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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成16年8月2日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰


1.案件名

1-1.供与国名
 カンボジア王国

1-2.案件名
 「第四次地雷除去活動機材整備計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 1970年以降内戦が続いたカンボジアにおいては、91年10月のパリ和平協定署名を経て、93年5月に制憲議会選挙が実施され、同年9月に新生カンボジア王国が誕生した。
 国内では、クメール・ルージュの完全な崩壊により内政の安定度が高まっており、現在、国の復興と開発を進める上でこれまでにない良好な環境が生まれている。
 03年7月に実施された総選挙においては、フン・セン首相を首班候補に掲げた人民党が勝利し新連立政権の樹立を巡る政党間の駆け引きが膠着したものの、04年6月下旬以降、第二党フンシンペック党党首のラナリット王子がフン・セン首相との対話へと方向転換し、7月中にも第三次人民党・フンシンペック党による新連立政権が発足する見込みである。
 我が国とカンボジアの交流は古く、17世紀初めには日本人が同国のアンコール・ワット寺院に参詣している。内戦中は両国の交流は途絶えたものの、和平達成以降、両国関係は政府・民間双方のレベルにおいて全般的に拡大した。我が国は、カンボジアの和平プロセス、選挙監視及び復興・開発に積極的に人材面・資金面の両面で貢献してきたところであり、92年から01年までの支援累計は約1,013億円とドナー国中最大である。

2-2.対象国の経済状況
 カンボジアは一人あたり国民所得が280米ドル(02年・世銀資料)であり、後発開発途上国(LDC)の一つである。主要産業は農林水産業であり、就労人口の77.5%、GDPの約43%を占めている。
 98年11月に発足した新政府は自らを「経済政権」と銘打ち、税制、森林管理、兵員削減、行政、司法、社会セクター等の分野で抜本的改革を開始、99年2月の支援国会合(於東京)にてフン・セン首相自らこれら諸改革実施に向けた強い決意を示すとともに、改革の進捗状況をモニターするため、四半期毎にドナー国とのモニタリング会合を開催する旨表明した。その後、付加価値税(10%)の導入等による財政収入の増加(対GDP比8.9%(98年)から11.6%(99年)に上昇)や森林の不法栽培の減少等、改革の初期の成果が徐々に現れる中、99年以降、国内経済は回復基調にある(GDP成長率:6.3%/01年、4.5%/02年)。

2-3.対象国の開発ニーズ

 カンボジアでは、20年以上に及ぶ内戦時に埋設された地雷・不発弾が住民の安全な生活や地域経済の発展を妨げている。これらの地雷・不発弾は、現在も約600万個残っていると推定されており、年間800人以上がこれら地雷・不発弾による被害を受けている。このため、住民の安全な生活を確保し、帰還、再定住を促進することや地雷被災者の支援は、社会経済を発展させる上で緊急の課題と認識されている。
 このような状況の下、カンボジア政府は、地雷除去活動を重要政策の一つとして「国家地雷活動戦略プラン」を策定し、1992年にUNDPの指導のもとで設立されたカンボジア地雷対策センター(Cambodian Mine Action Center:CMAC)等による地雷除去活動や住民に対する啓蒙活動を進めてきた結果、地雷被災者は減少している。((2004年3月末までに112km2の地雷原を処理。地雷被災者は1996年:2,957人→2002年:799人)
 しかしながら、CMACの機材の多くはUNTAC統治時代に調達されたもので、老朽化が激しく、機材の不具合のため作業効率が低下している状態にある。
 そのため、カンボジア政府は、老朽化した機材の更新及び地雷除去をより効率的に、また、安全に行うための機材の整備のための資金につき我が国政府に対し無償資金協力を要請越したものである。

2-4.わが国の基本政策との関係
 02年に策定・公表した対カンボジア国別援助計画の重点分野の一つである「持続的な経済成長と安定した社会の実現」のうち「対人地雷問題への包括的支援」に合致している。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 カンボジアは、後発開発途上国(LDC)の一つであり、本件の実施を先方政府は高い優先順位を付して要請してきている。
3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、地雷除去関連機材の調達により地雷除去活動の効率性・安全性を向上させ、カンボジア国民の安全な生活の確保、社会経済基盤の整備を図ることを目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は17億6,100万円。地雷探知機、地雷除去機、地雷除去用防具、車両(トラック等)、発電機、無線機、事務機器、ワークショップ資材等の調達を行うもの。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 以下の事項がカンボジア政府により実施される必要がある。
・本計画により整備された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
・活動に必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと
・ワークショップ資材の組み立てに係る基礎工事及び設備工事を実施すること

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) 地雷除去機、地雷探知機等の調達により、地雷除去活動の効率性・安全性が向上する。
(2) 地雷除去活動の加速化により地雷除去面積が増大し、地雷の被害者が減少するなど、カンボジア国民の安全な生活の確保に資することが期待される。
(3) 地雷処理により農地、定住地、道路等の再利用が可能となり、帰還、再定住の促進、社会経済の発展が図られる。
(4) カンボジア王国との二国間関係を増進させる。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1)カンボジア政府からの要請書
(2)JICA基本設計調査報告書
(3)第13回無償資金協力実施適正会議にて検討。


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