需要量が水供給量を上回ることが予測されている。
(2) 他方、人口増加に伴い、郊外のゲル地域(木造式・テント式混在の住宅密集地域)では生活排水等による地下水汚染問題もあり、不衛生な井戸水・湧水の使用で水系伝染病も発生しており、将来的には市中心部より下流に位置する2水源が使用できなくなる恐れも指摘され、旧ソ連時代に作られ老朽化した中央水源と併せて、今後の供給力確保が困難な状況である。
(3) こうした状況の下、モンゴル政府は新たな水源開発と施設更新を行うとともに、老朽化著しく給水能力が低下している中央水源のポンプ更新を併せて実施する「ウランバートル市給水施設改善計画」を策定した。

2-4.わが国の基本政策との関係
 1997年に経済協力総合調査団を派遣し、モンゴル政府と協議を行った結果を踏まえてわが国が設定した援助の重点分野の一つである「基礎生活支援(水供給)」に合致している。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 モンゴルは低所得国であり、本件の実施について、モンゴル政府より高い優先順位を付して要請が行われている。
3.案件概要

3-1.目的
 本案件は、ウランバートル市を横断し良質な地下水を有するトーラ川上流での新たな水源開発と施設更新を行うとともに、老朽化著しく給水能力の低下で安定供給に支障を来している中央水源のポンプ更新を併せて実施することにより、人口の急増するウランバートル市の給水施設を改善し、安全な飲料水を安定的に供給することを目的としている。
 また、給水施設を運営するウランバートル市上下水道会社の経営改善支援も、本案件の目的となっている。

3-2.案件内容
 供与限度額は、16億2,700万円(3ヵ年総額)。上流水源16ヵ所の取水施設建設、上流及び中央水源の送水ポンプ場改修と併せて、実施機関の経営改善支援を行うもの。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 次の事項がモンゴル政府によって確保される必要がある。
(1) 環境影響評価(EIA)法に基づく環境保全証明書を取得すること。
(2) 建設予定地の整備が行われること。
(3) 予算が確保され、適切に施設の維持管理が行われること。


3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) ウランバートル市の水道供給能力の向上による水供給の安定化が図られ、また給水能力の向上は電力費等の低コスト化の要素となることが期待される。
(2) ゲル地区における井戸水・湧水などの水質の悪い水の使用がなくなり衛生状況が改善されるため、水因性疾患の減少が見込まれる。
(3) 市街地における水の確保により、ウランバートル市の健全な都市発展、ひいては二国間関係の増進に資する。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1) 先方政府からの要請書。
(2) JICA基本設計調査報告書を参照。
(3) 第11回無償資金協力適正会議にて検討。


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