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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成16年4月13日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰


1.案件名

1-1.供与国名
 エジプト・アラブ共和国

1-2.案件名
 「バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 中東・アフリカ地域において大きな影響力を有するエジプトの安定は、地域の安 定及び中東諸国全体と我が国の友好関係の維持に密接に関わる。そのため、我が国 は、エジプトを中東・アフリカ地域の重点援助国と位置付け、これまで経済社会基盤の整備、貧困対策、人材育成等の分野において積極的に支援を行ってきている。

2-2.対象国の経済状況
 1991年以降、国際通貨基金(IMF)との合意に基づき市場経済化に向けた経済構造改革が進められ、年5%以上の経済成長、インフレ率の低下、財政赤字の縮小といった成果を達成した。しかし、外貨収入源が観光業に偏っているため国際収支が不安定である中、経済の自由化により輸入が急増したことに伴い、厳しい外貨不足に見舞われたこと等もあって、最近の経済成長率は2~3%台に留まっている。

2-3.対象国の開発ニーズ
 エジプトは、主食である小麦の自給率が50%にとどまっており、その多くを輸入に依存している状況にある。また、エジプトの人口は現在約7,190万人であるが、過去10年間で約1,200万人増加しており、今後も同水準で増加すると予想されている。したがって、人口増加に見合う以上の食糧供給の向上が急務となっている。しかしながら、年間降雨量が約5mm程度にすぎないこと、ナイル協定によりナイル川の年間利用可能水量が555億立方メートルに限定されていること、国土の大部分が砂漠地帯であることから耕作可能面積が全土の約4%に過ぎないこと等が大きな制約となっている。
 エジプト政府は、農業における食糧の安定供給を主眼とする第4次経済社会開発5カ年計画を策定しているが、上記の背景もあり、水資源灌漑省が、1800年代から1900年代初めに建設された農業灌漑用の堰の改修を進めつつある。しかし、エジプト政府の厳しい財政事情のため、改修は十分に進んでいない。
 その中で、バハルヨセフ灌漑用水路は、エジプトの農業全体の約13%の灌漑に使用されている主要な灌漑用水路であり、同用水路の中流に位置するサコーラ堰は、主要な堰の1つである。しかし、同堰は建設後約100年を経ており、老朽化が激しく、堰の開閉が十分にできず本来の灌漑の役割を果たしていない。また、自然崩壊の危険もあり、その場合、周辺農地及び住民に多大な被害が及ぶことが予想される。
 そのため、エジプト政府は、「バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰改修計画」を策定し、同計画の実施のために必要な資金につき、我が国に対し高い優先度を付して無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 対エジプト国別援助計画(平成12年策定)においては、重点分野の一つとして農業生産の拡大があげられており、本件は同計画と合致している。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 エジプトは低中所得国であり、本案件の実施についてエジプト政府から高い優先順位を付して要請が行われている。
3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、サコーラ堰の改修を行い、農地に安定した水を供給することで、当該地域の農業総生産を増加させることを目的とする。

3-2.案件内容
 本計画の供与限度額は20億100万円(3箇年に亘る国庫債務負担行為。平成16年度(詳細設計):4億6700万円、17年度:12億9700万円、18年度:2億3700万)であり、バハルヨセフ灌漑用水路サコーラ堰の改修を行うものである。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 次の事項がエジプト政府によって確保される必要がある。
 予算が確保され、適切に堰の維持管理が行われること。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) サコーラ堰の正確で細やかな調節が可能となり、最大約34,000haの農地(受益農民数最大約53万人)に安定した水を供給することが可能になり、当該地域の農業総生産が増加する。
(2) 既存の堰が自然崩壊した際に想定される住民、作物への被害を未然に防止することが可能になる。
(3) 堰の併設橋の改善により、用水路の両岸の通行が改善され、道路を利用した社会・経済活動が活発になる。
(4) エジプトとの二国間関係が増進される。
4.事前評価に用いた資料等及び有識者等の知見の活用

(1) 先方政府からの要請書。
(2) JICAの基本設計調査報告書及びH8~11年に派遣した長期専門家(灌漑配水計画及び灌漑技術各1名)の知見。
(3) 第11回無償資金協力実施適正会議にて検討。


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