地球環境

ラムサール条約
(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約:
The Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat

平成21年4月

1.背景・意義

 湿原、沼沢地、干潟等の湿地は、多様な生物を育み、特に水鳥の生息地として非常に重要である。しかし、湿地は干拓や埋め立て等の開発の対象になりやすく、その破壊をくい止める必要性が認識されるようになった。湿地には国境をまたぐものもあり、また、水鳥の多くは国境に関係なく渡りをすることから、国際的な取組が求められる。そこで、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促し、湿地の適正な利用(Wise Use、一般に「賢明な利用」と呼ばれることもある)を進めることを目的として、1971年2月2日、イランのラムサ-ル(カスピ海沿岸の町)で開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、本条約が採択された(1975年12月21日発効)。
 本条約は、環境の観点から本格的に作成された多国間環境条約の中でも先駆的な存在であり、現在では広く用いられるようになった持続可能な利用(Sustainable Use)という概念を、その採択当初から適正な利用(Wise Use)という原則で取り入れてきた。

(参考1)ラムサール条約における「湿地」の定義(第1条1)

 この条約の適用上、湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(かんすい、注:塩水のこと)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む。

2.締約国の権利・義務

 本条約は、湿地の生態学上、動植物学上等の重要性を認識し、その保全を促進することを目的としている。主な規定は、以下の通り。

(イ)各締約国は自国の領域内にある国際的に重要な湿地を指定し、指定された湿地は国際的に重要な湿地の登録簿に掲載される(第2条1、2)。

(ロ)締約国は、条約湿地の保全及び湿地の適正な利用を促進するため、計画を作成し、実施すること(第3条)。

(ハ)締約国は、条約湿地であるかを問わず、領域内の湿地に自然保護区を設けることにより湿地及び水鳥の保全を促進し、自然保護区の監視を行うこと(第4条1)。

(ニ)湿地の研究、管理及び監視について能力を有する者の訓練を促進すること(第4条5)。

3.締約国・条約湿地

 2009年4月現在、締約国数159か国、登録湿地数1,838か所、登録湿地の総面積は173,359,584ヘクタールとなっている。

4.締約国会議

(1)この条約の実施について検討し及びこの条約の実施を促進するため締約国会議を行うことが定められている(第6条)。具体的には、提出された様々な決議案をもとに、条約事務局や締約国などが同条約の枠組の中で何をすることができ、また何をすべきかを議論し、決議や勧告を採択している。

(2)2005年11月の第9回締約国会議において、次回第10回締約国会議は、2008年に韓国の慶尚南道(ギョンサンナムド)で開催されることが決まった。アジア地域での開催は、釧路についで2度目となる。

(参考2)締約国会議開催地

締約国会議
会議 日付 開催地
第1回 1980年11月 カリアリ(イタリア)
第2回 1984年5月 フローニンヘン(オランダ)
第3回 1987年5月 レジャイナ(カナダ)
第4回 1990年6月 モントルー(スイス)
第5回 1993年6月 釧路
第6回 1996年3月 ブリスベン(豪)
第7回 1999年5月 サンホセ(コスタリカ)
第8回 2002年11月 バレンシア(スペイン)
第9回 2005年11月 カンパラ(ウガンダ)
第10回 2008年10月〜11月 昌原市(韓国)
第11回 2012年 ルーマニア(予定)

5.日本との関係

(1)日本の登録湿地

 1980年6月17日に加入書を寄託機関たるユネスコに寄託し、同年10月17日に日本について効力発生。条約加入の際に「釧路湿原」を登録して以降、締約国会議が開催されるごとに、国内の湿地を条約湿地として指定し、登録湿地数を着実に伸ばしてきた。2002年の第8回締約国会議の時点で、日本の条約湿地は13か所となった。その後、日本は条約湿地登録に向けた動きを大きく加速させた。きっかけとなったのは、2005年までに条約湿地数を少なくとも2,000か所にするという第7回締約国会議(1999年)決議である。この決議を受けて、環境省が中心となり、日本の重要な湿地のリストである「日本の重要湿地500」の中から専門家による検討を経て候補地を選定し、自治体等との調整を行った結果、2005年10月に新たに20湿地が条約湿地として指定され、同年11月8日にその全てが同条約の登録簿に掲載された。2008年には新たに4湿地を登録したことにより、日本の条約湿地数は合計で37か所となった。
 日本は、従来は水鳥の生息地を主な対象として登録を行ってきたが、今回の登録に際しては日本を代表する多様なタイプの湿地を登録するとの方針のもと、マングローブ林、サンゴ礁、地下水系、さらには水田を含む沼地、アカウミガメの産卵地などこれまであまり登録されてこなかった形態の湿地を条約湿地に指定した。このような日本の取組に対する条約事務局及び他の締約国からの評価は高い。

(参考3)日本の条約湿地一覧(PDF)PDF

(2)日本の貢献

6.最近の動き

(1)締約国会議で議論されるテーマの範囲は近年特に拡大している。2002年の第8回締約国会議では、生物多様性条約や気候変動枠組条約等の多国間環境条約、環境と貿易、文化など幅広いテーマに及ぶ議論が行われ、過去最多となる46本に上る決議が採択された。また、2005年11月に開催された第9回締約国会議では、2004年末から2005年を象徴する自然災害、貧困削減、鳥インフルエンザなどに関する議論が行われ、25本の決議が採択され、2008年10月から11月にかけて開催された第10回締約国会議では、気候変動、水問題等も含む、合計32本の決議が採択された。

(2)一方で、議論の対象となるテーマの拡大に伴い、締約国の利害が対立し、合意形成に大幅な時間を要したり、決議の採択時に締約国が留保を付する事態が生じている。これを受けて、決議の起草過程の効率化や透明化、決議の実効性の確保、締約国会議の効率的運営等が新たな課題として認識されてきている。第8回締約国会議の決議を受けて、第9回締約国会議においては一定の改善が見られ、第10回締約国会議では日本より引き続き改善を進めるよう求めた。また、このような課題に対する取組をさらに進めていくため、過去の決議を整理していくことが確認された。

(3)第9回締約国会議において、わが国より提案した「ラムサール条約の効果的な履行に地域フォーラムが果たす重要性」に関する決議が採択された。また、わが国が豪州と共同で提案した「東アジア・東南アジア・オーストラリア地域における渡り性水鳥の生息地の保全と持続的な利用に関するWSSDタイプ2パートナーシップ」を含む、「ラムサール条約の枠組みにおける地域イニシアティブ」に関する決議が採択された。

(4)第10回締約国会議において、日本と韓国が共同提案した「湿地システムとしての水田における生物多様性の向上」に関する決議が採択された。

7.事務局・予算

(1)事務局

 国際自然保護連合(IUCN)が、他の機関又は政府が指定される時まで事務局の任務を行っている(第8条1)。また、ラムサール条約の寄託者には、ユネスコが指定されている(第9条3)。

(2)予算

 締約国会議では、この条約の財政規則を定め及び定期的に検討し、予算を採択するとされている(第6条5)。締約国は、締約国会議で採択する分担率に従い、予算にかかる分担金を支払うこととなっている(第6条6)。2008年の日本の分担金は、約70万スイス・フラン(米国に次いで拠出第2位)。

リンク:

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